難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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新章 序章は終わりを告げる――【佇む『観測者』は、脚本を綴る】

提案《Ⅱ》

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  ティンバー、田村、斑鳩の3人との小競り合いを終えて、帰路に付いたハートの前に暁が現れた。
  路地に2人だけと思われたが、すぐ隣で暁の腕をがっちりホールドするシャウ・ランの姿が見えた。

  「クモの糸に捕まった獲物だな。お前は……」
  「クモの方が……まだマシだよ」
  「もしや……紐や縄での、束縛プレイがお好きですか?」

  顔を赤らめて、暁の頬に自分の頬を押し付けるシャウの隣で顔を赤らめて、暁は全力で否定する。
  シャウの暁大好きムーブは、ハートも知っている。
  だが、シャウの力で完全に気配を絶って自分に近付いた事に、ハートは殺気を込めた冷酷な目を2人に向ける。

  その目の圧に、思わず2人が強張る――

  力を取り戻したての黒とは違って、ハートは制限付き・・・・とは言え。黒の持っている懐刀の力は、伊達ではない。
  その本質は、黒と違って敵と断言すれば身内・・にすら容赦がない所である。
  流石のシャウも暁の背に隠れて小さくなる。
  敵意がない事を先に伝えるが、ハートの手にはいつの間にか聖剣エクスカリバーが抜かれていた。

  「今回の戦いで、お前は・・・何をしていた……」
  「……気付いてたんだ。びっくりだよ」
  「俺、しょうしろを侮るなよ? ……あのバカと一緒だと思ってんだったら、今ここで死ぬか?」
  「……本気、じゃないですよね? ハート様?」
  「シャウ・ラン。大好きな暁を目の前で死なせたくなかったら……――全力で逃げろよ?」
  「シャウ……どうやら、本気みたいだ。でも、死ぬ前に僕の話を聞いてよ」

  聴くに値する価値があれば、だ。――と、踏み込むよりも先に、暁の手に持っていたある物品がハートに投げ渡される。
  そして、瞬時に結界術式で3人を別空間へと飛ばす。
  ハートが聖剣を捨てて、投げ渡された品物を両手で取る。

  「……嘘だろ」

  ハートの手には、最新鋭の高度なテックが搭載されておきながら小型化に成功したハイテクの詰め合わせのような携帯端末であった。
  所有者が女性だと判断できるピンクのキャラクターのシリコンカバー付きの端末をハートは震えながら大切に触れる。

  「……話を聞いて欲しい。そのテック高性能小型端末の持ち主が、誰のとかも知っている」
  「当然だ。このテック小型機は、アイツの大切な物だ。それを――なぜ、貴様・・が持っている」

  暁の前に、シャウ・ランが立って武器を構える。
  ――が、ハートの放った手刀によってシャウの肩から血が吹き出す。
  直ぐに暁がシャウの肩に手を置き、止血と治療を同時に行う。
  暁が冷や汗をかきつつ、前方のハートに提案を投げ掛ける。

  「……黒が、あちら側からみんなを連れて帰ってくる途中で、何人かが妨害にあった。僕の感知で把握出来るだけでも、イシュルワに2人――その1人が、彼女・・だよ」
  「つまり、お前は知ってて黙ってた。そういう事か?」
  「――黙っているべきだと、判断した。だよ。ハートと黒なら問題なくイシュルワを滅ぼせる。でも、その後は? 政治的な考えを持たない黒とハートバカ2人が原因で、また戦争でも引き起こすつもりか? 良く考えて行動しろ」
  「俺が動けば、アイツはさらに危険になる……」
  「……黒よりも話が分かってる。つまりは、そうさ。2人で大暴れして、彼女の身が危険に陥る可能性は高い。だから、僕が救うまで大人しくしていて欲しい」
  「救える保証は……」
  「約束は、出来ない……でも、僕が動く」

  歯軋りするハート。幾分かは、黒よりも理性的に動く人物なある為、感情優先の黒よりかは説得しやすい。

  ただ、黒よりもハートの方が数百倍恐ろしい・・・・――

  黒に比べ、ハートは彼女に依存している訳では無い。
  ベッタリな甘えん坊ではない上に、彼女は熱心な研究者であった。
  行き先を告げるよりも先に、何処かへとフラッと助手を置いて消える。
  大慌てな助手から、幾度と相談を受けて半ば諦めの境地にあるハートだったからこそ、今の今まで彼女の安否など気にしていなかった。
  研究熱心で、きっと倭で研究に没頭していると勝手に決め付けていた。
  ――その結果が、今回の騒動であった。

  「アイツは、無事か?」
  「僕が知る限りだと、無事だよ。イシュルワには、殺す意味が無いからね……ただ、生かしておく必要性も徐々に薄くなって来ている。時間は限られている」
  「大人しくししているだけか? それ以外に、本当は何かをさせるつもりだろ……」
  「流石だよ。……ローグ、黒の2人がイシュルワでもう1段階領域ステージを上げる。その、邪魔をさせないでほしい」
  「つまり、イシュルワで護衛役か?」
  「そうだよ……強い・・皇帝をローグと黒にぶつける。その為に動いて欲しい」
  「つまり……弱い・・奴らは俺が早々に潰せば良いんだな?」


  ――話が、早くて本当に助かるよ。


  そう、一言呟いてからシャウ・ランと共に、暁はその場から消える。
  1人残されたハートがピンクの端末を片手に、苛立ちを抑える為に向かった先の廃材置き場の巨大な鉄材に拳を叩き付ける。
  柱状の鉄材が奇妙な形に変形する。
  廃材置き場の管理人がタバコに火を付けながら、呼吸が荒くなるハートの背を見る。

  「昔の姿自分に戻ってんぞ。少し、冷静になれ……クソガキ」
  「あぁ、分かってる。悪いな……商品をダメにしちまった」
  「気にすんな。所詮は廃材、あってもないようなモノだ。んで、冷静になったか?」
  「あぁ、スッキリした。――また、来る」

  廃材置き場を後にして、ハートの背中を見送る老人がタバコを手で握り締める。

  「……もう、来るな。嬢ちゃんあの子とお前で、懐かしい悪魔だった過去に別れを告げたんだろ?」

  老人が見送る背に重なったのは、黒の隣で異形を殺し回った時の《悪魔バケモノ》と呼ばれたハートの背中であった――


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