難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

文字の大きさ
170 / 231
1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

内通者への制裁《Ⅱ》

しおりを挟む

  ウォーロックの前に、ボロボロのヘルツが招かれた。
  ボロボロとは言っても、殴り掛かり、襲い掛かって来た軍人はその場でヘルツによって切り捨てられた。

  「……私の信用を、裏切るつもりかな?」
  「裏切ったつもりはないわよ。それとも、ティンバーのように――密会していた証拠でもあるの?」
  「……」

  黙り込んだウォーロックに対して、鮮血がこびり付いた刀を振って、血を払う。
  肩を震わせて、自身に向けられる殺気に怯えるウォーロックへと、殺気のこもった瞳を向ける。

  「私は、黒竜帝に深手を負わせた……その報酬に子供達に手を出さない約束だった筈だ。……先に裏切ったのは、誰だ?」
  「……」
  「言葉を交わさないのであれば、その口は不要だろ」

  ヘルツの抜刀術によって、ウォーロックのボディガードが斬り捨てられる。
  ヘルツの後方に2人、ウォーロックの両サイドに2人の計4人が一瞬で斬り捨てられる。
  部屋のシャンデリアや壁に掛けてある名画が切り裂かれる。
  ソファーに座るウォーロックに剣先を向け、その冷え切った冷酷な瞳がウォーロックを睨む。

  「次、子供達やシスターに手を出して見ろ……殺す」

  部屋を後にしたヘルツの気配が消え、震えが止まった後に再び震えが生じる。
  死に対する恐怖からの震えではなく。狼藉に対する怒りから震えが、ウォーロックの怒りを増長させる。
  杖で物を破壊して、部屋の窓を叩き壊す。

  「……私を、甘く見るなよ……子娘が――ッ!!」

  その怒号が、ヘルツの耳には届く事は無い。
  だが、ウォーロックはヘルツの弱点を既に知っている。例え、殺されそうになったとしても、彼女は自分の命じるままに動くしか無い――

  「ウォーロック様、実験の第一段階が終了致しました」

  部屋の扉をノックする人物がウォーロックの返事を待たずして、部屋へと入る。
  イラ立ち、普通であれば入室の礼儀を弁えないこの者を切り捨てる所である。
  だが、彼が研究者だと分かると、冷静になるように息を整えた。

  「ふぅ……さて、聞こうか」
  「はい……。炉の1番と2番が機能を停止し、残りの3番以降が出力の安定に成功しました。この結果を元に、炉の再調整を実施致します。……コレで、永久炉の完成も近いかと――」

  ウォーロックの不敵な笑みを見て、研究者は笑みと共に重要書類を置いて深々と頭を下げる。
  多くの皇帝、大公クラスの騎士を失った。手駒を減らされ、邪魔な侵入者は誰一人として仕留めていない。
  この状況は、ウォーロックのストレスを増加させる。だが、先程の研究者の報告によって、これまで積み重なっていたストレスが一気に消える。

  「もはや、皇帝など不要……虫けらには、虫けらなりの最後がお似合いよ――」

  手に待った書類には、数多くの孤児の子供達の顔と名前――事細かに記されたデータが記載されている。

  そして、彼らが最後にはどうなったかも――

  この先の展開を予想して、その上でウォーロックは自分の動きを脳内で構築する。
  滅多な事がない限り、自分の喉元に刃が突き付けられる訳は無い。
  手元の駒には、裏切った《ティンバー》や薄々裏切る可能性が高い《ヘルツ》――

  例え、この2つを失ったとしても、今現在の自分には切り札と言える最強の駒がある。
  決して裏切らない存在――
  否、決して裏切れないと言った方が表現としては正しい。

  そんな《田村たむら》、《斑鳩いかるが》の2名の駒に加えて、完成間近の永久炉を用いた兵器――

  もはや、並の騎士など敵ではない。ゆくゆくは、皇帝達も凌駕する存在となる。
  そうなれば、周辺国家への牽制に利用できる。牽制とは言っても、そもそもまともに戦う国家など存在しない。

  「……イイぞ。イイぞッ!! 私が、最強となるのだ。否、私こそが――世界最強だッ!!」

  一人、昂る高揚感を抑えれず。部屋の外へと聞こえる笑い声を響かせる。

  部屋の扉がノックされ、ウォーロックの返事の後に入室した者の無様な姿を見て、堪え切れずに口角を釣り上げる。
  全身ボロボロで、一人で立ち上がる事すら難しいレベルで叩きのめされたかつての皇帝の無様な姿――

  可能であれば、写真に収めてその醜態を世間に広めたい程である。

  「ふーむ……この私に、逆らったらどうなるのか。身を以て理解したのではないか?」
  「……」
  「口が聞けぬほどに、こっ酷くやられたようだな――檻に入れておけ……その後は、そうだな。炉へ入れよう」

  ウォーロックの笑い声を隣で聞いていた包帯の男――《エドワード》は、ウォーロックの興奮した長話を退屈そうに聞いた後に部屋を後にする。
  ウォーロックの計画の全貌を知るのは、エドワードと限られた研究者達だけである。

  そして、エドワードの計画の中で、ティンバーもヘルツはこの先の展開を決める分岐点である。

  「はてはてはて、黒、ハートが満足に動けない今は――私が動くしか無い。まったく、面倒だ……」

  後の激戦を考慮して、カラスのような仮面をクラトのメイドから受け取る。
  一時凌ぎ目的であった包帯を取って、仮面で顔を隠す事とした

  「さぁ……黒、ハート。この国の結末を決めるのは、お前達皇帝エンペラーだぞ――」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...