難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

魔物名――《アルバンカイウス》

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  グランヴァーレ周辺国や都市は、イシュルワ方面から迫る巨大戦艦型のバケモノの存在に怯えていた。
  だが、対抗策が何一つ無い訳では無い。周辺国家や都市には、皇帝や大公と言った地位の高い騎士が潜んでいる。

  そんな存在を他国に知られないように、国主から各皇帝達は通達される。

  極力、表に姿を出すな――と、各々のそれを理解していた。

  だから、イシュルワ方面から黒の高濃度な魔力がヒシヒシと伝わっても我慢していた。

  ――が、顔を出さずにはいられなかった。

  結局、部下や王自らの手で止められる羽目になる。
  それもその筈である。長年、力を抑えていた人物が本気で戦っている・・・・・・・・のだからだ。

  大気中の微小な魔力に乗って、蒸気を纏う皇帝がその力を放出する。
  黒とは違ったベクトルで、周辺国家に影響を与える。
  やはり、皇帝には皇帝にしか分からない。通じる物がある。
  世界各地に散らばり、潜んでいる王の世代達が――イシュルワとの決戦を見定める。

  良くも悪くも、この1戦の結果次第で――大きく覆る。

  国を失ったグランヴァーレは、王が健在である。
  だが、イシュルワは国民こそ無事とは言え、国としての機能は破綻している。
  この事から、四大陸の力関係は大きく傾く事となる。この問題を引き起こした根本的な部分に、黒は大きく関わっている。


  「――ウチの王様も、バカな考えを持たなきゃ良いけどな」

  一人の皇帝が、空を眺めて呟く。

  出来得るならば、この戦いを特等席で眺めたかった。漂う魔力でも現状は断片的に把握できる。
  とは言え、間近で見るのと魔力で断片的に見るのとでは、その迫力も肌を刺激する臨場感も感じられない。

  ――ルシウスが、羨ましい。

  多くの王の世代が、思った事である。

  最高クラスの特等席で、間近に感じられるのだ。


  本物の皇帝による戦いを――




  それ程までに、ウォーロックは力を蓄えていた。


  もはや、皇帝と言っても過言は無いほどにその魔力量も出力も桁違い。
  疑似黒竜帝とでも呼べば良いのか、ウォーロックの戦艦のような肉体もその魔力の大きさゆえのデカさである。

  それを前にして、ルシウスは――飛び跳ねる心臓の鼓動に、身を任せる。

  意思を持った鋼鉄製のワイヤーが、蛇のように飛翔するルシウスを狙う。
  ワイヤーの猛攻の中を抜けて、接敵したウォーロックへと拳を叩き込む。
  予想通りに、攻撃はその硬い肉の鎧に止められる。予想以上に、高い魔力遮断率に舌打ちしつつもルシウスは動きを止めない。

  (肉体の硬度を長く保つには、高濃度な魔力が必要不可欠だ……その上で、あの魔力遮断率だ。仕掛けは、当然内部――)

  人型の上半身が振り上げた巨腕を避けて、その巨腕を蹴って人型の頭部へと拳を再度叩き込む。
  やはり、効果は薄い。だが、完全に効果がないとは判断するには情報が少ない。
  それに、頭部へと攻撃を当てる直前に全身の魔力の流れが大きく動いたのをルシウスは見抜いた。
  そして、頭部へと魔力が集まる感覚の後にあの硬度である。

  (魔力の一点集中、か。なら、フェイントについてこれるか!?)

  蒸気を放って、空を駆ける。

  ウォーロックの動きよりも速く下半身に回り込んで、下半身だと思わせてからの瞬時に背面へと回り込む。
  ウォーロックの認識では、下半身への攻撃が来ると誤認させてから、背面から後頭部へと動いてを叩く。

  予想通り、魔力が集中していなければ攻撃は――通る。

  通り難いとは言え、完全に遮断される訳では無い。それだけでも分かれば、対応の仕方は幾らでもある。

  多くの皇帝や騎士達の大半は、漆黒の魔力を用いた稲妻による内部攻撃こそが最大の攻撃だと誤認している。
  このウォーロックですら、肉体の強度を漆黒の魔力対策に全振りしている。
  内部に魔力が流れなければ、騎士の戦闘力が大きく損なわれる。

  そう、認識していた。

  ――バカにも、程がある。

  漆黒の魔力は、魔力・・攻撃の最高到達点である。

  であれば、さらにその根幹にある。――魔物ギフトの最高到達点は、漆黒の魔力であるのか。と言う疑問が生まれる。

  答えは、否である。

  万が一、漆黒の魔力が騎士最大の攻撃手段であっても、さらにその先の領域ステージに立っている筈の皇帝が、そんな筈がない。


  「天地、まどえ。――《アルバンカイウス   》」


  再び、内に宿りし魔物ギフトを呼び醒ます。

  全身を高温の蒸気を身に纏い、陶器のような美しさを持った鎧が蒸気の体によって形を成している。
  篭手、具足、兜、指先や足先に至るまで、人の姿を持った蒸気に鋼の陶器が鎧となって身を守る。

  それが、ルシウスの魔物――《アルバンカイウス》の完全顕現体の姿である。

  約2メートルを超える巨体に加えて、伸びる蒸気の羽衣を羽織って、まるで鎧武者の総大将のような出で立ちでアルバンカイウスはウォーロックを睨む。

  「アルバンカイウス――。出力最大、範囲固定……魔力圧縮を開始――」

  蒸気機関から漏れ出るスチーム音のような音が聞こえ、それがアルバンカイウスなりの返事だと、ルシウスは知っている。
  両腕を突き出して、アルバンカイウスの掌に魔力と溶け合った水蒸気が圧縮され始める。
  次第に、真っ白な小振りな球体が完成する。ルシウスの指先が、ウォーロックの肉体に狙いを定める。

  「放て――」

  破裂――。耳を引き裂くような高音の爆発の中で、遅れてやって来た圧縮に圧縮された水蒸気の風圧が、ウォーロックの肉を削る。


  ゾゾゾゾゾゾゾゾゾッッッ――!!


  爆風で、ミリ単位よりもさらに細切れにされる肉片が徐々にウォーロックの本体へと迫る。
  上半身の半分、下半身の約4割が消し飛ぶ――。ルシウスの予想よりも被害が少ないのは、直前にウォーロックが退避行動を取ったからである。

  だが、これで――内部攻撃以外でも、対処は可能だと分かる。
  相手が防御可能なレベル以上の魔力攻撃で、ここまでの損害を与えれる。
  最もシンプルで、簡単な方法である。

  膨大な魔力を使用して、膨大な魔力を以てして相手を削る。


  ――ルシウスの得意分野・・・・である。


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