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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】
漆黒の魔力の有効活用《Ⅰ》
しおりを挟む肉体の再構築が始まり、その隙に接敵するルシウスの前にワイヤーなどの妨害工作が立ちはだかる。
「それなりに、追い詰めている。と言う事かな?」
ふくよかな体であるがゆえ、侮られる事が多い。だが、その身体能力は高い事を裏付ける様に妨害の数々を避ける。
何食わぬ顔で、動きを止めたウォーロックの上半身に手を触れる。
「何も漆黒の魔力だけが、魔力を用いた攻撃に適している訳では無い事を――お見せしましょう」
捻りを加えた一撃。鋼のように硬い皮膚の上からルシウスの拳が漆黒を纏って放たれる。
内部へと貫く筈の魔力を抑えて、表面を走る漆黒の魔力がウォーロックの全身を焼いた。
「魔力の最高到達点。それが、漆黒の魔力。……当然、魔力の最高到達点であれば、魔力を攻撃として利用する魔力攻撃の中で、最も威力が高いと言う理解は当然。……が、漆黒の魔力とは――内側と外側の同時攻撃です。外側は強化された打撃、内側を打撃後に放たれる魔力――それが、本来の使い方です」
ウォーロックがルシウスの話を聞いているかは分からないが、ルシウスはそのまま解説を続ける。
それは、例え高い魔力を用いていても――超える事が出来ない壁は無い。
そう、思い知らせる為にわざわざ解説を入れている。
――そんなルシウスの思惑など知らずに、ウォーロックがその巨腕をルシウスへと振り下ろす。
「――目まぐるしく状況が常に変わるこのような戦場で、例え膨大な魔力を有していても……体の内側と外側を同時に守りながら戦える人物を僕は知らない。あの黒やメリアナですら、簡単には出来ない高等技術の1つ――」
ワイヤーや腕による攻撃を避けて、言葉を続ける。
「その為、魔力攻撃とは――魔力防壁、魔力障壁、などの防御を無視した攻撃――と言う訳です。ゆえに、その魔力攻撃の最高到達である漆黒の魔力が魔力攻撃の中でも特別強いのですよ」
振り下ろされる巨腕を片足で難なく蹴り返し、漆黒の魔力が片腕の巨腕に流れ迸る。
皮膚をバチバチッ――と、刺激する程度の魔力。
だが、皮膚がとんでもなく分厚い装甲で、対したダメージとはならない。
――が、そこに思わぬ落とし穴があった。
蹴り返され、その反動で大きく仰け反る上半身へと再びルシウスの魔力を纏った一撃が巨大を揺らす。
放たれる漆黒の稲妻は、内部へと侵入する事はなく。逆に、全身へと皮膚の上を走って、ウォーロックを焼いた。
『皮膚を焼く程度、痛くも痒くもない!!』
会敵して、初めてウォーロックの声が聞こえる。
完全体――とでも呼ぶべき体へと変貌した事で、発声が可能となった。
薄気味悪い笑みと笑い声に、ルシウスが棒立ち状態でウォーロックを見上げる。
『おや、諦めたのかな?』
攻撃の手が通じない。そう判断して、諦めたルシウスをウォーロックは笑った。
ここまでの奮闘も全て意味がない。そう言った意味で、ウォーロックはルシウスを笑う。
この後に、自分が笑えない状態になると言うのに――
その証拠に、ルシウスはウォーロックへと渾身の一撃を叩き込む。
指先でその位置を調整して、空高くから巨大な漆黒の稲妻を頭上から容赦なく叩き落とし浴びせた。
が、ウォーロックの硬い皮膚と防壁、障壁の前では漆黒の稲妻の本領となる内部攻撃が通用しない。
貫く事なく。一部帯電漆黒の魔力が何よりの証拠であり、ルシウスがウォーロックを見上げている。
否、ウォーロックの頭上へと落下するある物体の位置を正確に判断する為に上を向いた。
「頃合いかな? アルバンカイウス――」
ウォーロックの魔力感知の範囲に入って、ようやくルシウスの狙いが読めた。
漆黒の魔力を用いて、先程から攻撃を与えれる相手が自分だけだと誤認させる。
そして、とっておきの切り札を人知れず空高く配置し、狙い通り落とした。
真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ。重力の力を利用して、大気圏からその魔物は高速となって落ちて来る。
ウォーロックの巨大では、回避は不可能――。出来ても対象の落下地点をズラして、損害を最小限に抑える事だけである。
内心焦るウォーロックを嘲笑うように、ルシウスが笑みを浮かべる。
「僕は、言った筈だぞ? 黒やメリアナですら出来ない事が、オマエ如きカスに、出来る訳が無い――」
ウォーロックが全身に魔力を巡らせる。
そして、全身に帯電していた漆黒の魔力の一部が内部へと侵入し、程なくして内側に到達する前に消える。
だが、ウォーロックには一切効果が無い。
それよりもこれから起きるであろう極大攻撃を全身で受け止め、損傷を抑える為に――ウォーロックは、その力を放出する。
両腕をクロスさせ、全身に巡った魔力の一部を両腕と頭部などの上半身の上半分に集中させる。
ルシウスの魔物が、先程から放っている魔力攻撃の威力の高さから見てもこの近辺一帯を吹き飛ばす事など造作もない。
その上、付近に仲間や街などの巻き込まれる対象が存在しない事もこの一撃の高過ぎる威力を十全に発揮するには問題ない。
アルバンカイウスによる魔力攻撃で、少しずつだが気付かない内に後方へと押し戻されていた。
地理的に、誰かを巻き込む恐れも心配もなくなった事で、大気圏からの魔物の爆撃が可能となる。
――だが、ウォーロックに防げない通りはない。
周辺一帯を巻き込む爆撃であっても、黒と同等な魔力を手に入れたウォーロックであれば、全力の魔力を一点集中すれば容易に防ぐ事は可能である。
――それこそが、大きな落とし穴である。
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