難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

部外者の介入

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  「やはり、このタイミングか――」

  ハートが苛立ちを抑える為に、親指の爪を噛んで怒りを抑え込む。
  その横で、動こうとする暁をクラトが静止させ、2人に様子を伺う事を提案する。
  そんなクラトの提案に、暁、ハートの2人が露骨に嫌な顔をして期限を悪くさせる。

  しかし、クラトがなぜそんな提案したのか、その訳はすぐに知る事となる。





  その刺客は、何一つ理解していない。
  この状況に割っている事の危険さに加えて、どれだけこの戦局がその一手で変わるかを――

  真っ黒な歪な肌に、痩せ細った手足を持った。紛う事なき、モンスター。
  まるで、物語の小鬼ゴブリンのような容姿のその刺客は――ケッヒヒッ!! と、笑みを浮かべながら予想以上に素早く動いた。
  その笑みを崩す事なく、ルシウスが破壊するよりも先に永久炉のコアを奪い去る。
  高濃度な魔力によって形成されているそれは、触る物を瞬時に焼く。

  当然、軍手や手袋ですら焼け落ちるのに素手で触る事など有り得はしない。
  その為、永久炉は機械によって守られその恩恵を与える。

  だが、その小鬼は――躊躇う事なく素手で、永久炉の本体を掴む。
  焼き焦げる掌のことなど微塵も気にせず、笑みを浮かべたまま炉を掴む。
  そのまま両手で持ち上げて、油断した2人の足元を抜けてウォーロックの体へと投げ付ける。

  ルシウスが、小鬼の体を魔力で吹き飛ばす。
  ローグが、少しでも遠ざけようとウォーロックの体を蹴って核から遠ざける。

  それでも足りない。ウォーロックは、最後の力を振り絞って全身を使って核へと触れる。
  指先でも、爪の先から滴る血でも、毛髪やツバでも構わない――炉に、力を欲している人物の意思が伝わればそれで良い。

  「クソ――ッ!!」
  「下がりましょう。ローグさん!!」

  吹き飛んだ小鬼の体が膨れ上がる魔力に飲み込まれ、永久炉の核を中心にウォーロックを飲み込む。
  膨れ上がる魔力が、次第に巨大な球体となる。
  それは、ウォーロックと言う人物を核へと接触させてしまった事を意味する。
  膨れ上がる魔力は、ウォーロックの力を欲する意思に呼応して、その力を行使する。

  永久炉の暴走によって形成された球体の内部で、魔力が弾ける。
  弾けた魔力が外側と内側を隔絶していた膜を破る。
  膜がガラスのように崩れて割れて、球体の内と外が繋がる。
  ドス黒い違和感と異質な魔力をその内部に宿して、その球体から生まれ落ちた者が――ローグ、ルシウスを見下ろしていた。

  ビフトロからでもその姿は確認される。
  心、未来、紫苑の3人が空を見上げて、その姿を目に焼き付ける。
  崩れ行く球体が、創り出してはならない存在を創り上げる。バケモノ、そう名乗るに価する力を秘めた怪物・・を――

  顔は、のっぺらぼう。その一言で誰もが想像出来るほどに、目も鼻も綺麗に消えている。
  唯一、不気味な笑みを浮かべる口だけがあって、それも頬まで裂けている。
  四肢は、細くとも筋肉質でありながら、漂う雰囲気は歴戦の猛者の風格である。
  上半身は所々が黒ずんでおり、指先、足の先は炭のように真っ黒――
  吸収された小鬼の成分なのか。腰の黒布を模している。
  腰布一枚と言う何ともマヌケな装い。が、それでも――不気味な力を秘めている。
  そんな奴が、ルシウスとローグの近くへと静かに降り立った。
  


  「サイこうナ……気分ダ」


  発した一言、それは耳に焼き付いている。
  ウォーロックの声音であり、目の前のソレがウォーロックの悪意で生まれた存在だと認識する。

  ルシウス、ローグがその者の間合いへと勢い良く駆け出した。

  全速力を維持したまま、手や脚に魔力を集めてその者へと躊躇無く叩き込む為に飛び掛かる。
  だが、ローグはその足を捕まれる。ルシウスは、その顔を踏み付けられ地面へと縫い付けられる。

  「……もう、貴様らでは足りぬ」

  先程よりも鮮明に言葉を発し、言語レベルもさる事ながらその成長速度は段違いである。
  そう判断したローグが、掴む腕を切り落とそうと手刀を振るう。
  その動きを瞬時に見抜き、片手でボールを投げるようにローグの体を軽々と投げ飛ばす。
  ローグが地面に接触すると、その地面が勢いによって大きく捲れ上がる。

  踏み付けられ、土の中から飛び出たルシウスが再び魔物ギフトを呼び出す――
  情け容赦無い一撃の重さを理解しているからこそ、敵の能力や強さなど考慮せず。
  切り札を早々に切って、全力で倒しに掛かる。

  ――それほどの危険さであった。

  視界に捉えるのがやっとな速力に加えて、殺意が込められた一撃はルシウスがこれまで目にして来た。
  多くの皇帝達よりも卓越しており、総合的な力量は黒やメリアナのような皇帝の上位組に匹敵する可能性も十分にあった。


  その一撃は、コチラの意識を容易く奪いに来た。
  それでいて、その力は未だ全開ではない――


  そう、ルシウスは認識していた。
  さらに言えば、秒を追う事にレベルで進化していた。2秒前よりも速く、3秒前よりも硬い。



  ここで確実に叩き潰す。その為に、再び魔物を顕現させる。



  ――が、既にルシウスの限界は近い。
  魔力量の限界であるが、それ以上にルシウスの力は――条件が厳しいのであった。


  それこそが、ルシウスの強さの理由でもあった。



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