難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

渾身の一撃

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  この世で、最も強いとされる皇帝には――《黒竜帝》の他にも存在はする。

  だが、殆どの者が、黒竜帝の強さは別格だと口を揃える。
  そして、その事から1つの指標にもされている事がある。


  黒竜帝バハムートを倒せるか、否か――



  多くの皇帝達が、黒との一対一の対戦を望む理由の殆どがコレである。
  2年前よりもさらに強くなった自分の今の実力は、果たして黒竜帝に叶うのか――
  故に、皆が戦いたい。
  そして、そんな指標がある中で殆ど公になっていない記録の1つにある中で――黒を倒した・・・・・と言う人物が2人、この世に存在する。


  武術だけ、魔法だけ、ゲームなどの公式戦などではなく。


  皇帝同士の戦い殺し合いで、黒と言う最強の1角に膝をつかせた。

  他の皇帝とも違う存在、文字通り別次元・・・の騎士――

  その内の1人に、ルシウスは数えられる。

  とは言え、ルシウスの場合は単純な力ではない。周囲一帯の力を利用するその能力によって、黒を打ち負かして勝っている。
  そして、黒はその《能力》を知らなかった。さらに言えば、武装しておらず素手のみの徒手格闘術のみだった。
  ――などの理由があるので、実際にフェアな戦いで戦っていた訳では無い。
  それらの理由に付け加えるなら――黒は、その戦いで自身の能力を使っていない。



  しかし、ルシウスの力が一時的に黒を上回る。そして、敗北に追い込んだと言うのは事実である。


  そして、その仕組みは――蒸気・・にある。

  ルシウスの宿した魔物アルバンカイウスの能力である《蒸気  》は、ルシウスの魔力に効果・・が依存しない言う特長があった。
  魔力量が能力の使用時間などの制限に直結する事はなく。
  例え、魔力が無くとも能力自体は機能すると言う特殊な能力である。

  その本質は、大気中の魔力残滓や戦闘中に生まれた魔力残滓の吸収・・にあった。
  自らの魔力で発生させた《蒸気》を周囲一帯の魔力と溶け込ませ、その魔力を《ルシウスの影響下》に変える事で、影響下の力をルシウスの力へ変換させる。

  その為、蒸気が大気中に滞留し続ける。
  又は、蒸気へと変換出来る魔力が大気中に存在する限り――ルシウスの能力は半永続的に続く。




  ――ゆえに、今のルシウスは早急にケリを付ける事に焦っていた。


  先に述べた能力の通り、大気中、空間中に能力のエネルギーとなる物――魔力。
  それが無くなれば、例えルシウスの魔力があっても能力が本当の意味で効果を発揮する事はない。

  ルシウスの魔力でめ能力は発動できるが、魔力が無駄に終わるだけ。

  その原因となるのが、能力の本質が《強化》にある事である。強化がこの能力の本質であって、発動よりも能力の継続に最も魔力が必要である。
  ルシウスの魔力では、保っても数分程度である。
  周囲の魔力を吸収し、力にしなければ全くと言っていいレベルで無能である。

  その上、能力は一帯の魔力を吸収する事で、その強化の振り幅が変化する。  
  黒のような膨大とは言わなくとも、それなりの量の魔力があれば周囲の魔力を吸収する必要も手間も減る。
  が、ルシウスの魔力量は黒とは異なっている。それ以前に、黒レベルの魔力量は――化け物である。
  ルシウスが、その魔力量を獲得するのは不可能――
  が、多くの騎士、異形などがひしめく。大乱戦の戦場であれば、ルシウスの能力は無双の力を発揮する。

  そんな、能力の強さに比例して――弱点が強大であった。

  能力の弱点である。――吸収する力が無ければ、能力は持続せず吸収した蒸気による強化が機能しない。

  ウォーロックが永久炉の力で形成していた肉の鎧から、永久炉を取り込んだ完全な人型へと変貌した際に、周囲一帯の魔力が軒並みウォーロックに吸収されてしまった。

  コレにより、ルシウスの能力はこの時点で保てなくなる。徐々に時間経過と共にその力は薄れて行く。
  当然、能力の恩恵を受けた魔物ギフトの《アルバンカイウス》とて、同じである。

  そんな状況下で、このバケモノを五体満足にしておくのは――リスクが高い。

  「アルバンッッ――!!」

  叫ぶルシウスのすぐ真横へと飛んだウォーロックが、反応速度を上回る蹴りで、ルシウスの動きを瞬時に奪う。
  胴体にめり込む強烈な蹴り。
  内蔵が筋肉がズタズタにダメージを負う。出血し、口内から血が溢れる。
  胴体に受けた衝撃が凄まじく。そのまま頭へと衝撃は伝播し激しく揺らされ、頭蓋骨の中で脳が揺れ動く。

  脳震盪によって、一瞬だけ視界が揺れる。
  目眩を引き起こし、その結果が――ルシウスの最後である。

  「この更に進化した私を前にして、逃げ出さず……よく頑張った方だぞ?」

  動きが僅かに停止したルシウスへとウォーロックの渾身の殴打が迫る。
  腹部へとめり込み、肉が、骨が軋む音が更に奥底からする。
  血と胃の内容部を勢い良く吐き出して――その体は、上空へと吹き飛ばされる。

  そのまま密着したウォーロックの弾丸の雨のような殴打の猛攻を前に、ルシウスの意識は途切れる。
  地面に叩き付けられ、砂塵の中から蹴り飛ばされたルシウスが跳ねる。
  地面を幾度と跳ねて、隆起した岩石を砕いても吹き飛ばされる。

  その力の強大さに、ローグの頬から汗が滴り落ちる。

  「んだよ……その力――」
  「今の私は、炉の力と完全に同化した……。前のような不完全な体ではなく。完璧に、炉のエネルギーを効率的に循環させている」

  核、本体――それを覆い守る肉塊の鎧の仕組みを完全に放棄し、核を守る為の本体と成った。
  それによって、核を保護する肉体に鎧の役割が凝縮される。それにより、防御力は当然の如く。
  破壊力も比べようが無いほどに増している。それが、今のウォーロックの強さの理由である。


  ――が、皇帝この男も一筋縄では倒れない。


  「……ぶっふぅッ!! ……ぐぅぶぅ……ッッ……!!」

  大量の吐血、頭部からの流血に加えて折れ曲がった片手片足で、ゆらゆらと途切れた筈の意識を覚醒させて、立ち上がる。
  誰が見ても、意識が朧気なまま敵であるウォーロックの元へと向かう。
  無謀――誰が見ても、今のルシウスには一撃1つ与えれない。

  かなり離れてはいるものの、ウォーロックとローグがその不屈の精神に恐れを抱く。


  ここまで、やっても立ち上がる……か――


  関心すら覚えるルシウスのその心の強さに、ウォーロックが手を叩いて絶賛する。
  その不屈の精神と並々ならぬ騎士としての矜持に、最大限の敬意を払う――
  ルシウスの元へとウォーロックが瞬時に間合いを詰めて、その無防備な体に拳を振り下ろす。

  地面は爆散し、砂埃と小石などの破片が舞い上がって降り注ぐ。
  舌打ち――。その行動は、予想していなかった。

  もはや、戦意は無いも等しいと思っていた。あまりの力の差に怯えて、萎縮して子犬のように影で震えているしかないのだと思っていた。

  「……間一髪、だな」

  ルシウスを肩に背負って、ローグが今の一撃から助ける。
  肩から地面へとゆっくりと下ろして、息を吐いた。
  恐怖から心臓が痛むほど、鼓動が速い。ドクッドクッ――と、胸に手を当てて現実と向き合う。

  そして、覚悟を決めて――拳を構える。

  「――邪魔だ。虫けら」

  目を開いた時には、その一撃は顔を捉えていた。
  何とか両腕で防げはしたものの致命傷を回避出来た程度で、防御の上からその凄まじいパワーで押し切られ、ローグの体に深いダメージを刻み付ける。
  両腕で防いだ筈なのに、まるで意味が無いかのように腕の骨に幾つもの亀裂が入る。
  とてつもない衝撃で、全身がその一撃だけで悲鳴を上げる。
  既にボロボロである上からのその鉛よりも遥かに重い一撃にローグの目から涙が溢れる。
  激痛――想像以上の激痛を前に、うずくまって直ぐに切り替える。
  

  「……ッッッ!! ゥッッ――!! ッ!!」

  吹き飛ばされながらも、2発目も耐え切る。だが、ただの2発程度でこの様である。
  絶え間なく降り注ぐウォーロックの一撃一撃を見切って、紙一重で避ける。
  避けて、避けて、避けて――回避し続ける。

  が、それも長くは続かない。張り詰めた神経が悲鳴を上げて、ブチッ――と、音を上げて綻ぶ。


  ――あ……。


  そんな声すら聞こえるほどに、ローグの口から音が漏れた。

  そして、脳の動きに体が対応できなくなって、無防備な顔へとウォーロックの一撃が突き刺さる。
  漆黒の魔力を纏って放たれた拳による強烈な打撃をモロに食らって、風を切って吹き飛ばされるローグの情けない姿。
  その様を見て、ウォーロックは満面の笑みを浮かべる。

  「フッ……ハハハハハハハハッ!! フッハハハハハハハハ――ッ!!」

  この上ない高揚感と満足感に満たされ、ウォーロックの次なる標的は、ビフトロの非力な弱者達・・・・・・へと移る。


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