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慶弥の章ー脇役でも全力の男ー
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「何ですか急に怯えて。人を山姥みたいに」とカイ兄は呆れる。俺は吹き出しそうになった。
やめてやめて。カイ兄長髪だし着物だし、マジでそう見えてくるからやめて。
「起こそうと思って。……貴方がうなされてたから」
俺が笑いを堪えていると、カイ兄がそう言いつつ座敷に正座する。フライパンと包丁も傍らに置いて……って包丁の先っちょコッチ向いてますけど!? 人に向けないのがマナーよ! やめて!! つかフライパンの底を包丁で叩いて起こそうとしたのかよ!? そこは別におたまでよくない!? てかフツーに声かけるか揺さぶって起こしてェ!!
「……怖い夢でも、見たんですか?」
心中で忙しく突っ込む俺に、カイ兄はそっと訊いた。
その心底心配そうな顔を見て、カイ兄にとって俺はまだ『怖がり慶弥』なのだなと悟る。そりゃ、ガキの頃は怖がりだったけどさ。「ん」と俺は短く答えた。
「社が……俺より身長高くなる夢みた」
適当を言う。本当の事を喋る必要は無い、嘘も方便だ。
しかし適当を言ったつもりのそれが、意外と大ダメージだった。弟に身長抜かされる兄貴って辛いものがある。俺やカイ兄より低い侑兄の気持ちが少し分かった気がした。
やめてやめて。カイ兄長髪だし着物だし、マジでそう見えてくるからやめて。
「起こそうと思って。……貴方がうなされてたから」
俺が笑いを堪えていると、カイ兄がそう言いつつ座敷に正座する。フライパンと包丁も傍らに置いて……って包丁の先っちょコッチ向いてますけど!? 人に向けないのがマナーよ! やめて!! つかフライパンの底を包丁で叩いて起こそうとしたのかよ!? そこは別におたまでよくない!? てかフツーに声かけるか揺さぶって起こしてェ!!
「……怖い夢でも、見たんですか?」
心中で忙しく突っ込む俺に、カイ兄はそっと訊いた。
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