23 / 71
慶弥の章ー脇役でも全力の男ー
6
しおりを挟む
俺の時が一瞬止まり、口のものを吐き出してしまいそうになる。かろうじて飲み込むと「え、ぇええ!?」と叫んだ。「うるせっ」と社が文句を言うが構う余裕はない。ゴメンな社!
だって諦めていたのだ。たまに侑兄は休日出勤もあるから無理だろうと。「ま、マジで来てくれんの……?」と恐る恐る問うと、侑兄は表情を柔らかくする。
「お前が出演するんだからな。当然観に行くさ」
っシャアあああぁア!!俺はガッツポーズをする。「何でそんなに嬉しそうなんだよ」と侑兄は苦笑した。
あ、そっか。侑兄は知らないのか。俺がガキのころ侑兄に見惚れていたこと。
俺の演技、特に表現のイメージの根幹は中学生の侑兄だってこと。
侑兄は昔、『あの場所』で雅に踊っていた。女装をした着物姿で。
美しかった。とても。
もう、過去の話だけれど―――
俺はメシを急いで掻き込むと「ごちっした!」と合掌して立ち上がる。慌ただしい俺に「ど、どこ行くんですか?」とカイ兄が訊く。俺は振り返りビシッと親指を立てた。
「もち練習っす!!」
「今からですか!? もう21時近いですよ!?」
カイ兄が焦って止めようとするが、もう既に俺の姿は食卓から消えていた。やる気? そんなもん鰻登りだってのオラアアアア!!!
だって諦めていたのだ。たまに侑兄は休日出勤もあるから無理だろうと。「ま、マジで来てくれんの……?」と恐る恐る問うと、侑兄は表情を柔らかくする。
「お前が出演するんだからな。当然観に行くさ」
っシャアあああぁア!!俺はガッツポーズをする。「何でそんなに嬉しそうなんだよ」と侑兄は苦笑した。
あ、そっか。侑兄は知らないのか。俺がガキのころ侑兄に見惚れていたこと。
俺の演技、特に表現のイメージの根幹は中学生の侑兄だってこと。
侑兄は昔、『あの場所』で雅に踊っていた。女装をした着物姿で。
美しかった。とても。
もう、過去の話だけれど―――
俺はメシを急いで掻き込むと「ごちっした!」と合掌して立ち上がる。慌ただしい俺に「ど、どこ行くんですか?」とカイ兄が訊く。俺は振り返りビシッと親指を立てた。
「もち練習っす!!」
「今からですか!? もう21時近いですよ!?」
カイ兄が焦って止めようとするが、もう既に俺の姿は食卓から消えていた。やる気? そんなもん鰻登りだってのオラアアアア!!!
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる