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慶弥の章ー脇役でも全力の男ー
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俺の時が一瞬止まり、口のものを吐き出してしまいそうになる。かろうじて飲み込むと「え、ぇええ!?」と叫んだ。「うるせっ」と社が文句を言うが構う余裕はない。ゴメンな社!
だって諦めていたのだ。たまに侑兄は休日出勤もあるから無理だろうと。「ま、マジで来てくれんの……?」と恐る恐る問うと、侑兄は表情を柔らかくする。
「お前が出演するんだからな。当然観に行くさ」
っシャアあああぁア!!俺はガッツポーズをする。「何でそんなに嬉しそうなんだよ」と侑兄は苦笑した。
あ、そっか。侑兄は知らないのか。俺がガキのころ侑兄に見惚れていたこと。
俺の演技、特に表現のイメージの根幹は中学生の侑兄だってこと。
侑兄は昔、『あの場所』で雅に踊っていた。女装をした着物姿で。
美しかった。とても。
もう、過去の話だけれど―――
俺はメシを急いで掻き込むと「ごちっした!」と合掌して立ち上がる。慌ただしい俺に「ど、どこ行くんですか?」とカイ兄が訊く。俺は振り返りビシッと親指を立てた。
「もち練習っす!!」
「今からですか!? もう21時近いですよ!?」
カイ兄が焦って止めようとするが、もう既に俺の姿は食卓から消えていた。やる気? そんなもん鰻登りだってのオラアアアア!!!
だって諦めていたのだ。たまに侑兄は休日出勤もあるから無理だろうと。「ま、マジで来てくれんの……?」と恐る恐る問うと、侑兄は表情を柔らかくする。
「お前が出演するんだからな。当然観に行くさ」
っシャアあああぁア!!俺はガッツポーズをする。「何でそんなに嬉しそうなんだよ」と侑兄は苦笑した。
あ、そっか。侑兄は知らないのか。俺がガキのころ侑兄に見惚れていたこと。
俺の演技、特に表現のイメージの根幹は中学生の侑兄だってこと。
侑兄は昔、『あの場所』で雅に踊っていた。女装をした着物姿で。
美しかった。とても。
もう、過去の話だけれど―――
俺はメシを急いで掻き込むと「ごちっした!」と合掌して立ち上がる。慌ただしい俺に「ど、どこ行くんですか?」とカイ兄が訊く。俺は振り返りビシッと親指を立てた。
「もち練習っす!!」
「今からですか!? もう21時近いですよ!?」
カイ兄が焦って止めようとするが、もう既に俺の姿は食卓から消えていた。やる気? そんなもん鰻登りだってのオラアアアア!!!
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