stray Crow

慧サト

文字の大きさ
上 下
36 / 71
社の章ー違和感ー

7

しおりを挟む
 『何が』。

 俺はちさを尻目に一瞥すると、ディスプレイに顔を戻した。検索ボックスに改めて入力しつつ「そんなの決まってるだろ」と言う。

「兄貴達が俺達にう……隠し事をしてるんだよ」

 『嘘をついている』と言おうとしたが止めた。コイツがショックを受けるだろうから。
 俺は幾つかキーワードを打ちエンターを押す。ずらっと画面に検索結果が表示された。
 俺達が生まれた年に起きた事故や事件。その情報は海外も含めると膨大だが、しらみ潰しに調べていくしかない。

 ――女児失踪事件……地震……連続殺人事件……島の噴火……トンネルの崩落……村の大火事……銀行強盗……詐欺事件……ハッ、ろくな事件がねえな

 俺がザッと目を通していると「ねえ社……」とちさが呼ぶ。俺は振り返らずに「何だよ」と返した。

「お兄ちゃんたちがわたしたちに隠し事って……なんで……?」
「だからこうしてその手掛かりを探してんだよ。直接訊いても教えてくれないだろうからな」

 ちさの「うー」と苦悩する姿がディスプレイに反射する。
 やっぱ困惑してんな。無理もねぇか、こいつブラコンだからな。


 ――俺は……


 マウスを握る手を、強める。


 ――俺は、違う。
しおりを挟む

処理中です...