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社の章ー秘密の欠片ー
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「慶弥お兄ちゃんは『ちさ掴まれ』って言って……鎖を投げた……鎖はすごく長くて……ううん、わたしの位置まで『伸びた』……」
俺は黙って聞く。アニメかマンガに影響受けすぎじゃね? と他のヤツなら思うとこだが、コイツはこんなしょうもない嘘はつかない。残念ながら。
「慶弥お兄ちゃんは……わたしが鎖を掴むのを確認すると……ガードレールに三日月を引っ掛けた……それで一生懸命引っ張り上げてくれた……」
そこで、ちさは悲しげに顔を俯かせる。そういえばコイツ立ったままだったな。
「慶弥お兄ちゃん……すごく必死で……泣いてた……ぼろぼろ泣いてた……『もう死なせねぇ』って叫んで、わたしを引き上げた……」
「『もう死なせない』?」
俺は口を挟む。ちさは「うん……」と返事をして、沈黙した。しばらく夢を思い返すように黙ってから、俺に視線を寄越す。
「それから……助かったわたしを抱き締めて慶弥お兄ちゃんは『良かった、本当に』って言った……それきり慶弥お兄ちゃんは登山に行かなくなった……おわり」
以上らしい。俺は額を右手で押さえた。ちょっと頭痛がする。「……ひとつ確認する」と、ちさと目を合わせる。
「その鎖は、慶弥が元々持ってたんじゃないんだな?」
「うん……てか、そんなのウチに無いし……そもそも三日月の部分はリュックに入らないくらい大きかったよ……」
俺は黙って聞く。アニメかマンガに影響受けすぎじゃね? と他のヤツなら思うとこだが、コイツはこんなしょうもない嘘はつかない。残念ながら。
「慶弥お兄ちゃんは……わたしが鎖を掴むのを確認すると……ガードレールに三日月を引っ掛けた……それで一生懸命引っ張り上げてくれた……」
そこで、ちさは悲しげに顔を俯かせる。そういえばコイツ立ったままだったな。
「慶弥お兄ちゃん……すごく必死で……泣いてた……ぼろぼろ泣いてた……『もう死なせねぇ』って叫んで、わたしを引き上げた……」
「『もう死なせない』?」
俺は口を挟む。ちさは「うん……」と返事をして、沈黙した。しばらく夢を思い返すように黙ってから、俺に視線を寄越す。
「それから……助かったわたしを抱き締めて慶弥お兄ちゃんは『良かった、本当に』って言った……それきり慶弥お兄ちゃんは登山に行かなくなった……おわり」
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