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side.航 一夜明けて
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「航様! 昨夜は一体どうされたんですの⁉︎」
キンキンとした五月蝿い声で俺は目を覚ました。
瞼を持ち上げて、最初に視界に入ってきたのは家が決めた婚約者の古鷹紬だった。
俺は無意識に眉を顰めた。
日本随一の旅館グループの令嬢である紬は世間知らずの箱入り娘であり、俺にとっては天敵だった。
彼女の純真さにあてられる度に、俺は俺のことを嫌いになっていく。
そんな相手と一緒になったところで、想像し得る未来に幸せはなかった。
寧ろ不幸な結末しかやってこないというのに、両家は俺たちに結婚して欲しくて仕方がないらしい。
はぁ、と重たい溜め息を吐いた俺の耳に再び彼女の声が届く。
「な、なんて格好をしているのですか!」
そして、ハッと気づく。
そういえば昨夜の彼女はどこに??
しかし、キングサイズのベッドのどこを見ても彼女の姿はなかった。
ライバル企業の社長に盛られた薬でやられた俺の頭が見た幻覚だったのか?
いや、それにしては俺の身体が鮮明に覚えていた。
彼女の匂いや皮膚の感触を。
それに、乱れたシーツが確かに昨日、彼女がここにいたことを証明していた。
世間知らずの紬は何一つ気が付いていないみたいであるが……。
ぷぅっと頬を膨らませて俺を見る婚約者に告げる。
「出ていってくれ」
「え?」
キンキンとした五月蝿い声で俺は目を覚ました。
瞼を持ち上げて、最初に視界に入ってきたのは家が決めた婚約者の古鷹紬だった。
俺は無意識に眉を顰めた。
日本随一の旅館グループの令嬢である紬は世間知らずの箱入り娘であり、俺にとっては天敵だった。
彼女の純真さにあてられる度に、俺は俺のことを嫌いになっていく。
そんな相手と一緒になったところで、想像し得る未来に幸せはなかった。
寧ろ不幸な結末しかやってこないというのに、両家は俺たちに結婚して欲しくて仕方がないらしい。
はぁ、と重たい溜め息を吐いた俺の耳に再び彼女の声が届く。
「な、なんて格好をしているのですか!」
そして、ハッと気づく。
そういえば昨夜の彼女はどこに??
しかし、キングサイズのベッドのどこを見ても彼女の姿はなかった。
ライバル企業の社長に盛られた薬でやられた俺の頭が見た幻覚だったのか?
いや、それにしては俺の身体が鮮明に覚えていた。
彼女の匂いや皮膚の感触を。
それに、乱れたシーツが確かに昨日、彼女がここにいたことを証明していた。
世間知らずの紬は何一つ気が付いていないみたいであるが……。
ぷぅっと頬を膨らませて俺を見る婚約者に告げる。
「出ていってくれ」
「え?」
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