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挨拶、の前に
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車を降りる直前、彼の顔が近づいてきた。
キスの合図だ。
私が瞼を閉じると、案の定彼の唇が私の唇を奪っていった。
どんな顔をしているのか気になって、私は目を開けた。
いつから目を開けていたのか、彼もまた私を見ていた。
航の妖艶な瞳と眼鏡越しに目が合ったのだ。
どきりと心臓が早鐘を打つ。
彼の流し目が扇情的で、私は心臓を鷲掴みにされた。
「っふぁ、あ」
驚いて思わず漏れた声に羞恥心が募って、私は慌てて瞼を下ろす。
航に見つめられるのは心臓に悪い。
しかし、それを見計らったかのように彼の舌が私の唇を割って入り、歯列をなぞり始めた。
身体が快感と期待に震える。
彼と私の舌が絡んで離れて、またくっついて。
次第に頭がぼうっとしてきて、無意識に私の手は彼のジャケットに縋り付いていた。
ーーーーもっと、欲しい。
互いに息も絶え絶えになったタイミングで、ようやく航の顔が離れていった。
それを残念な気持ちで見送った。
今の私はきっとだらしのない表情をしていることだろう。
「続きはまた今度な」
最後にもう一度だけ私の瞼にキスを落として、彼は車から降りた。
乱れた前髪を整えている間、運転手との空間に再び恥ずかしさが込み上げてきて、私は何度も咳払いをしていた。
そうしているうちに、私側のドアが開けられて、左手を差し出した航が待っていた。
ふぅ、と大きく深呼吸をして私は彼の手を取った。
緊張はさっきのキスで少しだけ有耶無耶になっていた。
キスの合図だ。
私が瞼を閉じると、案の定彼の唇が私の唇を奪っていった。
どんな顔をしているのか気になって、私は目を開けた。
いつから目を開けていたのか、彼もまた私を見ていた。
航の妖艶な瞳と眼鏡越しに目が合ったのだ。
どきりと心臓が早鐘を打つ。
彼の流し目が扇情的で、私は心臓を鷲掴みにされた。
「っふぁ、あ」
驚いて思わず漏れた声に羞恥心が募って、私は慌てて瞼を下ろす。
航に見つめられるのは心臓に悪い。
しかし、それを見計らったかのように彼の舌が私の唇を割って入り、歯列をなぞり始めた。
身体が快感と期待に震える。
彼と私の舌が絡んで離れて、またくっついて。
次第に頭がぼうっとしてきて、無意識に私の手は彼のジャケットに縋り付いていた。
ーーーーもっと、欲しい。
互いに息も絶え絶えになったタイミングで、ようやく航の顔が離れていった。
それを残念な気持ちで見送った。
今の私はきっとだらしのない表情をしていることだろう。
「続きはまた今度な」
最後にもう一度だけ私の瞼にキスを落として、彼は車から降りた。
乱れた前髪を整えている間、運転手との空間に再び恥ずかしさが込み上げてきて、私は何度も咳払いをしていた。
そうしているうちに、私側のドアが開けられて、左手を差し出した航が待っていた。
ふぅ、と大きく深呼吸をして私は彼の手を取った。
緊張はさっきのキスで少しだけ有耶無耶になっていた。
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