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第一章 日常
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夕暮れの中を歩く。春の風がどこからともなく漂ってくる夕飯の匂いを連れてくる。
仕事を終えた愛生は帰り路を急いでいた。
ふと、右手に現れた商店街の細道が気になった。
顔を横に向けると、橙色の世界の中に薄暗い一本道が続いている。奥に行けば行くほど影は濃く昏くなっていき、少しだけ愛生の不安を誘った。
(そういえば。確か、周を拾ったのもこんな日の夕方だったっけ――)
商店街のゴミ箱で死んだように捨てられていた周を見たときは不思議な縁を感じたものだ。
高橋周は愛生の二つ年下の男だった。昼間は医大の院生として勉学に励み、夜はホストで働いている、少々変わったハードワーカーなやつだ。
愛生が周を見つけたときは、度重なる徹夜によってぶっ倒れてしまったらしい。
愛生のお節介センサーが働いたのか、はたまた彼に何か既視感があったのか。愛生は周の現状を見捨てておくことができず、一緒に住むよう提案したのだった。
(俺ってば、実はお人よし?)
当時のことを思い返し、先程感じた僅かな不安さえ忘れて、愛生はふっと口角を上げた。
そんな奇妙な出会いから始まった二人のルームシェアは順調そのもので、そのうち周に対して同居人以上の気持ちが芽生えてしまったのも、今は良い思い出だ。
自身の淡い恋心に気付いたからには隠し通すことも出来ず、愛生は周に玉砕覚悟で打ち明けた。
周は愛生の気持ちをあっさりと受け入れ、それどころが周自身もまた愛生に恋愛感情を抱いているというではないか。
今世紀最大の勇気を振り絞った愛生は拍子抜けた。
きょとんと周を見上げる愛生の唇に、柔らかな口づけが落とされて――あとはなし崩しにそのままベッドに倒れ込んだ。
一緒に住み始めて三ヶ月後には同居は同棲に変わってしまったのである。
――周と恋人同士になってから一年。当時のことを思い出しながら、伸びをして息を吸う。
「俺は幸せ者だなぁ」
きらきらと夕焼けを反射させた愛生の瞳には紛れもない幸福が映し出されていた。
仕事を終えた愛生は帰り路を急いでいた。
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(そういえば。確か、周を拾ったのもこんな日の夕方だったっけ――)
商店街のゴミ箱で死んだように捨てられていた周を見たときは不思議な縁を感じたものだ。
高橋周は愛生の二つ年下の男だった。昼間は医大の院生として勉学に励み、夜はホストで働いている、少々変わったハードワーカーなやつだ。
愛生が周を見つけたときは、度重なる徹夜によってぶっ倒れてしまったらしい。
愛生のお節介センサーが働いたのか、はたまた彼に何か既視感があったのか。愛生は周の現状を見捨てておくことができず、一緒に住むよう提案したのだった。
(俺ってば、実はお人よし?)
当時のことを思い返し、先程感じた僅かな不安さえ忘れて、愛生はふっと口角を上げた。
そんな奇妙な出会いから始まった二人のルームシェアは順調そのもので、そのうち周に対して同居人以上の気持ちが芽生えてしまったのも、今は良い思い出だ。
自身の淡い恋心に気付いたからには隠し通すことも出来ず、愛生は周に玉砕覚悟で打ち明けた。
周は愛生の気持ちをあっさりと受け入れ、それどころが周自身もまた愛生に恋愛感情を抱いているというではないか。
今世紀最大の勇気を振り絞った愛生は拍子抜けた。
きょとんと周を見上げる愛生の唇に、柔らかな口づけが落とされて――あとはなし崩しにそのままベッドに倒れ込んだ。
一緒に住み始めて三ヶ月後には同居は同棲に変わってしまったのである。
――周と恋人同士になってから一年。当時のことを思い出しながら、伸びをして息を吸う。
「俺は幸せ者だなぁ」
きらきらと夕焼けを反射させた愛生の瞳には紛れもない幸福が映し出されていた。
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