上 下
31 / 53

ジャンの嫉妬1。

しおりを挟む
「兄上! セシリアと婚約したと聞きましたが、一体どういうことですか?!」

僕はセシリアからの手紙を手に、学園へと乗り込んだ。

王城に住む僕にとって、王都にある学園などほんの目と鼻の先なのだ。

僕の言葉に兄のエドワードは、にっこりと微笑んだ。

昔はコンプレックスを感じながらも、裏表のない兄は、どこか憎めない人だと思っていた。
だが、ここ最近は、いいや、セシリアが関わる話だけ、どうにも昔の兄はいないように思う。

なんだか、何を考えているのか分からない笑顔をするのだ。
まとわりつくような、溺れてしまうような、そんな笑顔を。

「どういうことも何も、そういうこと。俺とセシリアは、婚約したんだ。つい先日、国王と王妃にも宣言したから、今頃ブラッドレイ家にも文が届いているはずだよ。王子妃教育のために、王城に住むようにって」

「……っ」

何も言い返せない僕は、いつの間にか手紙を握りしめていた。
セシリアの綺麗な文字が綴られたそれは、僕の心みたいにくしゃくしゃになっていた。

婚約なんて冗談じゃない!
そう叫びたかった。

セシリア、君は兄上のことが好きだったのか?
そう問いかけてみたかった。

だから、手紙の返事なんて到底書ける心情ではなかったのだ。




*********

「王妃教育」→「王子妃教育」に変更しました。

ご指摘くださったrikaco様、ありがとうございます。

ただ、エドワードのことを「王太子」としている部分が自力では見つかりませんでした。
申し訳ありません。

2017.08.20.
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最強聖女!チート御一行のダンジョン生活

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,429

独り立ちしたい姉は、令嬢ながらにお金を稼いでた

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:34

もんすた〜ず

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...