春のうらら

高殿アカリ

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 不思議と麗を中心として広がっていく縁にシノニムは感嘆した。
 その関係はいつしか「友情」と呼ばれるものになっていったのだから。それは十年前のシノニムと麗のように。
 復讐をするためだけに生きていたはずのシノニムは、いつしか他者と関わる喜びを知るようになった。今も昔も、麗がそれを教えてくれたのだ。
 とくとくと早鐘を打つ心臓の音を聞きながら、シノニムは眠りに落ちた。
 待っているのは真っ暗な絶望ではなく、安寧たる春の夢だった。

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