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Story 02 side.TYAKO

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「チャコー! お金ないよー?」



最近、餡子の声が耳障りだ。



餡子は物欲が多いみたいで、気が付けばすぐにお金が無くなっている。

お嬢様らしく、物を買う時に値段などは見もしないらしい。



あたしの横で寝転がる餡子に向かって言う。



身体を繋げたあとは、言いにくいこともするすると口から出てくるらしい。

身体と心はあたしが思うよりも密接に関係しているのかもしれないなぁ。



「餡子。あたし、昼間もコンビニでバイトするよ」

「え? どうして?」



無垢な瞳があたしを見つめる。

そのことに罪悪感を覚えて。



これじゃあ、まるであたしだけが罪人みたいだ。



「お金ないでしょ。餡子だって今日の朝言ってたじゃん」

「でも、チャコいつもお休みないし、平気なの?」



「やってみなきゃ分からない」

「チャコが無理しなきゃいけないなら、私はお金なんてなくていいよ」



涙目になりながら餡子が言う。

それはどれほど甘美な響きだろう。



だけど、あたしは知っている。

餡子の言う「お金なんていらない」という言葉ほど夢見がちな台詞はない、ということを。



結局、あたしは昼のコンビニでアルバイトを始めた。

餡子は終始心配していたが、彼女の暢気な顔を必要以上に見なくて済むことに、心のどこかでほっとしている自分がいた。



あたしも大概、最低な人間なのだ。
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