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第二十一話
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暗い意識の中を為朝は落ちていく。落ちていく為朝の周囲には前世と今世の記憶が映し出されている。
乱暴が過ぎたために前世の父・為義から追放を言い渡された時。今世において守役として宗運と初めて出会った時。前世において九州に初めて降り立ち、その広大さに胸弾ませた時。今世において宗運の講義から逃げ出して鎮西二十烈士と共に阿蘇の山を走り回った時。前世において九州の国人を取り込んで九州の統一に乗り出した時。今世において初陣で堅志田城を落として今世の父である阿蘇惟豊の敵の首を刎ねた時。前世において九州を統一し、その戦力をみた朝廷から上洛を命じられ、不承不承に上洛した時。今世において鎮西八郎為朝を名乗り大友の大軍勢を撃退した時。保元の戦いにおいて戦慣れした自分の進言が退けられ、結果的にそれが敗北に繋がった時。今世において肥後の相良家等を倒して肥後を統一した時。前世において八丈島に流され、そこでも逆に暴れまわったために追討軍を受け、追討軍の船一隻を弓で轟沈し、満足して腹を切った時。今世において筑後に攻め込み、宗筑後入道の策にかかった時。
そこまでの記憶が流れていくと、為朝の前に一枚の大きな布が現れた。
為朝は不思議に思いながらその布をくぐろうとした時、手を引っ張られる形で止められる。
『あら、いけませんよ為朝様。そこから先は死の国。為朝様が行くにはまだ早いでしょう』
聞き覚えのある女の声がする。聞き覚えはあるが為朝は思い出そうとするとその女の記憶に霞がかかったようで思い出せない。
『さぁさぁ!! せっかく私がイザナミ様の目を掻い潜ってこの世界に為朝様を放り込んだですから、もうちょっと私を楽しませてください!!』
そんな愉快そうに笑う女の笑い声と共に為朝の意識が明るい光へと向かっていった。
為朝が目を開くと、心配そうに為朝を覗き込んでいる親常がいた。
為朝が目を開いたことに親常は嬉しそうに笑った。
「良かった!! おい、みんな!! 為朝様が目覚めたぞ!!」
親常の言葉に周囲を警戒していた鎮西二十烈士から嬉しそうな笑みが出る。
親常から受け取った水を飲みながら為朝は上半身を起こす。
「ここは?」
「筑後と肥後の国境です」
その言葉に為朝の意識は覚醒する。
「戦はどうなった!?」
為朝の言葉に親常は気まずそうに目を逸らす。それが答えであった。
「負けたのか。俺は」
為朝の呟きに鎮西二十烈士も何も答えられない。
すると又三郎が為朝の前にきて地面にひれ伏した。
「恐れながら申し上げます。今回の為朝様の筑後侵攻は全て宗筑後入道が描いた絵図でございます。それに我が父・親種は加担して為朝様を討とうとしておりました。父は筑後と田尻家の安寧のために。宗筑後入道は少弐家の存続のために。それぞれの思惑が合致して今回の戦となりました」
又三郎の言葉に為朝は少し驚く。
「そうか、親種も宗筑後入道の策の内か。ならばその嫡男である又三郎もまた何か思惑があって俺の傍にいたのではないのか?」
「その通りです。私は父と宗筑後入道の命を受け、隙をみて為朝様の命を奪うべくお傍におりました」
「ですが為朝様。又三郎は為朝様の味方です。宗筑後入道も知らない逃げ道を使って為朝様や俺達をここまで連れてきてくれやした」
親常の言葉に為朝が無言で又三郎をみると、又三郎はひれ伏したまま言葉を続ける。
「為朝様のお傍にいて、為朝様こそが九州を統一し、そして戦乱続く日本の統一も成し遂げるお方だと思いました。そのために田尻家や少弐家と言った小さな括りのために殺めてしまっていいお方ではないとも思いました」
そう言って又三郎はひれ伏したまま腰に差していた刀を鞘ごと抜いて前に置く。
「ですが我が父の罪は息子である私の罪。どうか私の首をもってお怒りを鎮めていただければ」
そこまで言い切ると又三郎は黙り込む。為朝は起き上がると又三郎の刀を鞘から抜く。その刃をみながら為朝は又三郎に話しかける。
「よい刀だな」
「は。有名な作ではありませんが、田尻家に代々伝わる刀でございます」
又三郎の言葉に頷きながら為朝は刀を鞘に納める。
「又三郎」
「は」
「許す」
「……は?」
思わず為朝を見上げた又三郎に対して為朝は笑う。
「田尻家のような国人が強きほうに付くのは当然のことだ。今回は親種を俺のほうについたほうがいいと思わせることができなかった俺の失態だ」
そう言うと為朝は刀を又三郎に持たせる。
「親種のところに帰るがいい。そして俺という人物がどんな人物かを親種に告げよ」
そして為朝は快活な笑いをみせる。
「そして次の戦の時は俺に同心してくれたら俺は嬉しい」
為朝のその言葉に又三郎は顔を崩して泣く。そんな又三郎の肩を叩くと又三郎も涙を拭いて立ち上がり、為朝に向かって頭を下げる。
「次の為朝様の筑後侵攻の折りには父と共に同心させていただきます」
「ああ、楽しみにしている」
そう言うと又三郎は最後にもう一度為朝に頭を下げてその場から去っていった。
それを見送ると為朝は親常や鎮西二十烈士が嬉しそうに為朝をみていることに気付く。
「なんだ?」
「いえ、為朝様が俺達の大将でよかったと思ってるだけです。なぁ、みんな!!」
『おお!!』
親常の言葉に鎮西二十烈士から嬉しそうな返事が出る。
その反応に困ったように頭をかきながら為朝は親常に尋ねる。
「俺がここまで逃げているということは本隊も負けたと思うべきか」
「あ~、すいやせん。俺達は為朝様を守って逃げるのに必死で上兄者に伝令を出す余裕は……」
「いい、又三郎にも言ったが今回の戦の責は全て俺にある」
そう言って為朝は腰に差さっている刀を確認すると歩き始める。それに急いだ様子で鎮西二十烈士も続く。
「為朝様、どうなさるんで?」
「負けたからと言って全員が死んだわけではないだろう。一人でも多く合流させるために街道で俺は殿軍が戻ってくるまで待つ」
一瞬ぎょっとした親常だったが、すぐに嬉しそうに笑った。
「へへ、それでこそ為朝様」
「為朝様、それでしたら為朝様は俺の馬に。ここまで逃げるのにみなの馬は潰れましたが、俺の馬だけはまだ人を乗せて歩けますので」
「助かる、鎮昌」
鎮昌から差し出された馬に乗り、為朝は街道のど真ん中に出て筑後方面を睨みつける。鎮西二十烈士も逃げる時には畳んでいた為朝の旗印を大きく掲げていた。
それからニ刻ほどで龍造寺の旗を掲げた一団が為朝達の前にやってきた。
その集団から一騎前に出て大音声で叫んでくる。
「我が名は龍造寺家臣・鍋島清房!! そこなる武士の一団は何者か!!」
「おう!! 俺か? 俺の名は鎮西八郎為朝!!」
為朝の名乗りに鍋島の手勢がざわつく。鍋島の手勢は二百人程度。それに対して為朝のほうは鎮西二十烈士含めても二十一人である。
為朝に勝ち目はないように思えるが、為朝にはある鍋島の手勢は攻めてこないという確信があった。
鍋島の手勢はしばらくするとその場から去っていく。
それを見送りながら為朝の傍らにいた親常が首を傾げる。
「なんで攻めてこなかったんですかね。為朝様の首が一番手柄だろうに」
「親常、あの鍋島という漢、宗運から聞いたが『赤熊武者』という連中を率いて龍造寺の飛躍に一役買っている漢だそうだ。そしてその鍋島は龍造寺の武勇の要であると同時に龍造寺きっての知恵者でもある」
その言葉に親常も合点がいった表情になる。
「なるほど!! 小勢の為朝様が本当に小勢なわけがないって思ったってことか!!」
「その通り。まぁ、俺と鎮西二十烈士と九州に名高き赤熊武者。戦ってみたかったのもあるがな」
為朝の言葉に鎮西二十烈士から笑い声が出る。
それからしばらくは柳川城攻めから落ちてきた武士や兵も合流し始めて、為朝の本陣が再び形成され始めていた。
親房や親成、そして肥後国衆の城親冬と名和武顕も合流してそれなりの規模になった本陣があっても、為朝は一番前で味方の将兵を労いながら取り込んでいた。
そして為朝の目に秩序だった隊列で引き上げてくる一団がみえる。
その一団から一騎駆け出して為朝のところにやってきた。
宗運である。
宗運は為朝の顔をみると嬉しそうに泣き出す。
「為朝様、ご無事でなにより……」
「ああ、宗運も無事なようで良かった。あれは惟民の鉄砲隊か」
「はい、私と惟民殿の兵でございます」
「そうか。ならばあとは親昌だけか」
為朝の言葉に宗運の表情は強張る。
その表情で為朝は察した。
「……親昌は死んだか」
「は。私と惟民殿を逃がすために殿となって」
宗運の言葉に為朝は目をつぶって空を見上げる。
「鎮昌」
「は、は!!」
宗運の報告に呆然としていた鎮昌と守昌の親昌の息子二人は、為朝の言葉に背筋を伸ばす。
「先ほども言ったが今回の敗戦の責は全て俺にある。親昌の死もまた俺の責だ」
その言葉に鎮昌と守昌の目から涙が溢れる。
その流れる涙をそのままに鎮昌が叫ぶ。
「何をおっしゃられるか!! 父は為朝様のために死んだのです!! きっとその最後も為朝様の日本統一の夢をみてのことでしょう!!」
「兄上の言う通り!! そんな死であれば父の死は我らの誉れです!!」
隈庄兄弟の言葉に為朝は零れそうになった涙を必死に止める。
(ここで泣いては親昌の死を汚す!!)
そう思って為朝は刮目すると刀を抜き放って天空に掲げる。
「みな聞けぇ!!」
その言葉に為朝軍全員の視線が為朝に集まる。
「此度の戦、俺の負けだ!! 宗筑後入道にしてやられたわ!!」
そう言って為朝は大きく笑う。
「だがなぁ!! この負けでこの鎮西八郎為朝が覇道が阻まれたとは思わぬ!! 今回負けたなら次勝てばよい!! 此度の戦の負けは次の勝ち戦ぞ!!」
そう叫びながら為朝は刀を上がり始めた太陽に向ける。
「あの明星に誓おう!! この鎮西八郎為朝!! 死んだ者の思いも背負って天下にいく!! だから、みなも俺についてきてくれ!!」
『おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』
響き渡る為朝軍の雄叫び。それを受けながら為朝は大きく笑う。
「さぁ、胸を張って隈本に帰るぞ!!」
乱暴が過ぎたために前世の父・為義から追放を言い渡された時。今世において守役として宗運と初めて出会った時。前世において九州に初めて降り立ち、その広大さに胸弾ませた時。今世において宗運の講義から逃げ出して鎮西二十烈士と共に阿蘇の山を走り回った時。前世において九州の国人を取り込んで九州の統一に乗り出した時。今世において初陣で堅志田城を落として今世の父である阿蘇惟豊の敵の首を刎ねた時。前世において九州を統一し、その戦力をみた朝廷から上洛を命じられ、不承不承に上洛した時。今世において鎮西八郎為朝を名乗り大友の大軍勢を撃退した時。保元の戦いにおいて戦慣れした自分の進言が退けられ、結果的にそれが敗北に繋がった時。今世において肥後の相良家等を倒して肥後を統一した時。前世において八丈島に流され、そこでも逆に暴れまわったために追討軍を受け、追討軍の船一隻を弓で轟沈し、満足して腹を切った時。今世において筑後に攻め込み、宗筑後入道の策にかかった時。
そこまでの記憶が流れていくと、為朝の前に一枚の大きな布が現れた。
為朝は不思議に思いながらその布をくぐろうとした時、手を引っ張られる形で止められる。
『あら、いけませんよ為朝様。そこから先は死の国。為朝様が行くにはまだ早いでしょう』
聞き覚えのある女の声がする。聞き覚えはあるが為朝は思い出そうとするとその女の記憶に霞がかかったようで思い出せない。
『さぁさぁ!! せっかく私がイザナミ様の目を掻い潜ってこの世界に為朝様を放り込んだですから、もうちょっと私を楽しませてください!!』
そんな愉快そうに笑う女の笑い声と共に為朝の意識が明るい光へと向かっていった。
為朝が目を開くと、心配そうに為朝を覗き込んでいる親常がいた。
為朝が目を開いたことに親常は嬉しそうに笑った。
「良かった!! おい、みんな!! 為朝様が目覚めたぞ!!」
親常の言葉に周囲を警戒していた鎮西二十烈士から嬉しそうな笑みが出る。
親常から受け取った水を飲みながら為朝は上半身を起こす。
「ここは?」
「筑後と肥後の国境です」
その言葉に為朝の意識は覚醒する。
「戦はどうなった!?」
為朝の言葉に親常は気まずそうに目を逸らす。それが答えであった。
「負けたのか。俺は」
為朝の呟きに鎮西二十烈士も何も答えられない。
すると又三郎が為朝の前にきて地面にひれ伏した。
「恐れながら申し上げます。今回の為朝様の筑後侵攻は全て宗筑後入道が描いた絵図でございます。それに我が父・親種は加担して為朝様を討とうとしておりました。父は筑後と田尻家の安寧のために。宗筑後入道は少弐家の存続のために。それぞれの思惑が合致して今回の戦となりました」
又三郎の言葉に為朝は少し驚く。
「そうか、親種も宗筑後入道の策の内か。ならばその嫡男である又三郎もまた何か思惑があって俺の傍にいたのではないのか?」
「その通りです。私は父と宗筑後入道の命を受け、隙をみて為朝様の命を奪うべくお傍におりました」
「ですが為朝様。又三郎は為朝様の味方です。宗筑後入道も知らない逃げ道を使って為朝様や俺達をここまで連れてきてくれやした」
親常の言葉に為朝が無言で又三郎をみると、又三郎はひれ伏したまま言葉を続ける。
「為朝様のお傍にいて、為朝様こそが九州を統一し、そして戦乱続く日本の統一も成し遂げるお方だと思いました。そのために田尻家や少弐家と言った小さな括りのために殺めてしまっていいお方ではないとも思いました」
そう言って又三郎はひれ伏したまま腰に差していた刀を鞘ごと抜いて前に置く。
「ですが我が父の罪は息子である私の罪。どうか私の首をもってお怒りを鎮めていただければ」
そこまで言い切ると又三郎は黙り込む。為朝は起き上がると又三郎の刀を鞘から抜く。その刃をみながら為朝は又三郎に話しかける。
「よい刀だな」
「は。有名な作ではありませんが、田尻家に代々伝わる刀でございます」
又三郎の言葉に頷きながら為朝は刀を鞘に納める。
「又三郎」
「は」
「許す」
「……は?」
思わず為朝を見上げた又三郎に対して為朝は笑う。
「田尻家のような国人が強きほうに付くのは当然のことだ。今回は親種を俺のほうについたほうがいいと思わせることができなかった俺の失態だ」
そう言うと為朝は刀を又三郎に持たせる。
「親種のところに帰るがいい。そして俺という人物がどんな人物かを親種に告げよ」
そして為朝は快活な笑いをみせる。
「そして次の戦の時は俺に同心してくれたら俺は嬉しい」
為朝のその言葉に又三郎は顔を崩して泣く。そんな又三郎の肩を叩くと又三郎も涙を拭いて立ち上がり、為朝に向かって頭を下げる。
「次の為朝様の筑後侵攻の折りには父と共に同心させていただきます」
「ああ、楽しみにしている」
そう言うと又三郎は最後にもう一度為朝に頭を下げてその場から去っていった。
それを見送ると為朝は親常や鎮西二十烈士が嬉しそうに為朝をみていることに気付く。
「なんだ?」
「いえ、為朝様が俺達の大将でよかったと思ってるだけです。なぁ、みんな!!」
『おお!!』
親常の言葉に鎮西二十烈士から嬉しそうな返事が出る。
その反応に困ったように頭をかきながら為朝は親常に尋ねる。
「俺がここまで逃げているということは本隊も負けたと思うべきか」
「あ~、すいやせん。俺達は為朝様を守って逃げるのに必死で上兄者に伝令を出す余裕は……」
「いい、又三郎にも言ったが今回の戦の責は全て俺にある」
そう言って為朝は腰に差さっている刀を確認すると歩き始める。それに急いだ様子で鎮西二十烈士も続く。
「為朝様、どうなさるんで?」
「負けたからと言って全員が死んだわけではないだろう。一人でも多く合流させるために街道で俺は殿軍が戻ってくるまで待つ」
一瞬ぎょっとした親常だったが、すぐに嬉しそうに笑った。
「へへ、それでこそ為朝様」
「為朝様、それでしたら為朝様は俺の馬に。ここまで逃げるのにみなの馬は潰れましたが、俺の馬だけはまだ人を乗せて歩けますので」
「助かる、鎮昌」
鎮昌から差し出された馬に乗り、為朝は街道のど真ん中に出て筑後方面を睨みつける。鎮西二十烈士も逃げる時には畳んでいた為朝の旗印を大きく掲げていた。
それからニ刻ほどで龍造寺の旗を掲げた一団が為朝達の前にやってきた。
その集団から一騎前に出て大音声で叫んでくる。
「我が名は龍造寺家臣・鍋島清房!! そこなる武士の一団は何者か!!」
「おう!! 俺か? 俺の名は鎮西八郎為朝!!」
為朝の名乗りに鍋島の手勢がざわつく。鍋島の手勢は二百人程度。それに対して為朝のほうは鎮西二十烈士含めても二十一人である。
為朝に勝ち目はないように思えるが、為朝にはある鍋島の手勢は攻めてこないという確信があった。
鍋島の手勢はしばらくするとその場から去っていく。
それを見送りながら為朝の傍らにいた親常が首を傾げる。
「なんで攻めてこなかったんですかね。為朝様の首が一番手柄だろうに」
「親常、あの鍋島という漢、宗運から聞いたが『赤熊武者』という連中を率いて龍造寺の飛躍に一役買っている漢だそうだ。そしてその鍋島は龍造寺の武勇の要であると同時に龍造寺きっての知恵者でもある」
その言葉に親常も合点がいった表情になる。
「なるほど!! 小勢の為朝様が本当に小勢なわけがないって思ったってことか!!」
「その通り。まぁ、俺と鎮西二十烈士と九州に名高き赤熊武者。戦ってみたかったのもあるがな」
為朝の言葉に鎮西二十烈士から笑い声が出る。
それからしばらくは柳川城攻めから落ちてきた武士や兵も合流し始めて、為朝の本陣が再び形成され始めていた。
親房や親成、そして肥後国衆の城親冬と名和武顕も合流してそれなりの規模になった本陣があっても、為朝は一番前で味方の将兵を労いながら取り込んでいた。
そして為朝の目に秩序だった隊列で引き上げてくる一団がみえる。
その一団から一騎駆け出して為朝のところにやってきた。
宗運である。
宗運は為朝の顔をみると嬉しそうに泣き出す。
「為朝様、ご無事でなにより……」
「ああ、宗運も無事なようで良かった。あれは惟民の鉄砲隊か」
「はい、私と惟民殿の兵でございます」
「そうか。ならばあとは親昌だけか」
為朝の言葉に宗運の表情は強張る。
その表情で為朝は察した。
「……親昌は死んだか」
「は。私と惟民殿を逃がすために殿となって」
宗運の言葉に為朝は目をつぶって空を見上げる。
「鎮昌」
「は、は!!」
宗運の報告に呆然としていた鎮昌と守昌の親昌の息子二人は、為朝の言葉に背筋を伸ばす。
「先ほども言ったが今回の敗戦の責は全て俺にある。親昌の死もまた俺の責だ」
その言葉に鎮昌と守昌の目から涙が溢れる。
その流れる涙をそのままに鎮昌が叫ぶ。
「何をおっしゃられるか!! 父は為朝様のために死んだのです!! きっとその最後も為朝様の日本統一の夢をみてのことでしょう!!」
「兄上の言う通り!! そんな死であれば父の死は我らの誉れです!!」
隈庄兄弟の言葉に為朝は零れそうになった涙を必死に止める。
(ここで泣いては親昌の死を汚す!!)
そう思って為朝は刮目すると刀を抜き放って天空に掲げる。
「みな聞けぇ!!」
その言葉に為朝軍全員の視線が為朝に集まる。
「此度の戦、俺の負けだ!! 宗筑後入道にしてやられたわ!!」
そう言って為朝は大きく笑う。
「だがなぁ!! この負けでこの鎮西八郎為朝が覇道が阻まれたとは思わぬ!! 今回負けたなら次勝てばよい!! 此度の戦の負けは次の勝ち戦ぞ!!」
そう叫びながら為朝は刀を上がり始めた太陽に向ける。
「あの明星に誓おう!! この鎮西八郎為朝!! 死んだ者の思いも背負って天下にいく!! だから、みなも俺についてきてくれ!!」
『おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』
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