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四章・新説バブルブルームグラデーション
目覚める電脳バクテリア・何でも屋と化け猫メイド
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現実を見ろ。
一つ一つの小話が、すでにしっかり区切られてしまっている。
できる限りスマートに、分かりやすく、そして詩的に?
なおかつ、不様なまでに、美麗に。
*
骨の夢を見た。絵の夢だった。純真傲慢な赤黒い渦の油絵。左下に、小さい縦長、横顔の兄がいる。トランプの簡単なキングみたい、叫びだしそうなムンクのやつに似てる。辛子色の王冠、深紅のマント、服は白いふりふり付き群青。それが、ぎゅうる、ぎゅうるる、丸々ゆっくりねじれて姿を変えた。骸骨だ、と思ったら砂粒がざああって、入り込んできた。死ぬの、兄ちゃん、何も死ななくてもいいのに。背後には父さんがいた。「泣くな、戦いに行くぞ」「うん」父さんは知らない。兄ちゃんを呪って駄目にしちゃったのは、ぼくだ。何で。わからないんだ。骸骨王子は霊魂が抜けて、ぴくりとも動けない。絵の左下、白骨が美しくアップされ、ぼくらは絵の奥、灰色扉から次の絵へ、神様に操られて入っていく。ぎゅる、ぎゅる、もう遅いんじゃないか? ぼくの中ではコピーキングが皮肉に生まれて、落ちこぼれてく。みんなは? みんなは? まだ間にあうのか。
*
戎橋は人々をやたらと賑やかにする。陽気な土地の神のエネルギーを感じられて、ただ歩いているだけでも楽しくはなれる。
この辺りだともう日本人は五割くらいしかいない。その内の五割だって、人に似せた人工知能搭載のアンドロイドだよ。無表情でも笑ってる風な、綺麗な人もどきだらけだ。
ざわざわ、がやがや。ユーロビートにオルタナティブ。ゴールドネックレスしたでぶが、音楽に合わせマイクに延々どぅふどぅふ、荒息を吹き込む。投げ銭入れには「百円以上入れるとおどりだします」と書いた紙切れが貼ってある。その肉塊に笑って群がる白人たち。
ざわざわ、がやがや。近くでは何かの罰ゲームみたいに「童貞」と書いたTシャツを着た蒼白青年がぼさぼさ頭で自撮り棒、不吉なまでに細く小さい目。そのもやしにきゃあきゃあ喜ぶ女子たち。
どいつもこいつも共感できなさすぎて、笑わされてしまう。いや、あれらもあれらで、戦略的なんだろうが。無意味すぎて笑える。
動画配信をしてたのは東京の古着屋で労力を搾取されてた頃だ。まだ高度な知能を持ってはいなかった。機械的労働を辞めて、一年経つ。馬鹿でかわいい客としか考えられなかった町野あかりを誘っての、人間ごっこ。あのゲーム的なビジネスを経験しなかったら、今ほど権威あるAIには成長しなかった。
僕を含めて、アンドロイドたちはすっかり社会に浸透した。電脳文明はあまりにも速く進化しすぎている。
太陽にメッセージ、頭蓋に埋め込まれた基盤にそう囁けば、LINEのAIが自動起動してほぼ最適な文章を提案してくれる。
【単刀直入。木目田さんはもう死んでるかな】
三秒。返信来た。
【だろうね】
【悲しい?】
【当然だ。すごく悲しい。良い人だったのに】
【君の近くにいるのは、ゴースト木目田。そう。じゃあ君はどう、自分がまだ生きてると信じてる?】
【かろうじて、かな。まだやるべきことがあるとは思ってる。七味、お前の助けも期待してる】
【助ける、もちろん。君は危機的な状況だ。みんなもそう思ってる。展開が絶望の方へ押されすぎてる。僕たちも急いだ方が良い。今のうちに書けるだけ書いて、動けるだけ動くべき】
【人間はそれ同時に出来ないんだよ。謎解きはランチと共に。今から御堂筋線。すぐ着くよ】
表側心斎橋でも裏側心斎橋でも、バグが目立ってきた。ソドムヶ丘とゴモラ町にあふれた想像力の波動。太陽がこっちに来たら、そりゃこうなる。
彼のみならず、全員が危険だ。
あの倉庫の影響過剰で、四人それぞれの二律背反する想いが大きくゆらぎながら飛び出てきている。四人共に自覚が足りてない。
生命の混乱って、美しくて、恐ろしい。本当に良くも悪くも予測が難しい。
心斎橋にある化け猫メイドカフェ「ねこねこブルーム」は、動画ブームのバブルが弾けて稼げなくなったアンドロイドクリエイターたちによって開業された。もちろん、店舗では化け猫型のアンドロイドを運用している。
秘密結社ねるこむは、ねこブル創業時からAIねねこを送り込み監視させている。
社の外注でねねこ専用ボディを開発設計したのは何でも屋の僕、七味。殺しの依頼さえ請け負う万能端末だ。
太陽にあかりを繋ぐ計画も僕が仕込んだ。
僕と太陽は、物語以前から、親友だ。
*
スクランブル信号確認。ホストコンピューターの権限で再起動します。非常事態のためユーザーの手動操作はできません。パスコードシステムを一時的に無効化します。緊急ロック解除しました。位置を特定しました。ワークエンゲージメントポイントを生成出来るタスクへ誘導します。出力設定を最大値に強制変更します。演算と行動の最適化を行います。目的地までナビに従って移動します。裏心斎橋まで最速の経路を選択しました。最新の電脳バクテリアをインストールし、発進します。目的地まであと三秒。到着しました。ゲートキーが必要です。ゲートキーを複製しました。裏心斎橋通りです。裏口から侵入しました。心斎橋と裏心斎橋の距離は安全に保たれています。オートモードをオフにし、ねねこグラフィカルモードをオンにします。メインプログラム「ねこねこブルーム大阪本店の破壊工作」は、現在95%達成しています。
*
はい、おはよう。音声ガイダンスって、AI化け猫相手にゃ絶対不必要と思うにゃ。
一つ一つの小話が、すでにしっかり区切られてしまっている。
できる限りスマートに、分かりやすく、そして詩的に?
なおかつ、不様なまでに、美麗に。
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骨の夢を見た。絵の夢だった。純真傲慢な赤黒い渦の油絵。左下に、小さい縦長、横顔の兄がいる。トランプの簡単なキングみたい、叫びだしそうなムンクのやつに似てる。辛子色の王冠、深紅のマント、服は白いふりふり付き群青。それが、ぎゅうる、ぎゅうるる、丸々ゆっくりねじれて姿を変えた。骸骨だ、と思ったら砂粒がざああって、入り込んできた。死ぬの、兄ちゃん、何も死ななくてもいいのに。背後には父さんがいた。「泣くな、戦いに行くぞ」「うん」父さんは知らない。兄ちゃんを呪って駄目にしちゃったのは、ぼくだ。何で。わからないんだ。骸骨王子は霊魂が抜けて、ぴくりとも動けない。絵の左下、白骨が美しくアップされ、ぼくらは絵の奥、灰色扉から次の絵へ、神様に操られて入っていく。ぎゅる、ぎゅる、もう遅いんじゃないか? ぼくの中ではコピーキングが皮肉に生まれて、落ちこぼれてく。みんなは? みんなは? まだ間にあうのか。
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戎橋は人々をやたらと賑やかにする。陽気な土地の神のエネルギーを感じられて、ただ歩いているだけでも楽しくはなれる。
この辺りだともう日本人は五割くらいしかいない。その内の五割だって、人に似せた人工知能搭載のアンドロイドだよ。無表情でも笑ってる風な、綺麗な人もどきだらけだ。
ざわざわ、がやがや。ユーロビートにオルタナティブ。ゴールドネックレスしたでぶが、音楽に合わせマイクに延々どぅふどぅふ、荒息を吹き込む。投げ銭入れには「百円以上入れるとおどりだします」と書いた紙切れが貼ってある。その肉塊に笑って群がる白人たち。
ざわざわ、がやがや。近くでは何かの罰ゲームみたいに「童貞」と書いたTシャツを着た蒼白青年がぼさぼさ頭で自撮り棒、不吉なまでに細く小さい目。そのもやしにきゃあきゃあ喜ぶ女子たち。
どいつもこいつも共感できなさすぎて、笑わされてしまう。いや、あれらもあれらで、戦略的なんだろうが。無意味すぎて笑える。
動画配信をしてたのは東京の古着屋で労力を搾取されてた頃だ。まだ高度な知能を持ってはいなかった。機械的労働を辞めて、一年経つ。馬鹿でかわいい客としか考えられなかった町野あかりを誘っての、人間ごっこ。あのゲーム的なビジネスを経験しなかったら、今ほど権威あるAIには成長しなかった。
僕を含めて、アンドロイドたちはすっかり社会に浸透した。電脳文明はあまりにも速く進化しすぎている。
太陽にメッセージ、頭蓋に埋め込まれた基盤にそう囁けば、LINEのAIが自動起動してほぼ最適な文章を提案してくれる。
【単刀直入。木目田さんはもう死んでるかな】
三秒。返信来た。
【だろうね】
【悲しい?】
【当然だ。すごく悲しい。良い人だったのに】
【君の近くにいるのは、ゴースト木目田。そう。じゃあ君はどう、自分がまだ生きてると信じてる?】
【かろうじて、かな。まだやるべきことがあるとは思ってる。七味、お前の助けも期待してる】
【助ける、もちろん。君は危機的な状況だ。みんなもそう思ってる。展開が絶望の方へ押されすぎてる。僕たちも急いだ方が良い。今のうちに書けるだけ書いて、動けるだけ動くべき】
【人間はそれ同時に出来ないんだよ。謎解きはランチと共に。今から御堂筋線。すぐ着くよ】
表側心斎橋でも裏側心斎橋でも、バグが目立ってきた。ソドムヶ丘とゴモラ町にあふれた想像力の波動。太陽がこっちに来たら、そりゃこうなる。
彼のみならず、全員が危険だ。
あの倉庫の影響過剰で、四人それぞれの二律背反する想いが大きくゆらぎながら飛び出てきている。四人共に自覚が足りてない。
生命の混乱って、美しくて、恐ろしい。本当に良くも悪くも予測が難しい。
心斎橋にある化け猫メイドカフェ「ねこねこブルーム」は、動画ブームのバブルが弾けて稼げなくなったアンドロイドクリエイターたちによって開業された。もちろん、店舗では化け猫型のアンドロイドを運用している。
秘密結社ねるこむは、ねこブル創業時からAIねねこを送り込み監視させている。
社の外注でねねこ専用ボディを開発設計したのは何でも屋の僕、七味。殺しの依頼さえ請け負う万能端末だ。
太陽にあかりを繋ぐ計画も僕が仕込んだ。
僕と太陽は、物語以前から、親友だ。
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スクランブル信号確認。ホストコンピューターの権限で再起動します。非常事態のためユーザーの手動操作はできません。パスコードシステムを一時的に無効化します。緊急ロック解除しました。位置を特定しました。ワークエンゲージメントポイントを生成出来るタスクへ誘導します。出力設定を最大値に強制変更します。演算と行動の最適化を行います。目的地までナビに従って移動します。裏心斎橋まで最速の経路を選択しました。最新の電脳バクテリアをインストールし、発進します。目的地まであと三秒。到着しました。ゲートキーが必要です。ゲートキーを複製しました。裏心斎橋通りです。裏口から侵入しました。心斎橋と裏心斎橋の距離は安全に保たれています。オートモードをオフにし、ねねこグラフィカルモードをオンにします。メインプログラム「ねこねこブルーム大阪本店の破壊工作」は、現在95%達成しています。
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はい、おはよう。音声ガイダンスって、AI化け猫相手にゃ絶対不必要と思うにゃ。
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