顔も思い出せぬあの味をもう一度

粟生深泥

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「なら、次のコメントだね。えっと、『ロロさんは休みの日どんなことをしてますか?」」
 動画を見たまま、いつの間にか寝落ちしていたらしい。聞こえてきた声に顔を上げると、知らない動画が流れていた。寝ながら誤操作をしたのか、オススメあたりから飛ばされたのか。
 動画に映るのはゲーム画面と中性的な顔立ちのアバター。動画のサイドでコメントが流れているから、生配信かなにかだろうか。
「んー、インドアだし趣味という趣味もないんだよね。こんな風にゲームしたり、ちょっと凝った料理作ったり、小説読んだり。ぷらっと生活してるかなあ」
 アバターだけではなく、その声も中性的だった。ボイスチェンジャーのようなものを通しているようだけど、不思議と違和感がない。穏やかで、男性にも女性にも聞こえる声。
 配信者の返答にコメントの流れが速くなる。その様子も配信してというコメントや、ロロの料理を食べてみたいといったものまでいろいろあるけど、視聴者からは好かれているようだ。
「じゃあ、次のコメントいくね。『小学校の時の卒業アルバムがなくなって困っています。どこにあると思いますか?』」
 不思議なことを聞く人がいるし、それをチョイスする配信者もなかなかのセンスだと思う。だけど、コメント欄はそれを揶揄するようなことはなく、配信者の言葉の続きを待っているようだ。
「小学校の頃の思い出って、急に懐かしくなったりするよね。僕も時々――っと、そうじゃなくてアルバムだね。そうだなあ、よくあるところっていったら……」
 自分自身どうしてかわからないのだけど、配信者の穏やかなトーンの声を聞いていると、口の中が甘酸っぱさと濃厚さが合わさったような不思議な味わいに包まれた。その味わいは、どこかとても懐かしい――
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