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第77話 【閑話】ミカの決意
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私の街が侵された……
やっと作り上げた私の街が…… 壊された……
許さない……
その日私がウエストエッジ領を開発していた時からの側近、エンゲルが慌てた表情で、飛び込んで来た。
「どうしたの、いつも冷静で居なさいと、言っているでしょ?」
私は一応女子だから、いきなり執務室に入られて、はしたない姿とか見られたら威厳も保てないし困るんだからね! プンスカだよ。
見られて無いでしょうね? 鼻毛抜いてたの……
「ミカ様、大変です。ライトニングアローが勝手に離陸しました」
「何ですって? 誰が??」
「パイロットは、アダムスですが他の誰も搭乗させる事も無く、勿論発艦の許可も提出していない情況での発艦です。ミカ様も勿論ご存じありませんよね?」
「伺っておりません。アダムスはエンゲルの方が普段から仲がいいでしょ?」
「私も何も伺っておりません」
もう一人の私の側近の騎士グローリアが、顔をのぞかせた。
「姫様、どう対処いたしましょうか?」
「住民は結界の中に退避させて領兵だけで、まさかの事態に備えるために準備をしなさい」
「はい、報告はどういたしましょうか?」
その時だった……
「大変です。ミカ様帝国軍が2万人規模で攻め込んできております。お逃げください。この人数を支えきるのは無理です」
「領民を置いて脱出するなど、私の選択肢には御座いませんわ、王宮へ念話を繋ぎブリック元帥に救援を求めて下さい」
「し、しかしミカ様の飛空船が奪われている現状では、到底帝国軍に対抗する術がございません」
「私が、人質になれば、この領地の領民がすぐに殺される筈は無いと思います。白旗を用意しなさい。そして領民を必ず守りぬいて下さい」
◇◆◇◆
だけど…… そもそも何の布告もする事なく攻め込んでくるような軍に、常識など通用しなかった。
私は用意させた白旗を、見やすく大きく振ったが、あざ笑うようにその白旗に向けて、上空に現れた私の飛空船ライトニングアロー号から、砲撃を受けた。
アスカ様に用意して貰った、自動結界の指輪が反応したが、到底ライトニングアローの主砲から放たれる砲撃を守り切る事等出来ないだろう。
せめて領民達を、守ってあげたかったな……
お父様、私の甘さが大切な国民を危険に晒した事をお詫び申し上げます。
親孝行を出来なくなくてごめんね……
それっきり意識は途絶えた。
…… 次に意識が戻った時には、私の目の前に父上、宰相、元帥、筆頭宮廷魔導士様まで一緒に、縛られていた。
私…… 死ななかったんだ……
でも、この状況はとても、厳しい状況であるのは間違いない。
恐らく、私を直撃した魔導砲の威力が足らなくて、アスカ様の自動結界が防いでくれたのであろう。
そして、父上たちも同じ状況だと思う。
瀕死に近い程のダメージを受けた事で、一気に体内の魔力を消耗させらられて、意識が飛んでしまった状態であると、予測できる。
でも、ブリュンヒルドも負けたという事なのか……
私達は状況的に考えて人質になってると考えられる。
今は、荷車に手足を縛られた状態で、無造作に乗せられているが、魔封じの魔導具も首には嵌められている。
これでは、現状を打破するのは難しいな。
それから3時間程が経過し、父上たちも次々と意識を取り戻された様だ。
「ミカ、無事だったか。良かった」
自分の置かれている状況など気にする事も無く、私の無事を素直に良かった仰ってくれた。
「パパ、大好きだよ」って言いたいけど、流石にこの状況でそのセリフは駄目だろう……
国の中枢を司る人が全員そろって、一隻の飛空船で出て来るとか、国王陛下としては、してはならない判断だけど、父としての陛下の思いが、この状況にしてしまったのだろう……
親不孝な娘だな…… 私って……
私達は、魔封じの首輪に加えて猿轡もされたので、会話も出来ない。
食事も水すらも与えられずに、既に丸一日以上移動を続けている。
だが、動きがあった。
いきなり、上空からフリオニール兄様のエレガントフリル号が現れ、隊列の前方に特大の魔導砲を打ち込んで、巨大な穴を作り出した。
エレガントフリルの性能は、私のライトニングアローとほぼ同じだけど、私が全力で魔導砲を発射しても、あんな威力は出ない。
射手が違うのね…… あんな威力が出せる人は恐らくソニア様でも無理だ。
だって横で目を見開いてるし……
恐らく…… アスカ様かな?
アスカ様が、兄様の飛空船に乗ってるって事は、仲直りしたのかな?
いや…… それは絶対あり得ないか。
我が兄ながら、アスカ様に対する仕打ちはちょっと酷かったと思う。
アスカ様が兄様の下に戻る理由が、全く無いよね。
帝国軍の連中が、飛空船からの攻撃を受けないように私達を立たせて、先頭へと連れ出した。
でも、エレガントフリルは躊躇する事なく、私達に向けて主砲を発射して来た。
「「エッ……」」
父も私も同じタイミングでその言葉が出た。
先程の威力の攻撃であれば、いくら自動結界の指輪を装着してても、防ぎきれない…… まさか解ってて兄上は私達に攻撃して来たと言うの?
結果から言うと、私達は再びアスカ様の指輪のお陰で生き延びた。
今度も体内の魔力をごっそり持って行かれて、丸一日意識は戻らなかったけど……
意識が戻った時には、今度は拘束もされておらず、魔封じの首輪も外されていて、無事に救い出された様だ。
私のライトニングアローと同じ艦体がベースと思えない乙女チックな空間の、飛空船で意識が戻った。
アレキサンダーの母である、カレン義母様の一番下の妹だと言うキャサリンさんと、凄くインパクトの強い筋肉質で、あごの割れた男性がフリフリの衣装で一緒に居た。
兄様がカトリーヌお姉さまと呼んでいるので、きっとこの方に兄様は、開発されてしまったのでしょうか? 既に腐腐腐な関係なのでしょうか? 少しだけ気になりますが、詳しく知りたくはありません……
父上たちも一緒に、乗船しているので兄上は悪意で攻撃した訳では無さそうですが…… もう少し他の手段は無かったのでしょうか?
父上と目が合いました。
もう気は付かれている様ですが、私にウインクをされたので、きっとまだ意識が無い振りをしておけという事なのでしょう。
大丈夫です。
私は空気が読める女ですから!
飛空船の中の、兄様たちの会話で、大体の状況は理解できました。
主犯格なのは、兄様が無理矢理アスカ様の替りに婚約者にしていた、マリアンヌと言う元子爵家令嬢の様です。
私は絶対に許しません。
八つ裂きにしたくらいでは、この怒りの気持ちは収まりません。
私の大切な、臣下とジャンガードの民の恨みを、思い知らせます。
もし兄上が、この国を継ぎたいと言うのであれば、自らの手であの女をさばく事が出来なければ、難しいでしょう。
そして、もし兄上が、マリアンヌを逃がすような決断をするのであれば、例え兄上と言えども、許しません。
◇◆◇◆
結果、兄上は愚かな方ではありませんでした。
私のライトニングアローは、兄様達の手により撃墜されました。
そして……
マリアンヌは、騙されて脅されて協力していた、私の腹心であった筈のアダムスの手によって、殺されました。
アダムス自身も、自分で自分の首を跳ね飛ばすとと言う、壮絶な最期を遂げました。
一つの問題は片付きましたが、これで失われた者達が帰ってくるわけではありません。
皆さんもう少しだけ私に時間を下さいね。
エンゲル。
グローリア。
アダムス。
そして、私を信じてジャンガードに来てくれた皆さん。
あなた達が夢見たジャンガードの未来を、 私、ギルノア王国第1王女、『ミカ・ギルノア』が必ずこの国、いえ、この世界で最も発展した街として形にして見せます。
やっと作り上げた私の街が…… 壊された……
許さない……
その日私がウエストエッジ領を開発していた時からの側近、エンゲルが慌てた表情で、飛び込んで来た。
「どうしたの、いつも冷静で居なさいと、言っているでしょ?」
私は一応女子だから、いきなり執務室に入られて、はしたない姿とか見られたら威厳も保てないし困るんだからね! プンスカだよ。
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「何ですって? 誰が??」
「パイロットは、アダムスですが他の誰も搭乗させる事も無く、勿論発艦の許可も提出していない情況での発艦です。ミカ様も勿論ご存じありませんよね?」
「伺っておりません。アダムスはエンゲルの方が普段から仲がいいでしょ?」
「私も何も伺っておりません」
もう一人の私の側近の騎士グローリアが、顔をのぞかせた。
「姫様、どう対処いたしましょうか?」
「住民は結界の中に退避させて領兵だけで、まさかの事態に備えるために準備をしなさい」
「はい、報告はどういたしましょうか?」
その時だった……
「大変です。ミカ様帝国軍が2万人規模で攻め込んできております。お逃げください。この人数を支えきるのは無理です」
「領民を置いて脱出するなど、私の選択肢には御座いませんわ、王宮へ念話を繋ぎブリック元帥に救援を求めて下さい」
「し、しかしミカ様の飛空船が奪われている現状では、到底帝国軍に対抗する術がございません」
「私が、人質になれば、この領地の領民がすぐに殺される筈は無いと思います。白旗を用意しなさい。そして領民を必ず守りぬいて下さい」
◇◆◇◆
だけど…… そもそも何の布告もする事なく攻め込んでくるような軍に、常識など通用しなかった。
私は用意させた白旗を、見やすく大きく振ったが、あざ笑うようにその白旗に向けて、上空に現れた私の飛空船ライトニングアロー号から、砲撃を受けた。
アスカ様に用意して貰った、自動結界の指輪が反応したが、到底ライトニングアローの主砲から放たれる砲撃を守り切る事等出来ないだろう。
せめて領民達を、守ってあげたかったな……
お父様、私の甘さが大切な国民を危険に晒した事をお詫び申し上げます。
親孝行を出来なくなくてごめんね……
それっきり意識は途絶えた。
…… 次に意識が戻った時には、私の目の前に父上、宰相、元帥、筆頭宮廷魔導士様まで一緒に、縛られていた。
私…… 死ななかったんだ……
でも、この状況はとても、厳しい状況であるのは間違いない。
恐らく、私を直撃した魔導砲の威力が足らなくて、アスカ様の自動結界が防いでくれたのであろう。
そして、父上たちも同じ状況だと思う。
瀕死に近い程のダメージを受けた事で、一気に体内の魔力を消耗させらられて、意識が飛んでしまった状態であると、予測できる。
でも、ブリュンヒルドも負けたという事なのか……
私達は状況的に考えて人質になってると考えられる。
今は、荷車に手足を縛られた状態で、無造作に乗せられているが、魔封じの魔導具も首には嵌められている。
これでは、現状を打破するのは難しいな。
それから3時間程が経過し、父上たちも次々と意識を取り戻された様だ。
「ミカ、無事だったか。良かった」
自分の置かれている状況など気にする事も無く、私の無事を素直に良かった仰ってくれた。
「パパ、大好きだよ」って言いたいけど、流石にこの状況でそのセリフは駄目だろう……
国の中枢を司る人が全員そろって、一隻の飛空船で出て来るとか、国王陛下としては、してはならない判断だけど、父としての陛下の思いが、この状況にしてしまったのだろう……
親不孝な娘だな…… 私って……
私達は、魔封じの首輪に加えて猿轡もされたので、会話も出来ない。
食事も水すらも与えられずに、既に丸一日以上移動を続けている。
だが、動きがあった。
いきなり、上空からフリオニール兄様のエレガントフリル号が現れ、隊列の前方に特大の魔導砲を打ち込んで、巨大な穴を作り出した。
エレガントフリルの性能は、私のライトニングアローとほぼ同じだけど、私が全力で魔導砲を発射しても、あんな威力は出ない。
射手が違うのね…… あんな威力が出せる人は恐らくソニア様でも無理だ。
だって横で目を見開いてるし……
恐らく…… アスカ様かな?
アスカ様が、兄様の飛空船に乗ってるって事は、仲直りしたのかな?
いや…… それは絶対あり得ないか。
我が兄ながら、アスカ様に対する仕打ちはちょっと酷かったと思う。
アスカ様が兄様の下に戻る理由が、全く無いよね。
帝国軍の連中が、飛空船からの攻撃を受けないように私達を立たせて、先頭へと連れ出した。
でも、エレガントフリルは躊躇する事なく、私達に向けて主砲を発射して来た。
「「エッ……」」
父も私も同じタイミングでその言葉が出た。
先程の威力の攻撃であれば、いくら自動結界の指輪を装着してても、防ぎきれない…… まさか解ってて兄上は私達に攻撃して来たと言うの?
結果から言うと、私達は再びアスカ様の指輪のお陰で生き延びた。
今度も体内の魔力をごっそり持って行かれて、丸一日意識は戻らなかったけど……
意識が戻った時には、今度は拘束もされておらず、魔封じの首輪も外されていて、無事に救い出された様だ。
私のライトニングアローと同じ艦体がベースと思えない乙女チックな空間の、飛空船で意識が戻った。
アレキサンダーの母である、カレン義母様の一番下の妹だと言うキャサリンさんと、凄くインパクトの強い筋肉質で、あごの割れた男性がフリフリの衣装で一緒に居た。
兄様がカトリーヌお姉さまと呼んでいるので、きっとこの方に兄様は、開発されてしまったのでしょうか? 既に腐腐腐な関係なのでしょうか? 少しだけ気になりますが、詳しく知りたくはありません……
父上たちも一緒に、乗船しているので兄上は悪意で攻撃した訳では無さそうですが…… もう少し他の手段は無かったのでしょうか?
父上と目が合いました。
もう気は付かれている様ですが、私にウインクをされたので、きっとまだ意識が無い振りをしておけという事なのでしょう。
大丈夫です。
私は空気が読める女ですから!
飛空船の中の、兄様たちの会話で、大体の状況は理解できました。
主犯格なのは、兄様が無理矢理アスカ様の替りに婚約者にしていた、マリアンヌと言う元子爵家令嬢の様です。
私は絶対に許しません。
八つ裂きにしたくらいでは、この怒りの気持ちは収まりません。
私の大切な、臣下とジャンガードの民の恨みを、思い知らせます。
もし兄上が、この国を継ぎたいと言うのであれば、自らの手であの女をさばく事が出来なければ、難しいでしょう。
そして、もし兄上が、マリアンヌを逃がすような決断をするのであれば、例え兄上と言えども、許しません。
◇◆◇◆
結果、兄上は愚かな方ではありませんでした。
私のライトニングアローは、兄様達の手により撃墜されました。
そして……
マリアンヌは、騙されて脅されて協力していた、私の腹心であった筈のアダムスの手によって、殺されました。
アダムス自身も、自分で自分の首を跳ね飛ばすとと言う、壮絶な最期を遂げました。
一つの問題は片付きましたが、これで失われた者達が帰ってくるわけではありません。
皆さんもう少しだけ私に時間を下さいね。
エンゲル。
グローリア。
アダムス。
そして、私を信じてジャンガードに来てくれた皆さん。
あなた達が夢見たジャンガードの未来を、 私、ギルノア王国第1王女、『ミカ・ギルノア』が必ずこの国、いえ、この世界で最も発展した街として形にして見せます。
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