美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

TB

文字の大きさ
4 / 104

第4話 カインが愚痴る

しおりを挟む
「俺はな、王都で最強と言われる『ドラゴンブレス』に居たんだ」
「へー凄いじゃない、私でも名前を聞いた事がある様なクランだよ」

「そこで、サポート班のリーダーをクランの結成当時からやっていた」
「うん。カインの実力なら納得だね」

「まぁ、クランの隊長をしているギースが同郷の幼馴染だったからって言うのもあって、そのおまけみたいなもんだけどな」
「そうなんだ……」

「俺は足手まといにならない様に、必死でサポート職を極めるために頑張ったさ。クラン結成前のパーティ単位で動いてた時から、メインの戦闘職の剣士『ギース』タンクの『ハルク』攻撃魔法の使い手『ミルキー』回復からバフまで幅広くこなす『フィル』そして俺料理人の『カイン』だ。とてもバランスの取れた良いパーティだった」
「強そうだね」

「まぁそれだけのメンバーが居たから順調に依頼をこなしてランクを上げ、Sランクパーティになったドラゴンブレスはクランを創設したんだ。量より質で、徹底的に才能のある奴らをスカウトして行った。そうして今の5パーティー20人の戦闘職と6人のサポート職が集まったのが、今のクラン『ドラゴンブレス』なんだ」
「なんで、カインは首になったの?」

「LV差かな。基本パーティを組んで狩りをするだろ? パーティの上限は5人だから、クランを組んでからの俺はいつもソロだった。食材収集と斥候してる時に邪魔になった魔物以外は倒さなかったから迷惑かけるしな」
「えー? そんなのおかしく無い? それじゃぁカインだけLVが上がらなくて差が付いちゃったって事?」

「そうだと思う。この世界のサポートスキルの仕様は知ってるよな?」
「LV10を超えると、LV差が倍開けば回復魔法や、バフ系のスキルの恩恵が得られないって言うルールだよね?」

「先月『ドラゴンブレス』のメンバーでSランクダンジョンを踏破したんだが、その最後のボス戦を迎える時に気づいたんだ。バフは同一パーティでなくても掛けられるだろ?」
「うん」

「だから、俺は普段フィルのMP消費の節約でバフは無しで行動してたんだけど、流石にSランクダンジョンのボスが相手じゃ危ないから、俺にバフを掛けてくれようとしたんだよ」
「へーちゃんと仲間してるじゃん」

「だが……無理だった。俺にはバフが届かなかったんだよ。『ボスと戦うのにバフ無しでは一緒に連れて行く事は出来ない』とギースが俺に告げたよ。俺は悔しいがそれを受け入れた。そしてギースの率いる『ドラゴンブレス』は僅か5分程の戦闘時間で、Sランクダンジョンのボスを倒した」
「Sランクダンジョンのボスが5分って相当凄くない?」

「凄いんだよ。そんな凄いクランが『ドラゴンブレス』なんだよ。俺なんかじゃバフもかけて貰えない程度の雑魚なんだよ」
「それでもカインは、あんなに強いって『ドラゴンブレス』の凄さが伝わる話だよね」

「大体、あのSランクダンジョンを攻略した日は、おかしな事が続いたんだよな。いつもの様に先乗りで雑魚敵をやっつけながら先行してたら、俺では気づけなかった転移トラップが発動して、でっかいトカゲが現れやがってな。そいつはトカゲのくせに人の言葉を喋りやがるんだぜ。気味悪いだろ? 俺は余りにも気味悪いから、そいつを倒したんだよな。すると今度は一層に転移トラップが発動して、俺はギース達に追いつくために必死でダンジョンを駆け抜けたんだ。そうまでして追いついたのに、フィルのバフは受ける事が出来ず、ボス戦にも参加できなかった」

「ねぇ……カイン。 ちょっといいかな?」
「どうした、チュール」

「カインのレベルっていくつ?」
「俺は鑑定は持って無いし、ギルドで鑑定を受けると金が掛かるから一度も調べた事ないぞ」

「えーとね…… ギースやフィルのレベルは知ってる?」
「確か110くらいだとか言ってたな。あ、そうか、俺にバフが掛からなかったって事は俺は最大でも55を超えて無いって事だな。チュールは頭いいな」

「本当に…… ギースがSランクダンジョンのボス倒したのかな?」
「それは間違いないさ、ドロップのすっげえ宝を大量に持ち帰ってたしな」

「そうなんだ。で? カインはSランクダンジョンから帰る時にはみんなと一緒に帰ったの?」
「あいつらはボス部屋の脱出魔法陣から戻ったから、俺は一人で歩いて戻ったさ」

「Sランクダンジョンの最下層から?」
「ああそうだ。お陰で高い魔導具を大量に消費しちまったし、踏んだり蹴ったりだった」

「敵を倒してドロップとか集めなかったの?」
「食材集めの必要も無かったから、無駄な戦闘はしないさ」

「それって、カインはSランクダンジョンでもソロで最下層迄辿り着けるって事?」
「大量の魔導具を消費しながらだぞ? 全然凄くない」

「でも『ドラゴンブレス』の他のメンバーで一人で最下層迄辿り着ける人とか居るの?」
「出来るんじゃないのか? 俺よりレベル高いんだし」

「えーと…… 今までそのダンジョンをクリアしたクランって沢山あるの?」
「いや。Sランクのダンジョン踏破は、世界初の快挙だ。だから、ギースのメインパーティの4人は貴族に陞爵してそれぞれ称号も受けた」

「なのに、カインは首?」
「あーギースは俺を気遣って、『バフや回復も届かせる事が出来ないんじゃ、いつか俺を死なせてしまう。そんな姿を見たくないんだ』って涙ながらに、首を宣告した」

『……ウサンクサッ』
「何か言ったかチュール?」

「いや何でもないよ……」
「だから俺は、故郷に戻って好きな料理を作って人の笑顔が見れる生活をするんだ」

「そっか。カインがそれでいいなら、私もそれでいいよ。ギースって人のお陰で、私はカインに出会えたんだから、私もギースに感謝する事にするよ」
「そう言えば、チュールって随分物知りって言うか、話し方とか子供っぽく無いけどいくつなんだ?」

「14歳だよ? 来年で成人」
「マジかよ…… 8歳くらいだと思ってたぞ」

「カイン失礼。夕ご飯。超美味しいの作ってくれなきゃ許さない」
「フッ俺は何が有ろうと作る飯に手は抜かない。俺が作ればただの卵かけでも、最高のディナーだと言わせて見せるぜ」

「楽しみ」
「まぁ、話聞いて貰ったら、大分気が楽になった。ありがとうなチュール」

 私は、カインの実力って実はもっと凄いと思ってるけど、それはカインが自分で気づくべきだと思うし、今はただこの美味しいご飯を作ってくれる人を見守ろうって思った。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

処理中です...