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第20話 ドラゴンブレス④
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(ハルク)
俺達が新体制になって初めて挑んだCランクダンジョン『オーガの墓場』の攻略は予想外の展開になり、当初1週間の予定で出発したが、結局2週間も費やし何とかクリアする事が出来た。
用意した食料も底をつき、自給自足で戦利品として確保した肉類まで消耗しながらの探索となり、斥候班が使う魔導具も回復系のポーションも、全てが不足する状態であった。
「ハルク、今回の探索なんだけど…… 収支がクランからメンバーの給料を定額で支給したら、かなり赤字になるわ」
「ミルキー、それを払わないとか減額とかいう事は絶対に言いだすなよ? 俺の給料は払わなくていいから」
「私も給料いらない……」
「フィル、ハルク、助かるわ」
「私は貴族になったから社交パーティ用のドレスとか宝石一杯買ってしまって、給料無しだと厳しいの。貰っても良いかな? 二人の給料分が浮けば赤字では無いから」
「おい。ミルキーそれはどうかと思うぞ? フィルや俺も一応同じように騎士爵は貰ったけど、そんな贅沢なんかしてないぞ?」
「だってしょうがないじゃない。もう買っちゃったんだし。それよりギースが王国軍の一員として国境の村へ向かってるそうだけど、帰って来るまでは次のクランとしての探索は休みにするわね。各自お小遣い稼ぎに潜るのは自由でいいわね?」
「ああ。メンバーに通達して置くが…… 次の探索に向けて、根本的に方針を変えないと駄目だと思う」
「そうね…… フィルも同じ意見?」
「うーん…… カイン兄ちゃんが居れば今まで通りで何も問題無いと思う」
「そんな事言っても、もうカール村へ戻って……」
「あ、ギースもカール村へ行ってる。戻って来たら様子でも聞いて見ようか。私はどうでもいいけど、フィルはカインが必要だと思うなら、フィルも今はパーティリーダなんだし、自分の裁量で雇えばいいと思う」
「ミルキー、意外に物分かり良いんだね。もっと反対するかと思った」
「流石に今回の結果が続くようじゃ、今の給料払いながら『ドラゴンブレス』をクランとして存続させるのは無理だと思うし、もしカインを戻した事で、赤字を出さずに探索が出来るなら、それはそれで有りじゃない?」
「お前たち、勝手にそんな話するのは良いけどさ…… もしだ。俺がカインの立場だったら、あんな形でクランを抜けて、またこっちの都合で戻って来いなんて、絶体嫌だと思うぞ?」
「やっぱりそうかな? でも、もしそうなら私別にそろそろ卒業でもいいけど」
「ちょっとフィル。何言ってんのよ?」
「うーん別に貴族になりたかったわけでも無いし、騎士爵も返上して故郷で聖魔法使った治療院でも始めようと思う。薬の錬金もある程度できるし、今の私だと今回のCランクダンジョンでも一杯一杯だったから、このまま続けても無理だと思う」
「ちょっと、早まった事は言わないでよね。ギースが帰って来てからちゃんとみんなで話し合おうよ」
「うん……」
◇◆◇◆
それから10日ほどたってギースが戻って来た。
カール村へ攻め込んだ帝国の撃退に向かい、多大な功績を上げて『ドラゴンブレス』の名声を高めて戻って来た。
ギースはその恩賞で、更に爵位を上げて子爵様になっていた。
「ハルク。ミルキー。フィル。ちょっと悲しい報告がある。カインが死んだ。帝国のカール村への侵攻でカール村の成人男性は、みな殺しだったそうだ……」
「そ、そんな」
「おい、ギース。カインの死体は確認したのか? あいつはあの『絶望の谷』ですら、ソロで最終階層まで行ける程の奴なんだぞ? レベルは低いが」
「死体は見ていないが、カタキは十分に取った。帝国側の本体9万人の部隊を相手に王国側5万人の部隊だったんだが、帝国側の死者8万、王国側の被害はカール村の100名のみだ」
「な、何でそんな馬鹿げた結果になるんだ」
「まぁそれが結果であり、その中で一番の勲功を認められたのが俺だった。それが全てだ」
「ギース。俺はお前を見誤っていた。お前は想像以上に凄い奴だったんだな」
「もっと称えろ」
「子爵様なんだ。ギース。陞爵パーティは勿論するんでしょ? また新しいドレスとそれに合うアクセサリ買わなきゃ」
「今回は俺も褒章を沢山もらったし、パーティに出席する服は俺がみんなにプレゼントしてやろう。クランメンバー全員分だ」
「素敵。流石ギース・フォン・ドラゴンブレス子爵様だね」
「ねぇギースおめでとう。でも…… 私はこれを機会に卒業したい」
「どうしたんだフィル?『ドラゴンブレス』はまだこれからだぞ。この世の春は俺達が歩む道だ」
「うーん。なんて言ったらいいか解んないけど、私はカインお兄ちゃんと一緒に冒険するのが楽しかったんだって、漸く解った。カインお兄ちゃんが居ない中で、冒険者を続けるのは私には無理」
「そうか。フィルがそこまで言うなら引き止めない。クランの回復職のメンバーも育って来た事だしな。だが、フィル。お前は一生、何があろうと俺達の仲間だ。戻りたくなれば、いつでも戻ってこい。待っている」
「ありがとう。ギース。でもきっと戻ってこない。私は取り敢えずカインお兄ちゃんの墓参りをしたいけど、お墓はあるのかな?」
「まだ作られてないと思う。戦乱の中で遺体の存在も確認できてないしな」
「解った。カール村に行って見るよ」
こうして私は、カール村へカインお兄ちゃんのお墓を作りたくて旅立った。
俺達が新体制になって初めて挑んだCランクダンジョン『オーガの墓場』の攻略は予想外の展開になり、当初1週間の予定で出発したが、結局2週間も費やし何とかクリアする事が出来た。
用意した食料も底をつき、自給自足で戦利品として確保した肉類まで消耗しながらの探索となり、斥候班が使う魔導具も回復系のポーションも、全てが不足する状態であった。
「ハルク、今回の探索なんだけど…… 収支がクランからメンバーの給料を定額で支給したら、かなり赤字になるわ」
「ミルキー、それを払わないとか減額とかいう事は絶対に言いだすなよ? 俺の給料は払わなくていいから」
「私も給料いらない……」
「フィル、ハルク、助かるわ」
「私は貴族になったから社交パーティ用のドレスとか宝石一杯買ってしまって、給料無しだと厳しいの。貰っても良いかな? 二人の給料分が浮けば赤字では無いから」
「おい。ミルキーそれはどうかと思うぞ? フィルや俺も一応同じように騎士爵は貰ったけど、そんな贅沢なんかしてないぞ?」
「だってしょうがないじゃない。もう買っちゃったんだし。それよりギースが王国軍の一員として国境の村へ向かってるそうだけど、帰って来るまでは次のクランとしての探索は休みにするわね。各自お小遣い稼ぎに潜るのは自由でいいわね?」
「ああ。メンバーに通達して置くが…… 次の探索に向けて、根本的に方針を変えないと駄目だと思う」
「そうね…… フィルも同じ意見?」
「うーん…… カイン兄ちゃんが居れば今まで通りで何も問題無いと思う」
「そんな事言っても、もうカール村へ戻って……」
「あ、ギースもカール村へ行ってる。戻って来たら様子でも聞いて見ようか。私はどうでもいいけど、フィルはカインが必要だと思うなら、フィルも今はパーティリーダなんだし、自分の裁量で雇えばいいと思う」
「ミルキー、意外に物分かり良いんだね。もっと反対するかと思った」
「流石に今回の結果が続くようじゃ、今の給料払いながら『ドラゴンブレス』をクランとして存続させるのは無理だと思うし、もしカインを戻した事で、赤字を出さずに探索が出来るなら、それはそれで有りじゃない?」
「お前たち、勝手にそんな話するのは良いけどさ…… もしだ。俺がカインの立場だったら、あんな形でクランを抜けて、またこっちの都合で戻って来いなんて、絶体嫌だと思うぞ?」
「やっぱりそうかな? でも、もしそうなら私別にそろそろ卒業でもいいけど」
「ちょっとフィル。何言ってんのよ?」
「うーん別に貴族になりたかったわけでも無いし、騎士爵も返上して故郷で聖魔法使った治療院でも始めようと思う。薬の錬金もある程度できるし、今の私だと今回のCランクダンジョンでも一杯一杯だったから、このまま続けても無理だと思う」
「ちょっと、早まった事は言わないでよね。ギースが帰って来てからちゃんとみんなで話し合おうよ」
「うん……」
◇◆◇◆
それから10日ほどたってギースが戻って来た。
カール村へ攻め込んだ帝国の撃退に向かい、多大な功績を上げて『ドラゴンブレス』の名声を高めて戻って来た。
ギースはその恩賞で、更に爵位を上げて子爵様になっていた。
「ハルク。ミルキー。フィル。ちょっと悲しい報告がある。カインが死んだ。帝国のカール村への侵攻でカール村の成人男性は、みな殺しだったそうだ……」
「そ、そんな」
「おい、ギース。カインの死体は確認したのか? あいつはあの『絶望の谷』ですら、ソロで最終階層まで行ける程の奴なんだぞ? レベルは低いが」
「死体は見ていないが、カタキは十分に取った。帝国側の本体9万人の部隊を相手に王国側5万人の部隊だったんだが、帝国側の死者8万、王国側の被害はカール村の100名のみだ」
「な、何でそんな馬鹿げた結果になるんだ」
「まぁそれが結果であり、その中で一番の勲功を認められたのが俺だった。それが全てだ」
「ギース。俺はお前を見誤っていた。お前は想像以上に凄い奴だったんだな」
「もっと称えろ」
「子爵様なんだ。ギース。陞爵パーティは勿論するんでしょ? また新しいドレスとそれに合うアクセサリ買わなきゃ」
「今回は俺も褒章を沢山もらったし、パーティに出席する服は俺がみんなにプレゼントしてやろう。クランメンバー全員分だ」
「素敵。流石ギース・フォン・ドラゴンブレス子爵様だね」
「ねぇギースおめでとう。でも…… 私はこれを機会に卒業したい」
「どうしたんだフィル?『ドラゴンブレス』はまだこれからだぞ。この世の春は俺達が歩む道だ」
「うーん。なんて言ったらいいか解んないけど、私はカインお兄ちゃんと一緒に冒険するのが楽しかったんだって、漸く解った。カインお兄ちゃんが居ない中で、冒険者を続けるのは私には無理」
「そうか。フィルがそこまで言うなら引き止めない。クランの回復職のメンバーも育って来た事だしな。だが、フィル。お前は一生、何があろうと俺達の仲間だ。戻りたくなれば、いつでも戻ってこい。待っている」
「ありがとう。ギース。でもきっと戻ってこない。私は取り敢えずカインお兄ちゃんの墓参りをしたいけど、お墓はあるのかな?」
「まだ作られてないと思う。戦乱の中で遺体の存在も確認できてないしな」
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