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第28話 すっぽんスープ
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北へ向かう俺達はお約束の様に襲い掛かられ、それを撃退した。
フィルに拠って捉えられた、片眼鏡の執事風な男もその場に捕えられている。
「ちょっと話を聞かせて貰うぞ」
「なんでしょうか?」
「何故ナディアじゃないと駄目なんだ?」
「そ、それは……」
「言わないならこのままお前らは纏めて埋める。狙われたのは事実だしな」
「その…… 瞳でございます」
「ナディアの瞳にどんな秘密があるって言うんだ」
「オッドアイを持つエルフは…… 人との子を成す事が出来るのです」
「それじゃぁお前らはこの子を手に入れて、強制的に人とのハーフエルフを作ろうとしたって言う訳か?」
「そうです…… 女性のエルフはその長命な寿命と引き換えに、本来一生に一人の子を成す事しか出来ません。それがこの世界でエルフが増えない原因にもなっています。ですがオッドアイを持つ者だけは、他種族間であれば複数の子を成す事が出来るのです。その場合その子供は、寿命は人と変わらないのですが、精霊術を駆使出来たり容姿の美しさは、エルフと変わりありません。そしてハーフエルフとエルフの子はエルフとして生まれます。ですから…… 私どもの行おうとした行為は、決して人族の欲望だけでは無く、エルフ族の人口増加に必要な行為なのです」
「それが本当だとしても、ナディアの気持ちを無視して一方的にそう言う行為を強制させるという考え方に俺は、協力したいとも思えないし、お前の雇い主がこのエルフを手に入れたとして何が目的なんだ?」
「それは…… 私の口からは申し上げる事は出来ません……」
まだ聞きたい事はあるが、これ以上は喋りそうにも無いな……
「そうだとしてもだ。それは奴隷として子を産むためだけに、家畜の様な人生を送るのがナディアの幸せだとはとても思えないな。話は終わりだ。このまま帰るか埋められるかを選べ」
「このまま…… 帰らせて頂きます……」
「そこの傭兵どもは助けたいなら、掘った穴は自分達で埋めろよ? 通る人の迷惑だからな。次に同じ顔を見かけたら問答無用で埋める」
「解りました」
こうして、追って来た連中を撃退して、俺達は北へ向かう道を進んだ。
2時間程進んだ先の川原で、昼飯を取る事にして竈の準備を始める。
「フィル。何か食べたいものはあるか?」
「私はねぇ。おにぎり!」
「本当にフィルは、おにぎりが好きだよな。まぁそれなら大量に在庫もあるから手が掛からないが…… チュールはどうだ?」
「えーとね。この間、川でお魚捕まえた時に、いっぱい亀さんも獲れた。それ食べたい」
「すっぽんか。解った。じゃぁ今日はすっぽんスープを作ろう。強力な火力が必要だな。ナディア。火の精霊は呼べるか?」
「隷属の首輪の命令を変更すれば呼べますが、今は精霊と対話が出来ない様になっています」
「あ、すまんすまん。まだ外して無かったな。早速隷属の首輪を外そう」
そう言って俺は、オークションハウスで貰った隷属の首輪の鍵を使って、ナディアの隷属を解いた。
「ありがとうございます。ご主人様」
「おいおい。もう奴隷じゃないんだし、カインでいいぞ」
「いえ。私にとってはカイン様がご主人様です。もう決めました」
「「却下」」
そう声を揃えたのは、フィルとチュールだ。
「カインの嫁は私」
「正妻は私です」
「私は妾で構いません……」
「おいおい。俺はそんな風にお前らを見て無いし、そんな話はもっと大人になってから考えればいい事だ」
「カインもうおじさんじゃん」
「お兄さんだ。大人になってと言ったのは俺じゃ無くお前らだYO」
「カインお兄ちゃん。私はもう24だよ? 行き遅れって呼ばれる前には頼むよ?」
ちょっと場がカオスになったが、隷属の首輪を外した事によって、ナディアは精霊との対話が可能になり、精霊魔法を使えるようになった。
これで、すっぽんスープを作る為の火力の確保も十分だ。
俺は魔法の鞄から、すっぽんを2匹取り出し捌く。
すっぽんは死んでしまうとすぐに臭みが体中に回ってしまうので、通常は生きたまま捌くのだが、俺の使う魔法の鞄では、時間経過が無いので、首を跳ね飛ばした、直後の状態で収納してある。
内臓を傷つけない事が、捌くときのコツだ。
特に胆嚢は、強烈な苦みを持つので、ここに傷をつけてしまうと、食用に使えないレベルになってしまう。
見た目に比べて、食べれる部分は決して多くない。
肉は、4本の足と、首の付け根の部分にあるだけだ。
内臓は綺麗に掃除すれば、胆嚢以外は食べれる。
だが、骨やエンペラの部分から出るスープの味は別格だ。
俺の特注品の鍋は、ミスリルとセラミックの合成で超高火力にも耐えられる。
材料を鍋に入れると、高火力で一気に沸騰させる。
「ナディア頼む」
「はい」
火の精霊『サラマンダー』を呼び出し、高火力で一気に焚き上げる。
この時に、すっぽん以外に入れる物は、生姜の千切りだけだ。
エンペラの部分が、ゼラチン状にねっとりとした感じになれば火を中火にして、味を調える。
醤油と酒、若干の砂糖で十分だ。
琥珀色の美しいスープから、何とも食欲をそそる匂いが漂う。
このスープで雑炊や、大根の煮物を作っても最高に美味しい。
今日は主に、このスープを楽しんでもらうのが目的だから、これで完成だ。
スープ皿によそおう。
エンペラの部分と、赤身の肉、それと内臓部分をバランスよく注ぎ分ける。
それぞれの前に皿を差し出すと。
みんなで食事を始めた。
全員が、うっとりした表情をしている。
「どうだ? 美味いだろ」
「もう言葉が無いよ。凄いねこのスープ」
「エンガワの部分はコラーゲンが豊富だから肌にもいいぞ」
「本当?」
フィルが肌に良いという言葉で、喜んでいた。
「私達はまだお肌はみずみずしいから大丈夫!」
「チュール、そんな事言ってたらすぐに後で後悔する事になるからね? 若い時からちゃんと考えてケアしなくちゃ」
「私は、後500年は老化しないから……」
「ナディア…… エルフは良いよね羨ましいよ」
「でもさ、ナディア。さっきあの片眼鏡の行ってた事は本当なのか?」
「はい。里の長老にはつがいとなる人族の男性を見つけ出して添い遂げる様に言われて出てきました。子供をたくさん産んで、女の子だったらエルフの里に送りエルフの人口を増やすのが私の役目だそうです」
「そうなんだ…… それでいいのか? ナディアは」
「解らないけど、カイン様となら構いません」
「「却下」」
「まぁそう言う話は、ナディアがちゃんと大人になってからだな。今はこの世界で亜人族がちゃんと暮らしていける場所を作り上げる事を目標にしよう」
「「「うん」」」
食事を終えた俺達は、エルフの里を目指して北への道を進む。
フィルに拠って捉えられた、片眼鏡の執事風な男もその場に捕えられている。
「ちょっと話を聞かせて貰うぞ」
「なんでしょうか?」
「何故ナディアじゃないと駄目なんだ?」
「そ、それは……」
「言わないならこのままお前らは纏めて埋める。狙われたのは事実だしな」
「その…… 瞳でございます」
「ナディアの瞳にどんな秘密があるって言うんだ」
「オッドアイを持つエルフは…… 人との子を成す事が出来るのです」
「それじゃぁお前らはこの子を手に入れて、強制的に人とのハーフエルフを作ろうとしたって言う訳か?」
「そうです…… 女性のエルフはその長命な寿命と引き換えに、本来一生に一人の子を成す事しか出来ません。それがこの世界でエルフが増えない原因にもなっています。ですがオッドアイを持つ者だけは、他種族間であれば複数の子を成す事が出来るのです。その場合その子供は、寿命は人と変わらないのですが、精霊術を駆使出来たり容姿の美しさは、エルフと変わりありません。そしてハーフエルフとエルフの子はエルフとして生まれます。ですから…… 私どもの行おうとした行為は、決して人族の欲望だけでは無く、エルフ族の人口増加に必要な行為なのです」
「それが本当だとしても、ナディアの気持ちを無視して一方的にそう言う行為を強制させるという考え方に俺は、協力したいとも思えないし、お前の雇い主がこのエルフを手に入れたとして何が目的なんだ?」
「それは…… 私の口からは申し上げる事は出来ません……」
まだ聞きたい事はあるが、これ以上は喋りそうにも無いな……
「そうだとしてもだ。それは奴隷として子を産むためだけに、家畜の様な人生を送るのがナディアの幸せだとはとても思えないな。話は終わりだ。このまま帰るか埋められるかを選べ」
「このまま…… 帰らせて頂きます……」
「そこの傭兵どもは助けたいなら、掘った穴は自分達で埋めろよ? 通る人の迷惑だからな。次に同じ顔を見かけたら問答無用で埋める」
「解りました」
こうして、追って来た連中を撃退して、俺達は北へ向かう道を進んだ。
2時間程進んだ先の川原で、昼飯を取る事にして竈の準備を始める。
「フィル。何か食べたいものはあるか?」
「私はねぇ。おにぎり!」
「本当にフィルは、おにぎりが好きだよな。まぁそれなら大量に在庫もあるから手が掛からないが…… チュールはどうだ?」
「えーとね。この間、川でお魚捕まえた時に、いっぱい亀さんも獲れた。それ食べたい」
「すっぽんか。解った。じゃぁ今日はすっぽんスープを作ろう。強力な火力が必要だな。ナディア。火の精霊は呼べるか?」
「隷属の首輪の命令を変更すれば呼べますが、今は精霊と対話が出来ない様になっています」
「あ、すまんすまん。まだ外して無かったな。早速隷属の首輪を外そう」
そう言って俺は、オークションハウスで貰った隷属の首輪の鍵を使って、ナディアの隷属を解いた。
「ありがとうございます。ご主人様」
「おいおい。もう奴隷じゃないんだし、カインでいいぞ」
「いえ。私にとってはカイン様がご主人様です。もう決めました」
「「却下」」
そう声を揃えたのは、フィルとチュールだ。
「カインの嫁は私」
「正妻は私です」
「私は妾で構いません……」
「おいおい。俺はそんな風にお前らを見て無いし、そんな話はもっと大人になってから考えればいい事だ」
「カインもうおじさんじゃん」
「お兄さんだ。大人になってと言ったのは俺じゃ無くお前らだYO」
「カインお兄ちゃん。私はもう24だよ? 行き遅れって呼ばれる前には頼むよ?」
ちょっと場がカオスになったが、隷属の首輪を外した事によって、ナディアは精霊との対話が可能になり、精霊魔法を使えるようになった。
これで、すっぽんスープを作る為の火力の確保も十分だ。
俺は魔法の鞄から、すっぽんを2匹取り出し捌く。
すっぽんは死んでしまうとすぐに臭みが体中に回ってしまうので、通常は生きたまま捌くのだが、俺の使う魔法の鞄では、時間経過が無いので、首を跳ね飛ばした、直後の状態で収納してある。
内臓を傷つけない事が、捌くときのコツだ。
特に胆嚢は、強烈な苦みを持つので、ここに傷をつけてしまうと、食用に使えないレベルになってしまう。
見た目に比べて、食べれる部分は決して多くない。
肉は、4本の足と、首の付け根の部分にあるだけだ。
内臓は綺麗に掃除すれば、胆嚢以外は食べれる。
だが、骨やエンペラの部分から出るスープの味は別格だ。
俺の特注品の鍋は、ミスリルとセラミックの合成で超高火力にも耐えられる。
材料を鍋に入れると、高火力で一気に沸騰させる。
「ナディア頼む」
「はい」
火の精霊『サラマンダー』を呼び出し、高火力で一気に焚き上げる。
この時に、すっぽん以外に入れる物は、生姜の千切りだけだ。
エンペラの部分が、ゼラチン状にねっとりとした感じになれば火を中火にして、味を調える。
醤油と酒、若干の砂糖で十分だ。
琥珀色の美しいスープから、何とも食欲をそそる匂いが漂う。
このスープで雑炊や、大根の煮物を作っても最高に美味しい。
今日は主に、このスープを楽しんでもらうのが目的だから、これで完成だ。
スープ皿によそおう。
エンペラの部分と、赤身の肉、それと内臓部分をバランスよく注ぎ分ける。
それぞれの前に皿を差し出すと。
みんなで食事を始めた。
全員が、うっとりした表情をしている。
「どうだ? 美味いだろ」
「もう言葉が無いよ。凄いねこのスープ」
「エンガワの部分はコラーゲンが豊富だから肌にもいいぞ」
「本当?」
フィルが肌に良いという言葉で、喜んでいた。
「私達はまだお肌はみずみずしいから大丈夫!」
「チュール、そんな事言ってたらすぐに後で後悔する事になるからね? 若い時からちゃんと考えてケアしなくちゃ」
「私は、後500年は老化しないから……」
「ナディア…… エルフは良いよね羨ましいよ」
「でもさ、ナディア。さっきあの片眼鏡の行ってた事は本当なのか?」
「はい。里の長老にはつがいとなる人族の男性を見つけ出して添い遂げる様に言われて出てきました。子供をたくさん産んで、女の子だったらエルフの里に送りエルフの人口を増やすのが私の役目だそうです」
「そうなんだ…… それでいいのか? ナディアは」
「解らないけど、カイン様となら構いません」
「「却下」」
「まぁそう言う話は、ナディアがちゃんと大人になってからだな。今はこの世界で亜人族がちゃんと暮らしていける場所を作り上げる事を目標にしよう」
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