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第32話 里の中
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エルフの里の結界の前の広場では、更に10名のエルフ達が増えて、18名もの大人数で大宴会になっていた。
「エルフの人達って、みんなお酒好きなんだね」
「意外だったな。もっと草食で酒なんか飲まない種族だと思ってたぞ」
「でも、みんな気のいい人ばかりだよ」
「だな」
そう思ってた時に、再び結界の中から人が現れた。
「お前たち何をやっているんだこんな所で! 馬鹿もぉおおおん」
そこには、武器を持ち鎧も装備した、エルフの一群が揃っていた。
「15人も出て行ったまま戻ってこないと報告があったから、質の悪い拉致か強力な魔物の出現かと思って、戦える者を集めて来てみれば、こんな場所で宴会なぞしおって…… やるなら結界の中でやらぬか」
「あ、スイマセン。俺達が調子に乗って誘ってしまったせいで、迷惑をおかけしてしまって……」
「ぬ…… 人間か。獣人もおるな。もしやナディアをここまで送り届けた者たちか」
「はい。そうです。ここでナディアとケラが戻って来るのを待ってて、飯作ってたら匂いに誘われた皆さんが、だんだん出て来られて、折角だから一緒に食事をしていました。俺は、料理人のカインと言います」
「ふむ。どうやらナディアの報告の通りの人間のようだな。まぁ良い。ここは結界の外で危険だからお前らも一緒に入って来るがよい」
「良いんですか?」
「里の者が世話になった様じゃし、受けた恩は返すのがエルフの務め。遠慮をするな」
「解りました。それではご一緒させて頂きます。ナディアとケラは元気ですか?」
「久しぶりに実家の両親と一緒に過ごして居る。精霊様も一緒だ」
「そうですか。それは良かった」
俺はその場の宴会の残骸を、全て魔法の鞄へと収納して、エルフ達と共に里へと入った。
「ほう。森を汚さぬか」
「当然です。食べ終わった後をきちんと片付けるまでが、食事ですから」
「良い心がけじゃ」
エルフの里の中は、思ったよりも広く中央に巨大な広場があり、その周りに木を自然のままに利用した、家が並んでいた。
ひときわ大きな木の枝の上に、立派な建物がある。
恐らくこれが長老様の居る場所なんだろうな?
広場まで出てくると、ナディアとケラも来ていた。
「カイン様。やっぱりカイン様だったんですね。里の民が慌てた様子で結界の入口に向かって行ったのを聞いて、カイン様が居るから襲われる様な事は絶対ないですと、長老様に話していた所だったんです」
「みんなで食事をしてただけなんだが、いらぬ心配を掛けちゃったみたいでゴメンな」
「大丈夫ですよ。娯楽の少ない里ですから、きっとみんな嬉しかったんだと思います」
「そうか」
「ゴ、ゴホン」
「長老様。この方が私のご主人様のカイン様です」
そう長老と呼ばれる人を紹介された。
「この里に、人間が立ち入るのは初めての事じゃ。ナディアだけでは無く里の若い者たちがご馳走して貰った様で、済まんかったな」
「私は料理人ですから、私の料理を喜んで貰える事が一番の幸せですので」
「ほう。気持ちが良い若者だな」
「カインおじさん」
「こら、チュール。お兄さんだ」
「その獣人の子もよく懐いておる。カインの心がそれだけ綺麗な事の証であろう」
「そんな事は無いです。俺は、自分や自分に近しい人を傷つけられたりすれば、平気で相手を殺す男ですから、そんなに綺麗な心は持って無いですよ。ただ、自分の中の正義には素直でありたいと思うだけです」
「よいよい。そんな事は些細な事だ。今わしの前に立つカインという男を、わしは信頼できると判断しただけの事じゃ」
「ありがとうございます。あの、一つよろしいでしょうか?」
「なんじゃ、本の事か?」
「いえ…… 今日、食事会に参加されなかった方も沢山いるようですので、明日もう一度この広場で里の人を集めて、食事会を行いましょう。幸い素材も酒も沢山ありますので」
「なんと…… 面白い男よ。 解った。明日は皆で楽しもう」
この日は時間も遅かったので、その後はナディアの家に、フィルとチュールを連れて泊めて貰う事になった。
「ナディアを大事にしてくれている様で、ありがとうございます」
ナディアの母親からいきなりお礼を言われた。
「奴隷オークションで競り落としただけですから」
「それでも安くない筈の金額を払われた上に、既に奴隷から解放までされています。何とお礼を申し上げてよいか。既に話は伺っておられますよね? カイン様」
「様は止めて下さい、お母さんは大切な仲間の母親ですので、カインと呼び捨てでお願いします」
「増々良くできた人ですね。ナディア。ちゃんとカインさんと子を成し、エルフの里の人員増加に尽くすのですよ」
「はい、解りましたお母様」
「ちょちょっと…… まだそんな話にはなってませんので」
「ナディア、抜け駆け禁止」
「正妻は私です」
「あら、失礼しました。お嬢様方はカインさんの奥方様なのですか?」
「まだ。未定です」
「カインお兄ちゃん今更却下は無しだよ?」
「そのうち時機を見てだな」
「カインさん。ナディアとは最低10人はお願いしますね」
「お母さん……」
「カイン様と添い遂げて同じ程度の寿命で、天に戻ろうとすれば、50人は産まなければなりませんので、頑張ります」
「スゴッ私も負けられない」
「チュール! 子供には早い。と言うか、子を成すと寿命がそれだけ短くなるのか?」
「私の様な瞳を持つ者は、自らの生命力を持って、子を成すのです。他の方に嫁ぎたくはありませんので、出来れば同じ寿命で人生を終わりたいと思います」
なんだか、凄い展開過ぎて、先が怖いな……
「カイン? 知ってる?」
「何をだチュール」
「獣人は人間と子を成すと一度に5人くらい生まれる」
「知る必要が無いな」
「エルフの人達って、みんなお酒好きなんだね」
「意外だったな。もっと草食で酒なんか飲まない種族だと思ってたぞ」
「でも、みんな気のいい人ばかりだよ」
「だな」
そう思ってた時に、再び結界の中から人が現れた。
「お前たち何をやっているんだこんな所で! 馬鹿もぉおおおん」
そこには、武器を持ち鎧も装備した、エルフの一群が揃っていた。
「15人も出て行ったまま戻ってこないと報告があったから、質の悪い拉致か強力な魔物の出現かと思って、戦える者を集めて来てみれば、こんな場所で宴会なぞしおって…… やるなら結界の中でやらぬか」
「あ、スイマセン。俺達が調子に乗って誘ってしまったせいで、迷惑をおかけしてしまって……」
「ぬ…… 人間か。獣人もおるな。もしやナディアをここまで送り届けた者たちか」
「はい。そうです。ここでナディアとケラが戻って来るのを待ってて、飯作ってたら匂いに誘われた皆さんが、だんだん出て来られて、折角だから一緒に食事をしていました。俺は、料理人のカインと言います」
「ふむ。どうやらナディアの報告の通りの人間のようだな。まぁ良い。ここは結界の外で危険だからお前らも一緒に入って来るがよい」
「良いんですか?」
「里の者が世話になった様じゃし、受けた恩は返すのがエルフの務め。遠慮をするな」
「解りました。それではご一緒させて頂きます。ナディアとケラは元気ですか?」
「久しぶりに実家の両親と一緒に過ごして居る。精霊様も一緒だ」
「そうですか。それは良かった」
俺はその場の宴会の残骸を、全て魔法の鞄へと収納して、エルフ達と共に里へと入った。
「ほう。森を汚さぬか」
「当然です。食べ終わった後をきちんと片付けるまでが、食事ですから」
「良い心がけじゃ」
エルフの里の中は、思ったよりも広く中央に巨大な広場があり、その周りに木を自然のままに利用した、家が並んでいた。
ひときわ大きな木の枝の上に、立派な建物がある。
恐らくこれが長老様の居る場所なんだろうな?
広場まで出てくると、ナディアとケラも来ていた。
「カイン様。やっぱりカイン様だったんですね。里の民が慌てた様子で結界の入口に向かって行ったのを聞いて、カイン様が居るから襲われる様な事は絶対ないですと、長老様に話していた所だったんです」
「みんなで食事をしてただけなんだが、いらぬ心配を掛けちゃったみたいでゴメンな」
「大丈夫ですよ。娯楽の少ない里ですから、きっとみんな嬉しかったんだと思います」
「そうか」
「ゴ、ゴホン」
「長老様。この方が私のご主人様のカイン様です」
そう長老と呼ばれる人を紹介された。
「この里に、人間が立ち入るのは初めての事じゃ。ナディアだけでは無く里の若い者たちがご馳走して貰った様で、済まんかったな」
「私は料理人ですから、私の料理を喜んで貰える事が一番の幸せですので」
「ほう。気持ちが良い若者だな」
「カインおじさん」
「こら、チュール。お兄さんだ」
「その獣人の子もよく懐いておる。カインの心がそれだけ綺麗な事の証であろう」
「そんな事は無いです。俺は、自分や自分に近しい人を傷つけられたりすれば、平気で相手を殺す男ですから、そんなに綺麗な心は持って無いですよ。ただ、自分の中の正義には素直でありたいと思うだけです」
「よいよい。そんな事は些細な事だ。今わしの前に立つカインという男を、わしは信頼できると判断しただけの事じゃ」
「ありがとうございます。あの、一つよろしいでしょうか?」
「なんじゃ、本の事か?」
「いえ…… 今日、食事会に参加されなかった方も沢山いるようですので、明日もう一度この広場で里の人を集めて、食事会を行いましょう。幸い素材も酒も沢山ありますので」
「なんと…… 面白い男よ。 解った。明日は皆で楽しもう」
この日は時間も遅かったので、その後はナディアの家に、フィルとチュールを連れて泊めて貰う事になった。
「ナディアを大事にしてくれている様で、ありがとうございます」
ナディアの母親からいきなりお礼を言われた。
「奴隷オークションで競り落としただけですから」
「それでも安くない筈の金額を払われた上に、既に奴隷から解放までされています。何とお礼を申し上げてよいか。既に話は伺っておられますよね? カイン様」
「様は止めて下さい、お母さんは大切な仲間の母親ですので、カインと呼び捨てでお願いします」
「増々良くできた人ですね。ナディア。ちゃんとカインさんと子を成し、エルフの里の人員増加に尽くすのですよ」
「はい、解りましたお母様」
「ちょちょっと…… まだそんな話にはなってませんので」
「ナディア、抜け駆け禁止」
「正妻は私です」
「あら、失礼しました。お嬢様方はカインさんの奥方様なのですか?」
「まだ。未定です」
「カインお兄ちゃん今更却下は無しだよ?」
「そのうち時機を見てだな」
「カインさん。ナディアとは最低10人はお願いしますね」
「お母さん……」
「カイン様と添い遂げて同じ程度の寿命で、天に戻ろうとすれば、50人は産まなければなりませんので、頑張ります」
「スゴッ私も負けられない」
「チュール! 子供には早い。と言うか、子を成すと寿命がそれだけ短くなるのか?」
「私の様な瞳を持つ者は、自らの生命力を持って、子を成すのです。他の方に嫁ぎたくはありませんので、出来れば同じ寿命で人生を終わりたいと思います」
なんだか、凄い展開過ぎて、先が怖いな……
「カイン? 知ってる?」
「何をだチュール」
「獣人は人間と子を成すと一度に5人くらい生まれる」
「知る必要が無いな」
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