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第49話 とんかつ
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みんなで教会からメーガンの別荘へと移動した。
「メーガンの別荘って意外にキッチンもちゃんとしてるんだな」
「私は殆ど料理しないですけど、長期滞在の時は商業ギルドから家政婦さんを派遣して貰いますから」
「なぁメーガン。聞いても良いかな?」
「何でしょうか?」
「あの、天使の羽根みたいなのはどんなスキルなんだ?」
「私の契約者の能力ですね。私は天使と契約しましたから」
「凄いな。天使って本当にいるんだ」
「でも、その天使の力が強すぎて他の精霊を一切呼べないので、戦う事しか能がないんです」
「そうなんだ」
「私はナディアみたいに色々な精霊を状況に合わせて呼べる方が便利だと思いますよ」
「メーガン様。そんな事無いです圧倒的な攻撃力に感動しました」
「メーガンの攻撃方法は他にもあるの?」
「普段は大剣を使いますね。先ほどの攻撃は大勢を相手にする時だけです」
「そっか。あの翅は当然飛ぶことも出来るんだよな?」
「長時間は無理ですから、街の移動には使えませんが戦闘中に使う程度なら大丈夫ですね」
「そっか」
「あなた達は、どこに向かっていたのですか?」
「俺達は、世界樹の島を目指してた」
「世界樹の小枝を持っているのですか?」
「ナディアの里の長老が、預けてくれたからな」
「長老に認められる人間など、私も長く生きてますが何人もいなかったですね」
「他にも居るのは居るんだ?」
「今から40年ほど前でしたか。才能のある魔法使いと出会って、私が里の長老を紹介して借り受けた事がありました」
「そうなんだ。その人はまだ生きてるの?」
「Sランク冒険者の【賢者】シュタットガルドです」
「へー。もういい歳だろうけど、現役の冒険者なんだ」
「そうですね。帝国皇帝に何度も皇宮で働くように誘われてたみたいですが、現役にこだわってます」
「そのうち出会う事もあるかもな」
あまり話し込んでると、料理を作る時間が無くなるから、手早く作る事にしよう。
献立は、久しぶりにトンカツでも作るか。
肩ロースとヒレ肉の部分でそれぞれトンカツを作る。
厚さは1.5㎝程丁寧に筋に切り込みを入れて、揚げた時に肉が反らないようにする。
塩コショウを当てて表面に余分な水分が出て来るまで30分ほど寝かす。
水分を丁寧に拭き取ると、小麦粉を付けて、卵をくぐらす。
俺の魔法の鞄に常に入れてある食パンを、金属製の笊にこすりつけパン粉にした物をたっぷり纏わす。
オークジェネラルの脂身の部分を鍋で熱してラードを作る。
160度程の温度で、中に火が通るまで、じっくりと揚げる。
肉に火が通れば、一度揚げ油から取り出し、温度を180度まで上げる。
この揚げ油でもう一度揚げれば、サクサクの食感が楽しめるトンカツの出来上がりだ。
たっぷりの刻んだキャベツと、手作りのマヨネーズを添える。
トンカツに掛けるソースも、フルーツをたっぷり使った若干甘めのソースだ。
マスタードも添える。
「出来たぞ」
そう声を掛けると、みんなで揚げたてのトンカツに嚙り付いた。
「どうだ? 美味いだろ」
「「「うん」」」
みんなが、飛び切りの笑顔で返事をしてくれる。
この笑顔を見るたびに、料理人で良かったと思う。
「ナディアが言うだけの事はあるわね。料理が単純なだけに、調理技術の差がはっきりと出てるのね。こんなに美味しいトンカツは始めて頂くわ。ロースも美味しいけど、私はヒレ肉の柔らかさと赤身のおいしさを感じられるのが好みに合うわね」
「私はロース肉の方が旨味って言うか肉汁が溢れ出してくる感じが好き」とチュールが言う。
「最高の素材だからな。俺がする事はその最高の素材のいい部分を引き立ててあげる事だ。手を加え過ぎないことも大事なんだよ。ある程度腕に自信がついて来るとみんなが陥る罠だな」
パン粉を作る時に切り取った、パンの耳をこのラードの揚げ物油でカリッと揚げて砂糖とシナモンの粉を塗したラスクも、みんなが喜んでくれた。
バラ肉を使ってベーコンを仕込みたいけど、ちゃんと作ると二週間くらい必要だから、ゆっくりと落ち着けるまでは、魔法の鞄に仕舞っておくしか無いな。
「メーガンは惨劇の平原だっけ? あそこには行かないのかい?」
「黄金のヒュドラは興味あるけどね。あの三人が行ってるなら敵が姿さえ現せば大丈夫なんじゃないかな?」
「そうなんだ…… メーガンから見てもSランクの三人は強いのか?」
「そうね、一対一で戦うなら私と同じくらいの強さだと思うわよ。それぞれ得意な事は違うけど」
「みんな化け物だな……」
「そうかしら? 私から見ればカイン君も同じステージに居る様に見えるけどね?」
「それは、買い被りですよ。俺達は明日の朝には世界樹の島に向けて旅立つから、またどこかで会えばよろしくな」
「あら? 魔導通話機の登録したんだから、用事があったらいつでもかけてきていいわよ」
「かけずに済む様に行動しますよ」
「私はどうしようかな? 『ドラゴンブレス』のギースだっけ? カイン君を追放してしまう程の実力者だと言うならちょっと会ってみたいわね」
俺がメーガンとそんな話をしてると、フィルが凄く微妙な表情で見てた。
「メーガンさん。ギースに会いに行くんですか?」
「クビにしたカイン君でこの実力なら、ギース君の実力がどれほどの物なのか興味が湧いたのは確かですね」
「そうですか…… 会ったら、よろしくお願いします」
「あら。フィルさんどうしたの? ギースの名前が出ると元気が無くなったわね」
「冒険者になってからずっと一緒にやって来た、仲間を一人失ったので、ちょっと心配で。教会に寄ったのは、その仲間の冥福を祈る為だったんです」
「そうだったのね。でも冒険者って結局魔物を殺して生活の糧にするわけでしょ? 殺す者は殺される覚悟があって当然だからね。それが自然の摂理」
「……はい」
翌朝俺達は、世界樹の島へ向けて出発した。
「メーガンの別荘って意外にキッチンもちゃんとしてるんだな」
「私は殆ど料理しないですけど、長期滞在の時は商業ギルドから家政婦さんを派遣して貰いますから」
「なぁメーガン。聞いても良いかな?」
「何でしょうか?」
「あの、天使の羽根みたいなのはどんなスキルなんだ?」
「私の契約者の能力ですね。私は天使と契約しましたから」
「凄いな。天使って本当にいるんだ」
「でも、その天使の力が強すぎて他の精霊を一切呼べないので、戦う事しか能がないんです」
「そうなんだ」
「私はナディアみたいに色々な精霊を状況に合わせて呼べる方が便利だと思いますよ」
「メーガン様。そんな事無いです圧倒的な攻撃力に感動しました」
「メーガンの攻撃方法は他にもあるの?」
「普段は大剣を使いますね。先ほどの攻撃は大勢を相手にする時だけです」
「そっか。あの翅は当然飛ぶことも出来るんだよな?」
「長時間は無理ですから、街の移動には使えませんが戦闘中に使う程度なら大丈夫ですね」
「そっか」
「あなた達は、どこに向かっていたのですか?」
「俺達は、世界樹の島を目指してた」
「世界樹の小枝を持っているのですか?」
「ナディアの里の長老が、預けてくれたからな」
「長老に認められる人間など、私も長く生きてますが何人もいなかったですね」
「他にも居るのは居るんだ?」
「今から40年ほど前でしたか。才能のある魔法使いと出会って、私が里の長老を紹介して借り受けた事がありました」
「そうなんだ。その人はまだ生きてるの?」
「Sランク冒険者の【賢者】シュタットガルドです」
「へー。もういい歳だろうけど、現役の冒険者なんだ」
「そうですね。帝国皇帝に何度も皇宮で働くように誘われてたみたいですが、現役にこだわってます」
「そのうち出会う事もあるかもな」
あまり話し込んでると、料理を作る時間が無くなるから、手早く作る事にしよう。
献立は、久しぶりにトンカツでも作るか。
肩ロースとヒレ肉の部分でそれぞれトンカツを作る。
厚さは1.5㎝程丁寧に筋に切り込みを入れて、揚げた時に肉が反らないようにする。
塩コショウを当てて表面に余分な水分が出て来るまで30分ほど寝かす。
水分を丁寧に拭き取ると、小麦粉を付けて、卵をくぐらす。
俺の魔法の鞄に常に入れてある食パンを、金属製の笊にこすりつけパン粉にした物をたっぷり纏わす。
オークジェネラルの脂身の部分を鍋で熱してラードを作る。
160度程の温度で、中に火が通るまで、じっくりと揚げる。
肉に火が通れば、一度揚げ油から取り出し、温度を180度まで上げる。
この揚げ油でもう一度揚げれば、サクサクの食感が楽しめるトンカツの出来上がりだ。
たっぷりの刻んだキャベツと、手作りのマヨネーズを添える。
トンカツに掛けるソースも、フルーツをたっぷり使った若干甘めのソースだ。
マスタードも添える。
「出来たぞ」
そう声を掛けると、みんなで揚げたてのトンカツに嚙り付いた。
「どうだ? 美味いだろ」
「「「うん」」」
みんなが、飛び切りの笑顔で返事をしてくれる。
この笑顔を見るたびに、料理人で良かったと思う。
「ナディアが言うだけの事はあるわね。料理が単純なだけに、調理技術の差がはっきりと出てるのね。こんなに美味しいトンカツは始めて頂くわ。ロースも美味しいけど、私はヒレ肉の柔らかさと赤身のおいしさを感じられるのが好みに合うわね」
「私はロース肉の方が旨味って言うか肉汁が溢れ出してくる感じが好き」とチュールが言う。
「最高の素材だからな。俺がする事はその最高の素材のいい部分を引き立ててあげる事だ。手を加え過ぎないことも大事なんだよ。ある程度腕に自信がついて来るとみんなが陥る罠だな」
パン粉を作る時に切り取った、パンの耳をこのラードの揚げ物油でカリッと揚げて砂糖とシナモンの粉を塗したラスクも、みんなが喜んでくれた。
バラ肉を使ってベーコンを仕込みたいけど、ちゃんと作ると二週間くらい必要だから、ゆっくりと落ち着けるまでは、魔法の鞄に仕舞っておくしか無いな。
「メーガンは惨劇の平原だっけ? あそこには行かないのかい?」
「黄金のヒュドラは興味あるけどね。あの三人が行ってるなら敵が姿さえ現せば大丈夫なんじゃないかな?」
「そうなんだ…… メーガンから見てもSランクの三人は強いのか?」
「そうね、一対一で戦うなら私と同じくらいの強さだと思うわよ。それぞれ得意な事は違うけど」
「みんな化け物だな……」
「そうかしら? 私から見ればカイン君も同じステージに居る様に見えるけどね?」
「それは、買い被りですよ。俺達は明日の朝には世界樹の島に向けて旅立つから、またどこかで会えばよろしくな」
「あら? 魔導通話機の登録したんだから、用事があったらいつでもかけてきていいわよ」
「かけずに済む様に行動しますよ」
「私はどうしようかな? 『ドラゴンブレス』のギースだっけ? カイン君を追放してしまう程の実力者だと言うならちょっと会ってみたいわね」
俺がメーガンとそんな話をしてると、フィルが凄く微妙な表情で見てた。
「メーガンさん。ギースに会いに行くんですか?」
「クビにしたカイン君でこの実力なら、ギース君の実力がどれほどの物なのか興味が湧いたのは確かですね」
「そうですか…… 会ったら、よろしくお願いします」
「あら。フィルさんどうしたの? ギースの名前が出ると元気が無くなったわね」
「冒険者になってからずっと一緒にやって来た、仲間を一人失ったので、ちょっと心配で。教会に寄ったのは、その仲間の冥福を祈る為だったんです」
「そうだったのね。でも冒険者って結局魔物を殺して生活の糧にするわけでしょ? 殺す者は殺される覚悟があって当然だからね。それが自然の摂理」
「……はい」
翌朝俺達は、世界樹の島へ向けて出発した。
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