美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

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第60話 ドラゴンブレス⑬

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 老婆の様に朽ち果てて行ったシーラの姿は、砂の様に崩れて姿を消した。

「いったいこれはどういう事だ……」

「ギース様。床をご覧ください」
「チャールズ。床だと?」

 そう言われて床を見ると、このゴーレム工場の床全体が淡く明滅していた。
 さながら巨大な魔法陣の様でもあった。

 次の瞬間、今度はカレンの姿がやはり砂状に崩壊し、床へと吸収された。

 残されたのはギースが与えた、姫騎士の白銀の美しい装備だけだった。
 
「俺達は大丈夫なのか? チャールズ」
「恐らく…… 生命活動を行えてる間は問題無いかと」

「コアクリスタルは…… 他の物が触れても、シーラと同じ状況になるのか?」

 その質問には、ウエールズが答えた。

「恐らくですが…… このクリスタルを満たすのに、シーラの魔力だけでは不足していたのでしょう。シーラの反応を見た限りでは、殆どの情報を読み取る事は出来ていたようですし、既に半分以上は満たされているとは思います。シーラ以上の魔力の保持者が今触れれば、満たされるのではないでしょうか?」
「俺は、火属性が扱えるが、魔力量は決して多くない。シーラ以上という条件であれば、チャールズかミルキーになるか?」

「どうでしょう…… 私は聖属性魔法は使えますが。その魔力量はフィル様と同程度でした。決して多くは無いかと」

「あー。解ったよ。私がやればいいんでしょ?」
「ミルキー頼む。ウエールズとチャールズが側に付き、シーラの様に少しでも異変が起こりそうであれば、引きはがせ。それと、忘れていたが、アンナ。先程はありがとう。俺に対する忠誠。しかと見届けたぞ。国が正式に起これば、帝国の警察権を全て任せよう」

「素敵です。私はギース皇帝を決して裏切らないわ」

 その様子を見ていた冒険者達も、ギースの信賞必罰の姿勢を目の当たりにして、改めて忠誠を誓った。

 そして、改めてミルキーがコアクリスタルの前に立ち、クリスタルに触れた。

 ほぼ満たされていた様で、5秒ほど触れただけで魔力を吸い込まれる感覚は止まり、目の前にコントロールパネルの様な物が展開される。

 その状況は、ギース達の目にも映るが、何が書いてあるかはさっぱりと判らなかった。

「ミルキー。大丈夫か? 今目の前に開かれているパネルの意味は解るのか?」
「あー。うん。何となく解る。ちょっとしっかり理解出来るまで待っててね」

「任せた」


 ◇◆◇◆ 


 それから一時間程を掛け、ミルキーが大体の事を把握すると、コアクリスタルを取り外して、ギースに渡して来た。

「取り外しても大丈夫なのか?」
「うん。このクリスタルはどんなに離れてても問題は無いみたいだね。それとこの場所なんだけど…… 古代文明のお墓みたいだよ。この遺跡の中に遺体を放り込めば、それがマグマの熱によって黒曜石へと変化させられて、その魂は魔石化される。それを使ったゴーレムを作り出す部屋のようだね」

「なる程な。このクリスタルでゴーレムに命令は出せるのか?」
「大雑把だけど大丈夫みたいだよ」

「大雑把ってどの程度なんだ?」

「今だと『この遺跡内の侵入者を殺して素材にしろ』って感じだよ」
「範囲と攻撃をするしない程度って事か?」

「そうだね。ゴーレムを魔法の鞄にでも入れて、持ち運んで使えばいいんじゃない? 幸いここには優秀なポーターのバネッサが居るしね。バネッサこのゴーレム達を全部仕舞える?」
「えーと1000体位だったら、大丈夫です」

「ふむ。ここには200くらいしか居ないな。上で俺達を追いかけて来たのは、1000体以上いただろ? それと、脱出手段はどうなんだ?」
「ギースがそのクリスタルに命じてごらんよ。この遺跡自体が巨大な魔導具で、この中ではそのクリスタルに触れながら命令すれば、色々な現象が起こせるみたいだよ」

「そんな命令を俺がこのクリスタルにして、シーラの様にならないのか?」
「今は、シーラと私の魔力で満たされてるし、大丈夫な筈よ。きっと何千年も誰も注いでなかったから、さっきの様になっただけだと思う」

「そうか…… それなら。出口よ現れろ」

 ギースがそうコアクリスタルに触れながら命ずると、その場から天井に向けて、螺旋階段が現れた。

 よし。
 やはり運は俺に味方してくれるようだ。
 早速帝国を手に入れるために、行動を始めなければな。

「みんな聞いてくれ。俺は今から早速オルドラ帝国を征服して来るが、大人数である必要は無い。冒険者の皆にはこの場所。俺の帝国の心臓部分とも言える場所を守って居て欲しいんだ。先ほどの食料などは全て残していくから、この場で待っててくれ。一応この階段の先には、ゴーレムを安全の為に解き放っておくから、勝手に上に上がったりしないようにな」
「はい、解りました」

 どう考えても、ここに閉じ込められているだけだが、余りにも色々な事が起こり過ぎたので、この新人冒険者達は、現時点では疑問を持てなかった。

 そして、ドラゴンブレスのメンバー7名で入り口付近の広場に繋がった、階段を上って行く。

 そこは真っ暗な空間だったが、コアクリスタルを持ったギースが、『明るくなれ』と命じると、壁面全体が発光したように輝き明るくなった。

「この能力がこの遺跡以外でも使えたら、俺はもう皇帝などでは無く神だな」
「ギース。いいねそれ。帝国を落とした後は、この古代遺跡を神殿に改造して、ギース神国でも名乗った方が良いんじゃない? 現人神あらひとがみとして世界を統一するって言った方が、騙されて信じる人が多そうだし」

「悪くないが…… ミルキー。俺は別に騙すつもり等無いぞ? 俺の実力を認めてもらうだけだ。ただ認め無い奴に対しては、実力行使をするかもしれないけどな」

「ギース様、この階層で私達を追って来たゴーレムの姿がありませんね。どこへ消えたのでしょう?」
「そうか、経過時間で消えてしまうとかあるのかもしれないな。バネッサ。今魔法の鞄に収納したゴーレムはどれ程の数が居る?」

「全部で300程です」
「300か。それだけでは、帝都の皇宮を落としてしまうのは無理かもしれないな。必要数は最低1000体は欲しい。その数を貯めるまで、ここで過そう。食料はまだ十分だしな。俺はその期間このコアクリスタルを使って、古代遺跡を改装でもして回ろう」

 ギースの豪運は何処まで続くのだろうか。
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