美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

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第65話 闘技場

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 一夜明け、いつでも出立が出来る様チュールも迎えに行って朝食を食べている時だった。

「この宿にSランク冒険者の、シュタットガルトとメーガンが泊まっていると聞いて来た」

 余り行儀のよい連中では無さそうな五人組が現れた。
 
 俺達は声のする方に顔を向け、品定めをする。
 中々に強そうな雰囲気は持っている。

「おぬし等は何者じゃ? 自己紹介もせずに人の名前を呼ぶような奴らとは関わりあいたくないんじゃがの」
「気分を害されたなら謝ろう。すまん。俺達は『暗黒獅子の崖』を制覇して150年ぶりの獣人のSランク冒険者になる事を目指している『ライガース』と名乗るパーティだ。高名なシュタットガルド殿と是非手合わせを願いたい」

「ほう。わしに勝てるつもりか?」
「当然だ。この国では既に相手になる者もいない」

「ほーそれは凄いのぅ。おぬしら五人とわしで遣り合うと言う事で構わぬか?」
「馬鹿にするな。俺だけで十分だ」

「なんじゃ。他の者はそう大した事が無いという事かの?」
「違う。俺達はそれぞれ一人づつでも、Sランクと対峙しても十分にやっていけるだけの実力がある。五人で一人と戦うなど、弱い者いじめは出来ぬと言う事だ」

「ほぅ。まぁ別に構わぬが一人でも五人でも同じ結果になると思うがの? どこで何をするつもりじゃ?」

 そうシュタット爺ちゃんが問いかけた時だった。
 昨晩会ったミケーラと言う領主がやって来て告げた。

「折角のSランク冒険者様とのお手合わせを、町中の物で学ばせて頂きたいと思いまして、既に朝から号外をばら撒き、闘技場を準備しております。是非お越しいただき、その卓越した技を見せて頂ければと願います」

 なんだか準備万端整えて、お祭り騒ぎにする気満々だな……

 そこで悪乗りしたのは、レオネアだった。

「僕たちも折角だからちょっとだけ腕試しさせて貰えないかな? シュタット爺ちゃんと、リーダーさんが戦うなら他の人達は、見るだけじゃ物足りないでしょ? 後の4人と僕たちの中からメーガン姉を除いた四人を選んでもらって、戦うのなんてどうかな?」
「おい、レオネア。騒ぎを大きくするなよ」

「いいじゃん見てるだけだと暇だし、きっと街の人達も喜ぶと思うよ?」
「4対4で戦うと言うのか? 俺達は凄く強いぞ?」

「僕たちも結構いけてると思うから、好きに選んでくれていいよ?」

 レオネアの挑発にライガースのメンバーもその気になって、領主のミケーラもイベントが盛り上がると喜んだ。

「メーガン様。あの連れの者達は実力的にどんな具合なんですか?」

 ミケーラがメーガンに一応と言うか、確認をしてきた。

「そうですね。十分に強いですよ。ライガースの皆さんが誰を指名するかで随分楽しめ方は変わると思います」

 ライガースのメンバー構成は、リーダーの獅子獣人レオン。
 以下

 虎獣人  格闘家  タイガ
 豹獣人  魔法剣士 ロデム
 サイ獣人 重騎士  サイダー
 猫獣人  双剣使い ミャーラ

 のメンバーで構成されている。
 ロデムとミャーラは女性でもある。

 レオンとシュタット爺ちゃんが戦うのは決定事項みたいだし、団体戦? は、タイガが俺達の中から指名する事になった。

「本当はメーガン様とやりたいとこだが、獣王の約束でメーガンと獣人族は戦わないと、聞かされてるのでしょうがない。そこの男二人と、団体戦を言い出した女。後はそうだな獣人が居るからその猫耳娘にしよう」

 お、一番弱そうに見えるチュールを入れるとこ辺り、まさかの保険を掛けてる様だな。

「チュール大丈夫か?」
「うん。カインと一緒なら安全だって解ってるから」

「そっか。じゃぁ問題無いな。チュールには俺が指一本触れさせないから安心してろ」
「てかさ。ライガースの人達のプライドがあるだろうから形は団体戦にしたけど、僕一人でやるから見ててよ」

 なんとも不穏な事を、レオネアが言った。
 勿論相手には聞こえない様にだけど。

 ジュウベエも、「この程度で俺が出なけりゃならないようなら、アケボノでの食事代はレオネアの驕りだ」とか言ってて、全く手伝う気は無さそうだ。

「レオネア疑ってはいないが大丈夫なのか?」
「駄目だったらカインが何とかしてくれるっしょ?」

「そこはジュウベエだろ」
「ジュウベエに借り作りたくないしー」

「おい、嫌われてるなジュウベエ……」
「なんでそうなる。俺はレオネアだけで普通に何とかすると思ってるからな」

 結局、俺達も駆り出される事になってライガースの面々と領主のミケーラ男爵の一行と共に馬車に乗り込み、街の闘技場へと向かう事になった。

 闘技場は、結構大きな場所で円形の闘技場になってる。
 この国では戦闘によって物事を決めるという制度が、当り前の文化になっている為に、どこの街にも闘技場はあるらしく、そのルールも死者が出にくくなるように、共通ルールが定められている様だ。

 その共通ルールとは

 ①戦う場所は直径30mの円形の石で出来たステージで行う
 ②勝敗は、審判による戦闘継続不能の判断、またはギブアップ、および戦闘ステージからの落下によって決定する。
 ③戦闘によって相手を殺した場合、犯罪にはならないが向こう3年間は闘技場での試合に出場禁止。
 ④戦闘ステージでの試合には公式に賭けが行われ、その8割を払い戻しに当てる。1割を主催者の収益。1割が勝利者への報酬となる。
 
 なんとも、修羅な国なようだ。

「で? どっちの試合が先にあるんだ?」
「先に話があったのはわしの方じゃからわしが先で良かろう」

 闘技場の中は1万人程の観客が入れるようになっているのにも関わらず、既に9割がたが埋まっていた。

 どんだけ戦い好きなんだよ、ここの住人。

 第一試合のアナウンスが行われ、Sランクの冒険者シュタットガルドと獅子獣人のレオンがステージに呼ばれる。

 観客は双方の姿を確認してからベットタイムに入る15分で締め切られそれから5分で試合が行われる。

 60を超えたシュタット爺ちゃんは見た目も大柄では無いし、普通にニコニコした爺さんなので、いくらSランクと言っても人気面はレオンの方が高いようだった。

 レオンは見るからに強そうな大きな体をして、得意武器は大剣を使うらしい。

「カイン。お金あるだけだしなさい。シュタット爺ちゃんに賭けたら3倍になるよ!」
「まじか。絶対負けねぇだろうに。ぼろもうけだな」

 俺はフィルに預けてあるお金を金貨5000枚ほど爺ちゃんに賭けさせた。
 それにより、レオンのオッズが上がって、更に賭けが盛り上がる。
 結局爺ちゃんのオッズは3.2倍まで上がった。

 そして試合が開始された。
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