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第87話 『ヨミノクニ』ダンジョン①
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ガンダルフの操縦練習もかねて、アケボノへの航路は任せっきりで進んだ。
まぁ俺も心配だからレオネアと一緒に、ブリッジにはずっと居たけどね。
「ガンダルフ。ドワイランド近辺には古代遺跡は無いのか?」
「聞かぬの? カインが求める様な物があるのか?」
「アルファたちが言うには、今推進装置に使っている黄金のヒュドラ『シグマ』って言うんだけど、それ以外にも高軌道ゴーレムが存在していて、付け替えが出来るらしいんだよな」
「それは、興味深いな。じゃがそれだと、その高軌道ゴーレムが無いと飛空船の推進装置は確保できないと言う事なのか?」
「その辺りの事は俺じゃ解らないよ。それこそガンダルフ達の領域だろ?」
「まぁそうじゃな。古代文明の真似をするだけでなく、さらに優れた物を生み出して見せるぞ」
「そいつは楽しみだ」
「カイン。もしさ、ガンダルフとアイシャが飛空船を完成させたら、僕たちにも作って貰ってもいいのかな?」
「レオネア。俺は別に古代技術を独り占めしようなんて思って無いぞ? それに作るのは俺じゃ無くてガンダルフだからな」
「うーん…… なんて言うかさ。カインは欲がなさすぎるよ。もっと貪欲にならないと、独立して国を起こすような事は出来ないと思うよ?」
「国はそこまでこだわりは無いんだけどな、俺がやりたいのは亜人だからと言って簡単に奴隷にされる様な法律を世界中で破棄させる事だから」
「でもさ、この間ジュウベエも言ってたでしょ。今まで僕たちは一緒に行動しなかったのは、国を別れて存在する事で、戦力の均衡を保たせていたって」
「ああ、確かに言っていたな」
「逆に言えば、僕たちが集まった状態で各国に対して命令すれば、実際逆らえる程の戦力を持った国は、ギルド連合加盟国には存在しないんだよ」
「恐ろしいな」
「だからさ、今回の『ヨミノクニ』を終わらせたら、ちょっと帝国の内乱に介入して見ない?」
「俺は戦争には興味ない」
「そう言うと思ったけど、戦争で被害を受けるのは、一般民衆だからね? 兵士や傭兵がいくら死のうが、自分の意志で戦争に参加してるんだから、勝手だけど戦争を嫌っている人たちの保護は、して上げたいと思わないかい?」
「レオネア、凄く良い意見だとは思う。正に王の考え方だな。でも俺は、自分の目の前に居て、手が届く範囲の、笑顔が見える範囲の人の幸せを考える事が精一杯だ。レオネアやジュウベエ、メーガンがそうしたいなら、それでいいんじゃないか? 俺が手伝う必要があれば手伝うから」
「ふーん。僕は君がリーダーの方が良いと思ったんだけどな?」
「だが断る!」
「まぁいっか。僕も人を率いるなんて事は苦手だから、誰か相応しい人が出てくればいいんだけどね」
そんな話をしてると、メーガンも話に加わって来た。
「周辺の国の動き方が心配ですね。帝国の南に国境を接するサラザール王国と、南西のカーライル共和国辺りは、必ず出て来るわね。後は通商連合国とサンクト聖教国は既に傭兵を大量に雇い入れているわ。サンクト聖教国は宗派の違う帝国の1億の民を靡かせるいい機会だと思うでしょうから、どういう動きをするのか興味深いわ」
「メーガン。聖教国は戦うのか?」
「いえ、聖職者を大量に派遣して兵士以外の方の治療と保護を行う筈です。傭兵も聖職者の護衛が主な仕事ですね」
「それって、帝国の教会勢力と揉めないのか?」
「帝国の教会は、権力との結びつきは強いのでこういう非常事態の時に民衆よりも軍を優先すると思うのよね、聖職者の性格によっても対応に違いは出るでしょうけど」
「当面は、俺達は『ヨミノクニ』に集中しよう。一週間から10日程度は掛かると思うから、その頃にはかなり状況が変わるんじゃないかな?」
「そうですね。私達が特定勢力に力を貸す事は避けたいし、手を出すなら私達が今後の帝国の面倒を見ると言う、覚悟が必要になります。レオネアもその辺りを、よく考えておきなさい?」
「うん。解ったよ」
そんな話をしながらも、オメガはアケボノの上空に到着し、雲の上にぽっかりとその真っ白な頂を覗かせる、霊峰フジの上空に差し掛かる。
「ジュウベエ。『アマノイワト』は何処だ」
「フジの中腹の真北にある」
細かな操船では、一番操縦した時間が長いレオネアの方が得意なので、ガンダルフから操縦を替わったレオネアが、ゆっくりと高度を落として着陸態勢に入る。
ジュウベエの言うとおりに直径30mを超す、巨大な岩が中腹に見えて来た。
その岩の手前はちょっとした広場の様になっていて、社も建っている。
「ここで間違いないんだな?」
「ああ」
「で? どうやって、この『アマノイワト』を動かすんだ?」
「動かすなんて無理だ。切り開く」
「マジか……」
オメガをアルファたちとガンダルフへ頼み、俺達は船を降り、巨大な『アマノイワト』の前に並んだ。
ジュウベエが【絶壊刀】を構え、風をその六角棒に纏わせ、50mにも渡る風の刃を作り出す。
「チェストオオオオォオオオオオオ!!」
気合一閃。
縦横斜めと四度の斬撃が『アマノイワト』を切り裂き、八つの岩塊に分かれた岩戸が崩れ落ちた。
まぁ俺も心配だからレオネアと一緒に、ブリッジにはずっと居たけどね。
「ガンダルフ。ドワイランド近辺には古代遺跡は無いのか?」
「聞かぬの? カインが求める様な物があるのか?」
「アルファたちが言うには、今推進装置に使っている黄金のヒュドラ『シグマ』って言うんだけど、それ以外にも高軌道ゴーレムが存在していて、付け替えが出来るらしいんだよな」
「それは、興味深いな。じゃがそれだと、その高軌道ゴーレムが無いと飛空船の推進装置は確保できないと言う事なのか?」
「その辺りの事は俺じゃ解らないよ。それこそガンダルフ達の領域だろ?」
「まぁそうじゃな。古代文明の真似をするだけでなく、さらに優れた物を生み出して見せるぞ」
「そいつは楽しみだ」
「カイン。もしさ、ガンダルフとアイシャが飛空船を完成させたら、僕たちにも作って貰ってもいいのかな?」
「レオネア。俺は別に古代技術を独り占めしようなんて思って無いぞ? それに作るのは俺じゃ無くてガンダルフだからな」
「うーん…… なんて言うかさ。カインは欲がなさすぎるよ。もっと貪欲にならないと、独立して国を起こすような事は出来ないと思うよ?」
「国はそこまでこだわりは無いんだけどな、俺がやりたいのは亜人だからと言って簡単に奴隷にされる様な法律を世界中で破棄させる事だから」
「でもさ、この間ジュウベエも言ってたでしょ。今まで僕たちは一緒に行動しなかったのは、国を別れて存在する事で、戦力の均衡を保たせていたって」
「ああ、確かに言っていたな」
「逆に言えば、僕たちが集まった状態で各国に対して命令すれば、実際逆らえる程の戦力を持った国は、ギルド連合加盟国には存在しないんだよ」
「恐ろしいな」
「だからさ、今回の『ヨミノクニ』を終わらせたら、ちょっと帝国の内乱に介入して見ない?」
「俺は戦争には興味ない」
「そう言うと思ったけど、戦争で被害を受けるのは、一般民衆だからね? 兵士や傭兵がいくら死のうが、自分の意志で戦争に参加してるんだから、勝手だけど戦争を嫌っている人たちの保護は、して上げたいと思わないかい?」
「レオネア、凄く良い意見だとは思う。正に王の考え方だな。でも俺は、自分の目の前に居て、手が届く範囲の、笑顔が見える範囲の人の幸せを考える事が精一杯だ。レオネアやジュウベエ、メーガンがそうしたいなら、それでいいんじゃないか? 俺が手伝う必要があれば手伝うから」
「ふーん。僕は君がリーダーの方が良いと思ったんだけどな?」
「だが断る!」
「まぁいっか。僕も人を率いるなんて事は苦手だから、誰か相応しい人が出てくればいいんだけどね」
そんな話をしてると、メーガンも話に加わって来た。
「周辺の国の動き方が心配ですね。帝国の南に国境を接するサラザール王国と、南西のカーライル共和国辺りは、必ず出て来るわね。後は通商連合国とサンクト聖教国は既に傭兵を大量に雇い入れているわ。サンクト聖教国は宗派の違う帝国の1億の民を靡かせるいい機会だと思うでしょうから、どういう動きをするのか興味深いわ」
「メーガン。聖教国は戦うのか?」
「いえ、聖職者を大量に派遣して兵士以外の方の治療と保護を行う筈です。傭兵も聖職者の護衛が主な仕事ですね」
「それって、帝国の教会勢力と揉めないのか?」
「帝国の教会は、権力との結びつきは強いのでこういう非常事態の時に民衆よりも軍を優先すると思うのよね、聖職者の性格によっても対応に違いは出るでしょうけど」
「当面は、俺達は『ヨミノクニ』に集中しよう。一週間から10日程度は掛かると思うから、その頃にはかなり状況が変わるんじゃないかな?」
「そうですね。私達が特定勢力に力を貸す事は避けたいし、手を出すなら私達が今後の帝国の面倒を見ると言う、覚悟が必要になります。レオネアもその辺りを、よく考えておきなさい?」
「うん。解ったよ」
そんな話をしながらも、オメガはアケボノの上空に到着し、雲の上にぽっかりとその真っ白な頂を覗かせる、霊峰フジの上空に差し掛かる。
「ジュウベエ。『アマノイワト』は何処だ」
「フジの中腹の真北にある」
細かな操船では、一番操縦した時間が長いレオネアの方が得意なので、ガンダルフから操縦を替わったレオネアが、ゆっくりと高度を落として着陸態勢に入る。
ジュウベエの言うとおりに直径30mを超す、巨大な岩が中腹に見えて来た。
その岩の手前はちょっとした広場の様になっていて、社も建っている。
「ここで間違いないんだな?」
「ああ」
「で? どうやって、この『アマノイワト』を動かすんだ?」
「動かすなんて無理だ。切り開く」
「マジか……」
オメガをアルファたちとガンダルフへ頼み、俺達は船を降り、巨大な『アマノイワト』の前に並んだ。
ジュウベエが【絶壊刀】を構え、風をその六角棒に纏わせ、50mにも渡る風の刃を作り出す。
「チェストオオオオォオオオオオオ!!」
気合一閃。
縦横斜めと四度の斬撃が『アマノイワト』を切り裂き、八つの岩塊に分かれた岩戸が崩れ落ちた。
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