美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

TB

文字の大きさ
88 / 104

第88話 『ヨミノクニ』ダンジョン②

しおりを挟む
 ジュウベエの一撃で『アマノイワト』は開かれ『ヨミノクニ』への入口が現れる。

「五百年ぶりの侵入者だ。どんながされるんだろうな?」
「ジュウベエ。このダンジョンの情報は何もないのか?」

「ああ、入って行った者が誰も戻ってこないから封印されたダンジョンだからな。内部情報は何もない」
「Sランクダンジョンだとして『絶望の谷』と同じだとすれば、二百階層迄あっても、不思議はない。食料やポーションは、在庫はしっかりあるから、面倒な戦闘は出来るだけ避けつつ、進むぞ」

「解った。斥候はカインに任せて良いんだな?」
「ああ。ヨミノクニの名前からして、相性が良さそうなのはフィルだな。俺のすぐ後ろはフィルで、レオネア、チュール、メーガン、ジュウベエの順で進むぞ」

「解った」

 このダンジョンは……
 今まで体験して来たダンジョンと随分様子が違った。

 真っ暗な空間に、白く輝く階段だけが延々と続く。
 時折現れる踊り場に踏み入れると、アンデット系とレイス系統の敵が湧く。

 この手の敵には、フィルの聖魔法は強烈に相性がいい。
【浄化】! ほぼこの一言で終わる。

 メーガンの天使スタイルの羽根攻撃も十分に有効手段だろう。
 恐らくだが、踊り場に着くたびに、一層とカウントされているのだと思う。

 そしてこの初日で、五十層ほど降りたと思う。
 一応チュールに、踊り場を通った階数をカウントさせている。

 ここで休憩を取る事にした。

 普通なら野営という所だが……
 メーガンの無振動馬車を持って来ていた。

 一応交代で外の見張りは立てるが、馬車の中は二十名は楽にゆったりできる、リビングルームである。

 快適極まりない。
 魔導具完備で、温かいお茶を淹れながら初日の感想を聞く。

「どうだ? フィル。きつくは無いか?」
「お兄ちゃんのお握り食べながらだから、全然平気だよ」

「そうか。それならよかった」
「てかさ、この先はどうするのカイン」

「レオネアはどうするべきと思う?」
「私は、三班に別れるべきだと思うわ」

 メーガンとレオネアは班を分けて降りる事を提案して来た。

 そう…… この先の階段は下りの階段が三つに別れていたのだ。
 まっすぐと、右と左に同じ様に階段が下に伸びている。

 みんなで一か所を降りる場合と、どちらがリスクが低いかは解らないが、ここはレオネア達の言葉に乗ってみよう。

「解った。六人だから二人ずつでいいな。敵との相性を考えたら、俺とチュール。レオネアとフィル。メーガンとジュウベエで別れて貰って良いか?」
「何でその組み合わせなんだ?」

「敵との相性を考えると、生活魔法使いの俺はほぼ万能で対応出来るし、メーガンとフィルはそもそもがここの敵との相性がいいから、楽に進める筈だ」
「そうか、どうせならレオネアと一緒が良かったが、ここはカインに従おう」

「恐らくだがな、進行速度を合わせないとまずい気がするんだ。フィルとメーガンが同じ組だと、メーガン達だけが突出すると思う」
「進行速度はどうやって合わすのかな?」

「魔導通信機は使えてるから、踊り場が来るたびに、敵を倒したら連絡を入れる様にしよう」
「了解」

 馬車の中で夕飯も作って普通にみんなで寛いで過ごした。
 恵まれてるな。

 一眠りして、いよいよ三班に分かれており始める。

「チュール。離れるんじゃあないぞ?」
「うん。カインと二人は久しぶりだから嬉しい」

 可愛い事言ってくれるぜ!

 そこから、相互に連絡を取りつつ30回目の踊り場に来た時だった。
 また道が分かれてる。
 今度は二方向だ。

 流石にチュール一人って訳には行かないよな……

 他の二組は、別れて一人ずつで降りると決めたそうだ。
 フィルは魔導通話機持って無いから、少し心配だが、アンデッドしか出て来ない情況なら大丈夫だろう。

 この階段一本道のダンジョンでは、罠の危険は少ないと思うしな。

 俺はチュールと二人で右側に伸びる階段を進んだ。
 そこから、二十回目の踊り場を降りた時だった。

 今までは明らかに違う雰囲気の敵が現れた。
 
 しかも喋りかけて来た。

(ヤバいなしゃべりかけてくる敵なんて、『絶望の谷』だとラスボスだけだったぞ……)

「我が名はカグツチ。先に進みたくば倒して見せよ」

 そう言い放つと同時に真っ赤に燃え盛る炎に包まれ、襲い掛かって来る。
「チュール。近寄るなよ」
「うん」

 火が相手なら、水一択だろ!
 その身体に纏わす火が消えるまで、水を浴びせ続けた。

「な。やめろ。水は、駄目じゃ…… 卑怯じゃぞ」

 思ったより雑魚だった……

 火が消えた所で、びしょ濡れのカグツチを凍らせて氷像にしてやった。
 すると、水晶の乗った台座が現れる。

 ヤバイな…… 触ると間違いなく転移させられそうだ。
 でも…… ラスボスでは無かったぽい。
 問題は、二つに分かれた道を片方しか攻略してない事だ。
 
 他の連中が対処できたかどうかが心配だから、情報が入るのを待とう。
 場合によっては、戻ってもう一か所も攻略の必要がある。

 そして、五分後にメーガンから連絡が入る。

「アマテラスと名乗る女性型のレイスが相手だったわ。問題無かったですけど、今は現れたクリスタルボールに触れて、広場に辿り着いたわ。あ、カイン。フィルさんもここに来ました」
「お、それは良い情報だ。俺の方はチュール一人で戦わせる訳にいかないから、一緒に来たし一か所行ってない場所があるんだ。先にチュールをそこに行かせる」

「解りました」

 チュールに水晶玉を触らせると、その姿は消えて…… 予想通りと言うか、水晶玉も消えた。

「メーガン。チュールはそっちに辿り着いたか?」
「ええ。大丈夫です。今姿を現したわ。後、ジュウベエとレオネアも辿り着きました」

「解った。俺は、今から一度分岐点まで戻って、もう一本の階段を下りる」
「了解したわ。こちらで待ってますから何かあったら連絡お願いね」


しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...