異世界召喚?そんなこと望んでません!元の世界に帰してください!

翡翠と太陽

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19.私の仕事

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    私は、「メルトル村の緑   レイ」として、この村に受け入れもらい、安全快適に生活していた。

    マーゴットさんに出会ってから3ヶ月が過ぎた。

    この間に、私のこの村での役割を見つけ、その都度報酬をもらって生活していた。報酬といっても、ほとんどは野菜とかお肉とか卵とかの食料だ。これが一番有難い、嬉しい。

    私が多少魔法が使えるということはノアさんに伝え、その魔法を少しだけ使って仕事をしていた。

    力仕事は遠慮なく声を掛けてと村中の人に伝え、今では大量に材木を運んだり、岩を動かしたりとか、なんなら物置ごと動かす時もある。

    最初のうちは皆さん優しいから、
レイちゃんにそんなことはさせられないと言って遠慮していたけど、私が何もせず荷馬車を馬ごと浮かせて向きを変えたら、誰も何も言わず頼んでくれるようになった。

    要は、なんでも屋さんになったのだ。

    壊れた台車を新しく作り直したりとか、土を掘り起こして畑を広げたりだとか、高齢だからと今まで出来なくて諦めていたことを片っ端から全部やった。
    私の存在価値はそれしかないから。

    皆さん凄く優しいから、それはそれは本当に喜んでくれて、私もこの村の住人として少しずつ認めて貰えているようで嬉しかった。

    村にある唯一の食堂、『カイル食堂』にもほぼ毎日通っている。

    ご主人のカイルさんと奥さまのララさんが2人でやっているお店で、ここのミートパイが本当に美味しい。世界一美味しい。毎日食べたいくらい美味しい。
 またぽっちゃりに戻ってしまいそうで、週3回くらいで我慢している。

    お金の無い私がなぜ食べさせてもらえるかと言うと、私が大好きだったスイーツのレシピと引き換えに、ご馳走になっているのだ。

    一番最初に、この世界にもサツマイモとそっくりなお芋があって、これの存在を知った時、すぐにスイートポテトが食べたいと思ったのがきっかけだった。

 魔法で再現出来ても栄養も無いから村の皆さんに食べてもらうわけにはいかないし、カイルさんに作り方を説明して作ってもらった。

    これが村中で流行りまくった。
    今までお芋は食べたいけど、のどに詰まりやすいからって、高齢になると積極的には食べなかったらしい。
 だけどこれなら滑らかで美味しいって言ってくれた。余りがちだったお芋が美味しいスイーツになったのだ。

    月に一度来る商人さんたちも凄く気に入ってくれて、お土産にしたいくらいだって言ってたけど、持ち帰るには日持ちしないから無理だった。
 
   でもメルトルに来る楽しみが増えたって言ってくれて、今度はスイーツの材料も運んでくれる約束をした。

    その他にも高齢の皆さんでも食べられそうな、プリン、スポンジケーキ、フルーツタルト、クレープのレシピも渡したら、ララさんが大喜びで、もう永久に顔パスで好きなものを注文して良いことにしてくれた。嬉しい…!

    スイーツだけじゃなくて、今度は食事系も思い出してレシピを書き留めておこう。

    ノアさんにもたまに、カイル食堂でばったり会って一緒に食事をしたりする。
 ノアさんはなんだかんだ忙しいらしく、家で自炊はしないそうだ。

    「レイ、サイモン爺さんが腰が痛くて高いところの物が取れないって言ってたんだ。部屋をどうにか工夫してあげれないかな」

    「あー野菜を乾燥させるってこの前言ってたから、それかな?わかりました!この後すぐ行きますね。でも腰が痛いのも心配ですね」


    私が大聖女というのは、村の人には言わないつもりだ。
 
   もし何かあったとき、私をかくまったとして村の皆さんが罪に問われることになったら、生きていけない。

    でも、高齢者の多いこの村で一番必要なのは治療なのだ。
    皆さんどこかしら痛かったり、持病があったりして、商人さんが薬を持ってきてくれなければ、体調が悪化してしまう人もいる。

    派手に治療をして目立ってしまうと、私の存在がバレて村の皆さんに迷惑が掛かるかもしれないという、目も当てられない裏目展開は避けたい。

    でもその前に、
    私は今のところ治療の魔法がまったく使えない。
 前にカイルさんが芋を切るときに指を切ってしまい、試しに治して欲しいとお願いしたが少しも治らなかった。

    治療の魔法、こっそり使えるようになりたいな。サイモン爺さんの痛みも取ってあげたい。

    魔法は今でも色々と練習している。
    今までは声に出して呟いていたのが、声に出さず念じるだけで叶うようになった。

    そして、私の最強の防御、カプセルバリアを他人にも個別に使えるようになった。

    これは、マーゴットさんと森に草を取りに行ったとき、地面にある蜂の巣に気が付かなくて、襲われそうになって必死に発動したら出来た。

    マーゴットさんが、
「蜂が跳ね返されてるよ…」って、蜂よりカプセルバリアの仕組みの方を怖がっていた。マーゴットさんを守れて良かった。

    この話しを、私に仕事の依頼に来たノアさんに興奮気味で話したマーゴットさん越しに、物凄く不振な目でジーッと見られた。

    そして、その後かなり色々、細かく、延々と、誤魔化し無しで白状させられた。
    途中カプセルバリアを発動しようかなと思った。

    「レイ、お前の噂は王都ではかなり広まっている。大聖女様が召喚されたと。でもいなくなったとは聞いてないから、徹底して箝口令を敷いているんだろうな。王家は今頃必死でお前を探しているはずだ」

    「まさか!だって今さらですよー、1ヶ月間誰ひとり来なかったんですよ?すごく嫌われていたし、必要ないんですよ私なんか」

    その後、ノアさんは少し考え込むと自分の家に帰って行った。
    派手に魔法を使うなよと言って。


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