異世界召喚?そんなこと望んでません!元の世界に帰してください!

翡翠と太陽

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71.最悪な報せ

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 翌日、朝食後に食堂から貴賓室に移動し、ノアさんご家族に私の召喚から今までのことを話した。

 「なんて酷い…許せないわ、ユストルの王家はなんて愚かなの!?今に始まったことでは無いけど」

 「うむ、レイ殿、ユストルに住む理由はあるのか?なにもそんな愚かなものが治める国などに住む必要は無かろう。ザイカラルではいつでもそなたを受け入れる準備は出来ておるぞ?」

 優しい…あの人たちもこれくらい人の気持ちがわかるなら良かったのに。

 「ありがとうございます、有り難いお言葉です。今私は結婚を控えており、辺境伯領での仕事もしております。それを放り投げてというわけにはなかなか…」

 テーブルの上には地図が置いてある。

 「レイ殿の婚約者は辺境伯当主のハルバード·メイザー殿だな」

 「……んんっ、んん……」

 「ん?どうした?ルーシャス」

 「お父様、ヘタレは無視してくださいませ」

 「シャ、シャルロッテ~……」

 ルーシャス様は昨日の晩餐会からかなり様子がおかしい。大丈夫だろうか?チラッとノアさんを見ると、微笑んで気にするなと首を横に振った。

 「うーん、レイ殿は争い事は嫌いなのだな?それなら独立してもらうしかないな」

 独立?どういうことだろう?

 そこに慌てた様子の皇帝陛下の側近が入って来た。

 「……なんと愚かな。まだ過ちを繰り返すか。レイ殿…至急辺境の地に戻られたほうが良い。ハルバード殿の行く方がわからなくなったと報せがきた」

 嘘…ハルが?行方不明……?嘘だ。

 「レイ、レイ?帰ろう、俺も付いて行く。レイ、大丈夫だ、アイツは強いから」

 頭の中が真っ白だった。

 「ノア、わかってるな?すぐに連絡しろ、レイ殿に何かあってからでは遅い。国境で待機している。エルドレッド、ルーシャス、出兵の準備をしろ」

 「「「御意」」」


 ハル、ハル…どうしよう、どうしたらいいの!?

 「レイ、聞こえるか?落ち着け、辺境の城に帰ろう、いいな?」

 「ノアさん…はい、帰ります」

 瞬間移動した先はメルトル村だった。違う… ここじゃない…

 「おや、レイとノアじゃないか、あんた久しぶりだね」

 「マーゴット婆さん、ちょっとレイを頼む」

 「おや、ノアが走っていったよ。レイ、レイ?どうしたんだい?」

 「マーゴットさん、どうしよう、ハルがハルが行方不明だって…私どうしたらいいの……?」

 「なんだって?行方不明!?あんた落ち着きな、なんのためにあんたは居るんだい?正しく戻すためだろ?」

 正しく戻す…?私が……

 「レイ、昨日このメルトル村の周りに王家の近衛兵が来たそうだ。お前の結界があるから村には入れなかったが、しばらく周囲をウロついて中に入れろと騒いでいたらしい」

 どういうこと!?私を探しに来たの?
 なんなの!なにがしたいの!?
 この村の人たちを傷付けたら許さない。

 「レイ、辺境の城に行こう」

 
 「マーゴットさん、絶対に村の外に出ないようにって……皆んなに言っておいて…」


 え?ここどこ…また…

 「レイ、ここは辺境の城の中庭だ、城の中に入ろう、落ち着け、大丈夫だ」

 どうしよう…行きたいところにも行けない…!ハル…!ハル!のところに行きたいのに…!

 ノアさんが私を片手で抱え走り出し、城の中に入るとそこには真っ青な顔をしたブリジットさんがいた。


 「あぁ!レイ様……ご当主様が……ご当主様が……!」

 ハル…?嫌だ…どうしよう…

 「ブリジットさん、誰か説明できる人は?」

 「エリック様がいらしてます…!」


 エリックさんから聞いた話しがこうだ。

 第二王子サイラスが、私とハルにバカにされたと激怒し、ハルを人質に私を従わせるようだと。
 ハルと親しくしている文官さんの娘さんを誘拐し、その文官さんが王宮にハルを呼び出し、ハルに媚薬を飲ませ王女イザベラのおもちゃとして与える。
 ハルには、その文官さんの娘さんを無事に返して欲しければ従えと言い、そして私にはハルを生きて返して欲しいなら、サイラスの正妃になるようにと私を脅し、私が拒絶する度に、ハルの腕から順に切り落としていくと。

 「辺境の地の領民も数人拐われたようです…家族が帰って来ないと訴えていると報告が…」

 「なんて奴だ…!…レイ行こう、王宮へ」

 「…ノアさん、娘さんと…領民の方たちを助けないと……」

 震えてうまく喋れない……
 
 「レイ、居場所がわからない… 恐らくは自分の近くに、王宮のどこかに隠していると思うが、闇雲に探している時間は無い」


 許さない、いつまでもいつまでも人を傷付ける愚かな人たち…


 

 玉座の間に足を組んで偉そうに座るサイラスが、楽しそうに笑っていた。
 ハルは?ハルはどこ…!?
 

 「やあ、来たね、ミレイ?私の妻、待っていたよ?あぁやっぱり君は美しいね、私の妻にぴったりだ。おいでミレイ、私の―――」

 ドオオォーーーッッン!!
 
 「………っ!…どうしたっ!何が起きた!…誰か説明しろ!!」

 ゴゴゴォォドォーーーッッッン!!!

 「サイラス様!王宮の東側の外壁が破壊されています!!」
 「南の塔が崩れ落ちたそうです!!」

 「クソッ!こんな時にっ!!敵国か!?どこの国だ!調べろ!!」

 ドドオオォーーーッッン!!!

 「うわぁーっっ!!離れが崩れ落ちましたっ!!」

 「何をしている!反撃するんだ!!敵国のいる方に兵を集中させろ!!」

 ドッカァァーーーーッン!!

 「サイラス様!どこにも敵国の兵が見えないと、城壁の兵から報告が………」

 ゴゴゴオォーーーッッ!!!

 「バカなっ!敵国じゃなければなんなんだっ!!」

 「西側の城壁も崩れましたーっ!!」

 「サイラス様!!王宮が崩れますっっ!!避難してください!!」

 ドオオオォーーーーッッン!!

 「………もしかして、…ミレイ?お前の仕業か……?」

 ドオオォーーーッッン!!

 「……許さない、私の名を呼ぶことは許さないと言ったはずよ!!ハルはどこ?ハルを連れてきなさいっ!!じゃなきゃお前ごとこの城全部潰してやるっ!!!」

 ドッカアァァァーーーーッッン!!!

 「……やめろ、やめるんだ、ミレイ…」

 ドオオオオォーーーーッン!!!

 「私の名前を呼ぶなっ!!!何度言えばわかる!!許さない!!絶対に!!お前は…お前だけは…」

 「……わかった!!もう呼ばないっ!!わかったから!やめてくれー!!」

 「うるさいうるさいうるさい!!!この害虫っ!!無能な役立たずっ!!絶対に許さない!!!ハルはどこだ!ハルを返せっっ!!!」

 「―――レイ!!やめるんだっ!ハルを見つけた!城を壊したら出られなくなる!!レイ!落ち着けっ!!」

 ドオォオオォーーーーーッッン!!!

 「……サイラス様っ!!これ以上は城がもちません!!早く退避をー!!」

 「バカな聖女だ!!城と一緒に潰れてしまえ!!!………ぐわっっ!!……や…やめろ……頼む……!」
 
 「許さない!許さない!!許さないっ!!私からすべてを奪ったお前たちは絶対に許さない!!!殺してやる!!」

 「美麗!やめるんだ!!俺だ、ハルバードだ!!俺はここにいる!!美麗!」

 ドオオォーーーッッン!!!

 「絶対に許さないっ!!こんな国潰れて無くなってしま―――――


 美麗、やめろ、落ち着け、私だクリスティーナだ。それは言ってはならない。
 そうすれば、お前の大事な村も辺境の地も家族も吹き飛ぶぞ、
 美麗、落ち着け。

 (許さない!!あいつが、ハルを、ハルを……!許さない!殺してやる、あいつらみんな殺してやる!!)

 美麗、ハルバードは無事だ、ノアが助けた、ちゃんと生きてる、どこにも怪我はない。
 美麗、聞こえるか、落ち着くんだ。

(うっ…うっうっ…どうしてっ!……私が、私が何をしたって言うのっ!?こんな、こんな目に遭わなきゃならない程、私が何をしたっていうのよっ!?どうして?どうして?どうして?………もう、誰か、助けて………私が何をしたって……言うの………?)

 美麗、少し眠るんだ。大丈夫、寝て起きたらまた元に戻ってるから…安心して眠るんだ……


 








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