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92.私たちの幸せ [終]
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あれから私と山川さんは、驚くくらい順調にお付き合いしていた。
お互い食べることが好きで、映画を観たり本を読むことも好きで、会話がなくても心地良い存在だった。
私はやはり、この体型だと健康にも良くないと思い直し、夜にウォーキングを始めた。
するとお父さんが、夜中に美麗を一人で歩かせられないと付き合ってくれることになり、私の体重は減り、お父さんの健康診断の数値も良くなった。
山川さんとお付き合いを始めて1年経った頃には、20キロ近く痩せた。痩せてみて思った、私、太り過ぎてた……。痩せてもまだ65キロくらいある。153cmなのに。
でも少しずつ痩せていくと、山川さんが異様に心配した。
「美麗大丈夫?もう無理して痩せなくていいよ?そんなこと頑張らなくて良いんだから」
と言われた。
お付き合いを始めて半年くらいした時に、初めて山川さんの家にお泊りした。私を抱き締めながら言ってくれると嬉しかった。
そしてお付き合いを始めて2年後に私たちは結婚した。
体重はなんとか60キロにまで落とし、ドレスもサイズをお直ししなくて良いものを着れた。
プロポーズされたのは、初めて一緒にスイーツを食べに行って、付き合って欲しいと言われた公園だった。
その時と同じベンチに座ると、山川さんが私をじっと見ていた。
そして座っている私の前に跪くと、
「美麗、俺と結婚して下さい。俺は生涯美麗ただ一人を愛して、大切にします。どうか俺と一緒に生きていって欲しい」
と言って私に手を出した。
嬉しかった、私が山川さんと結婚出来るなんて…
「はい、私も遥翔を幸せにします。よろしくお願いします」
と山川さんの手を取った。
山川さんは立ち上がり、私の横に座りゆっくりと私を抱き締めた。
……っ!…泣いてるの?
「遥翔…?」
「美麗、ありがとう、すごく嬉しくて…」
それから遥翔に不思議な話を聞いた。信じなくていいから聞いて欲しいと。
初めて私を見たのは社員食堂だった。おいしそうにランチ定食を食べてる私を見て、とても懐かしい気持ちになった。会ったこともない、それなのにどこかで会っていたような感覚がした。
そして、症例発表の時に私に会ってみたくて受け付けの係にしてもらった。
私と会って話してみると、やっぱりどこかで会って話したことがある、この感覚、心が穏やかになりとても楽しかった。
この子と一緒に居たいと思った。この穏やかで可愛いらしい子のそばにずっと居たい。早く決断させないと、横から奪われても困ると思いあの時は強引に付き合うと言わせてしまった。
でも後悔していない。一緒に居るだけで癒やされる、ますます愛情が湧いてきた。不思議なくらい、この子と一緒にいることが必然なんだと思った。
「わからないんだ、美麗を見た時、絶対にこの子と付き合いたい、付き合ってみたら、この子と絶対に結婚したいって思った。不思議でしょ?一目惚れ、で済まされない感情だったんだ。でも大正解だった。俺は今、人生で一番幸せだよ」
そんなことを言われたら、もう涙が止まらなかった。
私には一目惚れとか運命の人とかはよくわからないけど、でも目の前のこの人がこんなに嬉しい事を言ってくれて、この人を幸せにしたいと思うには充分だった。
だから…と遥翔が続けた言葉にまた泣いてしまった。
「俺は美麗がどんな姿であっても、美麗が好きなんだ。そこを忘れないで欲しい。美麗の幸せが俺の幸せなんだから」
綺麗に晴れた6月の日曜日、私たちは結婚式をした。
遥翔のご両親がいないので、身内と極親しい人だけを呼んでささやかな式にした。
私の先輩で遥翔の同期の渡部さんも来てくれた。
「おお!岡本!おめでとう!お前もドレスを着ると大人だな」
「ありがとうございます、渡部さん。私をなんだと思ってたんですか?」
「え?うーん、…妹?」
「おい渡部、俺の奥さんをからかうなよ?」
「おー、遥翔、おめでとう!俺の大事な後輩を頼むぞ」
「もちろんだ」
二人は抱き合って笑っていた。
その日はとても気持ちの良い天候で、参列した皆さんも穏やかに楽しそうにしてくれていて本当に良かった。
「あっ、ねーちゃんあそこ見ろ、虹が出てる!」
裕太が…裕太が…私をねーちゃんと呼んでくれた…!
「え?どこ?……ホントだ!晴れてるのにね…」
空に大きな虹がかかっていた。
でもなぜだろう、不思議に思えなかった。
それから私はすぐに子供が授かり、産休を取った。
春に近づく季節に、元気な男の子を産んだ。
面会に来たお父さんは、その男の子を抱き、ずっと泣いていた。それを見て私もお母さんも涙が止まらなかった。
「美麗、ありがとう、頑張ってくれて、俺に家族を増やしてくれてありがとう…」
遥翔も涙をポロポロと流した。
遥翔が泣いたのを見たのは、この時と、後に私の両親が旅立った時だけだった。
その時に、俺は美麗を見送るまで長生きするからね、美麗を見送ったらすぐに美麗のもとに逝くよ、と言った。
「遥翔、この子の名前どうしようか?」
「俺、考えてきたんだけど、
優翔ってどうかな…?女の子だったら美麗の名前から1文字付けようと思ってたけど、男の子だから俺の翔を入れて、この子の顔を見たら凄く優しい顔してたから…」
「優翔、山川優翔、すごくいいね!ゆうとくん… ありがとう遥翔、すごくいい名前!優翔くんにしよう?」
私たちは遥翔が不思議な出会いと感じ、でもそれは必然だったというほど、それから本当に幸せな人生だった。
平凡だけど、穏やかで平和で健康な人生を過ごした。
私の人生はどうだったと聞かれたら、間違いなく幸せだったと即答出来るくらい……。
出産後、お父さんは毎日のように優翔に会いに来ては、私にスイーツも買ってくるので、体重が戻りつつあるのが怖かった……。
そして、この何十年後かに、優翔が私達も驚くような偉業を成し遂げることをまだ誰も知らない。
この大切な家族を私が幸せにしていけますようにと願った。
お互い食べることが好きで、映画を観たり本を読むことも好きで、会話がなくても心地良い存在だった。
私はやはり、この体型だと健康にも良くないと思い直し、夜にウォーキングを始めた。
するとお父さんが、夜中に美麗を一人で歩かせられないと付き合ってくれることになり、私の体重は減り、お父さんの健康診断の数値も良くなった。
山川さんとお付き合いを始めて1年経った頃には、20キロ近く痩せた。痩せてみて思った、私、太り過ぎてた……。痩せてもまだ65キロくらいある。153cmなのに。
でも少しずつ痩せていくと、山川さんが異様に心配した。
「美麗大丈夫?もう無理して痩せなくていいよ?そんなこと頑張らなくて良いんだから」
と言われた。
お付き合いを始めて半年くらいした時に、初めて山川さんの家にお泊りした。私を抱き締めながら言ってくれると嬉しかった。
そしてお付き合いを始めて2年後に私たちは結婚した。
体重はなんとか60キロにまで落とし、ドレスもサイズをお直ししなくて良いものを着れた。
プロポーズされたのは、初めて一緒にスイーツを食べに行って、付き合って欲しいと言われた公園だった。
その時と同じベンチに座ると、山川さんが私をじっと見ていた。
そして座っている私の前に跪くと、
「美麗、俺と結婚して下さい。俺は生涯美麗ただ一人を愛して、大切にします。どうか俺と一緒に生きていって欲しい」
と言って私に手を出した。
嬉しかった、私が山川さんと結婚出来るなんて…
「はい、私も遥翔を幸せにします。よろしくお願いします」
と山川さんの手を取った。
山川さんは立ち上がり、私の横に座りゆっくりと私を抱き締めた。
……っ!…泣いてるの?
「遥翔…?」
「美麗、ありがとう、すごく嬉しくて…」
それから遥翔に不思議な話を聞いた。信じなくていいから聞いて欲しいと。
初めて私を見たのは社員食堂だった。おいしそうにランチ定食を食べてる私を見て、とても懐かしい気持ちになった。会ったこともない、それなのにどこかで会っていたような感覚がした。
そして、症例発表の時に私に会ってみたくて受け付けの係にしてもらった。
私と会って話してみると、やっぱりどこかで会って話したことがある、この感覚、心が穏やかになりとても楽しかった。
この子と一緒に居たいと思った。この穏やかで可愛いらしい子のそばにずっと居たい。早く決断させないと、横から奪われても困ると思いあの時は強引に付き合うと言わせてしまった。
でも後悔していない。一緒に居るだけで癒やされる、ますます愛情が湧いてきた。不思議なくらい、この子と一緒にいることが必然なんだと思った。
「わからないんだ、美麗を見た時、絶対にこの子と付き合いたい、付き合ってみたら、この子と絶対に結婚したいって思った。不思議でしょ?一目惚れ、で済まされない感情だったんだ。でも大正解だった。俺は今、人生で一番幸せだよ」
そんなことを言われたら、もう涙が止まらなかった。
私には一目惚れとか運命の人とかはよくわからないけど、でも目の前のこの人がこんなに嬉しい事を言ってくれて、この人を幸せにしたいと思うには充分だった。
だから…と遥翔が続けた言葉にまた泣いてしまった。
「俺は美麗がどんな姿であっても、美麗が好きなんだ。そこを忘れないで欲しい。美麗の幸せが俺の幸せなんだから」
綺麗に晴れた6月の日曜日、私たちは結婚式をした。
遥翔のご両親がいないので、身内と極親しい人だけを呼んでささやかな式にした。
私の先輩で遥翔の同期の渡部さんも来てくれた。
「おお!岡本!おめでとう!お前もドレスを着ると大人だな」
「ありがとうございます、渡部さん。私をなんだと思ってたんですか?」
「え?うーん、…妹?」
「おい渡部、俺の奥さんをからかうなよ?」
「おー、遥翔、おめでとう!俺の大事な後輩を頼むぞ」
「もちろんだ」
二人は抱き合って笑っていた。
その日はとても気持ちの良い天候で、参列した皆さんも穏やかに楽しそうにしてくれていて本当に良かった。
「あっ、ねーちゃんあそこ見ろ、虹が出てる!」
裕太が…裕太が…私をねーちゃんと呼んでくれた…!
「え?どこ?……ホントだ!晴れてるのにね…」
空に大きな虹がかかっていた。
でもなぜだろう、不思議に思えなかった。
それから私はすぐに子供が授かり、産休を取った。
春に近づく季節に、元気な男の子を産んだ。
面会に来たお父さんは、その男の子を抱き、ずっと泣いていた。それを見て私もお母さんも涙が止まらなかった。
「美麗、ありがとう、頑張ってくれて、俺に家族を増やしてくれてありがとう…」
遥翔も涙をポロポロと流した。
遥翔が泣いたのを見たのは、この時と、後に私の両親が旅立った時だけだった。
その時に、俺は美麗を見送るまで長生きするからね、美麗を見送ったらすぐに美麗のもとに逝くよ、と言った。
「遥翔、この子の名前どうしようか?」
「俺、考えてきたんだけど、
優翔ってどうかな…?女の子だったら美麗の名前から1文字付けようと思ってたけど、男の子だから俺の翔を入れて、この子の顔を見たら凄く優しい顔してたから…」
「優翔、山川優翔、すごくいいね!ゆうとくん… ありがとう遥翔、すごくいい名前!優翔くんにしよう?」
私たちは遥翔が不思議な出会いと感じ、でもそれは必然だったというほど、それから本当に幸せな人生だった。
平凡だけど、穏やかで平和で健康な人生を過ごした。
私の人生はどうだったと聞かれたら、間違いなく幸せだったと即答出来るくらい……。
出産後、お父さんは毎日のように優翔に会いに来ては、私にスイーツも買ってくるので、体重が戻りつつあるのが怖かった……。
そして、この何十年後かに、優翔が私達も驚くような偉業を成し遂げることをまだ誰も知らない。
この大切な家族を私が幸せにしていけますようにと願った。
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