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馬車に揺られることおよそ一時間、ベルーラは馬車の動きが静かに止まったのに気づいた。
(はあ・・・やっと着いた)
まだどこへも出かけていないのに、既に疲労困憊のベルーラは、心の中で大きなため息をついた。それも無理はない。馬車の中では、なぜかベルーラの隣にぴったりと座り、終始ご機嫌な様子でキリウが陣取っていたのだから。
(いくら記憶がないとはいえ、こんなにも人って変われるものなの?)
これまでのキリウは、会うたびに仏頂面で、部屋の空気をいつも重苦しくしていた。それが今では、かつてのキリウの面影などほとんど残っていない。
【閑話】
『あ、あのーキリウ様・・・その、なんか近くないですか?』
『そうか?』
互いの服が触れ合うほどの距離に翻弄されているベルーラとは対照的に、キリウ自身はまるで気にする素ぶりもなかった。
直に触れているわけではないが、キリウの体温が自分の身体に流れるような感覚に襲われ、緊張が走る。更に、馬車の中という閉鎖された空間も、べルーラの心拍数を上昇させている原因の一つになっていた。
ベルーラの言葉を受けて、キリウが不思議そうに顔をこちらに向けると、その何気ない仕草すら神々しさを帯びていた。その瞬間、キリウの放つ美の衝撃にベルーラの心臓は撃ち抜かれ、爆散したのは言うまでもない・・・。
『顔が赤いが、もしかして体調が悪かったのか!?』
その様子を見て、キリウは慌てたように心配げな顔で身を寄せた。あまりの近さにベルーラは反射的に顔を背ける。しかし、キリウはべルーラの頬を両手で包み、静かに向きを戻させると、徐に額を重ねた。
『熱はないようだな。もし体調が悪いのなら、少し休める場所に寄ろう』
『だッ、大丈夫ですッッ!ただ厚着しすぎただけですから!!』
『・・・そうか、ならいいが・・・それはそうとして前にも言ったが、様はいらない。キリウだ』
『す、すみません』
厚着なんてしていないのに、ベルーラは真っ赤な顔で言い訳を並べながら、そっと横へとずれる。拳二つ分、ほんのそれだけの距離だが、違和感なく取ることに成功した。・・・と思ったのも束の間、キリウがすぐに詰め寄ってきた。
『朝が早かったせいで、眠いんじゃないか?着いたら起こすから俺に寄りかかって、眠ればいい』
「ありがとう・・・ございます」
(寝られるわけがない・・・。心臓が・・・壊れる)
キリウは片手でベルーラの頭をそっと自分の肩に引き寄せた。その瞬間、彼の目が自然と柔らかく細まり、愛おしさに満ちた視線がベルーラへと注がれる。
対照的に、ベルーラは汗が滝のように流れ落ちる感覚に襲われ、ひとときも休むことができなかった。
【閑話休題】
馬車でのやり取りを終え、ようやくその閉ざされた空間から解放されたベルーラは、思わず安堵の息を漏らした。
御者が馬車の扉を開けると、先に降りたキリウが手を差し伸べ、ベルーラを優しくエスコートした。
「あ、ありがとう・・・ございます」
「危ないから、足元に気を付けて」
これまでベルーラは、キリウから気遣いの言葉をかけられたことなど一度もなかった。エスコートされたことも数えるほどにはあったが、それらはすべて形式的で、どこかよそよそしく、心のこもらないものだった。けれども、今のキリウからはそうした義務的な空気がまるで感じられず、ベルーラの胸には複雑な思いが渦を巻いた。
キリウの案内で少し歩くと、広場へと到着した。そこは大勢の人で賑わい、活気に満ちていた。空はどんよりとしていたが、広場の熱気がそれを打ち消すかのようだった。
「ここは・・・」
そこは、以前ノアと話していた中央区あたりで開催されているスプリングマルシェの会場だと気付いた。
「実は以前、ベルには内緒で、侯爵家の使用人に頼み、花束を渡す際に子爵家の侍女にベルが行きたい場所を聞いてもらっていたんだ」
「え!?そうだったんですか」
(ノアったら私に内緒で)
「俺はベルが好むものを知らなすぎる。それならいつもキミの側で世話をしている者に尋ねた方がいいかもしれないと思ってね。とは言っても、これからはベルの好むものをしっかり把握していくつもりだよ」
まさか自分の知らないところで、そんなことが進められていたとは、べルーラ自身思いもしなかった。どこか気恥ずかしそうに笑うキリウの姿を見た瞬間、ベルーラの胸はきゅっと締めつけられた。
ベルーラは、軽く深呼吸を挟み会場を見渡すと、家族連れや若い女性たち、恋人同士など、さまざまな人々で賑わっていた。軽装のベルーラは、貴族令嬢らしい雰囲気を感じさせず、良くも悪くも周囲に自然と溶け込んでいた。
一方、軽装のキリウは、どんな姿をしていても滲み出るような麗しさを隠しきれず、通りすがる女性たちの視線を引き寄せていた。
しかし、当の本人はまったく気にしていない様子で、隣に立つベルーラの横で、きょろきょろと辺りを見渡していた。
「色んな露店があって、どこに行こうか迷ってしまうな。それにしても、結構な人混みだな。逸れでもしたら大変だ」
子どものように無邪気な笑顔を浮かべたキリウは、ベルーラの手をそっと握り、軽やかな足取りで人混みへと歩き出した。彼の手から伝わる温かさがベルーラの体中に巡り、恥ずかしさから思わず俯いてしまった。
「ベルはどんなところに行きたい?」
自身の頭上から耳心地の良い声色が降り注ぎ、べルーラはゆっくりと視線をキリウへと向けた。
「そうですね・・・手作りの雑貨のお店とか気になりますね。あと珍しい花の種が売ってるお店があれば寄ってみたいですし。それから、最新のスイーツのお店もあるって聞いたので、そこにも・・・。す、すみません。なんか、自分のことばっかり。キリウ様はどこか、気になるところございますか?」
我に返ったベルーラは、恥ずかしさと気まずさが混じった複雑な表情を浮かべていた。キリウはベルーラの問いかけに、ほんの少し目を細め、静かに首を横に振った。
「いや、俺はこういったのはあまり得意ではないから、ベルが行きたいところを言ってくれた方がいい」
キリウの気遣いに感謝しつつ、ベルーラはそっと周囲に目をやった。ふいに視線の先に、こぢんまりとした可愛らしい店が目に飛び込んできた。
店頭にはガラス細工のアクセサリーが整然と並び、棚の一角には可愛らしい雑貨も置かれていた。
ベルーラが店に目を向けているのに気づいたキリウは、そっと彼女の手を引き、人混みを縫うように歩き出した。
「いらっしゃいませ!うちの商品は全て手作り品でこの世に一点ものとなっておりまーす♪」
ベルーラと年の近そうな女店主が、明るい声で二人に声をかけてきた。
「きれー・・・」
ベルーラは一つの髪留めを手に取り、しばらくの間、じっと眺めていた。
小さな花々が枝に連なるようなデザインで、角度を変えるたびに色の微妙な変化が見て取れた。細部には繊細な銀細工も施されていて、光に当たるときらりと輝いた。
「今日は少しあいにくの天気ですが、お日さまが出ているときや明るい部屋では、反射して七色に輝き、いっそう美しく見えますよ♪」
「へえ、素敵ですね」
「それにこれ、季節限定で、その季節の旬の花をモチーフに作ってるんです♪ちなみに、この花の花言葉は“愛らしさ”。恋人に贈るにはピッタリな商品ですよ♡」
店主はベルーラに説明しながら、ちらりとキリウの方へ視線を向け、満面の笑みを浮かべた。
「ああ、ベルにとてもよく似合ってる。店主、それを買おう」
「え、あ、いえ自分で買い「毎度ありーーッッ♪♪」
キリウの言葉にベルーラは慌てて断ろうとするが、店主の大きな声に遮られてしまい、あっという間にラッピングされてしまった。
「お客様、どーぞ♪それにしても素敵な方ですね♡お客様を見つめる目が本当に愛されてるなーって、伝わってこっちまでドキドキしちゃいましたよー」
「は、はあ・・・」
興奮した様子の女店主は、困惑したベルーラに商品を手渡し、耳元でこっそりと囁いた。
「お二人には、さっきの商品と一緒にペアのチャームもおまけで入れておきました♪これ、パパラチアサファイアをイメージしたガラス細工なんです。ちなみに石言葉は“一途な愛”です。お二人にぴったりだなーと思って♪あとでぜひ、お相手の方にも渡してくださいね♡」
「・・・ありがとうございます」
店主の満面の笑顔に押されつつ、ベルーラはぎこちなく微笑み、店を後にした。
(愛されてる・・・か。だったらいいのにな)
店主の言葉を思い出し、胸の奥がじんわりと熱くなる。その一方で、どこか不安な気持ちも混じっていた。
「気に入ったものが買えて、よかったね」
上の空になっていたベルーラは、キリウの声でハッと我に返った。
「え、ええ。ありがとうございます」
ベルーラは微笑み、キリウから初めて贈られたプレゼントを、愛おしそうに胸に抱きしめた。
(はあ・・・やっと着いた)
まだどこへも出かけていないのに、既に疲労困憊のベルーラは、心の中で大きなため息をついた。それも無理はない。馬車の中では、なぜかベルーラの隣にぴったりと座り、終始ご機嫌な様子でキリウが陣取っていたのだから。
(いくら記憶がないとはいえ、こんなにも人って変われるものなの?)
これまでのキリウは、会うたびに仏頂面で、部屋の空気をいつも重苦しくしていた。それが今では、かつてのキリウの面影などほとんど残っていない。
【閑話】
『あ、あのーキリウ様・・・その、なんか近くないですか?』
『そうか?』
互いの服が触れ合うほどの距離に翻弄されているベルーラとは対照的に、キリウ自身はまるで気にする素ぶりもなかった。
直に触れているわけではないが、キリウの体温が自分の身体に流れるような感覚に襲われ、緊張が走る。更に、馬車の中という閉鎖された空間も、べルーラの心拍数を上昇させている原因の一つになっていた。
ベルーラの言葉を受けて、キリウが不思議そうに顔をこちらに向けると、その何気ない仕草すら神々しさを帯びていた。その瞬間、キリウの放つ美の衝撃にベルーラの心臓は撃ち抜かれ、爆散したのは言うまでもない・・・。
『顔が赤いが、もしかして体調が悪かったのか!?』
その様子を見て、キリウは慌てたように心配げな顔で身を寄せた。あまりの近さにベルーラは反射的に顔を背ける。しかし、キリウはべルーラの頬を両手で包み、静かに向きを戻させると、徐に額を重ねた。
『熱はないようだな。もし体調が悪いのなら、少し休める場所に寄ろう』
『だッ、大丈夫ですッッ!ただ厚着しすぎただけですから!!』
『・・・そうか、ならいいが・・・それはそうとして前にも言ったが、様はいらない。キリウだ』
『す、すみません』
厚着なんてしていないのに、ベルーラは真っ赤な顔で言い訳を並べながら、そっと横へとずれる。拳二つ分、ほんのそれだけの距離だが、違和感なく取ることに成功した。・・・と思ったのも束の間、キリウがすぐに詰め寄ってきた。
『朝が早かったせいで、眠いんじゃないか?着いたら起こすから俺に寄りかかって、眠ればいい』
「ありがとう・・・ございます」
(寝られるわけがない・・・。心臓が・・・壊れる)
キリウは片手でベルーラの頭をそっと自分の肩に引き寄せた。その瞬間、彼の目が自然と柔らかく細まり、愛おしさに満ちた視線がベルーラへと注がれる。
対照的に、ベルーラは汗が滝のように流れ落ちる感覚に襲われ、ひとときも休むことができなかった。
【閑話休題】
馬車でのやり取りを終え、ようやくその閉ざされた空間から解放されたベルーラは、思わず安堵の息を漏らした。
御者が馬車の扉を開けると、先に降りたキリウが手を差し伸べ、ベルーラを優しくエスコートした。
「あ、ありがとう・・・ございます」
「危ないから、足元に気を付けて」
これまでベルーラは、キリウから気遣いの言葉をかけられたことなど一度もなかった。エスコートされたことも数えるほどにはあったが、それらはすべて形式的で、どこかよそよそしく、心のこもらないものだった。けれども、今のキリウからはそうした義務的な空気がまるで感じられず、ベルーラの胸には複雑な思いが渦を巻いた。
キリウの案内で少し歩くと、広場へと到着した。そこは大勢の人で賑わい、活気に満ちていた。空はどんよりとしていたが、広場の熱気がそれを打ち消すかのようだった。
「ここは・・・」
そこは、以前ノアと話していた中央区あたりで開催されているスプリングマルシェの会場だと気付いた。
「実は以前、ベルには内緒で、侯爵家の使用人に頼み、花束を渡す際に子爵家の侍女にベルが行きたい場所を聞いてもらっていたんだ」
「え!?そうだったんですか」
(ノアったら私に内緒で)
「俺はベルが好むものを知らなすぎる。それならいつもキミの側で世話をしている者に尋ねた方がいいかもしれないと思ってね。とは言っても、これからはベルの好むものをしっかり把握していくつもりだよ」
まさか自分の知らないところで、そんなことが進められていたとは、べルーラ自身思いもしなかった。どこか気恥ずかしそうに笑うキリウの姿を見た瞬間、ベルーラの胸はきゅっと締めつけられた。
ベルーラは、軽く深呼吸を挟み会場を見渡すと、家族連れや若い女性たち、恋人同士など、さまざまな人々で賑わっていた。軽装のベルーラは、貴族令嬢らしい雰囲気を感じさせず、良くも悪くも周囲に自然と溶け込んでいた。
一方、軽装のキリウは、どんな姿をしていても滲み出るような麗しさを隠しきれず、通りすがる女性たちの視線を引き寄せていた。
しかし、当の本人はまったく気にしていない様子で、隣に立つベルーラの横で、きょろきょろと辺りを見渡していた。
「色んな露店があって、どこに行こうか迷ってしまうな。それにしても、結構な人混みだな。逸れでもしたら大変だ」
子どものように無邪気な笑顔を浮かべたキリウは、ベルーラの手をそっと握り、軽やかな足取りで人混みへと歩き出した。彼の手から伝わる温かさがベルーラの体中に巡り、恥ずかしさから思わず俯いてしまった。
「ベルはどんなところに行きたい?」
自身の頭上から耳心地の良い声色が降り注ぎ、べルーラはゆっくりと視線をキリウへと向けた。
「そうですね・・・手作りの雑貨のお店とか気になりますね。あと珍しい花の種が売ってるお店があれば寄ってみたいですし。それから、最新のスイーツのお店もあるって聞いたので、そこにも・・・。す、すみません。なんか、自分のことばっかり。キリウ様はどこか、気になるところございますか?」
我に返ったベルーラは、恥ずかしさと気まずさが混じった複雑な表情を浮かべていた。キリウはベルーラの問いかけに、ほんの少し目を細め、静かに首を横に振った。
「いや、俺はこういったのはあまり得意ではないから、ベルが行きたいところを言ってくれた方がいい」
キリウの気遣いに感謝しつつ、ベルーラはそっと周囲に目をやった。ふいに視線の先に、こぢんまりとした可愛らしい店が目に飛び込んできた。
店頭にはガラス細工のアクセサリーが整然と並び、棚の一角には可愛らしい雑貨も置かれていた。
ベルーラが店に目を向けているのに気づいたキリウは、そっと彼女の手を引き、人混みを縫うように歩き出した。
「いらっしゃいませ!うちの商品は全て手作り品でこの世に一点ものとなっておりまーす♪」
ベルーラと年の近そうな女店主が、明るい声で二人に声をかけてきた。
「きれー・・・」
ベルーラは一つの髪留めを手に取り、しばらくの間、じっと眺めていた。
小さな花々が枝に連なるようなデザインで、角度を変えるたびに色の微妙な変化が見て取れた。細部には繊細な銀細工も施されていて、光に当たるときらりと輝いた。
「今日は少しあいにくの天気ですが、お日さまが出ているときや明るい部屋では、反射して七色に輝き、いっそう美しく見えますよ♪」
「へえ、素敵ですね」
「それにこれ、季節限定で、その季節の旬の花をモチーフに作ってるんです♪ちなみに、この花の花言葉は“愛らしさ”。恋人に贈るにはピッタリな商品ですよ♡」
店主はベルーラに説明しながら、ちらりとキリウの方へ視線を向け、満面の笑みを浮かべた。
「ああ、ベルにとてもよく似合ってる。店主、それを買おう」
「え、あ、いえ自分で買い「毎度ありーーッッ♪♪」
キリウの言葉にベルーラは慌てて断ろうとするが、店主の大きな声に遮られてしまい、あっという間にラッピングされてしまった。
「お客様、どーぞ♪それにしても素敵な方ですね♡お客様を見つめる目が本当に愛されてるなーって、伝わってこっちまでドキドキしちゃいましたよー」
「は、はあ・・・」
興奮した様子の女店主は、困惑したベルーラに商品を手渡し、耳元でこっそりと囁いた。
「お二人には、さっきの商品と一緒にペアのチャームもおまけで入れておきました♪これ、パパラチアサファイアをイメージしたガラス細工なんです。ちなみに石言葉は“一途な愛”です。お二人にぴったりだなーと思って♪あとでぜひ、お相手の方にも渡してくださいね♡」
「・・・ありがとうございます」
店主の満面の笑顔に押されつつ、ベルーラはぎこちなく微笑み、店を後にした。
(愛されてる・・・か。だったらいいのにな)
店主の言葉を思い出し、胸の奥がじんわりと熱くなる。その一方で、どこか不安な気持ちも混じっていた。
「気に入ったものが買えて、よかったね」
上の空になっていたベルーラは、キリウの声でハッと我に返った。
「え、ええ。ありがとうございます」
ベルーラは微笑み、キリウから初めて贈られたプレゼントを、愛おしそうに胸に抱きしめた。
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