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その日の講義が終わり、人の気配が消えた大講義室で、ベルーラはひとり物思いに耽っていた。新学期が始まり、気づけばキリウの事故から一ヶ月以上が過ぎていたが、状況は何ひとつ変わらないままだった。
記憶障害を除けばキリウの身体は全快しており、王宮での仕事に復帰してからは多忙を極め、最近はキリウの姿を見ることがなくなった。
そんな彼女の憂う気持ちに追い打ちをかけるように、どこでキリウの記憶障害を聞いたのか、同級生の令嬢たちが次々と近づいてきた。口では憐れみや慰めの言葉を並べながらも、その瞳の奥には、嘲りと打算の色がはっきりと見て取れた。
それでもベルーラは、彼女たちの偽善的な言葉に笑顔で応じてはいたが、気づけば心が疲弊していた。
「あ、こんなとこにいた。どした?暗い顔して。何か悩み事?」
ベルーラは、気怠げに机へ突っ伏していると、久しぶりに聞く懐かしい声が優しく降り注ぎ、ベルーラは思わず顔を上げた。
「オルバッ!」
ベルーラは驚き、勢いよく席から立ち上がった。オルバと呼ばれた青年は、クスリと笑うと隣の席に腰を下ろした。
「あはは、なーんだ元気だったか。心配して損したぁ」
ベルーラに親しげに話しかけてきた青年、オルバ・スクヴェルクは、キリウの実弟で学園が休みの間、異文化交流の名目で友好国へ短期留学していた。
彼も兄のキリウ同様、端正な顔立ちをしていて、学園でも人気が高い。どこか人を寄せつけない空気をまとっていた兄とは違い、穏和で柔らかな雰囲気の好青年。そして、一部の女生徒から“デス・スマイル”と呼ばれるほど、その微笑みに見つめられた者は、たちまち心を奪われてしまうのだった。
ただオルバ自身、女性に言い寄られるのは苦手で、唯一異性でちゃんと話せるのが、ベルーラだけだった。兄の婚約者という関係だけでなく、ベルーラとは同い年で気が合い、昔から姉弟のように親しかった。
ただその距離の近さゆえに、ベルーラとオルバの関係に嫉妬する女生徒は少なくはなかった。裏では、“背徳婚約者”、“見境ない売女”などと悪意ある言葉を囁く者もいた。
「びっくりした。いつこっちへ戻って来てたの?確かベルイワン公国だったわよね、どうだった?あの国は緑豊かで移民も多いと聞いたことがあるけど、住みやすそうな雰囲気だった?あと食べも、「ちょっ、ちょっと落ち着きなって」
矢継ぎ早に質問を浴びせようとするベルーラに対し、彼女の話を遮り、困った笑みを浮かべながらオルバは宥めた。
「帰って来たのは一週間ほど前かな。色々報告や手続きなんかで手間取っちゃってるうちに新学期が始まっちゃって。だから侯爵邸には帰らず、そのまま宿舎に戻ったんだ」
「そうだったんだ・・・あ、あのね、もちろん知ってるとは思うんだけど、キリウ様が」
久々の再会を心から喜びながらも、ベルーラが現状を伝えようとした瞬間、オルバはすべてを悟ったように静かに頷いた。
「実は、一報を聞いたとき、すぐに帰国するつもりだった。でもその時期、ベルイワン公国で季節性の病が流行しててね。深刻な病気じゃないんだけど、感染力が強くて、あっという間に広がったんだ。結局、落ち着くまで全国民に出国禁止令が出されてたんだよ」
「オルバは大丈夫だったの?」
「うん。実は、こっちでは珍しくない病なんだけど、向こうの人たちには免疫がなかったみたい。そのせいで、一気に広がっちゃったんだ。まあ、僕も一応、医学をかじってる身だから、少しでも役に立てればと思って帰国を延ばして手伝わせてもらってたんだ」
「そうだったの、大変だったね」
オルバの言葉にベルーラは、心配と安堵が入り混じったような表情を浮かべた。
「うん。タイミングが悪かったとはいえ、ベルたちが大変なときにそばにいられなくて、ごめんね」
申し訳なさそうに視線を向けるオルバに、ベルーラは強く首を横に振った。
「オルバが謝ることなんてないわ。それに、幸いキリウ様も今は元気にしているし」
「そっか、ありがとう」
ベルーラとの会話に少し違和感を感じつつも、オルバは、少し眉尻を下げ困ったような表情を滲ませながらニコリと微笑みを返した。
「さっきも言ったけど、帰国してからの手続きや身体検査があって、すぐ邸に戻れなかったんだ。大丈夫とはいえ、病原体が突然変異することもあるし、うちは王宮に出入りしているからね。だから、キリウ兄さんをはじめ、王宮に関わる人との接触は控えていたんだ。早く兄さんともゆっくり話したいんだけど」
そう話しながらオルバはゆっくり立ち上がると、そっとベルーラの手を取り、立たせた。
「空の色も変わってきてるし、そろそろ帰った方がいいんじゃない?」
「えぇ・・・そうね」
オルバの言葉に、ベルーラは窓の方へ一瞥した。夕空が少しずつ赤く染まり、空の色も変わり始めている。ベルーラは勉強道具を急いでロッカーに片付け、二人は迎えの馬車へ向かった。
(やっぱり、記憶喪失になる前のキリウ様とのやり取り、帰国したばかりのオルバには、まだ話さない方がいいのかな・・・。婚約解消の話なんてしたら、オルバもきっと動揺しちゃうよね。でも・・・)
オルバが歩きながら話す他愛もない会話も、ベルーラには頭に入らず、自問自答を続けていた。気づけば、無意識に彼の裾を掴んで立ち止まっていた。
「ベル?・・・どうした?」
急に裾を掴まれて驚いたオルバだったが、ベルーラの何か言いたげな様子に気づくと、柔らかく微笑んで優しい声をかけた。
「オルバ、あのね」
オルバに話そうとしたその瞬間、ベルーラは前から近づく人物の気配を感じた。西日の眩しさに目を細めたが、その歩き方の力強さで、すぐに見覚えのある人物だと分かった。
「お疲れ様、ベル。さっきモーリス邸に立ち寄ったら、まだ戻っていないっと聞いてね。ひとまず迎えの馬車は帰したから、俺の方の馬車に乗って帰ろう」
「え、あ・・・ちょっ」
張り付いた笑顔のキリウが目の前に現れ、ベルーラの意思も問わずオルバから引き離すように彼女の腕を掴んだ。キリウは、自分の方へ引き寄せようとしたが、瞬時にオルバからその腕を掴まれ、阻止されてしまった。
「久しぶりなのに随分だね、兄さん。可愛い弟に挨拶はなし?」
オルバが微笑むと、キリウは一瞬だけ険しい目を向けた。しかしすぐに口元に微笑を浮かべ、殺気立った空気を解いた。
「久しぶりだな、オルバ。いきなりすまなかった。帰りが遅いベルが心配で、焦って周りが見えていなかったんだ」
兄弟二人に挟まれ、ベルーラはどうしていいのかわからず、見上げながら交互に二人へ視線を送った。
「学園に来ているということは、もう軟禁生活からは解放されたんだな。積もる話はゆっくり邸で聞かせてもらうとして、まずはベルを送ってくる」
「ああ、わかったよ、兄さん」
オルバは、掴んでいるキリウの腕を離すと、穏やかに微笑んだ。キリウも同様に、弟に笑みを返す。
しかし何故か、モヤモヤとした空気が立ち込め、ベルーラは落ち着かない様子で二人の動向を無言のまま見つめた。そんな空気感に気づいたのか、オルバはベルーラに視線を落とし、彼女の頭に優しく手を乗せた。
「じゃあベル、気をつけてね。また学園で」
「う、うん。オルバも気をつけて」
オルバは手を軽く振り、ベルーラに笑いかけた。二人のささやかなやり取りを無表情で一瞥したキリウは、ベルーラの手首をしっかり握り、待機している馬車へと向かった。
ベルーラは思わず振り向き、オルバに目を向けたが、キリウの力強い手に導かれるまま馬車へと歩を進める。
そんな二人の後ろ姿を見つめながら、オルバは微笑みを消し、腕を組んで眉間に皺を寄せた。首をわずかに傾け、疑問の色を浮かべていた。
記憶障害を除けばキリウの身体は全快しており、王宮での仕事に復帰してからは多忙を極め、最近はキリウの姿を見ることがなくなった。
そんな彼女の憂う気持ちに追い打ちをかけるように、どこでキリウの記憶障害を聞いたのか、同級生の令嬢たちが次々と近づいてきた。口では憐れみや慰めの言葉を並べながらも、その瞳の奥には、嘲りと打算の色がはっきりと見て取れた。
それでもベルーラは、彼女たちの偽善的な言葉に笑顔で応じてはいたが、気づけば心が疲弊していた。
「あ、こんなとこにいた。どした?暗い顔して。何か悩み事?」
ベルーラは、気怠げに机へ突っ伏していると、久しぶりに聞く懐かしい声が優しく降り注ぎ、ベルーラは思わず顔を上げた。
「オルバッ!」
ベルーラは驚き、勢いよく席から立ち上がった。オルバと呼ばれた青年は、クスリと笑うと隣の席に腰を下ろした。
「あはは、なーんだ元気だったか。心配して損したぁ」
ベルーラに親しげに話しかけてきた青年、オルバ・スクヴェルクは、キリウの実弟で学園が休みの間、異文化交流の名目で友好国へ短期留学していた。
彼も兄のキリウ同様、端正な顔立ちをしていて、学園でも人気が高い。どこか人を寄せつけない空気をまとっていた兄とは違い、穏和で柔らかな雰囲気の好青年。そして、一部の女生徒から“デス・スマイル”と呼ばれるほど、その微笑みに見つめられた者は、たちまち心を奪われてしまうのだった。
ただオルバ自身、女性に言い寄られるのは苦手で、唯一異性でちゃんと話せるのが、ベルーラだけだった。兄の婚約者という関係だけでなく、ベルーラとは同い年で気が合い、昔から姉弟のように親しかった。
ただその距離の近さゆえに、ベルーラとオルバの関係に嫉妬する女生徒は少なくはなかった。裏では、“背徳婚約者”、“見境ない売女”などと悪意ある言葉を囁く者もいた。
「びっくりした。いつこっちへ戻って来てたの?確かベルイワン公国だったわよね、どうだった?あの国は緑豊かで移民も多いと聞いたことがあるけど、住みやすそうな雰囲気だった?あと食べも、「ちょっ、ちょっと落ち着きなって」
矢継ぎ早に質問を浴びせようとするベルーラに対し、彼女の話を遮り、困った笑みを浮かべながらオルバは宥めた。
「帰って来たのは一週間ほど前かな。色々報告や手続きなんかで手間取っちゃってるうちに新学期が始まっちゃって。だから侯爵邸には帰らず、そのまま宿舎に戻ったんだ」
「そうだったんだ・・・あ、あのね、もちろん知ってるとは思うんだけど、キリウ様が」
久々の再会を心から喜びながらも、ベルーラが現状を伝えようとした瞬間、オルバはすべてを悟ったように静かに頷いた。
「実は、一報を聞いたとき、すぐに帰国するつもりだった。でもその時期、ベルイワン公国で季節性の病が流行しててね。深刻な病気じゃないんだけど、感染力が強くて、あっという間に広がったんだ。結局、落ち着くまで全国民に出国禁止令が出されてたんだよ」
「オルバは大丈夫だったの?」
「うん。実は、こっちでは珍しくない病なんだけど、向こうの人たちには免疫がなかったみたい。そのせいで、一気に広がっちゃったんだ。まあ、僕も一応、医学をかじってる身だから、少しでも役に立てればと思って帰国を延ばして手伝わせてもらってたんだ」
「そうだったの、大変だったね」
オルバの言葉にベルーラは、心配と安堵が入り混じったような表情を浮かべた。
「うん。タイミングが悪かったとはいえ、ベルたちが大変なときにそばにいられなくて、ごめんね」
申し訳なさそうに視線を向けるオルバに、ベルーラは強く首を横に振った。
「オルバが謝ることなんてないわ。それに、幸いキリウ様も今は元気にしているし」
「そっか、ありがとう」
ベルーラとの会話に少し違和感を感じつつも、オルバは、少し眉尻を下げ困ったような表情を滲ませながらニコリと微笑みを返した。
「さっきも言ったけど、帰国してからの手続きや身体検査があって、すぐ邸に戻れなかったんだ。大丈夫とはいえ、病原体が突然変異することもあるし、うちは王宮に出入りしているからね。だから、キリウ兄さんをはじめ、王宮に関わる人との接触は控えていたんだ。早く兄さんともゆっくり話したいんだけど」
そう話しながらオルバはゆっくり立ち上がると、そっとベルーラの手を取り、立たせた。
「空の色も変わってきてるし、そろそろ帰った方がいいんじゃない?」
「えぇ・・・そうね」
オルバの言葉に、ベルーラは窓の方へ一瞥した。夕空が少しずつ赤く染まり、空の色も変わり始めている。ベルーラは勉強道具を急いでロッカーに片付け、二人は迎えの馬車へ向かった。
(やっぱり、記憶喪失になる前のキリウ様とのやり取り、帰国したばかりのオルバには、まだ話さない方がいいのかな・・・。婚約解消の話なんてしたら、オルバもきっと動揺しちゃうよね。でも・・・)
オルバが歩きながら話す他愛もない会話も、ベルーラには頭に入らず、自問自答を続けていた。気づけば、無意識に彼の裾を掴んで立ち止まっていた。
「ベル?・・・どうした?」
急に裾を掴まれて驚いたオルバだったが、ベルーラの何か言いたげな様子に気づくと、柔らかく微笑んで優しい声をかけた。
「オルバ、あのね」
オルバに話そうとしたその瞬間、ベルーラは前から近づく人物の気配を感じた。西日の眩しさに目を細めたが、その歩き方の力強さで、すぐに見覚えのある人物だと分かった。
「お疲れ様、ベル。さっきモーリス邸に立ち寄ったら、まだ戻っていないっと聞いてね。ひとまず迎えの馬車は帰したから、俺の方の馬車に乗って帰ろう」
「え、あ・・・ちょっ」
張り付いた笑顔のキリウが目の前に現れ、ベルーラの意思も問わずオルバから引き離すように彼女の腕を掴んだ。キリウは、自分の方へ引き寄せようとしたが、瞬時にオルバからその腕を掴まれ、阻止されてしまった。
「久しぶりなのに随分だね、兄さん。可愛い弟に挨拶はなし?」
オルバが微笑むと、キリウは一瞬だけ険しい目を向けた。しかしすぐに口元に微笑を浮かべ、殺気立った空気を解いた。
「久しぶりだな、オルバ。いきなりすまなかった。帰りが遅いベルが心配で、焦って周りが見えていなかったんだ」
兄弟二人に挟まれ、ベルーラはどうしていいのかわからず、見上げながら交互に二人へ視線を送った。
「学園に来ているということは、もう軟禁生活からは解放されたんだな。積もる話はゆっくり邸で聞かせてもらうとして、まずはベルを送ってくる」
「ああ、わかったよ、兄さん」
オルバは、掴んでいるキリウの腕を離すと、穏やかに微笑んだ。キリウも同様に、弟に笑みを返す。
しかし何故か、モヤモヤとした空気が立ち込め、ベルーラは落ち着かない様子で二人の動向を無言のまま見つめた。そんな空気感に気づいたのか、オルバはベルーラに視線を落とし、彼女の頭に優しく手を乗せた。
「じゃあベル、気をつけてね。また学園で」
「う、うん。オルバも気をつけて」
オルバは手を軽く振り、ベルーラに笑いかけた。二人のささやかなやり取りを無表情で一瞥したキリウは、ベルーラの手首をしっかり握り、待機している馬車へと向かった。
ベルーラは思わず振り向き、オルバに目を向けたが、キリウの力強い手に導かれるまま馬車へと歩を進める。
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