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「はぁー、なんか腹減ったな。そう言えばこの辺りに確か美味いラーメン屋が・・・」
基希がスマホを弄りながら店の場所を調べていると、史果にスーツの袖を引っ張られ視線を移す。俯きいつも以上に小さくなっている史果に基希は握り拳にした手で頭をこつんと軽く叩いた。
「ったく、何縮こまってんだよ」
「・・・先程はありがとうございました。あと黙って会ってすみませんでした」
今にも消えそうな声色で史果は今出せるだけの声量で基希に伝えた。その様子に基希は、ふぅと軽く息を吐き口元を引き締めた。
「・・・いろいろ話すこともあるし、とりあえず今から俺ん家行くか」
「へっ?あっ!」
唐突に告げられた史果は顔を上げるとそのまま腕を引かれ、捕まえたタクシーに押し込まれあれよあれよと基希が住む家へと連れて行かれてしまった。
「・・・あの、おうちってここですか?」
タクシーから降り見上げる首が痛くなりそうな程のタワーマンションが目の前に聳え立っていた。首と一緒に口も半開きで固まる史果を隣で見ている基希が思わず噴き出した。
「その顔、朝と同じ」
おなかを抱え声を押し殺しながら笑う基希にムッとしたが、それよりも藤基希という人間が益々わからなくなり頭の中が混乱し何から聞けばいいのか全く処理できないでいた。
「こんなとこに突っ立てても仕方ないから、とりあえず部屋行くぞ」
エントランスに入る前にあるセキュリティに基希は自身の指先を認証すると自動ドアのロックが解除され中へと入って行く。史果はその後ろを怖々としながらエントランスホールへと後ろから着いて行くと、そこは高級ホテルのロビーを彷彿とさせる開放感のある空間が目の前に現れ、史果はまた開きそうになった口元を必死に両手で押さえた。
「藤様、おかえりなさいませ」
「あぁ、ただいま」
カウンター越しに佇む初老の紳士が基希に挨拶をしていた。
(高級タワマンにコンシェルジュに・・・)
史果は益々混乱し眩暈を起こしそうになった。基希は、隣でプチパニックを起こしている史果の手を握り、呆れ顔で自身の住む階へと向かうためポケットからカードキーを出し、エレベーターホールにあるセンサーに通した。直ぐ来たエレベーターに乗り込むとまたしても中で指紋認証し、そのまま部屋まで一直線で基希が住む階へと上がっていった。
「はい、どうぞ」
ドアを開けると広々とした玄関が現れそのまま部屋へと通された。リビングに繋がるドアを開けるとリビングの窓一面夜景がパノラマのように現れ、圧倒される史果はキャパオーバーになり既に思考回路は停止されている状態になっていた。リビングは30畳ほどありそうに見え、物はあまり置いてはいないが設置されたテーブルやソファ、家具などからセンスがあるのが見受けられた。基本モノトーンで合わせられた色合いは落ち着き居心地の良い部屋に感じた。
ど庶民の史果から見てもわかるほどの高級感ある革張りのソファに誘導され言われるがまま遠慮がちにちょこんと座った。
「ちょっと待ってて」
そう言うと基希はキッチンから淹れたてのコーヒーを史果に手渡し、自身はまたもキッチンへと姿を消した。渡されたコーヒーを一口飲みながら再び部屋を見渡した。
(いくらうちの会社、上場企業とは言えこんな凄いとこ住めたりするの?!いやいや、藤さんもしかしてなんかヤバいことしてるんじゃ・・・佐伯さんのこともあるし)
本人に聞けないため悶々と疑問符だけが脳内を占めていると、基希が皿二つ乗せたトレーを持って戻って来た。史果の座るテーブルの前に美味しそうな匂いを漂わせるトマトベースの海老入りクリームパスタが置かれそれを見たと同時におなかが鳴り、恥ずかしさから両手でおなか回りを押さえた。
「藤さんて料理出来るんですか?!」
「まぁ簡単なものなら。腹減ってんだろ、あったかいうちに食えよ」
基希は史果の隣に座ると早速パスタを口に運び、史果もフォークでパスタを掬い口に入れた。
「何ですか?!めちゃくちゃ美味しいじゃないですか!しかもこんな短時間に!!これお金取れますよ!」
隣で美味しそうに食べる史果に基希も口元が綻び、それに気づかれまいと再びパスタを口に放り込んだ。
「ご馳走様でした。あと片付けは私がするんで、藤さんは休んでてください」
「おぉ、悪いな。そしたら朝までに送らないといけないメールだけやってていいか?」
「はい。どうぞ、どうぞ」
史果は汚れた食器を食洗器にかけ、片付けが終わると先ほどのリビングに戻った。ふと見るとパソコンの電源はつけたままで基希がソファでうたた寝する姿が視界に入ってきた。元々童顔な顔立ちからか寝てる姿だけを見ると天使のような綺麗な顔立ちに史果はそおっと傍に近づき膝立ちのまま思わずまじまじと見つめた。
(確かにこれじゃあ周りの女性たちはほっとかないよね。・・・にしても、なんであの場所がわかったんだろ?それに佐伯さんの奥様と知り合いっぽかったし・・・んー、謎だらけで聞きたいけど当の本人は眠っちゃってるし。それはそうと、ほんと羨ましい位整った顔だなー、睫毛も長いし)
史果は頬に落ちていた睫毛に気づき、そっと指先が頬に触れた瞬間、基希の目がパチッと開き史果は吃驚して後ろに尻餅をついてしまった。
「なーに?寝込み襲うなんて史果ちゃんのエッチー♡」
基希は目頭を押さえ欠伸をし背伸びをしながら姿勢を直すと、固まっている史果を見つめ先程の天使は消え意地悪そうな悪魔のような笑みを浮かべていた。
「ち、違いますっ、睫毛ついてたんで取ろうとしただけで」
慌てながら弁解していると基希は史果の腕を引っ張りそのまま隣へ座らせた。
「それより、なんか聞きたいことだらけって顔してるな」
「そ、そうです!いっぱいありすぎて何から聞いていいか今整理します!」
史果は顎に手をやり、思考回路が停止していたものをもう一度呼び起こすべく疑問の順に従って基希にぶつけることにした。
「まず、今日なんであの場所に私がいることがわかったんですか?」
「あー、それね・・・」
そう言うと基希は史果に鞄に入っているスマホを出させそれを借りると、自分でインストールした記憶のないGPSアプリを目の前で見せられた。
「これウチの会社で開発中のアプリなんだけど同期に教えてもらってこの前、寝てる間試しにちゃちゃっと入れさせてもらった。ちなみに俺じゃないとアンインストールできないように設定しちゃったから♪史果、スマホにロックかけてなかったから助かったわー。まぁでもまさかこんなに早く役立つとは思わなかったけど」
悪びれもせず楽しそうに話す基希に何度目かの開いた口を晒し眩暈がしそうになるのを何とか踏ん張り、今度からはしっかりロックをしなきゃと心に決め、気を取り直し次の質問を投げかける。
「・・・居場所の件はとりあえずわかりました。佐伯さんの件はなんでわかったんですか?」
「それは、ひ・み・つ♡その代わり佐伯の奥さんとの関係だけ教えるよ。彼女、恭子さんは俺の大学の先輩なんだ。サークルが一緒で色々世話になった人なんだ。史果のこと調べてたらまさか佐伯に繋がるとは思ってもみなかったしその奥さんが彼女ってのも正直吃驚したよ、卒業してからは連絡取り合ってなかったからね」
まさか自身が勤める会社の後輩が結果騙されていたとはいえ、自分の知り合いの先輩の旦那との不貞を知ってしまったら正直穏やかではないであろう・・・いくら自分に興味を示さない相手とは言え、わかった上で自分と偽装恋人を決めたのか史果には理解できなかった。
「時間も時間だし、続きはまた明日ということで・・・」
脳内でぶつぶつと独り言のように呟いていると隣にいる基希からお開きの言葉を告げられ、ふと壁に掛けられている時計に視線を向けると終電の時間が迫っていた。
「もうこんな時間。じゃあ、一先ず私はこれで失礼します。ご飯、ご馳走様でした」
史果は慌てて立ち上がりお礼を言うと、脱いでいたジャケットを羽織り玄関へと向かおうとすると基希が急に立ち上がり史果の前に立ちはだかる。
「ここからじゃ電車間に合わないし、明日の朝送ってやるから今日は泊ってけよ」
基希は史果が肩にかけていた鞄をひょいっと奪い、取れないようわざと高く上に持ち上げ、史果が取り返そうと腕を伸ばしても身長差でなかなか取り戻すことができずにいた。
「はっ?いやいや、そういうわけにはいきませんよ。電車が無理ならタクシー拾うんで鞄返してくださいっ!」
「・・・史果さー、さっき謝ってたけど俺まだ許したわけじゃないよ?連絡きたら言えって言ったのに俺に黙って行っちゃうんだもんなー。頼りにならないと思われて、先輩としても男としてもショックだわー」
「な、そういうわけでは・・・そもそも藤さんがあんな変なことするから言いにくくなったんでしょうが!」
取り返そうと必死に何度もジャンプし取れない史果の腰を基希は空いている片手でぐいっと引き寄せ、身体を密着させられる。ふわりと香る男性用の香水が鼻腔を擽り史果の心拍数は一気に上がり緊張感が走る。
「ちょっとどこ触って」
「ふーん、俺のせいってことなんだー」
持っていた鞄を床に置き、史果の身体を逃がさないようにガッチリと両手でホールドされた。ニヤリと企んでいるような笑みを向けられ史果は得体の知れない恐怖から咄嗟に顔を背ける。
「そんなことは言って、ひゃっ!」
基希から耳に軽く息をかけられそのまま形に添って舐め上げらた。驚き、擽ったさ、羞恥が一遍に複数の情感に襲われ何とか離れようと藻掻けば藻掻くほど基希は意地悪な表情で更に身体を密着させ耳から項、首筋へとキスをし舌を這わせていく。
「・・・っん、やめ・・・ぁん、はぅン♡」
ちゅっ、ちゅっとリップ音を鳴らしながら基希は、史果が着ているジャケットを器用に脱がせブラウスの釦を上から一つ、二つと外し鎖骨が見えるよう肩越しまで服を広げた。史果は基希の背後に回っている自身の手で背中をバンバンと叩き抵抗を見せるが、全く効果なく甘い声だけが広い部屋に響き渡っていた。
「ほんと、もう・・・きゃっ」
少し基希の腕の力が緩んだ瞬間、史果は基希にソファへ押し倒され上から組み敷かれる。馬乗りのような状態になっている基希は付けていたネクタイを片手で外し、そのまま史果の両手首に素早く巻き付けた。
「なっ!何するんですか?!」
「俺の言うこと聞かなかったからお仕置き♡」
嬉しそうに笑顔で言いのける基希からは、またしても会社で絶対に見ることのない魔王のような悍ましい不穏な空気を纏い、今から自分の身に起こる状況に史果は固唾を飲み身構えることしかできなかった。
基希がスマホを弄りながら店の場所を調べていると、史果にスーツの袖を引っ張られ視線を移す。俯きいつも以上に小さくなっている史果に基希は握り拳にした手で頭をこつんと軽く叩いた。
「ったく、何縮こまってんだよ」
「・・・先程はありがとうございました。あと黙って会ってすみませんでした」
今にも消えそうな声色で史果は今出せるだけの声量で基希に伝えた。その様子に基希は、ふぅと軽く息を吐き口元を引き締めた。
「・・・いろいろ話すこともあるし、とりあえず今から俺ん家行くか」
「へっ?あっ!」
唐突に告げられた史果は顔を上げるとそのまま腕を引かれ、捕まえたタクシーに押し込まれあれよあれよと基希が住む家へと連れて行かれてしまった。
「・・・あの、おうちってここですか?」
タクシーから降り見上げる首が痛くなりそうな程のタワーマンションが目の前に聳え立っていた。首と一緒に口も半開きで固まる史果を隣で見ている基希が思わず噴き出した。
「その顔、朝と同じ」
おなかを抱え声を押し殺しながら笑う基希にムッとしたが、それよりも藤基希という人間が益々わからなくなり頭の中が混乱し何から聞けばいいのか全く処理できないでいた。
「こんなとこに突っ立てても仕方ないから、とりあえず部屋行くぞ」
エントランスに入る前にあるセキュリティに基希は自身の指先を認証すると自動ドアのロックが解除され中へと入って行く。史果はその後ろを怖々としながらエントランスホールへと後ろから着いて行くと、そこは高級ホテルのロビーを彷彿とさせる開放感のある空間が目の前に現れ、史果はまた開きそうになった口元を必死に両手で押さえた。
「藤様、おかえりなさいませ」
「あぁ、ただいま」
カウンター越しに佇む初老の紳士が基希に挨拶をしていた。
(高級タワマンにコンシェルジュに・・・)
史果は益々混乱し眩暈を起こしそうになった。基希は、隣でプチパニックを起こしている史果の手を握り、呆れ顔で自身の住む階へと向かうためポケットからカードキーを出し、エレベーターホールにあるセンサーに通した。直ぐ来たエレベーターに乗り込むとまたしても中で指紋認証し、そのまま部屋まで一直線で基希が住む階へと上がっていった。
「はい、どうぞ」
ドアを開けると広々とした玄関が現れそのまま部屋へと通された。リビングに繋がるドアを開けるとリビングの窓一面夜景がパノラマのように現れ、圧倒される史果はキャパオーバーになり既に思考回路は停止されている状態になっていた。リビングは30畳ほどありそうに見え、物はあまり置いてはいないが設置されたテーブルやソファ、家具などからセンスがあるのが見受けられた。基本モノトーンで合わせられた色合いは落ち着き居心地の良い部屋に感じた。
ど庶民の史果から見てもわかるほどの高級感ある革張りのソファに誘導され言われるがまま遠慮がちにちょこんと座った。
「ちょっと待ってて」
そう言うと基希はキッチンから淹れたてのコーヒーを史果に手渡し、自身はまたもキッチンへと姿を消した。渡されたコーヒーを一口飲みながら再び部屋を見渡した。
(いくらうちの会社、上場企業とは言えこんな凄いとこ住めたりするの?!いやいや、藤さんもしかしてなんかヤバいことしてるんじゃ・・・佐伯さんのこともあるし)
本人に聞けないため悶々と疑問符だけが脳内を占めていると、基希が皿二つ乗せたトレーを持って戻って来た。史果の座るテーブルの前に美味しそうな匂いを漂わせるトマトベースの海老入りクリームパスタが置かれそれを見たと同時におなかが鳴り、恥ずかしさから両手でおなか回りを押さえた。
「藤さんて料理出来るんですか?!」
「まぁ簡単なものなら。腹減ってんだろ、あったかいうちに食えよ」
基希は史果の隣に座ると早速パスタを口に運び、史果もフォークでパスタを掬い口に入れた。
「何ですか?!めちゃくちゃ美味しいじゃないですか!しかもこんな短時間に!!これお金取れますよ!」
隣で美味しそうに食べる史果に基希も口元が綻び、それに気づかれまいと再びパスタを口に放り込んだ。
「ご馳走様でした。あと片付けは私がするんで、藤さんは休んでてください」
「おぉ、悪いな。そしたら朝までに送らないといけないメールだけやってていいか?」
「はい。どうぞ、どうぞ」
史果は汚れた食器を食洗器にかけ、片付けが終わると先ほどのリビングに戻った。ふと見るとパソコンの電源はつけたままで基希がソファでうたた寝する姿が視界に入ってきた。元々童顔な顔立ちからか寝てる姿だけを見ると天使のような綺麗な顔立ちに史果はそおっと傍に近づき膝立ちのまま思わずまじまじと見つめた。
(確かにこれじゃあ周りの女性たちはほっとかないよね。・・・にしても、なんであの場所がわかったんだろ?それに佐伯さんの奥様と知り合いっぽかったし・・・んー、謎だらけで聞きたいけど当の本人は眠っちゃってるし。それはそうと、ほんと羨ましい位整った顔だなー、睫毛も長いし)
史果は頬に落ちていた睫毛に気づき、そっと指先が頬に触れた瞬間、基希の目がパチッと開き史果は吃驚して後ろに尻餅をついてしまった。
「なーに?寝込み襲うなんて史果ちゃんのエッチー♡」
基希は目頭を押さえ欠伸をし背伸びをしながら姿勢を直すと、固まっている史果を見つめ先程の天使は消え意地悪そうな悪魔のような笑みを浮かべていた。
「ち、違いますっ、睫毛ついてたんで取ろうとしただけで」
慌てながら弁解していると基希は史果の腕を引っ張りそのまま隣へ座らせた。
「それより、なんか聞きたいことだらけって顔してるな」
「そ、そうです!いっぱいありすぎて何から聞いていいか今整理します!」
史果は顎に手をやり、思考回路が停止していたものをもう一度呼び起こすべく疑問の順に従って基希にぶつけることにした。
「まず、今日なんであの場所に私がいることがわかったんですか?」
「あー、それね・・・」
そう言うと基希は史果に鞄に入っているスマホを出させそれを借りると、自分でインストールした記憶のないGPSアプリを目の前で見せられた。
「これウチの会社で開発中のアプリなんだけど同期に教えてもらってこの前、寝てる間試しにちゃちゃっと入れさせてもらった。ちなみに俺じゃないとアンインストールできないように設定しちゃったから♪史果、スマホにロックかけてなかったから助かったわー。まぁでもまさかこんなに早く役立つとは思わなかったけど」
悪びれもせず楽しそうに話す基希に何度目かの開いた口を晒し眩暈がしそうになるのを何とか踏ん張り、今度からはしっかりロックをしなきゃと心に決め、気を取り直し次の質問を投げかける。
「・・・居場所の件はとりあえずわかりました。佐伯さんの件はなんでわかったんですか?」
「それは、ひ・み・つ♡その代わり佐伯の奥さんとの関係だけ教えるよ。彼女、恭子さんは俺の大学の先輩なんだ。サークルが一緒で色々世話になった人なんだ。史果のこと調べてたらまさか佐伯に繋がるとは思ってもみなかったしその奥さんが彼女ってのも正直吃驚したよ、卒業してからは連絡取り合ってなかったからね」
まさか自身が勤める会社の後輩が結果騙されていたとはいえ、自分の知り合いの先輩の旦那との不貞を知ってしまったら正直穏やかではないであろう・・・いくら自分に興味を示さない相手とは言え、わかった上で自分と偽装恋人を決めたのか史果には理解できなかった。
「時間も時間だし、続きはまた明日ということで・・・」
脳内でぶつぶつと独り言のように呟いていると隣にいる基希からお開きの言葉を告げられ、ふと壁に掛けられている時計に視線を向けると終電の時間が迫っていた。
「もうこんな時間。じゃあ、一先ず私はこれで失礼します。ご飯、ご馳走様でした」
史果は慌てて立ち上がりお礼を言うと、脱いでいたジャケットを羽織り玄関へと向かおうとすると基希が急に立ち上がり史果の前に立ちはだかる。
「ここからじゃ電車間に合わないし、明日の朝送ってやるから今日は泊ってけよ」
基希は史果が肩にかけていた鞄をひょいっと奪い、取れないようわざと高く上に持ち上げ、史果が取り返そうと腕を伸ばしても身長差でなかなか取り戻すことができずにいた。
「はっ?いやいや、そういうわけにはいきませんよ。電車が無理ならタクシー拾うんで鞄返してくださいっ!」
「・・・史果さー、さっき謝ってたけど俺まだ許したわけじゃないよ?連絡きたら言えって言ったのに俺に黙って行っちゃうんだもんなー。頼りにならないと思われて、先輩としても男としてもショックだわー」
「な、そういうわけでは・・・そもそも藤さんがあんな変なことするから言いにくくなったんでしょうが!」
取り返そうと必死に何度もジャンプし取れない史果の腰を基希は空いている片手でぐいっと引き寄せ、身体を密着させられる。ふわりと香る男性用の香水が鼻腔を擽り史果の心拍数は一気に上がり緊張感が走る。
「ちょっとどこ触って」
「ふーん、俺のせいってことなんだー」
持っていた鞄を床に置き、史果の身体を逃がさないようにガッチリと両手でホールドされた。ニヤリと企んでいるような笑みを向けられ史果は得体の知れない恐怖から咄嗟に顔を背ける。
「そんなことは言って、ひゃっ!」
基希から耳に軽く息をかけられそのまま形に添って舐め上げらた。驚き、擽ったさ、羞恥が一遍に複数の情感に襲われ何とか離れようと藻掻けば藻掻くほど基希は意地悪な表情で更に身体を密着させ耳から項、首筋へとキスをし舌を這わせていく。
「・・・っん、やめ・・・ぁん、はぅン♡」
ちゅっ、ちゅっとリップ音を鳴らしながら基希は、史果が着ているジャケットを器用に脱がせブラウスの釦を上から一つ、二つと外し鎖骨が見えるよう肩越しまで服を広げた。史果は基希の背後に回っている自身の手で背中をバンバンと叩き抵抗を見せるが、全く効果なく甘い声だけが広い部屋に響き渡っていた。
「ほんと、もう・・・きゃっ」
少し基希の腕の力が緩んだ瞬間、史果は基希にソファへ押し倒され上から組み敷かれる。馬乗りのような状態になっている基希は付けていたネクタイを片手で外し、そのまま史果の両手首に素早く巻き付けた。
「なっ!何するんですか?!」
「俺の言うこと聞かなかったからお仕置き♡」
嬉しそうに笑顔で言いのける基希からは、またしても会社で絶対に見ることのない魔王のような悍ましい不穏な空気を纏い、今から自分の身に起こる状況に史果は固唾を飲み身構えることしかできなかった。
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