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基希との共同生活も数週間すぎ、初日にとんでもないハプニングを叩きつけられるもそれ以降は特に問題なく安定した生活を送っていた。
基希は知り合いの物件担当者に住所変更の手続き申請をし、その他の細かな手続きの書類等は基希が既に提出しといたと何故か事後報告された。同じ総務課の山下由利からは担当が違うからなのか特にこの件に関して追及されることはなかった。
「ふーみか♡」
「わっ?!吃驚した」
昼休憩時に本人確認の手続きを済ませ総務課を出た史果がエレベーターを待っていると背後から由利に抱きつかれた。
「ちょっとーあれから“天使様”とは順調ですかあ?もうーほんと羨ましいんだからー。私にもおこぼれ頂戴よー。誰か紹介してくれるように頼んでよー。あんなスペックの持ち主なんだしさぞ“お友だち”もすごいんだろうなー♡」
史果の頬をぐりぐりと人差し指で押し執拗く迫り矢継ぎ早に史果に言葉を投げつけてきた。
「もう離してよ。大体、基希さんの交友関係は知らないから彼みたいな人がいるかなんてわかんないよ」
「いやいや“類は友を呼ぶ”って言うし、絶対天使ネットワークは存在するよっ!!」
「はは・・・」
(あんな毒持ち天使が他にもいたらある意味世も末だわ・・・)
基希の内面を知り尽くしているだけに本性をぶちまけたくなる感情を必死に抑え、苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
残り数十分で昼休憩が終わる時刻になり史果がデスクへと戻ると同僚からロビーに訪問者が来ていることを伝えられた。誰が来たのか考えながら史果はロビーに向かい受付へと足を運んだ。受付嬢に尋ねると正面玄関付近に設置してあるロビーチェアにいることを伝えられ史果は其方へと向かうと一人の女性が窓の外を眺めていた。
後ろ姿ではあったが、背筋がピンと伸び、美しい程の艶のある黒髪はシンプルに一つ結びをしていた。史果が近づくと此方に気付いたのか振り向きゆっくりと立ち上がった。ローヒールパンプスなのに史果が見上げる高さの身長、まるでトップモデルかのような出で立ち、品があり凛とした強い眼差し、女性から見ても惚れ惚れする中世的な顔立ちの持ち主から見つめられ史果は思わず縮こまってしまった。
「瀬尾です。失礼ですが、」
史果が相手に問おうとすると彼女はバッグからスマートフォンを取り何やら打ち込んでいた。その間、何も話さない相手に史果の頭の中はクエスチョンマークが大量に製造されているとパッと自分の目の前にディスプレイ画面を見せてきた。
“初めまして。私、鹿島歩生と申します。幼少期に声の病気にかかり筆談にて失礼します。改めましてお忙しい中、いきなりの訪問大変申し訳ございません。藤基希のことでお話がありまして”
「ふ、基希・・・さんのこと、ですか?って、私手話とか出来なくて・・・えっと、」
動揺する史果を余所に歩生はニコリと微笑み自身の口元をトントンと指で押さえ読唇術が出来ることをジェスチャーし頷いた。“19時頃、駅前にある喫茶店で落ち合いませんか?”と打ち込んだ画面を見せられた史果は了承すると歩生は小さく会釈し彼女は颯然とした姿容でフロアを出て行った。周りにいた内外の社員たちも彼女の姿に魅了されたかのように足を止め注視していた。
彼女から甘い香水の残り香がいつまでも史果の身体に纏わりつき、靄ついているとある同僚たちの会話を思い出した。
『私が見た藤さんとあの女の人、ほんと絵になるっていうか清楚でどこか良いとこのお嬢様って感じで』
(ああ・・・会社の人が見たっていうのはあの女性のことか。なら納得だわ)
彼女が去ったにも関わらず存在だけが未だに消えず、自分との圧倒的な違いに史果は小さく自嘲し動けずにいた。
基希は知り合いの物件担当者に住所変更の手続き申請をし、その他の細かな手続きの書類等は基希が既に提出しといたと何故か事後報告された。同じ総務課の山下由利からは担当が違うからなのか特にこの件に関して追及されることはなかった。
「ふーみか♡」
「わっ?!吃驚した」
昼休憩時に本人確認の手続きを済ませ総務課を出た史果がエレベーターを待っていると背後から由利に抱きつかれた。
「ちょっとーあれから“天使様”とは順調ですかあ?もうーほんと羨ましいんだからー。私にもおこぼれ頂戴よー。誰か紹介してくれるように頼んでよー。あんなスペックの持ち主なんだしさぞ“お友だち”もすごいんだろうなー♡」
史果の頬をぐりぐりと人差し指で押し執拗く迫り矢継ぎ早に史果に言葉を投げつけてきた。
「もう離してよ。大体、基希さんの交友関係は知らないから彼みたいな人がいるかなんてわかんないよ」
「いやいや“類は友を呼ぶ”って言うし、絶対天使ネットワークは存在するよっ!!」
「はは・・・」
(あんな毒持ち天使が他にもいたらある意味世も末だわ・・・)
基希の内面を知り尽くしているだけに本性をぶちまけたくなる感情を必死に抑え、苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
残り数十分で昼休憩が終わる時刻になり史果がデスクへと戻ると同僚からロビーに訪問者が来ていることを伝えられた。誰が来たのか考えながら史果はロビーに向かい受付へと足を運んだ。受付嬢に尋ねると正面玄関付近に設置してあるロビーチェアにいることを伝えられ史果は其方へと向かうと一人の女性が窓の外を眺めていた。
後ろ姿ではあったが、背筋がピンと伸び、美しい程の艶のある黒髪はシンプルに一つ結びをしていた。史果が近づくと此方に気付いたのか振り向きゆっくりと立ち上がった。ローヒールパンプスなのに史果が見上げる高さの身長、まるでトップモデルかのような出で立ち、品があり凛とした強い眼差し、女性から見ても惚れ惚れする中世的な顔立ちの持ち主から見つめられ史果は思わず縮こまってしまった。
「瀬尾です。失礼ですが、」
史果が相手に問おうとすると彼女はバッグからスマートフォンを取り何やら打ち込んでいた。その間、何も話さない相手に史果の頭の中はクエスチョンマークが大量に製造されているとパッと自分の目の前にディスプレイ画面を見せてきた。
“初めまして。私、鹿島歩生と申します。幼少期に声の病気にかかり筆談にて失礼します。改めましてお忙しい中、いきなりの訪問大変申し訳ございません。藤基希のことでお話がありまして”
「ふ、基希・・・さんのこと、ですか?って、私手話とか出来なくて・・・えっと、」
動揺する史果を余所に歩生はニコリと微笑み自身の口元をトントンと指で押さえ読唇術が出来ることをジェスチャーし頷いた。“19時頃、駅前にある喫茶店で落ち合いませんか?”と打ち込んだ画面を見せられた史果は了承すると歩生は小さく会釈し彼女は颯然とした姿容でフロアを出て行った。周りにいた内外の社員たちも彼女の姿に魅了されたかのように足を止め注視していた。
彼女から甘い香水の残り香がいつまでも史果の身体に纏わりつき、靄ついているとある同僚たちの会話を思い出した。
『私が見た藤さんとあの女の人、ほんと絵になるっていうか清楚でどこか良いとこのお嬢様って感じで』
(ああ・・・会社の人が見たっていうのはあの女性のことか。なら納得だわ)
彼女が去ったにも関わらず存在だけが未だに消えず、自分との圧倒的な違いに史果は小さく自嘲し動けずにいた。
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