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第十話 部屋の違和感
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「おぉーーーーーー!」
マリが、パチパチと手を叩きながら、賛美の声を上げる。
対象とされているのは、彼が作ったトンカツだ。
エレファントピッグの討伐後、ソレを老夫婦に見せに行ったところ、
お礼を言われるのと同時に、老婆が晩ご飯を振舞わせてほしいと言った。
報酬はギルドでもらうので、そこまでしてもらうのは申し訳なかったため、
彼は、豚の解体だけを、お願いした。
マリの要望により、彼の居た世界で有名な豚料理を、作る事になった。
その結果が、トンカツだ。
畜産農業を営んでいる夫婦であったため、
小麦粉やパン粉、卵などはそろっていた。
「いただきます!」
マリは、フォークを持って、目をキラキラ光らせる。
「俺の故郷の食べ物なんで、良かったら食べてみてください」
関心した顔を見せるさけの老夫婦にも、勧めた。
彼の故郷というのは、一応、嘘ではない。
「せ、先輩! おいしいです! おいしいですよ!」
マリが、そう言うと、二人もトンカツに手を付けた。
少し咀嚼をすると、細い目が大きく開く。
「お、おいしい......。冒険者様、おいしいですぞ」
「本当に、おいしいわ」
三人が気に入ってくれた様子を見て、彼は照れくさそうに笑う。
美味しそうに食べているその姿を見て、
お腹は空いていなくとも、唾液分泌反射は起きる。
彼の感想は、「我ながら、上出来だ」であった。
以降は、老婆が作った料理も加えた、豪華な晩ご飯となり、
小さなこの家に、少しの明るい賑わいが、もたらされた。
「先輩、料理できたんですね」
町へ戻る夜道の中、マリが言う。
「マリは、俺が粘土しか出来ないと思ってたのか?」
「思ってました!」
粘土しか取り柄が無いと、思っていただけでなく、元気よく即答するマリ。
洞窟内で見せれる特技なんて、少ないにしても、失礼な発言だ。
マリの本心ではないにしろ、彼は機嫌をそこねる。
「こいつ!」
マリは、背後を取られて、こめかみをグリグリと左右から押される。
さらに、中指の第二関節を突き立てた技法を使われていた。
「ひゃ! 痛! 痛いです!」
マリが謝るまで、そのドリルは動き続けた。
「そういえば、今日、どこに泊まります?」
「あぁ、報酬も入ったし、どこかの宿屋かな」
「じゃあ、私がよく泊まっていた所を紹介しますね」
町に入り始めてから、マリは道案内を始めた。
自慢げに、町の案内も含めながらの先導で、嬉しそうに話す。
半年ぶりでもある思い入れの町であるからだ。
「いらっしゃいませー!」
飲食店のようなあいさつで、マリと同じくらいの年の子が二人を出迎える。
あいさつだけではなく、いい匂いも実際にする。
「飲食付きの宿屋とは、ありがたいものだ」と彼は、満足気な表情を見せる。
一拍置いた頃に、自分のスキルを思い出して、「ありがたいのか?」と再考した。
「部屋は、おひとつですか?」
先ほどの報酬でお金は入ったといえども、
明後日には無くなるほどの雀の涙ほどだ。
彼の本心的には一人部屋を望みたい所だが、節約は大切だろう、とマリに確認を取る。
「マリ? 別に、良いよな?」
右を向き、マリの顔を見る。マリも合わせて、彼の顔を見た。
マリも報酬の額は知っているので、
我慢してくれるだろう、と無論と言った顔だ。
「いいわけないじゃないですか! 私だって女の子なんですよ!」
我慢してくれなかった......。
「いや、俺とマリは、そうゆう関係じゃないだろ。
そもそも、半年も同じ洞窟に居て、何もしてないぞ」
女の子という言葉から、不審な者を扱われたように感じ、
彼は、慌てて反論する。それに対して、マリは「ムムム......」と黙る。
その意見は、彼の賢者性を指摘するものだ。
彼からしては、少女に何かしようなど、思った事はない。
逆に考えて、半年の信頼を信じてもらえない彼の方が、哀れな話なのである。
「ってか、顔が赤いぞ。耳まで赤いし。熱でもあるんじゃないか?」
ラブコメの鈍感主人公が、言いそうな言葉を口にする。
彼は、直観が鋭い方である自信があったため、
一生使わないであろう、と考えていたセリフである。
「も、もう良いです。さっさと、部屋に行きましょ」
いささか不満を持っていそうな、マリは部屋のカギを掴むように受け取り、
カギに書いてある番号の部屋へと、向かう。
洞窟を出てからの初仕事という事もあり、多少疲れていた彼は、
戸惑っていた受付に一礼してから、マリに付いて行った。
夜遅くであったこともあり、浴場の使用時間は、残り一時間。
彼は、「朝風呂派なんだよな」と愚痴を漏らしつつも、
汗をかいていたので、すぐさま部屋を出て、浴場へ向かう。
この宿屋は、マリの勧奨もあり、
浴場には、日本人である少年の期待が寄せられている。
そして、案の定である評価、またはそれ以上であった。
洞窟で彼の感覚や感性は、変化しつつも、
日本人の感性というものは、今も現存している。
彼にとっては、久しい本格的な入浴であるため、
とても気持ちが良く、長風呂をする。
一通り全ての湯を堪能した後、ご満悦の表情で、のれんをくぐった。
「ちょっと、遅いですよ!」
そこでは、いつもより爽やかなマリが待っていた。
カギを持っているのは俺だけだった、と彼は思い返し
「ゴメン、ゴメン」と言って、二人は部屋に戻る。
マリの美貌をうっとりと見つめる、宿屋の利用客たちは、
別れを惜しむのと同時に、彼を妬ましいように睨んだ。
二人は、それらの視線を差し置くというよりは、気が付かずにその場を離れた。
「なんか、殺風景ではないんですけど、何かおかしいような......」
「そうなんだよな......。普通の部屋なんだけど、違和感がある」
部屋に戻った二人は、違和感を覚えていた。
ある程度の生活家具は、しっかりと整っている。
ちぐはぐな感じに、首をひねりながら、観察をしていた二人は、
その正体に、とうとう気が付く。
答え合わせのように、二人は言った。
「ベットが一つしかない!!!!!!」
マリが、パチパチと手を叩きながら、賛美の声を上げる。
対象とされているのは、彼が作ったトンカツだ。
エレファントピッグの討伐後、ソレを老夫婦に見せに行ったところ、
お礼を言われるのと同時に、老婆が晩ご飯を振舞わせてほしいと言った。
報酬はギルドでもらうので、そこまでしてもらうのは申し訳なかったため、
彼は、豚の解体だけを、お願いした。
マリの要望により、彼の居た世界で有名な豚料理を、作る事になった。
その結果が、トンカツだ。
畜産農業を営んでいる夫婦であったため、
小麦粉やパン粉、卵などはそろっていた。
「いただきます!」
マリは、フォークを持って、目をキラキラ光らせる。
「俺の故郷の食べ物なんで、良かったら食べてみてください」
関心した顔を見せるさけの老夫婦にも、勧めた。
彼の故郷というのは、一応、嘘ではない。
「せ、先輩! おいしいです! おいしいですよ!」
マリが、そう言うと、二人もトンカツに手を付けた。
少し咀嚼をすると、細い目が大きく開く。
「お、おいしい......。冒険者様、おいしいですぞ」
「本当に、おいしいわ」
三人が気に入ってくれた様子を見て、彼は照れくさそうに笑う。
美味しそうに食べているその姿を見て、
お腹は空いていなくとも、唾液分泌反射は起きる。
彼の感想は、「我ながら、上出来だ」であった。
以降は、老婆が作った料理も加えた、豪華な晩ご飯となり、
小さなこの家に、少しの明るい賑わいが、もたらされた。
「先輩、料理できたんですね」
町へ戻る夜道の中、マリが言う。
「マリは、俺が粘土しか出来ないと思ってたのか?」
「思ってました!」
粘土しか取り柄が無いと、思っていただけでなく、元気よく即答するマリ。
洞窟内で見せれる特技なんて、少ないにしても、失礼な発言だ。
マリの本心ではないにしろ、彼は機嫌をそこねる。
「こいつ!」
マリは、背後を取られて、こめかみをグリグリと左右から押される。
さらに、中指の第二関節を突き立てた技法を使われていた。
「ひゃ! 痛! 痛いです!」
マリが謝るまで、そのドリルは動き続けた。
「そういえば、今日、どこに泊まります?」
「あぁ、報酬も入ったし、どこかの宿屋かな」
「じゃあ、私がよく泊まっていた所を紹介しますね」
町に入り始めてから、マリは道案内を始めた。
自慢げに、町の案内も含めながらの先導で、嬉しそうに話す。
半年ぶりでもある思い入れの町であるからだ。
「いらっしゃいませー!」
飲食店のようなあいさつで、マリと同じくらいの年の子が二人を出迎える。
あいさつだけではなく、いい匂いも実際にする。
「飲食付きの宿屋とは、ありがたいものだ」と彼は、満足気な表情を見せる。
一拍置いた頃に、自分のスキルを思い出して、「ありがたいのか?」と再考した。
「部屋は、おひとつですか?」
先ほどの報酬でお金は入ったといえども、
明後日には無くなるほどの雀の涙ほどだ。
彼の本心的には一人部屋を望みたい所だが、節約は大切だろう、とマリに確認を取る。
「マリ? 別に、良いよな?」
右を向き、マリの顔を見る。マリも合わせて、彼の顔を見た。
マリも報酬の額は知っているので、
我慢してくれるだろう、と無論と言った顔だ。
「いいわけないじゃないですか! 私だって女の子なんですよ!」
我慢してくれなかった......。
「いや、俺とマリは、そうゆう関係じゃないだろ。
そもそも、半年も同じ洞窟に居て、何もしてないぞ」
女の子という言葉から、不審な者を扱われたように感じ、
彼は、慌てて反論する。それに対して、マリは「ムムム......」と黙る。
その意見は、彼の賢者性を指摘するものだ。
彼からしては、少女に何かしようなど、思った事はない。
逆に考えて、半年の信頼を信じてもらえない彼の方が、哀れな話なのである。
「ってか、顔が赤いぞ。耳まで赤いし。熱でもあるんじゃないか?」
ラブコメの鈍感主人公が、言いそうな言葉を口にする。
彼は、直観が鋭い方である自信があったため、
一生使わないであろう、と考えていたセリフである。
「も、もう良いです。さっさと、部屋に行きましょ」
いささか不満を持っていそうな、マリは部屋のカギを掴むように受け取り、
カギに書いてある番号の部屋へと、向かう。
洞窟を出てからの初仕事という事もあり、多少疲れていた彼は、
戸惑っていた受付に一礼してから、マリに付いて行った。
夜遅くであったこともあり、浴場の使用時間は、残り一時間。
彼は、「朝風呂派なんだよな」と愚痴を漏らしつつも、
汗をかいていたので、すぐさま部屋を出て、浴場へ向かう。
この宿屋は、マリの勧奨もあり、
浴場には、日本人である少年の期待が寄せられている。
そして、案の定である評価、またはそれ以上であった。
洞窟で彼の感覚や感性は、変化しつつも、
日本人の感性というものは、今も現存している。
彼にとっては、久しい本格的な入浴であるため、
とても気持ちが良く、長風呂をする。
一通り全ての湯を堪能した後、ご満悦の表情で、のれんをくぐった。
「ちょっと、遅いですよ!」
そこでは、いつもより爽やかなマリが待っていた。
カギを持っているのは俺だけだった、と彼は思い返し
「ゴメン、ゴメン」と言って、二人は部屋に戻る。
マリの美貌をうっとりと見つめる、宿屋の利用客たちは、
別れを惜しむのと同時に、彼を妬ましいように睨んだ。
二人は、それらの視線を差し置くというよりは、気が付かずにその場を離れた。
「なんか、殺風景ではないんですけど、何かおかしいような......」
「そうなんだよな......。普通の部屋なんだけど、違和感がある」
部屋に戻った二人は、違和感を覚えていた。
ある程度の生活家具は、しっかりと整っている。
ちぐはぐな感じに、首をひねりながら、観察をしていた二人は、
その正体に、とうとう気が付く。
答え合わせのように、二人は言った。
「ベットが一つしかない!!!!!!」
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