スライム倒し続けても、レベルはあまり上がらなかった件

ろどは楓に

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第十六話 女の子の胸部

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「おい、マリ!」

 大きな声で呼びかけても、部屋の中に聞こえるのは、彼の声だけ......。
反響した声を、部屋全体が余韻に浸っていると、
マリが、ゆっくりと目を開けた。

「せ、先輩? クエスト行くんですか?」
目をこすりながら、ムニャムニャした声で、返してきた。
彼の心配は、どこへやら。

「お前、息してなかった......」

 それでも、冷静になり、不可思議な点を指摘した。
マリが、少し考えた顔をすると、ニヤリと笑い、ステータスを表示する。

「見てください、先輩! スキルがいつの間にか、ついてたんですよ!」

 マリの指がさしていたのは、【魔力変換】の空気だった。
彼が洞窟で、死に際に身に付けたスキルだ。
マリは、それほど大変な目には合ってないはずなのだが。

「理由はわかりませんけど、これで先輩に少し追い付きました!」

 少年の心情と対比するように、両手を上げて元気よく自慢する。
その動作や満面の笑みは、「やったー」と言っているようであった。

 そんな微笑ましいはずのマリの笑顔を、
彼は、見えないようにと目を片手で隠して、顔を上げ、目線を天井に送る。
視界から、マリを完全に遮断した。

「もしかして、泣いてるんですか!?」

 マリからは、目を見せないように隠しているように見えている。
もちろん、彼の性格、プライド的に、
少女であるマリの前で、涙を流すなんてことはない。
彼は、ようやくマリに別件を話した。

「マリ......。部屋だとはいえ、下着は付けてくれ」

 そう、マリはキャミソール姿で、胸部が、
見えてしまt......見えてしまいそうだったのだのだ。
マリは、自分の胸へ目を向ける。

「なっ! ななななな! ......で、出て行ってください!」

 ムキー、と両手で胸を隠しながらマリは怒鳴る。
それと、ほぼ同時に、近くに居れば、肌寒いと感じさせるほどの風を起こして、
かなりの高速で、彼は部屋を出て行った。
まさに、「ビューン」と聞こえそうである。

 彼が部屋を出る際に、チラリと見えただけの一瞬の一コマでも、
マリの顔が赤く染まっていることが、確認できた。
廊下に出た彼は、ドアに寄りかかって、
俺が悪いのか? と不満もちながら首を傾げる。

 その後、準備が整ったマリは、彼の部屋に呼びに来た。
「よし、じゃあ、行くか」と彼の一言をおきに、
お互い無言のまま、宿屋を出る。マリは、ムッとしながら、町道を歩く。
だが、意外にも、先に口を開いたのは、マリであった。

「女の子の部屋をノックせずに入るなんて、非常識ですよ」
「す、すまん......」

 女の子なら、ちゃんと下着をつけてほしい、という反論があったが、
彼は口にする事ができずにいる。
こういう時は、男が黙って、謝るというものだ、と諦めていた。
彼が欲を言うと、部屋にはカギをかけて欲しい所だ。

 マリに気付かれない程度の浅い溜息を吐き、
彼は、凝り固まった自分の肩をほぐしながら、ギルドに向かった。
中に入ると、相変わらずの酒臭さではあるが、いつもより受付が騒がしい。
何やら、もめている様子だった。

「冒険者のランクなど、ただの経験でしかない。実力は別であるぞ!」
 
 少年と同じ黒髪である、女性が受付に抗議していた。
その一言でおおよその内容を、彼は推測できた。
おそらく、ランク上、受けられないクエストを、受けようとしている、
といったような事を推し量ったのである。
だが、冒険者の命の危険を考えて、やっている仕組みなので、
受付一人の判断で、覆すわけにはいかないという案件だ。

「ど、どうしますか?」

 マリは彼をを見つめて、心配そうな顔を見せる。
どうするのか、を聞いていそうではない。
「助けてあげましょうよ」と、言っている顔だった。
感情がすぐに、顔に出る人は、無自覚ながらも、こういう場面でズルい。

「すみません。どうしましたか?」

 彼が、ギルドの上司であるかのように仲裁に入った。
一応、駆け出し冒険者であるが、対応に困っていたので、
受付の人が、助け人が現れたかのように、事の発端から話し始める。

「この方は、ランクがDなんですけど、
Cの依頼を受けたいとおっしゃっていて......」

 彼が予想したどおりの、案件ではあった。
しかしながら、異なった場所も存在する。
面倒な事に、彼が解決の策を実行できる事である。
苦笑いで逃げようとしたのを、察したのか、マリが彼の服をつまむ。
逃げるという選択肢はない、という事実を冷や汗を流しながら、彼は悟った。

「じゃあ、俺のパーティーに付いてきますか?」

 彼がランクCであるので、パーティーに、
この女性が入れば、依頼を引き受けることが出来る。
マリも、ランクDではあるが、昨日の依頼も受けられたわけだ。

「お前、何者だ?」

 助け船を出してる人への態度か? 彼は内心、思いつつも、
そんな事を言えるような、勇気は持ち合わせていない。
それにしても、何と答えれば正解なのであろうか?
この少年には、名前が無いのだ。

「先輩に、名前はありませんよ」
マリがそこで、入って来た。そして、さらに、一言。

「先輩は、先輩ですから」

 ニコッと、女性にマリが微笑む。
見かけ上、名言になりそうな風情であるが、
よく考えてみると、名前が無いなんて、一般論では、ただの怪しい人だ。
住所不定の無職より、名前が無い方が、怪しい者。

「ほう、名前が無いと......。妙な奴でござるな。まぁ、別に良い。
我を連れて行ってくれるというなら、お言葉に甘えたいでござる」

 理解がありそうな知的な印象で、そこまで怪しまれることは無かった。
逆に、日本がないはずのこの世界で、侍口調であるこの女性の方こそ、
彼からして怪しい状況ではあった。

「は、はい。良いですよ」
「仲間が多い方が楽しいですから!」

 マリがにっこり笑いかけると、
ほぼ無表情だった女性の顔と、無機質な目が、少し笑みをこぼした様に見えた。
さすが、マリというべきだろうか。

 出会ったそばから、クエストに行くなど、
お互い、警戒心が無いわけもなく、酒場で軽く交流をすることとなる。
その女性から、自己紹介が始まった。彼女の、軽い咳払い。

「それがし、サンジェリア・サリフィネンス。歳は18。
見ての通り、刀が得意でござる。よろしく頼むぞ」

 そう言って、彼女は握手を求めた。
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