スライム倒し続けても、レベルはあまり上がらなかった件

ろどは楓に

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第二十話 静かな村

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 ゴブリンの耳を全て回収した後、少年は洞窟を探索した。
まずは、出口を見つけたい、という志願を基に。
【暗眼】というスキルを持つ彼は、
数秒ほど待てば、一切光のない場所でも、色別さえできる。

 長く掘られた通路を歩いていると、
彼とは反対の方から、たいまつを持ったゴブリンが現れた。

「ギュイ......?」
目を細め、眉をひそめ、醜いゴブリンの顔は、さらにというように変わる。
ゴブリンは、目の前に居るのが仲間ではないと、理解したと同時に、
彼に、向かって襲い掛かった。

 先ほどの殺戮によって、彼には自信がついたのか、
不敵な笑みを浮かべて、魔法無しの勝負にする事を決めた。
一人と一体の襲い掛かる進行方向は、お互いの体である。
すぐ手前というほどまで近付き、
彼は、ゴブリンが振りかぶった木の棍棒を、振り下ろす前に片手で掴む。
「ん!?」というゴブリンの顔を彼は見て、ニヤッと笑い、
棍棒を引き寄せながらの、力任せな蹴りをゴブリンの腹へ当てた。

 彼の手には棍棒が残り、ゴブリンは狭い通路の中を、地面と平行に飛んでいく。
次に曲がり角に差し掛かっていたゴブリンにぶつかりそうになった。
そのゴブリンは、岩壁に激突し、
体の原形を保てていない仲間を見て、動揺したまま動かない。

 恨みを持った人のように、ゴブリンは少年を睨む。
「ゴブリンでも、そんな目ができたんだー」と言ったような関心を、
彼は見せるのだが、頭の中は、殺害方法がおおむねを占める。
次々と現れるゴブリンが出尽くした後、彼を見ながら、身構え始める。
数は四体。横一列に並んだ。

 その時、バンっと強く響く足音。だが、ゴブリン達にその音が聞こえたと同時に、
ゴブリンの列を七人とするかのように、彼は列の横へ回った。
硬化魔法で強化した棍棒を、ノールックで投げ飛ばす。

 彼が見てなくとも、ゴブリンたちの頭は吹き飛んでいく。
お見事、と言うべき神業で、その場に居た全てのゴブリンの頭部は、床に転がる。
わずかにピクピクと動いている生首から、耳を直接引きちぎり、
袋へと入れていった。

 彼は、どのくらいの時間、気絶していのかが分からんかった。
夜を通り越して、朝になってる可能性すら考えた。
心配して待つなんて事が、マリはできないタイプだと彼は精通しているため、
必死に出口を探した。

「光が!」

 彼の前に見えた曲道から、赤い光が差し掛かかっている。
そのまま真っ直ぐ進んで、体を横に差し向けると、大きな夕日が見えた。
出口の穴に丁度良く、夕日が収まっている。

 彼は、洞窟を出て、一旦深呼吸をする。
彼は、キョロキョロと見渡すと、反対の方向に煙が見えた。

「少し遅くなっちゃったか......」

 なんて事もないはずの煙からは、マリの心配を感じて、
彼は、申し訳ない気持ちながら、服の袖で汗を拭く。
煙に向かって、緩い坂道を登って行った。
ゴブリンの耳を詰めた袋は、あいかわらずパンパンであるが、
「今回は、仕方がない」と、諦めの言葉を漏らす。

「あっ! 先輩だ!」

 煙の元は、アイル村であり、真っ先に少年の姿を見つけたのは、マリだった。
村人たちは、彼が持っている袋を見て、ざわめき出す。
「あれが、全部あれなのか?」なんていう、あれあれ、
うるさい言葉が口々に聞こえる。
だけれども、彼は自慢げに言う気力は、疲れで無くなっていた。

「まさか、リーダー、すべてゴブリンの耳とは言わないであろ?」
運良く、サリネが言いやすい無自覚ながら、言いやすい状況をつくりだした。

「まぁ、そのまさか、なんだよ」
彼は、村人たちの顔を伺いながら、顔を引きつらせて言う。

 それでも、信じていないような者が居たため、
袋を開けて、中身を全て地面に落とした。
マリが「キャッ!」と、手で目を隠す。

「これで、問題ないですよね?」

 少年は、村長に訊いた。
そもそも、村長は彼を信じてくれていたが、
この場を治める目的として、彼は確認を取る。
村長は、もう呆れたような顔をして、渋い声で叫ぶ。

「これにて、依頼を達成とする!」

 大きな声である理由は、村長自信のやさしさであった。
本来はこれにて、村全体が盛り上がるのだろうが、
何もなかったように、村人たちは、各家に帰っていく。
元来、静かなこの村は、さらに沈着をみせた。

「帰りましょう、先輩」
マリが、彼の服の袖を掴んで言う。

 クエスト達成状に、村長からサインをもらい、
暗くなり始めた町の中を歩いて、ギルドに向かった。
報酬は、ゴブリンの討伐数と達成状によって、8万ルーラ程度だった。

「報酬を、半分も貰って、本当に良かったでござるか?」

 思案顔でサリネが言った。
クエスト報酬は、少年とマリで一人として、山分けしたのだ。
ちなみに、これはマリの提案である。

 サリネはパーティー脱退の手続きがあるため、ギルドでおさらばとなる。
帰り際にマリが笑顔で手を振った。
最初はあまり表情を見せなかったサリネも、最後は、とびっきりの笑顔を見せた。

(たった一日で、こんなにも......。)

 さすが、マリ、としか言いようがなかった。
彼は、マリに感心しながら、まだ明るい町道を歩く。
その時、彼は背中の痛みを思い出した。

「そういえば、背中、かなり、やられたんだよな......」
そう言って、彼はマリに背中を軽く見せる。

「ちょ、ちょっと、どうしたんですか、その傷!?
帰りに薬草、買っていきますよ!」

 反応からするかぎり、やはり傷だらけのようであった。
冷たい風が、少年の背中を滑り、彼はしみるように痛みに耐える。
冒険者らしく薬草を買って、いつもの宿屋へ二人は、帰った。

「いらっしゃいませー」
今日も元気よく、少女が出向かた。

「二人部屋で!」
彼が口を開ける前に、マリが口を開いた。
「一昨日、嫌がっていたなかった?」と言ったように、マリに疑問顔を向ける。

「背中の傷、治さないと、いけませんから」
薬草が入った袋を持ちながら、マリが言った。
ニコッと笑うマリを見て、
彼は、「ありがとう、マリ」と笑いかけた。

 部屋に着いても、二人は浴場には向かわず、彼は治療をしてもらう事になった。
少年は、ベットにうつ伏せになり、半裸で寝転がった。
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