スライム倒し続けても、レベルはあまり上がらなかった件

ろどは楓に

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第十九話 ゴブリンの捕縛

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 「何かあったら、煙で伝えるのでござる」

 サリネは、彼とマリに火打石を手渡した。
二人とも火属性魔法が使えるので、
実際には不要であるが、一応のため受け取っておく。
マリも渋々、手を差し出して、受け取った。

 今にも、細かく震えているマリを見て、彼は、軽くため息を吐いた。
「マリを一人にしたら、かわいそうだ」、そう理解した。

 「さすがに、一人は怖いよな」
マリは、少し涙目でコクッと頷く。

 「じゃあ、サリネに付いて行ってくれ。」

 経験者でもあるサリネに任せる方が、良策だと彼は考えた。
サリネは、「任せろ」といった顔で、胸を張る。
マリは、一瞬戸惑った様子を見せたが、すぐにコクッと頷いた。

 「じゃあ、俺はこっちに行くから。」
二人に、俺の行き先を伝える。

 「了解でござる、リーダー。
夕方になったら、火を焚くから、注意して見てくれ。」
「先輩、気を付けてくださいね!」

 二人の言葉に、「あぁ」と軽く返事をして、
道しるべなく森の中へ、正しくは、生え並ぶ木の中へ入って行った。
そんな彼の背中を見届けて、マリとサリネも当てもなく、探索を始めた。

 それから一時間程度経ったころ、少年は、ようやくゴブリンを見つけた。
だが、初めてにしては、数が多すぎる。二十体は超えていたのだ。

 木の裏に隠れながら、彼は作戦を練る。
これほどの数を集団で来られては、一たまりも無い。
やはり、サリネ達を呼ぶか、と思い、マッチを一本取り出した。
その時、ある事に気が付く。

(煙、出したら、ゴブリンも来るじゃん!)

 この広い森の中で、仲間の位置を知らせる賢い方法ではあるが、
ゴブリンには、適用されない。
普通の魔物なら兎も角、ゴブリンは、ある程度の知的生命体だからだ。

 ゴブリン集団をストーカーのように、木から顔を少し出して、観察する。
ほとんどが、木でできた棍棒を持っていたが、
明らかに、人工物である剣を持ったゴブリンも居た。
彼の頭の中を、残酷な想像が過る。いやな冷や汗が流れだした。

───ゴン!

 突如として、響き渡る大きく、鈍い音。
彼としては、鼓膜に響いた音では無い事がすぐに分かった。
すぐに、辺りを見渡そうと、後ろを振り返ろうとするが、
スッと、何もない地面の上で足を滑らす。

 彼の体は、バランスを保てず、そのまま倒れる。
「は?」と、困惑した表情であったが、その目は少しずつ閉じていった。



 目を覚ますと、そこは、ベットの上......。
なんて、夢オチは無く、少年は岩壁に鎖で繋がれていた。
そこからは、暗い洞窟の中で、ゴブリン達が火を中心に集まっているのが見える。
彼が起きたことは、まだ露見されてはおらず、
状況を把握する時間を供給することができる事を少年は、悟った。

 途端に、彼の方に投げつけられた、野球ボール程度の大きさの石。
彼のは、反射で目は瞑り、痛みに備えたが、いくら待っても何も感じない。
不思議がりながら、彼の目を薄く開けられる。
その石は、彼の足元に、ゴロゴロっと転がっていた。

 速さ的にも、方向的にも、彼に当たるには十分であるはずが、
ケガをするどころか、当たってすらいない。
投げたゴブリンは、変なうめき声を上げて、二発目を投球してきた。

 次は、目を瞑る事なく、彼の目でしっかりと見た。
石が彼に近づくと、目の前程度の距離で、
透明に近い白色のバリヤが、石をはじいたいたのだ。

 おそらく、またスキルか行使魔法だろうと、苦笑しながら、
彼は、鎖に軟化魔法をかける。
ゴブリン達にバレないように、指でつまむと、簡単にグニャと曲がる。
タイミングを見計らって、彼は、音を響かせるように鎖を切断した。
本来の鉄が切れる音ではなく、ブチッ! といった音だ。

 ゴブリン達の全員が、彼を睨む。
元々、注目されいたため、振り返った者の方が少ない程ではあるが。
彼は余裕を見せるように、肩慣らしをすると、背中に激痛が走る。
手を伸ばして触るだけで、傷口が何か所も手に当たった。
引きずられてここに来たことを、容易に推測できた。

 「スライムより分かりやすいっつうの!」

 彼は手を前に伸ばして、火属性攻撃魔法を使った。
ゴブリン達は、延焼したように、一気に燃え始め、気味の悪いうめき声を上げる。
道ずれを考えたのか、彼に襲ってくる者も居たが、
硬化魔法で強化した石を拾い上げると、すぐさま彼は、投球した。
そいいつは、声を上げられる事もなく、後ろに倒れる。
その場に居たゴブリンは全滅して、燃え上がった火だけが残った。

 一旦、火を消そうと、水属性の魔法が放たれる。
中心とされていた炎だけを残し、彼は消火活動を行う。
洞窟内は、明るさを保ったまま、ゴブリンの死体が続々と並べられていった。

 だが、ここからが重要だった。
ある程度のグロ耐性は無いと、できない作業なのである。
彼は、サリネからもらった小刀を出して、ゴブリンの耳に刃を入れる。
ネチョネチョといいながら、耳は顔から引き裂かれていった。

 「マリは、絶対にできないわ......。」
ボソッと、独り言をつぶやく。

 一方その頃。
彼の予想どおりである出来事。
サリネが「簡単だぞ」と言って、マリに切りたての耳を見せる。
そして、マリが悲鳴を上げて、猫のように素早く逃げる。
......なんて事があった。
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