スライム倒し続けても、レベルはあまり上がらなかった件

ろどは楓に

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第二十五話 隠れスキル

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「よし。着いたぞ、マリ」
枕が硬いと言っていたマリだが、
ある程度の振動が心地よかったのか、眠っていた。
目覚めが良いようにパッと起き上がる。
マリが「最後に!」と言って馬を撫でてから、ミコラの町のギルドへ向かった。

「やっぱり、混んでますね。......酒場
意味深な嫌味っぽいマリの言葉に少年が苦笑した後、
いつものように空いている受付へ足を向ける。

「すみません、お伺いしたい事があるんですが」
「はい、何でしょう?」
体の向きを90度ずらして、こちらを向く受付。

「一年前に、アイル村で事件を起こした冒険者は、
今、どこに居るか調べられますか?」

 一切のクッションを入れずに、本題に入る。
それでもポカンとはせず、受付は少し下に視線をずらして、口ごもった。
やはり、知られているほどの事件であるようだ。

「プライバシーの保護とかで言ったらダメなものですか?」
マリが会話に入る。この世界にもプライバシーはしっかりあるのか、と
彼は関係ない事を考えたりしていた。

「幼い時に、お世話になった方なのです。教えてくれませんか?」
明らかに声が変わった。低身長が理由であるいつもの上目遣いも、
今はなぜだか、わざとらしい。そして、もちろんブラフだ。

 だが、英才的なマリの演技を見破れる事ができず、
「うーん」と首を傾げて、困ったように唸る。

「まぁ、特別ですよ......」
「ありがとうございます!」

 マリの萌え効果は、女性にも通じた。
こんな才能があったとは、と少年は目を丸くする。
一応、人を騙しているので良くない事ではあるが、
ステータスのスキルに載っていてもおかしくない程である。

「ここから、かなり遠い所あるキリナという町で、
まだ冒険者をしています。あっ、でも、これは友達から数か月前に聞いた話なので、
今もなのか、と言われたら、わかりかねますが......」
「大丈夫です、あたってみます」

 難なく情報をゲットして、やり切った感を出して振り返る。
マリが、悪役商人のような不敵な笑みを見せる。
でも、なぜだか、全然怖くない、この少女。
「あっ、身長か......」と、理由を突き止めた少年は、言いかけた言葉を飲んだ。

「あっ、ちょっと、待ってください!」
ギルドを出ようとした二人を呼び止める受付。
思わず、ドキッと少年の心臓は高鳴りを起こした。

「キリナの町へ行く馬車は、来週末なので二日後ですよ」

 要件は、ただの助言だった。「ふぅー」と、彼は愁眉を開く。
首だけを振り返り、軽く一礼してギルドを立ち去る。

「私に、何か言う事ないですか?」
先輩をからかう後輩のような、ドヤ顔をマリは決める。

「あぁ、明後日に出発するんだったら、冒険者は休んで町内を回ってみるか」
彼はマリのペースに持っていかれないように仕向ける。
だが、マリの表情はあまり変わらず、ニヤニヤとし始めた。
心中で悔しがりながらも、呆れの表情でため息を吐く。

「はいはい、マリさんのおかげです。ありがとうございました」
半分棒読みで、礼を言う。もちろん、マリはそれで、満足していない様子だ。

「じゃあ、ご褒美をもらいますよ」
その内容を尋ねる前にマリが、行動を起こす。
倒れてくるかのように、少年に抱きついてきた。

「ちょっと、マリ! 何してんだよ」
「先輩、いい匂いがします!」

 少年の問いには答えず、胸に顔を沈めながら、「すぅー」と鼻で息を吸う。
ギルド前での出来事なので、道ゆく人々がジト目でチラ見して、通りすがる。
単にイチャついているカップルしか見えない。

(兄弟だと思われている事を期待しよう......)
希望は残っていた。否、現実逃避かもしれない。

「さっきも思ってたんですが、先輩、いい匂いしますよね!」

 マリは、少年に上向きの視線を送る。
性別的に逆のセリフな気もするが、とりあえずスルーして、体ごとマリを離す。
ご満悦した顔でニッコリしていた。
悪意や羞恥心が一切感じられず、無意識系って怖いな、
という感想ではあるが、「しょうがないな」とでも言ったような笑みで返した。

「今日は、行きたい場所......いや、先輩が行くべき場所に案内しますね!」
「俺が行くべき場所?」
「あっ、その前に宿屋へ戻りますよ!」

 二人は、一旦宿屋へ戻り、身支度を済ませた。
正直、洗濯物が増えるだけなので、着替える必要は無いと思った彼だが、
「先輩のことだから、そんなんだと一生着ない!」と言うので、
プライベート用の服に着替えた。

「ここは......教会?」

 目の前にそびえたっているのは、鐘を上部に取り付けた大きな建物。
目の前というが、庭が大きいため、いささか遠くにある。
人口でつくったような、綺麗な自然物がならんでいた。

「はい! ここは、マルフィエル様を崇めるハーメイル教の教会です」
「マルフィエル? あぁ、俺を転生させた神か......」
「マルフィエル様にお会いに!?」
驚愕と庶幾の目でマリが、俺を見る。

「いや、手紙をもらっただけ」
「でも、先輩って、異世界転生者なんですね!」
尊敬の念を抱いたように、少年を見る。

(今更、何を言ってるんだか......。)
興奮気味のマリを見て、呆れたように笑った。

(俺を異世界転生させた神......。
実際に会えるなんていう期待はしていないし、
手紙だけ残して、異世界に飛ばすような神に、期待はしていないけど......)
少し興味を持った彼は、教会へと、前進した。
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