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快楽
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栞は手慣れていた。今更驚く事でもなかった。準備が良い事には思わず苦笑いを浮かべてしまったが、星蘭からあいつとの関係を聞かされた後、栞がどんな気持ちでこれらを、わざわざ、用意したのかを考えると、色んな感情が俺の中で綯い交ぜになり、羞恥はあったが、そんな彼女が可愛いと思ってしまい、拒否する事ができなかった。
初めて栞に触れられた時は戸惑った。酔ったウザ絡みの延長で性行為へと流された時はこの女も他の女と変わりない、と一瞬冷めかけたが、俺にされたいのではなく、俺の恥部を暴くように、一方的に攻めてくる栞に正直興奮してしまった。意外性だったのかもしれない。女に可愛いだとか言われて嬉しいわけがない。寧ろ滑稽だ。なのに俺の体で快楽を貪りながら、可愛い、可愛いと口にする栞が、俺なんかより一番可愛いと思ってしまった。
何を考えているのかよく分からない女である事は今も変わりない。
「お酒に酔っている時とセックスをしている時はその人の本性が現れるのよ」
そう言って栞は酒やセックスに溺れるような日々を送ってきたのだろう。ただの現実逃避だったのか、もしかしたら、それらで理性を薄めて己れの本性を探ろうと彼女なりに必死だったのかもしれない。浅はかで破滅的で、それなのに誰にも穢されないような、清麗で透明で、儚さを纏う不思議な女だった。
寂しくて眠れないから会いたかった、理由がないと会いたいと言えなかった。そんな意外な一面を見せてきた時や、星蘭に嫉妬したからといってこんな事をしてまで俺の深部の全てを欲しがる子供っぽさを見せる栞も、馬鹿げた発想や行動に至る栞の大胆な部分も、俺はいつも可愛いと思ってしまう。栞の様々な一面を知れば知る程、俺はそれを何故か愛しく思う。誰にも執着しない、どこにも留まらない、掴みどころのない女だと感じていたが、俺が思っているよりも栞は孤独に弱く、支配欲が強い女なのかもしれない。
栞が口付けてきた際に、今日は彼女から余裕のなさを感じた。栞も俺と同じような事を考えていたのだろうか。無理やりにでも抱けば、この苛立ちと虚しさから解放される。相手を自分のものにできる気がする。感情を言葉にできず、そんな短絡的な事しか考えられない。やはり俺と栞は、似たもの同士なのかも知れない。
「繍夜くん、別のこと考えているでしょ」
違う。あまりの気持ち良さに栞の事で頭がいっぱいになっていただけだ。けど、上手く声が出なかった。
後ろから男性器に模した玩具を女に突っ込まれて情けなく声を漏らしてしまう。こんな屈辱を味わうのは仕事だけで充分だと思っていた。今だって冷静に考えてしまったら羞恥で死んだ方がマシにすら思えてしまうだろう。
栞は俺の反応を見ながら、探るようにゆっくりと動かしていた。俺が思わずシーツを握ってしまったり、小さく呻いたりすると、そこをぐりぐりと執拗に当て擦ってきた。
「やっぱり星蘭くんが善い?」
「ち、が……」
時折背筋や腰に舌を這わせながら、俺の反応を見て容赦なくそこばかり狙ってくる栞に、情けない声まで聞かれたくなくて必死に堪えている。星蘭とヤル事は俺にとって自慰行為に近い。星蘭は俺の機嫌が悪くなるのが面倒だから拒否しないだけで、あいつの動きも触れ方も機械的だ。それで満たされるのは単純に快楽だ。
「じゃあ我慢しないで? 繍夜くん、ここ、好きでしょ」
感じる所を擦られ続けて耐えられず枕に顔を埋めた。
「もっと声出して? 繍夜くんが感じてるとこ、もっと私にも見せて?」
潤滑剤でぐちゃぐちゃにされ、擦られる度に卑猥な音がする。それを誤魔化したくもなり、喘ぐ声を漏らしてしまった。一度喉奥から解放してしまうと止まらなくなった。脳内が快楽で満ちていく。意識がトビそうになる。
「繍夜くん、ここにもホクロがあるんだね」
俺も知らない、ホクロがある位置であろう部分に口付けられる。うなじ、腰、太腿……
徐に、反り返った性器に触れられ体がビクリと跳ねた。ローションで濡らした栞の手で優しく包み込まれ、咄嗟に、恐る恐る横目で栞を見た。
「し、おり……もう、ん……あ……」
「隠さないで、顔も見せて」
前も後ろも、頭がおかしくなりそうな程、ゆっくりと丁寧に扱かれ、もどかしくなり、俺は無意識に自分から腰を動かしていた。
「あぁ……クソ、あ……」
攻められながら、栞の中に入れたくなった。与えられる快感で思考が滅茶苦茶になる。一人善がる俺の姿を栞は淡々と見ているだけで、何かが物足りなく感じた。栞に触れたい。触れられているのに、見えない距離を感じる。後ろ手に栞の手を掴んだ。彼女に触れていたかった。
「繍夜くん可愛いよ、すごく、可愛い……」
性器を握る栞の手を掴んだまま自慰をするように動かした。栞は後ろのモノの動きを少し速めて中を当て擦る。思考が麻痺して視界が虚ろにボヤけた。白目を剥きそうになる。俺は女のように喘いでいる。時折俺の名を呼ぶ栞の声が甘く脳内に溶けていく。気が狂いそうになる。いや、もう俺は栞に与えられる快感で狂ってしまっているのかもしれない。羞恥も吹き飛び、ただ快楽のままに体を委ねた。
「し、おり……イク……」
無様に喘ぎながら栞の手の中に白濁をぶち撒けた。後ろの穴がモノを刺されたままヒクついている。腰が震えて力が抜け、俺はそのままベッドに横たえた。横目で栞を見上げると、顔を紅潮させてぼんやりと俺を見ていた。
「あんま、見んなよ……」
声に力が入らない。荒い息を吐きながら吐精後の混濁した意識の中で僅かに羞恥が湧き起こる。栞は手に出された俺の精液をマジマジと見た。
「悪い……」
栞の手を汚してしまった事に今更罪悪感を覚えた。しかし、栞は満足げに微笑んで、俺を見ながら俺の吐き出した醜い欲を舐めた。
その姿は、妖艶で、淫靡で、天使にも、悪魔のようにも見えた。
初めて栞に触れられた時は戸惑った。酔ったウザ絡みの延長で性行為へと流された時はこの女も他の女と変わりない、と一瞬冷めかけたが、俺にされたいのではなく、俺の恥部を暴くように、一方的に攻めてくる栞に正直興奮してしまった。意外性だったのかもしれない。女に可愛いだとか言われて嬉しいわけがない。寧ろ滑稽だ。なのに俺の体で快楽を貪りながら、可愛い、可愛いと口にする栞が、俺なんかより一番可愛いと思ってしまった。
何を考えているのかよく分からない女である事は今も変わりない。
「お酒に酔っている時とセックスをしている時はその人の本性が現れるのよ」
そう言って栞は酒やセックスに溺れるような日々を送ってきたのだろう。ただの現実逃避だったのか、もしかしたら、それらで理性を薄めて己れの本性を探ろうと彼女なりに必死だったのかもしれない。浅はかで破滅的で、それなのに誰にも穢されないような、清麗で透明で、儚さを纏う不思議な女だった。
寂しくて眠れないから会いたかった、理由がないと会いたいと言えなかった。そんな意外な一面を見せてきた時や、星蘭に嫉妬したからといってこんな事をしてまで俺の深部の全てを欲しがる子供っぽさを見せる栞も、馬鹿げた発想や行動に至る栞の大胆な部分も、俺はいつも可愛いと思ってしまう。栞の様々な一面を知れば知る程、俺はそれを何故か愛しく思う。誰にも執着しない、どこにも留まらない、掴みどころのない女だと感じていたが、俺が思っているよりも栞は孤独に弱く、支配欲が強い女なのかもしれない。
栞が口付けてきた際に、今日は彼女から余裕のなさを感じた。栞も俺と同じような事を考えていたのだろうか。無理やりにでも抱けば、この苛立ちと虚しさから解放される。相手を自分のものにできる気がする。感情を言葉にできず、そんな短絡的な事しか考えられない。やはり俺と栞は、似たもの同士なのかも知れない。
「繍夜くん、別のこと考えているでしょ」
違う。あまりの気持ち良さに栞の事で頭がいっぱいになっていただけだ。けど、上手く声が出なかった。
後ろから男性器に模した玩具を女に突っ込まれて情けなく声を漏らしてしまう。こんな屈辱を味わうのは仕事だけで充分だと思っていた。今だって冷静に考えてしまったら羞恥で死んだ方がマシにすら思えてしまうだろう。
栞は俺の反応を見ながら、探るようにゆっくりと動かしていた。俺が思わずシーツを握ってしまったり、小さく呻いたりすると、そこをぐりぐりと執拗に当て擦ってきた。
「やっぱり星蘭くんが善い?」
「ち、が……」
時折背筋や腰に舌を這わせながら、俺の反応を見て容赦なくそこばかり狙ってくる栞に、情けない声まで聞かれたくなくて必死に堪えている。星蘭とヤル事は俺にとって自慰行為に近い。星蘭は俺の機嫌が悪くなるのが面倒だから拒否しないだけで、あいつの動きも触れ方も機械的だ。それで満たされるのは単純に快楽だ。
「じゃあ我慢しないで? 繍夜くん、ここ、好きでしょ」
感じる所を擦られ続けて耐えられず枕に顔を埋めた。
「もっと声出して? 繍夜くんが感じてるとこ、もっと私にも見せて?」
潤滑剤でぐちゃぐちゃにされ、擦られる度に卑猥な音がする。それを誤魔化したくもなり、喘ぐ声を漏らしてしまった。一度喉奥から解放してしまうと止まらなくなった。脳内が快楽で満ちていく。意識がトビそうになる。
「繍夜くん、ここにもホクロがあるんだね」
俺も知らない、ホクロがある位置であろう部分に口付けられる。うなじ、腰、太腿……
徐に、反り返った性器に触れられ体がビクリと跳ねた。ローションで濡らした栞の手で優しく包み込まれ、咄嗟に、恐る恐る横目で栞を見た。
「し、おり……もう、ん……あ……」
「隠さないで、顔も見せて」
前も後ろも、頭がおかしくなりそうな程、ゆっくりと丁寧に扱かれ、もどかしくなり、俺は無意識に自分から腰を動かしていた。
「あぁ……クソ、あ……」
攻められながら、栞の中に入れたくなった。与えられる快感で思考が滅茶苦茶になる。一人善がる俺の姿を栞は淡々と見ているだけで、何かが物足りなく感じた。栞に触れたい。触れられているのに、見えない距離を感じる。後ろ手に栞の手を掴んだ。彼女に触れていたかった。
「繍夜くん可愛いよ、すごく、可愛い……」
性器を握る栞の手を掴んだまま自慰をするように動かした。栞は後ろのモノの動きを少し速めて中を当て擦る。思考が麻痺して視界が虚ろにボヤけた。白目を剥きそうになる。俺は女のように喘いでいる。時折俺の名を呼ぶ栞の声が甘く脳内に溶けていく。気が狂いそうになる。いや、もう俺は栞に与えられる快感で狂ってしまっているのかもしれない。羞恥も吹き飛び、ただ快楽のままに体を委ねた。
「し、おり……イク……」
無様に喘ぎながら栞の手の中に白濁をぶち撒けた。後ろの穴がモノを刺されたままヒクついている。腰が震えて力が抜け、俺はそのままベッドに横たえた。横目で栞を見上げると、顔を紅潮させてぼんやりと俺を見ていた。
「あんま、見んなよ……」
声に力が入らない。荒い息を吐きながら吐精後の混濁した意識の中で僅かに羞恥が湧き起こる。栞は手に出された俺の精液をマジマジと見た。
「悪い……」
栞の手を汚してしまった事に今更罪悪感を覚えた。しかし、栞は満足げに微笑んで、俺を見ながら俺の吐き出した醜い欲を舐めた。
その姿は、妖艶で、淫靡で、天使にも、悪魔のようにも見えた。
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