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しおりを挟む……ふわふわする——。
なんだか、誰かに優しく包まれている気がする。
『——ア……。——メア…………』
名前を呼ばれて、俺は振り向く。
でもそこには誰もいない。
どこだ、と思い首を傾げる。
『ここだよ、ルメア……——』
また呼ばれた。
探したいが、ここがどこなのかも分からないし、動けない。
自分の意思で動かせるのは、首から上だけだ。
身体が、思ったように動かせない。
『上。上だよ、ルメア』
また声だ。
次は、居場所を教えてくれた。
俺は、その声に従って上を向く。
「……っ、っ…………!!?」
そこにいたのは、父上だった。
どうしているのだろう。
彼は、あの日に亡くなったのに。
『驚いているね、ルメア』
驚きすぎて声が出ないのか、この不思議な空間の影響で声を出すことが出来ないのか。
『私の話を聞いてくれるだけでいい』
父上は何も変わっていなかった。
……そうだ。
少し前に、こうやって、似たような夢を見たんだ。
そこでも同じように父上が現れて、話をしたんだ。
『二回目だな。お前の夢の中に私が現れるのは』
あの時は、よく分からなかった。
「っ……!!」
『今日は、忠告をしにきた』
聞き慣れた声で、父上は俺に忠告をすると言う。
何の『忠告』だろう。
それが、分からない。
『今地上にいるだろう?』
あっ。
今回はちゃんと声が聞こえる。
あの時は、声が途切れ途切れで全部を聞き取ることが出来なかった。
でも今日は。
わかる。
『お前がこのまま地上に居続ければ、お前は死んでしまうぞ』
え……?
父上は、『死ぬ』と言ったか?
いや、確かに。
天空と地上との酸素は大きく違う。
でもそれが、どうして……。
『天空で暮らしてきたお前は、地上に慣れていない』
ああ。
そうだな。
『それが危険なんだ。
あと一年が限界だろう……』
……ちょっと、待って。
一年?
それが『危険』?
地上に、あと一年間いれば、俺は死ぬのか?
『だから、何としてでも一年で天空に戻れ』
強めに言われて、俺は怖気付く。
なっ……。
もし、俺が天空に戻ったら、南波斗は……アイツはどうなるんだ?
ここに、置き去りにしないと行けなくなる。
南波斗を置いて、一人天空に戻ることなんて、俺には出来ない。
今頃だが、ようやく自分の心の中にある、南波斗に対する気持ちが判明した。
多分、確信は持てないが、南波斗が抱いている『想い』と同じだろう。
ようやく『好き』という感情が自分の中で出てきたんだ。
それに、南波斗にまだしっかりと返事をしていない。
『……。そうか、大切な人が出来たか……』
今まで黙っていた父上が、なぜか嬉しそうに言った。
「…………!!」
俺には大切な人がいる!!
力の限り父上に向かって叫ぶ。
でも、その声が届いているのかさえも、分からない。
『そして、相手は人間……だな』
父上には何でも分かるのか?
そう思ってしまうほど、俺の意見を的確に言葉に表してくれる。
『分かった』
何かを納得した父上は、俺の肩に手を置いて優しく笑う。
『お前とその相手が、一緒に天空に行けるようにしてやろう』
……っ、え。
そんなこと、可能なのか?
どんな人間だって、空気や重力が違う天空に行けば、肺や心臓が押されて、死んでしまうと言うのに。
父上には、そんなことも出来るのか!?
『ああ。少しだけ時間をくれれば、何とかしてやれる』
ありがとう、父上!
やはり父上はすごい方だ。
自分の父親なのか、たまに分からなくなる。
『絶対に死なないよう、私が何とかしてやる』
頼もしい父上の言葉に、俺は自然と頷く。
南波斗と一緒に天空に行けるのならば、無理な『お別れ』をしなくてもいい。
まだ南波斗と、一緒にいたい。
『完全に出来たら、また夢で会おう』
そう言い残して、父上の姿はスーッと消えていく。
『そろそろ起きる時間だ。——おはよう、ルメア』
夢の中で話した父上は、ゆっくりと消えていった。
ありがとう、父上。
完全に消えるまで、俺はひたすら父上に『ありがとう』と言い続けた。
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