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しおりを挟む「っ……!!?」
ガバッ、と勢いよく飛び上がった。
はぁ、はぁ、と肩で息をするルメアだった。
「…………はぁ、はぁ……」
たとえ夢を見ても、すぐに忘れてしまうのに。
さっき見た夢は、忘れていない。
またルメアの父が、自分の夢の中に現れた。
一度目は上手く父の言ってることが理解できなかった。
でも今回は、ちゃんと聞こえた。
そして、一番困惑していることが一つ。
『あと一年、地上にいれば死ぬ』
父が言っていたこと。
それが本当に起こるのであれば、早く帰らないといけなくなる。
弟に……。
——ケルラに、会わないと……。
なぜか冷や汗が止まらない。
怖くなって、ぶるり、と身体を震わせた。
横を見ればスヤスヤと、南波斗が眠っている。
起こすわけにはいかない。
ルメアはゆっくりとベッドから抜けた。
幸い、今日だけはベッドの手前に寝たからすぐに降りられた。
きっと昨日の朝も、南波斗はこうしてベッドから抜け出たんだろうな。
そんなことを考えながら、ルメアは玄関を開けた。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
「…………」
大分、地上の空気にも慣れてきたのに。
「……あの時のように、四龍が来てはくれないだろうか」
太陽は、完全に登りきっている。
今は、朝の七時頃だろうか。
「…………力は戻ってきた……」
南波斗のおかげ、と言ってもいいくらいだ。
天空にいた時によく使った技も、今なら難なく使えるだろう。
けれど、まだ完全には戻っていない。
まだ『龍』の姿になれる力がない。
その力が戻れば、自力でも天空には戻れる。
「…………呼んだら、来るかな?」
試してみる価値はある。
ルメアはそう思って、天を見上げた。
そして、誰を呼ぶかを決める。
「…………——ヤミ」
ポツリ、と呟いた四龍が一人の名前。
『ヤミ』——。
四龍の中で、常に竜王であるルメアを慕って、『大好き』と毎日伝えてくれる臣下。
四龍が一人、黄龍。
「……ま、来るわけないか」
とにかく今呼んでも、特にルメア自信が困らない臣下の名前を呼んでみた。
彼は何も聞かずに、ルメアの話を聞いてくれそうだった。
「……戻るか」
はぁ、とため息を吐いてルメアは踵を返した。
その時——。
ズドォォォオォオォオオン…………ッッ!!!
という、凄まじい轟音を轟かせ、ルメアの背後に、何かが落下した。
「……………………は……?」
ぐるっ、と振り返り、もくもくと煙が発生している中心を見つめる。
だんだんと煙が消えていき、そこにいる人物がハッキリしてくる。
あの姿。
見覚えがある。
他の龍よりかは、細身。
だが、腕力と脚力だけは誰にも負けない。
そして、ルメアと同じ髪色を持つ四龍。
——黄、龍……?
目の前に落ちてきたのは、まさかの黄龍だった。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
「ヤミ、か?」
恐る恐る声をかけると、煙の中にいる大きな物体が、もそっと動いた。
「……ルメア様?」
声が、ルメアの耳を穿つ。
天空にいた頃は、毎日聞いていた声。
——やはり、黄龍のヤミだ。
「どこから来た?」
もう一度ルメアが声をかけると、今度はすぐに答えが返ってきた。
「ルメア様を個人的に探してたら、なんか、引っ張られて……」
と、言うことは先程のルメアの呼びかけが効いたのか。
「先程、お前の名を呼んだ」
黄龍——ヤミは、ぶるり、と大きく身震いをしてルメアに駆け寄った。
龍の姿で。
傍から見れば、小さい人間がドラゴンに喰われている感じに見えるだろう。
「ひ、人型になってくれ」
「あ……すんません」
ハッとしたように、ヤミは慌てて人型に姿を変える。
「……はいっ!」
ルメアと同じ金髪に、キラキラと輝く、エメラルドの瞳。
全体的に、ルメアよりも身体の筋肉はないように見える。
——そう、見えるだけ。
本当は、天空で一番の脚力と腕力を持つ、実力者だ。
なんなら、ルメアより、その二つの力は強い。
「……ヤミ。お前に伝えたいことがある」
ルメアが至って真剣な顔付きになると、ヤミも同様に、キリッとした姿勢を保つ。
「まだ俺は、天空には戻らないが、戻った時には人間と一緒に戻るだろう」
南波斗と一緒に行けるのなら、是非そうしたい。
ここに南波斗を置いて、自分だけ帰ることは、できない。
「人間とですか?」
信じられない、と言った顔でヤミが聞き返す。
その問いかけにルメアは、黙って頷いた。
「ああ」
——やはり、信じてはくれないか……。
そう思っていたのに。
「分かりました! ケルラ殿に伝えておきますね!」
まさかの肯定的な意見で、ルメアは拍子抜けした。
「う、疑わないのか? どうして、とか……」
「え? だって、ルメア様が決めたことですから、オレは信じますよ」
ヤミは胸に手を当てて、鼻を高くした。
そのたくましい姿に、ルメアは思わず笑みを零した。
「ありがとう、ヤミ」
「じゃあ、オレ一回天空に戻りますね!」
ヤミはもう一度、龍の姿に変わって、バサッと翼を開いた。
「ああ。頼んだ」
最後にルメアを見て、ニッコリと笑ったヤミは、そのまま地面を強く蹴って空に向かって飛んで行った。
ヤミの姿が見えなくなるまで、ルメアはその場から動かなかった。
完全に見えなくなると、踵を返して、家に戻った。
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