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しおりを挟む翌日、ふいに目が覚めたルメアはゆっくりと身体を起こした。
——その時。
腰に強烈な激痛が走った。
かなり前にも感じたことはあるが、今回はその痛みの五倍だ。
「っ~~~~!!!!!」
声にならない悲鳴をあげて、横で気持ちよさそうに寝ている南波斗を、叩き起す。
バシバシと布団の上から南波斗の身体を叩く。
——が、ビクともしないし、そもそも起きない……。
全然起きてくれない南波斗に、一撃必殺の殴りをかました。
ドスッ、と鈍い音がした。
「ぐ、ふっ……」
内蔵が全部口から出てしまうのではないか、と錯覚してしまうくらいの拳が、南波斗の鳩尾にクリーンヒットする。
その痛みに飛び起きた南波斗は、鳩尾を擦りながら、ルメアを見た。
眠気なんか完全に吹っ飛んだ南波斗は、ハッキリとした目つきで、ルメアを睨む。
「な、んで……殴んだよ…………ッ!!」
ゲホッゲホッと激しく咳き込むから、ルメアはため息を吐きながら術を発動させる。
「——〈完全治療〉」
ぽうっ、と橙色の光がルメアの掌に集まり、一つの塊となる。
その光は、南波斗の鳩尾に向かい、彼の身体に入り込むようにして消えていった。
「……あれ、痛く、ない……?」
——……まて、完全治療が南波斗に効くなら、俺の腰にも……?
治癒術を発動させた後に、ハッと気付く。
情緒不安定なルメアを、南波斗は不信そうに見つめる。
「——完全治療」
また同じ治癒術を発動させ、今度はルメア本人の腰に光を持っていく。
……が、なぜか効かなかった。
治癒術の中では、二番目に強力な技だ。
少量の力を使うだけだから、術者への身体の負担は全くない。
だのに。
「なぜ効かないんだ……っ!!!?」
混乱状態に陥っているルメアを見兼ねて、南波斗は棚から薬を取り出す。
「こ、腰が痛いのか?」
「そうだよ!」
ほとんど半ギレの状態で、ルメアは泣き叫ぶ。
泣くほど痛みを感じるのは、久しぶり過ぎて意味が分からない。
「じゃあ、これ飲んで」
南波斗が差し出したのは、小さな小瓶に入った『ナニカ』だった。
きっと痛みを和らげる薬なんだろう。
「っ……痛……ぃい……っ!!!」
ポロポロと涙を流し続けるから、薬すらも自力じゃ飲めない。
痛みが強すぎて、手に力が入らないのだ。
「……ん、ほら。口、開けて?」
昨日の行為を反省したのか、南波斗がなぜか薬を口に含んだ。
——お前が飲んでも意味ないだろ……っ!
言いたいことがありすぎて、言葉が喉に引っかかる。
けれど、南波斗はその薬を飲むことはなかった。
「ん……!?」
ちゅ、と唇が触れる。
いつもみたいに、南波斗の舌がルメアの唇を舐めることはなかった。
ぐっ、と唇を押し付けられ、自然とルメアの口が開く。
「んぅ、ふっ……んっ…………!?」
舌がねじ込まれると同時に、口の中にトローっとした物が流れ込んでくる。
顎をクイッと上に持ち上げられ、口の中に流れてくる物を嫌でも飲み込まなくちゃいけなくなった。
「ンっ……! んぐ……っ、ふぁ……」
全部を飲み終えたのを確認した南波斗は、ルメアとの間に銀色の糸を引かせながら、離れていった。
「はぁ、は、ぁ……」
肩で息をしているルメアの頭を、優しく撫でる南波斗。
ペロっ、と自分の唇を舐めた南波斗は、ルメアの頬を撫でた。
「まぁ……口移しも、初めてだよな?」
何をされたのか分かっていないルメアは、ポカンとしている。
キスとはあまり、変わりないのだが。
クスクス笑いながら、南波斗は小瓶を仕舞いにいく。
「薬、そのうち効き出すから。大丈夫だよ」
「…………き、昨日……は、すまなかった……」
当然、ルメアが謝罪をし出した。
ぎょっとして、南波斗は思わず小瓶を落としそうになる。
「え? な、なに、急に……」
いつもなら言わないのに。
今までに身体を重ねた後は、こうして謝罪なんかしなかったのに。
「…………俺……沢山……お願い、した……から…………」
話していてやはり、恥ずかしいのか、ルメアの頬は赤い。
その赤みに釣れられて、南波斗までもが赤くなる。
「そ、の…………お前にも…………無理、させた……から……」
南波斗のことまで心配してくれるとは。
なんて優しいのだろう。
「ごめん……な……」
ペコっ、と頭を下げたルメア。
慌てて南波斗は、ルメアの言葉を否定する。
「いや、俺もルメアにかなり無理させたし……!
俺の方がごめん。手加減出来なくて……」
ルメアが滅多にしない『お願い』を聞けて、嬉しかった。
だから、自分の中にある『理性』という紐が、プツリ、と切れてしまったのだ。
いとも簡単に。
めちゃくちゃに中を突いてしまった。
「……なるべく、理性保つように……俺、頑張るから……」
ある程度の我慢をしなくちゃ、ルメアに嫌われてしまうかも知れない。
それだけ——嫌われてしまうこと——は、勘弁して欲しかった。
「……うん…………。でも、昨日は、気持ちよかった……」
天然だろうか。
わざとだろうか。
そう誰かに問いたい。
「……反則……だって…………ルメア……っ」
はぁああ、と深いため息を吐きながら、膝から崩れ落ちる。
「は? 何が?」
何が『反則』なのか分かっていないルメアは、首を傾げる。
「……また理性飛ぶからぁ……」
サァーっと顔が青ざめていくルメアを置いて、南波斗は床に座り込んだ。
そして南波斗は、ブツブツと、何かを呟き出す。
ベッドの上で、自分の貞操を守ろうと、布団を頭から被ってガードするルメア。
——この時間だけ、南波斗の家の中は、『カオス状態』になった。
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