4 / 39
僕のファーストキスがぁっ!!
しおりを挟む
くちゅくちゅっ、と唾液が絡まり合う。舌を強弱を付けて吸われて、両目から涙が溢れ出る。
「んぁ……う…………ンッ……」
後頭部に添えられた手が、暁人の耳をかすめる。
その度、くすぐったく感じて暁人はぶるり、と身震いする。
「大丈夫だよ」
キスの最中、たまにこうやって喋られると、またゾクゾクしてしまう。
「それ、やめ……て…………」
「どれ?」
「だ、から…………耳元で、しゃべら……ないで………ぇ」
声を震わせながら暁人は抗議する。でも彼は、「ふぅん」と呟いて、暁人の首筋に顔を埋めた。
「ちょっ…………!」
「んー……いい匂い……」
「あっ……やめ…………やぁ……っ!」
甘ったるい声が出る。暁人は、自分の声に驚いてバッと手で口を覆う。
「っ……」
「ダメ。隠さないで」
暁人の手を掴んで、一つにまとめる。
「やだ、やだ…………っ」
「もっとかわいい声、俺に聞かせて」
「んぁ…………っ!」
——遡ること、数分前。
「自己紹介?」
「そう。俺たち、お互いの名前知らないだろ?」
青年にそう言われて、たしかに、と暁人は思う。
それと同時に、名前も知らない相手と、あんなキスをしたことに暁人は照れた。
顔を真っ赤にして、青年の胸に顔を埋めた。
「ははっ。恥ずかしくなったのか?」
図星を突かれて、暁人はより顔を埋める。
「かわいい」
ちゅっと、暁人のつむじにキスが降ってくる。
バッと顔を上げると、今度は暁人の唇にキスが降った。
優しい、触れるだけのキスだった。
「——アンタの名前は?」
青年に問われて、暁人は口を開く。
「紅柳」
暁人は癖で、苗字を伝えた。そうすると、青年はガクリと頭を垂れた。
「違う、違う」
首を横に振って、そうじゃないと伝える。でも暁人は、イマイチ分かっていないみたいだった。
学校の癖が出てしまったことに、暁人本人は気づいていない。
「下の名前だよ」
青年に言われて、暁人は、ハッとした。
「ごめん」
「別にいいよ。かわいかったから」
なにかと『かわいい』といってくるが、暁人にとっては、何がかわいいのか分からなかった。
「——暁人」
「ん。暁人、だな?」
確認するように、青年は暁人の名前を呼んだ。
「うん」
「名前も、かわいいのな」
——そこは、『カッコいい』って言ってほしかった……
自分の名前を伝えた暁人は、青年に聞く。
「君の名前は?」
「俺は、〈ルイ・セルカ〉」
青年——ルイは、暁人の目を見て、名前を告げた。
「アメリカ人だ」
「やっぱり」
暁人はルイの髪色でどこの国の人か推測していた。
金髪が当たり前の国は——偏見だが——アメリカか、イギリスくらいしか思いつかなかった。
でも、アメリカのほうが日本から近い気がする。
だから、アメリカの人かな、と思っていたら、まさかのビンゴで暁人自身も驚いていた。
「アメリカ人と言っても、俺は生まれてからずっと日本で暮らしてるけどな」
「え? そうなの?」
予想外の答え。
どうやら、ルイの両親は生粋のアメリカ人だけど、両親とも日本が好きすぎるらしい。
だから、結婚を機に日本で暮らし始めたらしい。
試しに、ルイに英語で話してみて、と頼むとスラスラと話した。
「すご」
「家ではEnglishだからな」
「へ、へぇ……」
暁人もある程度なら英語は喋れる。でも、やはりアメリカ人の両親を持つルイには敵わない。
「暁人……って、呼び捨てでいいか?」
「あ、うん」
「分かった。じゃあ、俺のこともルイでいいから」
「うん」
呼び捨てで呼ぶことは、暁人は少し躊躇いがあった。
「え、と……ルイ…………?」
「っ…………、まじで、かわいすぎ……っ」
ルイの名前を呼ぶと、彼は顔を赤らめて暁人の唇にキスをした。
「ん……っ?」
突然だったから、暁人の口は無防備だった。
「んぁ……ぅ」
力が入っていない暁人の口に、ルイは自分の舌をねじ込む。
「ん……ふぅ……ぁ」
くちゅ、くちゅっ、と唾液が絡まり合う。激しさを増していくルイの舌は、暁人の舌を攫って吸い付く。
「や…………あ、ル…………イ……っ」
暁人の口の端から、啜ってもらいきれなかった唾液が、ツー……と顎を伝う。
唇を離したルイは、表情をとろけさせて、涎を垂らしている暁人を見て、にやぁっ、と笑った。
「えっろ………」
ぼそっと呟いたその単語に、暁人はより一層顔を赤らめる。
「ぁ………………」
ルイは暁人の首筋に顔を埋めて、ペロッと舐めた。
「ひゃぁ……っ!」
驚いて、変な声が出る。
「あ、なに……ルイ…………っ?」
舐められた首筋にキスをするルイ。ゾクっとした感覚が暁人を支配する。
「やだ、やめて……ルイ!」
「やめてあげない」
「うぁ……意地悪…………っ」
ちゅぅっ、とそこに吸いつかれて、暁人はルイの肩を掴む。
「痛……い……っ!」
チクッとした痛みがして、顔を歪める。
ぷはぁっ、と唇を離したルイは、自分のキスした首を見て、笑った。
「付けちゃった」
「な、にを……?」
「キスマーク?」
💫💫💫
ずっと会いたかった子と会えて、ルイは天にも昇る気持ちだった。
手当てをしてもらったルイは、しばらく少年の顔を見ていた。
くりくりの緑がかった瞳に、黒い髪の毛。自分の髪色とは正反対すぎて、羨ましかった。
すると、少年の表情がコロコロ変わって面白かったが、急にルイと距離を取った。
——なんで?
逃げようとする少年に話しかける。
「なんで逃げんの?」
そう聞くと、少年は、しどろもどろになって、目を泳がせた。
「あ、い、いや。用事、思い出して……」
その回答は、すぐに嘘だと分かった。
「嘘ばっかり」
そう確信をつく言い方をすると、少年は一歩前に出た。
「嘘じゃない!」
——チョロい…………
グイッと少年の腕を自分の方に引く。少年の身体が傾いて、ルイの胸の中に収まる。
強めに抱きしめて、逃げられないようにする。
「え?」
——戸惑ってる……っ
そんな仕草でさえも、かわいいと思ってしまうのは、かなりヤバい域だろう。
しばらく抱きしめていると、なんだか無性に、少年にキスしたくなった。
少しだけ腕の力を抜いてやると、少年は抜け出そうとした。
——せっかく、捕まえたんだ……
逃すなんて、ルイはしない。
たとえ逃げても、捕まえて、キスをして、お仕置きをする。
そのつもりだった。
腕を少年の後頭部に置いて力を入れる。
少年のかわいい顔がルイに近づく。
ちゅっ、と触れるだけのキスをしたら、もう止まらなかった。
——もっとキスしたい。
少年の唇は柔らかくて、ずっとキスしていたい気分にさせてくれた。
貪るようにキスをしたい。そんな思いを胸に、ルイはキスをし続けた。
舌を入れたい——と思って、少年の唇を舌でなぞる。
その瞬間、ぶるりと震えた衝撃で少年の口が少しだけ開いた。
「んぅ…………ぁっ…………!」
少年の喘ぎ声がルイの興奮度を上げていく。
その熱はルイの下半身に溜まった。
キスだけで勃ちはじめたモノは、ルイのズボンを持ち上げ始めた。
「ん……はぁ…………」
キスがこんなにも気持ちいいなんて、知らなかった。
止められるか、ルイには分からなかった。
💫💫💫
ルイが吸い付いた場所には、赤い痣が残っていた。
その痣は、内出血を起こしたみたいだった。
その痣は、『キスマーク』というらしい。
「ははっ。暁人はもう俺の物」
「ち、違うだろ……っ!」
——何を言い出すかと思えば……っ!
「えー? キスマークって、『お前は俺の物』って意味もあるんだぜ?」
にやっ、と笑うルイに、暁人の心臓はバクバクだ。
「ない! 初めて聞いた!」
「あるんだなー、それが」
クツクツと喉を鳴らして笑うルイの頭を軽く殴る。
でもダメージはないみたいだ。
「もしかして、キスも初めて?」
「っ……!」
また図星を突かれて、暁人は両手で顔を隠す。
「そーだよ……ファーストキスだよ!」
もうやけになった暁人は、ルイに言い放つ。
中学生の頃女の子から告白されたことがある暁人だが、その時は、その告白を断った。
学年で一番かわいい女の子に告白されたが、暁人は付き合うことをしなかった。
『ごめん。誰とも付き合いたくないんだ』
本当は誰かと付き合ってみたかった。
彼女が出来たら、どんな感じなのか、経験したかった。
でも、こんなかわいい子と付き合ったら、周りの男子の嫉妬で、いじめられそうだったから、断った。
それに、正直そんなに興味がない子だった。
ただ、人気のある子だなぁと思っていただけだ。
ファーストキスなんか、一生訪れないかと思っていた。
でも、思わぬ場所で、相手に、ファーストキスを奪われた。
そのキスは、暁人にとって、とてもレベルの高いキスだった。
「初心者で悪かったな!!」
暁人はルイの膝に乗った状態で叫ぶ。ルイは、長いまつ毛を伏せて、「ごめん」と謝った。
「知らなかった……。経験があるものだと、思い込んでた」
ルイが、本当に申し訳なさそうに暁人に謝罪する。
「あ、いや……」
ここまで真剣に謝られると、暁人も居心地が悪くなってくる。
「でも、さ」
「?」
ルイが暁人の目を見て、にんまりと笑った。
「暁人のファーストキス、俺が貰えたんだよね?」
「っ…………!?」
考え方によっては、まぁこうなるだろう。
「ばか……っ、んぅ……っ!」
またキスされて、暁人は目を瞑る。
「ふぁ……ンン……っ!」
暁人が自分から唇を離す。また、唾液が糸を引いた。
「ルイ…………っ!」
「本当、かわいいなぁ……暁人は」
パッと、ルイは暁人の身体を離す。暁人はゆっくりとルイの膝から降りる。
「暁人、携帯貸して」
ルイが手を伸ばす。暁人は首を傾げながら、携帯を渡す。
「はい。俺のアドレス」
「は?」
暁人は返ってきた携帯の画面をまじまじと見つめる。
画面上には、しっかり——
——『ルイ・セルカ 090-××××-××××』
と記されていた。
「な、な………………っ!」
携帯の画面とルイの顔を交互に見る暁人の表情は、戸惑いでいっぱいだった。
「俺といつでも連絡が取り合えるように。な?」
——『な?』って言われても…………
「俺から逃げられると思うなよ?」
さらっとすごいことを言い放つルイは、放心状態のルイを置いて、立ち上がった。
「………………」
「今日、電話するから、出ろよ?」
暁人の肩に手を置いて、身体を屈める。暁人とルイの身長は、十センチほど差がある。
ルイは、身体を屈めたまま、暁人の唇にキスをした。
「………………」
「またな」
ルイは、怪我した場所を片手で押さえながら、公園から出て行った。
その場に残された暁人は、魂が抜けたみたいに、動けなかった。
そのあとは、どうやって一ノ瀬の家に荷物を取りに行って、図書館に行って、帰ってきたか、わからない。
とにかくボーッとして、何も考えられなかった。
「…………」
自分の部屋に帰って、ベッドに身体を投げ出す。
ボスンっと身体が沈む。
だんだん頭が冴えてきて、冷静になると、自分の行為を思い出して、悶え苦しんだ。
「あぁぁぁ……っ!!!!!」
枕に顔を埋めて、叫ぶ。
幸い、両親は外出していていないし、玲於奈は——友達と遊びに行ってるんだろう——いなかった。
暁人は身体を起こして、仰向けになって、自分の唇に触れる。
——まだ、感覚が残ってる……
思い出すと、顔が赤くなる。
「っ~~~!!!」
声にならない悲鳴をあげて、暁人は目を閉じた。
その日の夜は、なぜかすぐに眠れた。
——夢の中でもルイが出てきて、そこでも激しいキスを交わした。
顔を真っ赤にさせて、涎を垂らして、ルイがしてくれるキスに、必死に応えようとしている暁人の姿があった。
お互い裸で、抱き合っていた。
暁人はいやらしい声を上げて、ルイに抱きつく。
その姿を見て、ルイはキスをもっと激しくする。
——そんな夢を見た。
「んぁ……う…………ンッ……」
後頭部に添えられた手が、暁人の耳をかすめる。
その度、くすぐったく感じて暁人はぶるり、と身震いする。
「大丈夫だよ」
キスの最中、たまにこうやって喋られると、またゾクゾクしてしまう。
「それ、やめ……て…………」
「どれ?」
「だ、から…………耳元で、しゃべら……ないで………ぇ」
声を震わせながら暁人は抗議する。でも彼は、「ふぅん」と呟いて、暁人の首筋に顔を埋めた。
「ちょっ…………!」
「んー……いい匂い……」
「あっ……やめ…………やぁ……っ!」
甘ったるい声が出る。暁人は、自分の声に驚いてバッと手で口を覆う。
「っ……」
「ダメ。隠さないで」
暁人の手を掴んで、一つにまとめる。
「やだ、やだ…………っ」
「もっとかわいい声、俺に聞かせて」
「んぁ…………っ!」
——遡ること、数分前。
「自己紹介?」
「そう。俺たち、お互いの名前知らないだろ?」
青年にそう言われて、たしかに、と暁人は思う。
それと同時に、名前も知らない相手と、あんなキスをしたことに暁人は照れた。
顔を真っ赤にして、青年の胸に顔を埋めた。
「ははっ。恥ずかしくなったのか?」
図星を突かれて、暁人はより顔を埋める。
「かわいい」
ちゅっと、暁人のつむじにキスが降ってくる。
バッと顔を上げると、今度は暁人の唇にキスが降った。
優しい、触れるだけのキスだった。
「——アンタの名前は?」
青年に問われて、暁人は口を開く。
「紅柳」
暁人は癖で、苗字を伝えた。そうすると、青年はガクリと頭を垂れた。
「違う、違う」
首を横に振って、そうじゃないと伝える。でも暁人は、イマイチ分かっていないみたいだった。
学校の癖が出てしまったことに、暁人本人は気づいていない。
「下の名前だよ」
青年に言われて、暁人は、ハッとした。
「ごめん」
「別にいいよ。かわいかったから」
なにかと『かわいい』といってくるが、暁人にとっては、何がかわいいのか分からなかった。
「——暁人」
「ん。暁人、だな?」
確認するように、青年は暁人の名前を呼んだ。
「うん」
「名前も、かわいいのな」
——そこは、『カッコいい』って言ってほしかった……
自分の名前を伝えた暁人は、青年に聞く。
「君の名前は?」
「俺は、〈ルイ・セルカ〉」
青年——ルイは、暁人の目を見て、名前を告げた。
「アメリカ人だ」
「やっぱり」
暁人はルイの髪色でどこの国の人か推測していた。
金髪が当たり前の国は——偏見だが——アメリカか、イギリスくらいしか思いつかなかった。
でも、アメリカのほうが日本から近い気がする。
だから、アメリカの人かな、と思っていたら、まさかのビンゴで暁人自身も驚いていた。
「アメリカ人と言っても、俺は生まれてからずっと日本で暮らしてるけどな」
「え? そうなの?」
予想外の答え。
どうやら、ルイの両親は生粋のアメリカ人だけど、両親とも日本が好きすぎるらしい。
だから、結婚を機に日本で暮らし始めたらしい。
試しに、ルイに英語で話してみて、と頼むとスラスラと話した。
「すご」
「家ではEnglishだからな」
「へ、へぇ……」
暁人もある程度なら英語は喋れる。でも、やはりアメリカ人の両親を持つルイには敵わない。
「暁人……って、呼び捨てでいいか?」
「あ、うん」
「分かった。じゃあ、俺のこともルイでいいから」
「うん」
呼び捨てで呼ぶことは、暁人は少し躊躇いがあった。
「え、と……ルイ…………?」
「っ…………、まじで、かわいすぎ……っ」
ルイの名前を呼ぶと、彼は顔を赤らめて暁人の唇にキスをした。
「ん……っ?」
突然だったから、暁人の口は無防備だった。
「んぁ……ぅ」
力が入っていない暁人の口に、ルイは自分の舌をねじ込む。
「ん……ふぅ……ぁ」
くちゅ、くちゅっ、と唾液が絡まり合う。激しさを増していくルイの舌は、暁人の舌を攫って吸い付く。
「や…………あ、ル…………イ……っ」
暁人の口の端から、啜ってもらいきれなかった唾液が、ツー……と顎を伝う。
唇を離したルイは、表情をとろけさせて、涎を垂らしている暁人を見て、にやぁっ、と笑った。
「えっろ………」
ぼそっと呟いたその単語に、暁人はより一層顔を赤らめる。
「ぁ………………」
ルイは暁人の首筋に顔を埋めて、ペロッと舐めた。
「ひゃぁ……っ!」
驚いて、変な声が出る。
「あ、なに……ルイ…………っ?」
舐められた首筋にキスをするルイ。ゾクっとした感覚が暁人を支配する。
「やだ、やめて……ルイ!」
「やめてあげない」
「うぁ……意地悪…………っ」
ちゅぅっ、とそこに吸いつかれて、暁人はルイの肩を掴む。
「痛……い……っ!」
チクッとした痛みがして、顔を歪める。
ぷはぁっ、と唇を離したルイは、自分のキスした首を見て、笑った。
「付けちゃった」
「な、にを……?」
「キスマーク?」
💫💫💫
ずっと会いたかった子と会えて、ルイは天にも昇る気持ちだった。
手当てをしてもらったルイは、しばらく少年の顔を見ていた。
くりくりの緑がかった瞳に、黒い髪の毛。自分の髪色とは正反対すぎて、羨ましかった。
すると、少年の表情がコロコロ変わって面白かったが、急にルイと距離を取った。
——なんで?
逃げようとする少年に話しかける。
「なんで逃げんの?」
そう聞くと、少年は、しどろもどろになって、目を泳がせた。
「あ、い、いや。用事、思い出して……」
その回答は、すぐに嘘だと分かった。
「嘘ばっかり」
そう確信をつく言い方をすると、少年は一歩前に出た。
「嘘じゃない!」
——チョロい…………
グイッと少年の腕を自分の方に引く。少年の身体が傾いて、ルイの胸の中に収まる。
強めに抱きしめて、逃げられないようにする。
「え?」
——戸惑ってる……っ
そんな仕草でさえも、かわいいと思ってしまうのは、かなりヤバい域だろう。
しばらく抱きしめていると、なんだか無性に、少年にキスしたくなった。
少しだけ腕の力を抜いてやると、少年は抜け出そうとした。
——せっかく、捕まえたんだ……
逃すなんて、ルイはしない。
たとえ逃げても、捕まえて、キスをして、お仕置きをする。
そのつもりだった。
腕を少年の後頭部に置いて力を入れる。
少年のかわいい顔がルイに近づく。
ちゅっ、と触れるだけのキスをしたら、もう止まらなかった。
——もっとキスしたい。
少年の唇は柔らかくて、ずっとキスしていたい気分にさせてくれた。
貪るようにキスをしたい。そんな思いを胸に、ルイはキスをし続けた。
舌を入れたい——と思って、少年の唇を舌でなぞる。
その瞬間、ぶるりと震えた衝撃で少年の口が少しだけ開いた。
「んぅ…………ぁっ…………!」
少年の喘ぎ声がルイの興奮度を上げていく。
その熱はルイの下半身に溜まった。
キスだけで勃ちはじめたモノは、ルイのズボンを持ち上げ始めた。
「ん……はぁ…………」
キスがこんなにも気持ちいいなんて、知らなかった。
止められるか、ルイには分からなかった。
💫💫💫
ルイが吸い付いた場所には、赤い痣が残っていた。
その痣は、内出血を起こしたみたいだった。
その痣は、『キスマーク』というらしい。
「ははっ。暁人はもう俺の物」
「ち、違うだろ……っ!」
——何を言い出すかと思えば……っ!
「えー? キスマークって、『お前は俺の物』って意味もあるんだぜ?」
にやっ、と笑うルイに、暁人の心臓はバクバクだ。
「ない! 初めて聞いた!」
「あるんだなー、それが」
クツクツと喉を鳴らして笑うルイの頭を軽く殴る。
でもダメージはないみたいだ。
「もしかして、キスも初めて?」
「っ……!」
また図星を突かれて、暁人は両手で顔を隠す。
「そーだよ……ファーストキスだよ!」
もうやけになった暁人は、ルイに言い放つ。
中学生の頃女の子から告白されたことがある暁人だが、その時は、その告白を断った。
学年で一番かわいい女の子に告白されたが、暁人は付き合うことをしなかった。
『ごめん。誰とも付き合いたくないんだ』
本当は誰かと付き合ってみたかった。
彼女が出来たら、どんな感じなのか、経験したかった。
でも、こんなかわいい子と付き合ったら、周りの男子の嫉妬で、いじめられそうだったから、断った。
それに、正直そんなに興味がない子だった。
ただ、人気のある子だなぁと思っていただけだ。
ファーストキスなんか、一生訪れないかと思っていた。
でも、思わぬ場所で、相手に、ファーストキスを奪われた。
そのキスは、暁人にとって、とてもレベルの高いキスだった。
「初心者で悪かったな!!」
暁人はルイの膝に乗った状態で叫ぶ。ルイは、長いまつ毛を伏せて、「ごめん」と謝った。
「知らなかった……。経験があるものだと、思い込んでた」
ルイが、本当に申し訳なさそうに暁人に謝罪する。
「あ、いや……」
ここまで真剣に謝られると、暁人も居心地が悪くなってくる。
「でも、さ」
「?」
ルイが暁人の目を見て、にんまりと笑った。
「暁人のファーストキス、俺が貰えたんだよね?」
「っ…………!?」
考え方によっては、まぁこうなるだろう。
「ばか……っ、んぅ……っ!」
またキスされて、暁人は目を瞑る。
「ふぁ……ンン……っ!」
暁人が自分から唇を離す。また、唾液が糸を引いた。
「ルイ…………っ!」
「本当、かわいいなぁ……暁人は」
パッと、ルイは暁人の身体を離す。暁人はゆっくりとルイの膝から降りる。
「暁人、携帯貸して」
ルイが手を伸ばす。暁人は首を傾げながら、携帯を渡す。
「はい。俺のアドレス」
「は?」
暁人は返ってきた携帯の画面をまじまじと見つめる。
画面上には、しっかり——
——『ルイ・セルカ 090-××××-××××』
と記されていた。
「な、な………………っ!」
携帯の画面とルイの顔を交互に見る暁人の表情は、戸惑いでいっぱいだった。
「俺といつでも連絡が取り合えるように。な?」
——『な?』って言われても…………
「俺から逃げられると思うなよ?」
さらっとすごいことを言い放つルイは、放心状態のルイを置いて、立ち上がった。
「………………」
「今日、電話するから、出ろよ?」
暁人の肩に手を置いて、身体を屈める。暁人とルイの身長は、十センチほど差がある。
ルイは、身体を屈めたまま、暁人の唇にキスをした。
「………………」
「またな」
ルイは、怪我した場所を片手で押さえながら、公園から出て行った。
その場に残された暁人は、魂が抜けたみたいに、動けなかった。
そのあとは、どうやって一ノ瀬の家に荷物を取りに行って、図書館に行って、帰ってきたか、わからない。
とにかくボーッとして、何も考えられなかった。
「…………」
自分の部屋に帰って、ベッドに身体を投げ出す。
ボスンっと身体が沈む。
だんだん頭が冴えてきて、冷静になると、自分の行為を思い出して、悶え苦しんだ。
「あぁぁぁ……っ!!!!!」
枕に顔を埋めて、叫ぶ。
幸い、両親は外出していていないし、玲於奈は——友達と遊びに行ってるんだろう——いなかった。
暁人は身体を起こして、仰向けになって、自分の唇に触れる。
——まだ、感覚が残ってる……
思い出すと、顔が赤くなる。
「っ~~~!!!」
声にならない悲鳴をあげて、暁人は目を閉じた。
その日の夜は、なぜかすぐに眠れた。
——夢の中でもルイが出てきて、そこでも激しいキスを交わした。
顔を真っ赤にさせて、涎を垂らして、ルイがしてくれるキスに、必死に応えようとしている暁人の姿があった。
お互い裸で、抱き合っていた。
暁人はいやらしい声を上げて、ルイに抱きつく。
その姿を見て、ルイはキスをもっと激しくする。
——そんな夢を見た。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
女性が少ない世界でVTuberやります!
dekoma26+ブル
恋愛
ある日朝起きてキッチンに行くとそこには知らない男性たちが! …え、お父さん⁉
なぜか突然女性の少ない世界に来てしまった少女がVTuberをしたり、学校に通ったりするお話。
※恋愛大賞の投票ありがとうございました(o´∀`o)参加したみなさんお疲れ様です!
毎週火曜・金曜日に投稿予定 作者ブル
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる