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汚れた身体

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一体いつまで続くんだろう。

もう考えることも嫌になってきた。

「はっ、はっ……!」

「っ、んぁ……はぁぅぅ!」

永良に襲われて、一体どれだけの時間が経っただろう。

もう分からない。

なにも、分からない。

暁人の視界は、もう定まっていない。

焦点が合わなくなるほど、暁人は永良に犯された。

「も、何回…………っ、出す……のぉぉおっ!!!」

意識もボーっ、としてきた。
クラクラして上手く酸素も吸えない。


「あと、二回」


衝撃すぎて、暁人は本当に意識が飛ぶ。

「……あっれ? トんじゃった?」
永良が暁人の様子に気付いて、ペチペチと頬を叩く。

それでも起きないから、永良は腰の振りを大きく激しくさせた。


「はっ、ぐぁぁ………っ!!?」


やっと意識が戻った暁人は、もう一度腰を掴まれて、激しく突かれた。


「もっ……やめでぇぇっ!!!!」


口に巻かれたネクタイも、暁人の口から溢れ出てくる唾液でベタベタだった。

だから、口を塞ぐ、という機能すらしていない。


「……しょうがないなぁ。じゃあ、これで最後にしてやるよ」



暁人の必死の叫びに、ようやく永良は受け入れる。

暁人が少し、ホッとしたのも束の間。


最後だから、という理由で、永良は一番激しく暁人の中を穿うがった。


暁人の身体をひっくり返して、仰向けにさせる。
もう暁人の身体には、力が入っていなかった。

「ははっ。かわいいよ、……暁人」

大嫌いな永良に、名前を呼ばれて、暁人は一気に意識が戻る。

もうやめてくれ。


「やめて、お願い……ぃ! はぁっ、永良ぁっ!!!」


滑舌も徐々に戻ってきて、暁人は最後の力を振り絞って永良の胸を押す。

「っ……抵抗、すんなって」

最後の最後に抵抗されて、永良の機嫌が悪くなる。

「気持ちいいくせに!」


バシッ、と強く頬を叩かれて、暁人はまた、ぶわぁっ、と泣き出す。


「ひっぐぅ……!」


「ほらほらっ! 中出ししてやるから!」


永良の腰振りが、激しくなる。

もう気遣いなんて、一切ない激しさに、暁人は切なくなる。



——ルイとは、違う……っ


ルイは絶対、暁人を一番に考えてくれる。
こんなに乱暴に、暁人を抱くことはない。

いつも、いつも……。


「たす、けて……っ! いやだぁっ!」


「うるさいってば!」


みんながいる場所からは、遠く離れている。
だから、暁人の声は届かない。



「……ぃ! ルイぃっ!!!」



大好きな人。

暁人の一番大切な人。


助けて。

お願い。


ルイが、いい。



「出す! イく、イく!」


永良は暁人の腰をさらに強く掴んで、一段と激しく腰を打ち付けた。



「は、あ、あ、あ、ァァァあぁぁぁぁあ」



ピクピクと痙攣を起こしながら、暁人は目を閉じた。
永良の大きな質量が、ずるり、と抜ける。

ぐちょっ……と音を立てながら、永良は暁人から出ていった。


「ふっ、……はぁ……」
くたーっ、と机にしがみついている暁人を見て、永良は笑った。



「ありがと、暁人。好きだよ」



そう言って、暁人を置いてその場から立ち去った。




一人になった暁人は、ゆっくりと身体を降ろして座った。

「ひっ、ううぅぅぅう…………っ!!」

泣くことしか出来ない。

それがもどかしくて、もどかしくて……。


ルイに会いたい。

でも、こんな汚れきった身体で、会いたくない。
「ルイ、ルイ……ぃっ……!!」


——もう、いやだ……


どうして、こんな目に会わないといけないのだろう。

暁人は自分の肩を抱いて、泣き続けた。


部屋の中は、あの独特の臭いでいっぱいだし、せっかく作ってもらった服は、精液でベトベトだ。



もう、何もかもが台無しで。

もう、何もかもが分からなくて。


泣くことしか出来ない。
助けを求めることしか出来ない。

それが酷く嫌で、いやで。

「ごめんなさい、ごめんなさ、い……っ!」


ここにはいない、大好きな人に、謝る。

謝っても許されることじゃない。

それでも。



暁人は、泣きながら謝り続けた。



















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