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3 極東地区司令官
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休憩を機に、司令官決定会議を抜け出して、レイモンドは執務室に戻っていた。
コーヒーを飲んでいるところへ、アレクセイが顔をのぞかせる。
レイモンドを呼びに来たのである。戦闘中なら命令に口を挟ませたりはしないのだが、新しい司令官は幹部たちが納得の上で決めたい。自分たちの組織を自分たちで造り上げてもらいたい。そう思ったレイモンドは後をアレクセイに任せて執務室に引っ込んでいたのである。
「司令官は決まったのか?」
「いえ…」
「俺はおまえたちに任せたんだぞ?」
「……決まらないんです。会議室へお戻りいただけませんか」
「決まらない? どういうことだ」
レイモンドの声が鋭さを帯びる。
射すくめるような視線からさりげなく目を反らしながら、アレクセイははっきりと言い切った。
「何度も言いましたが、僕はあなたのそばを離れるつもりはありません」
これが、司令官が決まらない最大の原因だった。
いつもはレイモンドに従順なアレクセイがひとつだけこだわっていること、それが副総督でいる、レイモンドのそばにいるということであった。
誰も説得できないらしい。
「ふっ。みな、俺と同じ意見なのだろう。おまえほど司令官にふさわしい男はいないからな。そうでなくても人材が不足しているんだ。あきらめろ」
アレクセイが憮然とした表情になった。ついで、くちびるを噛んで下を向く。
「いやです。ポールが近衛隊から動かないのに、なぜ僕だけが遠い地域へ行かなければならないのですか」
吐かれた言葉は、意地を張る子どもと同レベルだ。
「いい加減にしろ!」
アレクセイがビクリと身体をこわばらせた。
「どこへ行きたいとか行きたくないとか。いったい、何を考えているんだ。それに、おまえだけじゃない。俺は、ポールにも司令官になってもらうつもりだ。……戦闘に犠牲はつきものだが、それでも、この戦いではほんとうに多くの犠牲者を出した。彼らの犠牲の上に、ようやく反対勢力を押さえた。
コスモ・サンダーを再建するのはこれからなんだ。生き残った者は、コスモ・サンダーの未来のために力を尽くす義務がある。そうだろう?」
説得を試みるが、アレクセイは頑固である。
「ですから。副総督として、力のおよぶ限りどんなことでもやります。あなたのそばに、目の届くところにいさせてください。そうでないなら…」
「宇宙軍へ戻るとでも言うのか」
意地の悪い言葉が口をついた。アレクセイが言葉に詰まり、次いで顔が青ざめていく。
アレクセイ・ミハイルは宇宙軍のことなど考えていない。まぎれもなくコスモ・サンダーの側についているとあの戦いで納得していたのに。
レイモンドの言葉は、アレクセイを傷つけた。
「なあ、アーシャ。俺はそんなに総督として頼りないか」
レイモンドは口調を変える。
「そんなことはありません。あなたほど総督にふさわしい人はいない」
「俺を信頼してくれるなら、極東地区へ行ってくれないか。おまえが鍛えた第5艦隊は見事だった。あれだけ統制の取れた艦隊を創り上げたんだ。壊滅状態の極東地区を立て直せる司令官はおまえしかいないと俺は思う。頼りにしている」
続く沈黙に、もう一押しだと思ったレイモンドに。
「僕は…、あなたがどれほどマリオン様を慕っておられたか知っています」
アレクセイが言う。
「な、なにを。今は、関係ないだろう…」
「わかっています。マリオン様の後を追っていきたいのでしょう。いえ、隠してもムダです。僕には、あなたがいま、こうして総督の座に就いておられるのさえ不思議なくらいなのです。極東地区へ行くなど論外です。あなたから目を離すことはできません。コスモ・サンダーがどうなっても、あなたを亡くすことはできませんから!」
「なっ!」
レイモンドは絶句した。アレクセイは鋭い。レイモンドの気持ちを知り尽くしているのだ。だが…。
「間違っているよ、アーシャ」
レイモンドはやさしく言葉をかけた。
「俺はマリオンと約束したんだ。馬鹿みたいだけどね、俺はマリオンに会うときには、胸を張っていたいんだ。微笑んでもらいたいんだ。“よく頑張りましたね”って誉めてもらいたいんだ。そのためになら歯を食いしばってでもコスモ・サンダーを本当の意味で統一してみせる。絶対にやり遂げる。だからさ、俺は今すぐ消えたりしないよ。
考えてみてくれ。今はまだ、反対勢力を殲滅させただけだ。きちんとした組織を創り上げて、みんなが自立できるようにならなくちゃ、俺の仕事は終わらない。やり始めたことを中途半端に放りだしたりしたら…、おまえは知っているだろう。マリオンは許してくれない。マリオンに叱られるようなこと、俺がするわけないじゃない」
アレクセイははっと顔を上げた。
「そんな風に考えておられたのですか。だから…、まだ総督の座についておられる」
「そうだよ」
「……あなたは、今でもマリオン様が恐いんですね」
「あの人は厳しいんだ。やるべきことをやってからでないと、そばに行けないよ」
アレクセイはようやく、小さな笑みを浮かべた。
「忘れていました。マリオン様があなたにどれほど厳しかったかを」
「そう…、アーシャにならわかるだろう。俺はコスモ・サンダーを放り出したりしない。勝手に消えたりしないよ。だから、安心して極東地区へ行ってくれないか」
「ですが…」
アレクセイは少し考えてから言葉を続けた。
「マリオン様がいらっしゃらないいま…、誰があなたの参謀を務めるのですか」
自分以上に総督を補佐できる人間がいるのか、と。
確かにアレクセイは適任だろう。事務官としてならマリオン以上かもしれないが、極東地区を立て直すには飛びきり力のある男が必要なのだ。
「ん――、仕方がない。それならアーシャに本部を任せて、俺が極東地区に行くよ。その方がいいかもしれないな」
「えっ! 総督が極東地区へですか」
「おまえ以外に極東地区を立て直せるのは、俺ぐらいだ。極東地区はコスモ・サンダーの将来を握る大切な地域だ。本部よりも大切なくらい…、おまえがイヤだというなら俺が立て直す。その代わり、本部を頼む」
アレクセイは感激した。アレクセイの願いは、レイモンドに認められることなのだ。
「僕をそれほどまでに信頼してくださるのですか?」
「ああ」
「極東地区はそんなに大切なのですか?」
「そうだ。俺も本部を立て直したら、極東地区へ詰めることになると思う」
「……、なにを考えておられるのですか?」
「ん、いいこと。新しい事業を興すつもりなんだ。もう、リュウたち宇宙軍に追いかけられるようなマネ、したくないからね」
打ってかわって、楽しそうな口調であった。
戦いが終わったら、すぐにでもマリオンの後を追うんじゃないか。緊張の糸がプツリと切れたら、抜け殻のようになるのではないか。そんなアレクセイの心配は杞憂に終わったようだ。
「総督、あなたは強い方ですね……」
「鍛えられてるからね」
心はたまらなく痛いのだが、レイモンドはポーカーフェイスに本心を隠す。しばらくの沈黙の後、ようやくアレクセイが決心を固めた。
「わかりました。極東地区の司令官をやらせていただきます。その代わり……、副総督は兼務させてください」
「へっ……。いいけど、寝るヒマがなくなるよ」
「構いません。少しでもあなたと一緒に過ごす時間が増えるなら」
せっかく手に入れた総督の隣という場所を渡したくない。誰にもだ。
アレクセイの縋るような目を見て、レイモンドは言葉遣いを総督モードに改めた。
「アレクセイ・ミハイル副総督、言っておくことがある」
厳しい口調にアーシャが思わず姿勢を正す。
「は、はい。なんでしょうか」
「俺は二度と誰かに恋したりしない。おまえに応えることはできない」
感情を交えない冷たい声であった。レイモンドは気づいていたのだ。アレクセイがどんな思いを抱いているかを。
「…マリオン様の代わりになりたいなどという大それた考えはもっていません。なれるはずがないことは、よくわかっています。
……最初にお会いしたときから、マリオン様がどれほどあなたを愛しんでおられたかを知っています。あなたがコスモ・サンダーを飛び出した時の凄まじい怒りも、亡くしたと思われた時の深い嘆きも……。
逆に、あなたがどれほどマリオン様を畏れ、敬い、慕っておられたかも。お二人の強い絆の中に入り込む余地などないでしょう。僕はあなたの役に立てるだけで満足です」
アレクセイが正直に思いを打ち明けると、レイモンドはふっと遠くを見るような目をした。
「俺はマリオンを手に入れるためにすべてを捨てた。弟さえも捨てて、強引に手に入れた。マリオンさえいてくれれば、幸せだった。コスモ・サンダーなんか二の次だと思っていた。マリオンが一緒に逃げてくれるなら、俺はすぐにでもコスモ・サンダーを捨てただろう。
自分勝手だって叱られたよ。総督になろうかっていう時に、確かに酷いよね。だから、神様が怒って、罰を下したんだ。俺からマリオンを取り上げた。コスモ・サンダーの面倒を見るようにとね。マリオンも神様も、俺に自分の責務を果たせって言ってるんだ。
――ねえ。これで、俺がコスモ・サンダーをまとめ上げられなかったら、マリオンが俺を鍛えてくれた意味がない。マリオンの夢は、俺が総督になってコスモ・サンダーを統治することだった。その姿が見たいと言ってた。だから、石にかじりついてもやり遂げなくちゃならない。
アーシャ、おまえに応えられないのにこんなことを言うのは気が引けるけど、力を貸してほしい」
レイモンドを慕うアレクセイにとっては、残酷な言葉であろう。マリオンとの約束を果たすために、レイモンドのそばから離れて力を尽くせと言うのだから。
だが、アレクセイは先ほど、極東地区の司令官になると応えてしまっていた。
「はい。僕の力のおよぶ限り」
あなたを手に入れることはできなくても、あなたの信頼に応えられるのなら。少しでも役に立てるのなら。
「よし、会議を始めよう。新しいコスモ・サンダーの幕開きだ!」
立ち上がったレイモンドは決意に満ちた顔をしていた。
その力強さに圧倒されて…、アレクセイはつい、失念してしまったのだ。
レイモンドがマリオンを亡くしてどれほど深く傷ついたかを。遠くない将来、レイモンドがマリオンを追って逝くだろうことを。
コーヒーを飲んでいるところへ、アレクセイが顔をのぞかせる。
レイモンドを呼びに来たのである。戦闘中なら命令に口を挟ませたりはしないのだが、新しい司令官は幹部たちが納得の上で決めたい。自分たちの組織を自分たちで造り上げてもらいたい。そう思ったレイモンドは後をアレクセイに任せて執務室に引っ込んでいたのである。
「司令官は決まったのか?」
「いえ…」
「俺はおまえたちに任せたんだぞ?」
「……決まらないんです。会議室へお戻りいただけませんか」
「決まらない? どういうことだ」
レイモンドの声が鋭さを帯びる。
射すくめるような視線からさりげなく目を反らしながら、アレクセイははっきりと言い切った。
「何度も言いましたが、僕はあなたのそばを離れるつもりはありません」
これが、司令官が決まらない最大の原因だった。
いつもはレイモンドに従順なアレクセイがひとつだけこだわっていること、それが副総督でいる、レイモンドのそばにいるということであった。
誰も説得できないらしい。
「ふっ。みな、俺と同じ意見なのだろう。おまえほど司令官にふさわしい男はいないからな。そうでなくても人材が不足しているんだ。あきらめろ」
アレクセイが憮然とした表情になった。ついで、くちびるを噛んで下を向く。
「いやです。ポールが近衛隊から動かないのに、なぜ僕だけが遠い地域へ行かなければならないのですか」
吐かれた言葉は、意地を張る子どもと同レベルだ。
「いい加減にしろ!」
アレクセイがビクリと身体をこわばらせた。
「どこへ行きたいとか行きたくないとか。いったい、何を考えているんだ。それに、おまえだけじゃない。俺は、ポールにも司令官になってもらうつもりだ。……戦闘に犠牲はつきものだが、それでも、この戦いではほんとうに多くの犠牲者を出した。彼らの犠牲の上に、ようやく反対勢力を押さえた。
コスモ・サンダーを再建するのはこれからなんだ。生き残った者は、コスモ・サンダーの未来のために力を尽くす義務がある。そうだろう?」
説得を試みるが、アレクセイは頑固である。
「ですから。副総督として、力のおよぶ限りどんなことでもやります。あなたのそばに、目の届くところにいさせてください。そうでないなら…」
「宇宙軍へ戻るとでも言うのか」
意地の悪い言葉が口をついた。アレクセイが言葉に詰まり、次いで顔が青ざめていく。
アレクセイ・ミハイルは宇宙軍のことなど考えていない。まぎれもなくコスモ・サンダーの側についているとあの戦いで納得していたのに。
レイモンドの言葉は、アレクセイを傷つけた。
「なあ、アーシャ。俺はそんなに総督として頼りないか」
レイモンドは口調を変える。
「そんなことはありません。あなたほど総督にふさわしい人はいない」
「俺を信頼してくれるなら、極東地区へ行ってくれないか。おまえが鍛えた第5艦隊は見事だった。あれだけ統制の取れた艦隊を創り上げたんだ。壊滅状態の極東地区を立て直せる司令官はおまえしかいないと俺は思う。頼りにしている」
続く沈黙に、もう一押しだと思ったレイモンドに。
「僕は…、あなたがどれほどマリオン様を慕っておられたか知っています」
アレクセイが言う。
「な、なにを。今は、関係ないだろう…」
「わかっています。マリオン様の後を追っていきたいのでしょう。いえ、隠してもムダです。僕には、あなたがいま、こうして総督の座に就いておられるのさえ不思議なくらいなのです。極東地区へ行くなど論外です。あなたから目を離すことはできません。コスモ・サンダーがどうなっても、あなたを亡くすことはできませんから!」
「なっ!」
レイモンドは絶句した。アレクセイは鋭い。レイモンドの気持ちを知り尽くしているのだ。だが…。
「間違っているよ、アーシャ」
レイモンドはやさしく言葉をかけた。
「俺はマリオンと約束したんだ。馬鹿みたいだけどね、俺はマリオンに会うときには、胸を張っていたいんだ。微笑んでもらいたいんだ。“よく頑張りましたね”って誉めてもらいたいんだ。そのためになら歯を食いしばってでもコスモ・サンダーを本当の意味で統一してみせる。絶対にやり遂げる。だからさ、俺は今すぐ消えたりしないよ。
考えてみてくれ。今はまだ、反対勢力を殲滅させただけだ。きちんとした組織を創り上げて、みんなが自立できるようにならなくちゃ、俺の仕事は終わらない。やり始めたことを中途半端に放りだしたりしたら…、おまえは知っているだろう。マリオンは許してくれない。マリオンに叱られるようなこと、俺がするわけないじゃない」
アレクセイははっと顔を上げた。
「そんな風に考えておられたのですか。だから…、まだ総督の座についておられる」
「そうだよ」
「……あなたは、今でもマリオン様が恐いんですね」
「あの人は厳しいんだ。やるべきことをやってからでないと、そばに行けないよ」
アレクセイはようやく、小さな笑みを浮かべた。
「忘れていました。マリオン様があなたにどれほど厳しかったかを」
「そう…、アーシャにならわかるだろう。俺はコスモ・サンダーを放り出したりしない。勝手に消えたりしないよ。だから、安心して極東地区へ行ってくれないか」
「ですが…」
アレクセイは少し考えてから言葉を続けた。
「マリオン様がいらっしゃらないいま…、誰があなたの参謀を務めるのですか」
自分以上に総督を補佐できる人間がいるのか、と。
確かにアレクセイは適任だろう。事務官としてならマリオン以上かもしれないが、極東地区を立て直すには飛びきり力のある男が必要なのだ。
「ん――、仕方がない。それならアーシャに本部を任せて、俺が極東地区に行くよ。その方がいいかもしれないな」
「えっ! 総督が極東地区へですか」
「おまえ以外に極東地区を立て直せるのは、俺ぐらいだ。極東地区はコスモ・サンダーの将来を握る大切な地域だ。本部よりも大切なくらい…、おまえがイヤだというなら俺が立て直す。その代わり、本部を頼む」
アレクセイは感激した。アレクセイの願いは、レイモンドに認められることなのだ。
「僕をそれほどまでに信頼してくださるのですか?」
「ああ」
「極東地区はそんなに大切なのですか?」
「そうだ。俺も本部を立て直したら、極東地区へ詰めることになると思う」
「……、なにを考えておられるのですか?」
「ん、いいこと。新しい事業を興すつもりなんだ。もう、リュウたち宇宙軍に追いかけられるようなマネ、したくないからね」
打ってかわって、楽しそうな口調であった。
戦いが終わったら、すぐにでもマリオンの後を追うんじゃないか。緊張の糸がプツリと切れたら、抜け殻のようになるのではないか。そんなアレクセイの心配は杞憂に終わったようだ。
「総督、あなたは強い方ですね……」
「鍛えられてるからね」
心はたまらなく痛いのだが、レイモンドはポーカーフェイスに本心を隠す。しばらくの沈黙の後、ようやくアレクセイが決心を固めた。
「わかりました。極東地区の司令官をやらせていただきます。その代わり……、副総督は兼務させてください」
「へっ……。いいけど、寝るヒマがなくなるよ」
「構いません。少しでもあなたと一緒に過ごす時間が増えるなら」
せっかく手に入れた総督の隣という場所を渡したくない。誰にもだ。
アレクセイの縋るような目を見て、レイモンドは言葉遣いを総督モードに改めた。
「アレクセイ・ミハイル副総督、言っておくことがある」
厳しい口調にアーシャが思わず姿勢を正す。
「は、はい。なんでしょうか」
「俺は二度と誰かに恋したりしない。おまえに応えることはできない」
感情を交えない冷たい声であった。レイモンドは気づいていたのだ。アレクセイがどんな思いを抱いているかを。
「…マリオン様の代わりになりたいなどという大それた考えはもっていません。なれるはずがないことは、よくわかっています。
……最初にお会いしたときから、マリオン様がどれほどあなたを愛しんでおられたかを知っています。あなたがコスモ・サンダーを飛び出した時の凄まじい怒りも、亡くしたと思われた時の深い嘆きも……。
逆に、あなたがどれほどマリオン様を畏れ、敬い、慕っておられたかも。お二人の強い絆の中に入り込む余地などないでしょう。僕はあなたの役に立てるだけで満足です」
アレクセイが正直に思いを打ち明けると、レイモンドはふっと遠くを見るような目をした。
「俺はマリオンを手に入れるためにすべてを捨てた。弟さえも捨てて、強引に手に入れた。マリオンさえいてくれれば、幸せだった。コスモ・サンダーなんか二の次だと思っていた。マリオンが一緒に逃げてくれるなら、俺はすぐにでもコスモ・サンダーを捨てただろう。
自分勝手だって叱られたよ。総督になろうかっていう時に、確かに酷いよね。だから、神様が怒って、罰を下したんだ。俺からマリオンを取り上げた。コスモ・サンダーの面倒を見るようにとね。マリオンも神様も、俺に自分の責務を果たせって言ってるんだ。
――ねえ。これで、俺がコスモ・サンダーをまとめ上げられなかったら、マリオンが俺を鍛えてくれた意味がない。マリオンの夢は、俺が総督になってコスモ・サンダーを統治することだった。その姿が見たいと言ってた。だから、石にかじりついてもやり遂げなくちゃならない。
アーシャ、おまえに応えられないのにこんなことを言うのは気が引けるけど、力を貸してほしい」
レイモンドを慕うアレクセイにとっては、残酷な言葉であろう。マリオンとの約束を果たすために、レイモンドのそばから離れて力を尽くせと言うのだから。
だが、アレクセイは先ほど、極東地区の司令官になると応えてしまっていた。
「はい。僕の力のおよぶ限り」
あなたを手に入れることはできなくても、あなたの信頼に応えられるのなら。少しでも役に立てるのなら。
「よし、会議を始めよう。新しいコスモ・サンダーの幕開きだ!」
立ち上がったレイモンドは決意に満ちた顔をしていた。
その力強さに圧倒されて…、アレクセイはつい、失念してしまったのだ。
レイモンドがマリオンを亡くしてどれほど深く傷ついたかを。遠くない将来、レイモンドがマリオンを追って逝くだろうことを。
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