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プロローグ
プロローグ
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危険と享楽のニオイがするスラム街。
「こんな所にいい女がいるのか?」
「ああ、任せなって。チェックは入れてる、がっかりさせないぜ」
「おまえのがっかりさせないは、あてにならないからな」
「今回は、大丈夫だって!」
促されて狭い路地に入り込んだ時であった。
タタタタッと軽やかな足音が聞こえたかと思うと、目の前の路地から飛び出してきたものがどん、とぶつかった。
「つッ!」
とっさのことで除けられない。
見ると、目の先に勢い余って吹っ飛んでしまった子どもがうずくまっていた。
汚れが染み付いた服。長い金髪がくしゃくしゃにもつれている。
スラムの子どもだと見当がついた。足を気にしている?
近寄ると相手はビクリッと身を引く。
「悪かったな、怪我をしたのか?」
穏やかな問いかけに顔を上げ、一瞬首をかしげた子どもは汚れているにもかかわらず、ものすごく愛らしい顔をしていた。
女の子、いや男の子だろうか?
迷っているうちに、その子は苦労しながら立ち上がった。
「どこへ逃げやがった」
「おまえら、向こうを探せ!」
怒鳴り声とともに、背後から複数の足音が聞こえてきた。
どうやら4~5人のようである。
足を引きずりながら走り出そうとした子どもを2~3歩追いかけて、腕をぐいっとつかむ。
じたばたと暴れるのを押さえると、
「離せ!」と。
「おい、待てよ。盗みか? 今ので怪我をしただろう、逃げ切れないぞ」
「なあ、関わり合うとろくなことないぜ。追ってるのが軍警察だったらどうするつもりだ? おれたちがコスモ・サンダーの養成所に所属してるってバレたらヤバイだろう」
これからのお遊びに水をさされたくないと連れが言う。
「俺のせいで怪我をさせたんだ。見捨てるわけにはいかない……、グレッグ、おまえに迷惑はかけない」
きっぱりとした暗灰色の瞳、断固とした口調に連れが黙り込んだ。
しばしの沈黙の後。
追っ手が単なる不良グループだと見て取ると、連れはあっさり、じゃあな!と片手を挙げて行ってしまった。
「くそっ、冷たいヤツ」
ちっと舌打ちする様子をあおぎ見た子どもが、毅然とした声で言い放った。
「俺にかまうな。おまえも行けよ!」
子どもらしい可愛いい声でひどい言葉遣い。
しかし、凛とした響きがあった。虚勢にしてもなかなかだ、と男は思った。
そうこうしているうちに。
「おい、おまえ。痛めつけられたくなかったら、そいつを寄こせ!」
「逃がさないぜ」
「可愛がってやるっていってるんだ。素直にこっちに来い」
囲まれてしまった。
いやらしい目つきで、今にも舌なめずりしそうだ。こいつら、何をする気だ?
その応えが子どもの口から明かされる。
「俺を自由にしたいなら、させてやる。こいつは関係ない」
自由に、する?
どういう意味だ?
この子をおもちゃにしようというのか!
そんな驚きよりも。
関係ないという言葉が引っかかって、前に出ようとする子をむりやり自分の背にかばう。
「ガキにかばわれるほど弱くない。後ろに隠れていろ!」
手に手にナイフや獲物を握り、ニタニタ笑う若者たちに「俺が相手をする」と言い切ってしまっていた。
子どもはびっくりした顔で男を見た。
その視線が男の姿を確認する。
広い肩幅、ぐっと引き締まった体躯。
どうして助ける…、小さな声が聞こえたような。
子どもを敵から遮断したマリオンは、口もとに不敵な笑みを浮かべたまま闘う構えをとった。
「こんな所にいい女がいるのか?」
「ああ、任せなって。チェックは入れてる、がっかりさせないぜ」
「おまえのがっかりさせないは、あてにならないからな」
「今回は、大丈夫だって!」
促されて狭い路地に入り込んだ時であった。
タタタタッと軽やかな足音が聞こえたかと思うと、目の前の路地から飛び出してきたものがどん、とぶつかった。
「つッ!」
とっさのことで除けられない。
見ると、目の先に勢い余って吹っ飛んでしまった子どもがうずくまっていた。
汚れが染み付いた服。長い金髪がくしゃくしゃにもつれている。
スラムの子どもだと見当がついた。足を気にしている?
近寄ると相手はビクリッと身を引く。
「悪かったな、怪我をしたのか?」
穏やかな問いかけに顔を上げ、一瞬首をかしげた子どもは汚れているにもかかわらず、ものすごく愛らしい顔をしていた。
女の子、いや男の子だろうか?
迷っているうちに、その子は苦労しながら立ち上がった。
「どこへ逃げやがった」
「おまえら、向こうを探せ!」
怒鳴り声とともに、背後から複数の足音が聞こえてきた。
どうやら4~5人のようである。
足を引きずりながら走り出そうとした子どもを2~3歩追いかけて、腕をぐいっとつかむ。
じたばたと暴れるのを押さえると、
「離せ!」と。
「おい、待てよ。盗みか? 今ので怪我をしただろう、逃げ切れないぞ」
「なあ、関わり合うとろくなことないぜ。追ってるのが軍警察だったらどうするつもりだ? おれたちがコスモ・サンダーの養成所に所属してるってバレたらヤバイだろう」
これからのお遊びに水をさされたくないと連れが言う。
「俺のせいで怪我をさせたんだ。見捨てるわけにはいかない……、グレッグ、おまえに迷惑はかけない」
きっぱりとした暗灰色の瞳、断固とした口調に連れが黙り込んだ。
しばしの沈黙の後。
追っ手が単なる不良グループだと見て取ると、連れはあっさり、じゃあな!と片手を挙げて行ってしまった。
「くそっ、冷たいヤツ」
ちっと舌打ちする様子をあおぎ見た子どもが、毅然とした声で言い放った。
「俺にかまうな。おまえも行けよ!」
子どもらしい可愛いい声でひどい言葉遣い。
しかし、凛とした響きがあった。虚勢にしてもなかなかだ、と男は思った。
そうこうしているうちに。
「おい、おまえ。痛めつけられたくなかったら、そいつを寄こせ!」
「逃がさないぜ」
「可愛がってやるっていってるんだ。素直にこっちに来い」
囲まれてしまった。
いやらしい目つきで、今にも舌なめずりしそうだ。こいつら、何をする気だ?
その応えが子どもの口から明かされる。
「俺を自由にしたいなら、させてやる。こいつは関係ない」
自由に、する?
どういう意味だ?
この子をおもちゃにしようというのか!
そんな驚きよりも。
関係ないという言葉が引っかかって、前に出ようとする子をむりやり自分の背にかばう。
「ガキにかばわれるほど弱くない。後ろに隠れていろ!」
手に手にナイフや獲物を握り、ニタニタ笑う若者たちに「俺が相手をする」と言い切ってしまっていた。
子どもはびっくりした顔で男を見た。
その視線が男の姿を確認する。
広い肩幅、ぐっと引き締まった体躯。
どうして助ける…、小さな声が聞こえたような。
子どもを敵から遮断したマリオンは、口もとに不敵な笑みを浮かべたまま闘う構えをとった。
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