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第二章
1 トレーニング
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無造作に肩にかけられたスポーツタオル。
袖と腿にななめにラインが入った黒のジャージ。
たかが幹部養成所の教官用ジャージなのだが、ピシリと整えられた銀の髪、スラリと背高い姿がまとうと、まるでグラビアモデルのようにカッコよく見えた。
しかし、ここは海賊団コスモ・サンダーの本部に併設されたスポーツジムである。
モデルなどいるはずがない。
端正な姿に似合う厳しい表情でグラウンドを見つめているマリオンもれっきとしたコスモ・サンダーの一員、しかも、つい半年前までは第5艦隊で戦闘艇を指揮する名隊長であった。
低い声が告げる威厳のこもった命令に、戦闘員たちは先を競うように従ったものである。
ところが。キャプテンとしての昇格を目前にして、なぜか、少年の教育係を務めることになったのである。
ある者は首を捻り、ある者は何か落ち度があったのではないかと疑ったのも当然であった。
グラウンドに立つ男のもとに、プレスクールのジャージを身に着けた年が走りついた。
立ち止まると、両膝に手を置き肩で息をしている。
トレーニングを開始してからかれこれ2時間半が過ぎていた。
うつむいているせいで蜂蜜色の髪が顔を覆っているが、もし見えたなら汗のしたたる顔に浮かぶ苦しげな表情がわかっただろう。
マリオンはちらりと手元のストップウオッチに目をやり、非情に告げる。
「13秒のタイムオーバー、もう一度!」
はぁ、はぁと荒い息をしながら、レイモンドは情けなさそうな顔になる。
しかし、クリアできなければ、いつまでたってもトレーニングが終わらないことを少年は知っていた。
この3カ月でいやというほどわからされたのである。
制限タイムがあるメニューは早めにクリアしないと、やり直しをさせられるたびにつらくなる。もし、途中で挫折でもしようものなら…、考えたくもない。
「…はっ、はいっ…」
息を整えながら、レイモンドはようやく声をしぼり出す。
腕を組んで見下ろしていたマリオンから厳しい叱咤が飛んだ。
「ピシッと立って返事をする! それに、誰が休んでいいといいましたッ! 早くスタート位置にいきなさい」
レイモンドはかかとを揃えて直立不動の姿勢を取り、まっすぐに顔を上げて言う。
「はいっ! 障害物コース5周、もう一度行ってきます」
そう告げると、駆け足でグラウンドへと向かう。
マリオンは一度しか注意しない。
二度目は頬を張るか、蹴りを入れるか…。
艦隊の戦闘員相手でもないのに、戦闘命令でもないのに、少しも容赦しなかった。
マリオンは少年の後ろ姿に微笑みかける。しかし、声は厳しいままだ。
「いいですか。用意、スタート!」
声と同時に、レイモンドがトラックを走り始めた。途中に組み込まれた障害をこなしながら、体力の限界まで。
寒さが増しているのに、軽装のままグラウンドを見据えているマリオンの元へ、がっしりした体躯の男が近づいてきた。ハワードジム長である。
「どうかな、トレーニングの具合は?」
「はい、おかげさまでと言いたいところですが、まだまだです」
「そうか? 毎日、あきれるほどしごいてるじゃないか」
マリオンはほんの少し肩をすくめる。
マリオンが教育係に任命されたのは夏の初めだった。
しばらくは教育係とは名ばかりで指導など少しもしなかった。
それが、ある日を境にマリオンが変わったのである。
言葉遣いから態度まで一変した。
今はまるで、生まれてからずっとレイモンドの教育係を務めているようであった。
何かあったのは一目瞭然なのだが、それを本人に訊くほどの馬鹿はいない。
毅然とした態度を崩さないマリオンに聞けるわけがないと誰もが思っていた。
気軽に声をかけるハワードでさえ、冷ややかな目で見返されそうで聞けずにいたくらい…。
「レイモンドは身体ができていませんから、体力づくりから始めないといけない。それに、子どもは甘やかすとつけ上がりますからね」
甘やかすって、だれが!
ここしばらくレイモンドは、毎日、何時間も筋トレやランニングなどの基礎トレーニングばかりさせられていたのである。
それも、マリオンがつきっきりで、だ。休むヒマもなく、手を抜くことも許されない。
ハワードはグラウンドに目をやった。
小さい身体がかなりのスピードで動いている。
レイモンドの身体能力は驚くほど高いが、マリオンの無茶なトレーニングについていけるほど体力があるかどうかが心配である。
「もう10時半だ、そろそろ終わらせてやったらどうだ」
「…、申し訳ありません。ジムを閉める時間ですね」
「いや、そんなことはいいんだが」
やりすぎじゃないか、という言葉は口にできない。
「先ほどから、ずっとグラウンドを回っているように見えるぞ」
「ええ。最後のメニューがクリアできなくて…、これが3回目。わたしも終わりたいのですが…、障害物コース5周20分は厳しかったかなあ」
最後は独り言のようにつぶやく。
あの小さい身体で障害をこなすのはきついだろう。
養成所の生徒たちでも20分では半分くらいしかクリアできない。
「そう思うなら……」
「いえ、20分は養成所レベルですし。一度口にしたことは、最後までやり通させることにしています。頑張ってもらわないと、罰を与えなければなりませんから」
「できなければ、罰を与えると?」
「ええ。あきらめることは許していませんので…」
「……、思った以上に厳しい教育係だな。あの子を潰してしまっては意味がないぞ」
「そこまで無理はさせませんし、レイモンドの状態は常に見ています。……養成所の選抜試験までには力をつけてもらわないと…」
ぽろりと本音がこぼれる。
「選抜試験? レイモンドは13歳だろう? 試験を受けられるのは16歳~18歳じゃないのか」
「レイモンドは14歳になりました。15歳で入所を認められた者もいます…」
年齢制限はあってないようなものと言いたいのだろう。
それでも。年齢に比べて身体が小さいあの子には体力的にキツい。
それとも、この男はレイモンドを養成所に送り込んで一刻も早く艦隊に復帰したいと思っているのだろうか?
ハワードの探るような視線を受け止めたマリオンは軽く首を振る。
「違いますよ。ただ、レイモンドには今すぐにでも養成所に入る力があるとわたしは思う。操縦士になるそうですから、養成所に入って、早く専門課程に進ませてやりたい」
「ほう、操縦士になる?」
目標ができたのはいいことだと、ハワードは思った。しかし…。
「養成所に放り込まなくても、操縦ならおまえが教えられるだろう。養成所操縦担当のマリオン・ゼクスター教官?」
「操縦士になるには、技術だけではなくさまざまな力が必要です。養成所でやっていけないものが、コスモ・サンダーの艦隊で操縦士を勤められると思いますか?」
それは正論だが、ハワードにはレイモンドを今、養成所に入れる方が無茶だと思うのだが…。
「言ってろ。それより、養成所に入れるなら基礎トレだけでなく、身体防衛術や戦闘術なども教えないといけないだろう。間に合うのか?」
いくら身体能力では養成所レベルだとマリオンが考えていても、選抜試験では、学力、基礎体力の他に、身体防衛術(格闘技)や射撃なども試される。
もちろん、基礎さえできていれば後は養成所で教え込むのであるが…。
幹部としての資質を見るわけだから、スラム出身の14歳ではツラいものがないだろうか。
「まだ半年ある。でも…、そうですね。レイモンドは不器用そうだから、そろそろ射撃訓練をやらないといけない、かな」
「不器用?」
「ええ」
ハワードと話をしていてもマリオンの目はレイモンドから離れない。
最後の1周を終えたのを確認したマリオンがストップウオッチを止めた。
「今度はぎりぎり、クリアしています」
「そうか。それはよかった」
ほっとした様子のハワードをマリオンが横目で睨む。
「ジム長、わたしがいない時にレイモンドを甘やかさないでくださいよ」
小さくて愛らしい姿を見てしまうと、厳しくするのは難しいけれどと心の中で付け足す。
レイモンドが近づいてくると、マリオンは改めて硬質な雰囲気を身にまとった。
「今度はクリアしています。今日はここまでにしておきましょう」
頬を上気させ、苦しそうな表情のままレイモンドがきちんと姿勢を正した。
「……ご指導、ありがとう…、ございましたっ」
マリオンの顔がわずかに笑みをのせる。
「少しきつかったですが、よく頑張りましたね。わたしは先に戻りますが、しっかりクールダウンをしてから戻ってきなさい」
泣いても、倒れても、マリオンは表情を変えずに必ず最後までやり通させる。
そのうえ、いくら必死でやっても誉めることなど稀であった。だから。
「頑張りましたね」という言葉を聞いた途端、レイモンドの顔がこれ以上ないというほどうれしそうな表情をたたえた。
「はいっ!」
一瞬にして元気になったようだ。
その輝くような表情は誰が見ても惹きつけられるだろう。
素直で、一生懸命で。マリオンに認められた喜びが全身からあふれていた。
弾むように返事をしたレイモンドはハワードに会釈をしてから、クールダウンに向かった。
ハワードが感心したように言う。
「よく躾たな、マリオン」
「ええ、レイモンドは賢いですから…。何度も痛い思いはしたくないんでしょう」
愛おしそうにレイモンドを眺めているマリオンの口から、そんな言葉が。
痛い思い?
「おまえ、厳しすぎないか。あんな可愛い子に、よくきついことができるなあ」
ハワードは思わず訊いてしまった。
「レイモンドを鍛えるのがわたしの仕事ですから」
「そうだな、おまえはいつも仕事には厳しかった。全力で取り組んでいたしな…」
「それ、嫌みですか?」
ハワードは最初、マリオンが仕事を投げ出していたのを知っていたから。
「いや、心底、そう思っている」
マリオンは言われて微笑んだ。
レイモンドが操縦士になりたいと言ったから、鍛えてほしいと頼んだから。
できる限りのことをしようと思っている。
でも気を引き締めていないと、際限なく甘くなりそうで…。望む以上に厳しい態度になってしまうのだ。
袖と腿にななめにラインが入った黒のジャージ。
たかが幹部養成所の教官用ジャージなのだが、ピシリと整えられた銀の髪、スラリと背高い姿がまとうと、まるでグラビアモデルのようにカッコよく見えた。
しかし、ここは海賊団コスモ・サンダーの本部に併設されたスポーツジムである。
モデルなどいるはずがない。
端正な姿に似合う厳しい表情でグラウンドを見つめているマリオンもれっきとしたコスモ・サンダーの一員、しかも、つい半年前までは第5艦隊で戦闘艇を指揮する名隊長であった。
低い声が告げる威厳のこもった命令に、戦闘員たちは先を競うように従ったものである。
ところが。キャプテンとしての昇格を目前にして、なぜか、少年の教育係を務めることになったのである。
ある者は首を捻り、ある者は何か落ち度があったのではないかと疑ったのも当然であった。
グラウンドに立つ男のもとに、プレスクールのジャージを身に着けた年が走りついた。
立ち止まると、両膝に手を置き肩で息をしている。
トレーニングを開始してからかれこれ2時間半が過ぎていた。
うつむいているせいで蜂蜜色の髪が顔を覆っているが、もし見えたなら汗のしたたる顔に浮かぶ苦しげな表情がわかっただろう。
マリオンはちらりと手元のストップウオッチに目をやり、非情に告げる。
「13秒のタイムオーバー、もう一度!」
はぁ、はぁと荒い息をしながら、レイモンドは情けなさそうな顔になる。
しかし、クリアできなければ、いつまでたってもトレーニングが終わらないことを少年は知っていた。
この3カ月でいやというほどわからされたのである。
制限タイムがあるメニューは早めにクリアしないと、やり直しをさせられるたびにつらくなる。もし、途中で挫折でもしようものなら…、考えたくもない。
「…はっ、はいっ…」
息を整えながら、レイモンドはようやく声をしぼり出す。
腕を組んで見下ろしていたマリオンから厳しい叱咤が飛んだ。
「ピシッと立って返事をする! それに、誰が休んでいいといいましたッ! 早くスタート位置にいきなさい」
レイモンドはかかとを揃えて直立不動の姿勢を取り、まっすぐに顔を上げて言う。
「はいっ! 障害物コース5周、もう一度行ってきます」
そう告げると、駆け足でグラウンドへと向かう。
マリオンは一度しか注意しない。
二度目は頬を張るか、蹴りを入れるか…。
艦隊の戦闘員相手でもないのに、戦闘命令でもないのに、少しも容赦しなかった。
マリオンは少年の後ろ姿に微笑みかける。しかし、声は厳しいままだ。
「いいですか。用意、スタート!」
声と同時に、レイモンドがトラックを走り始めた。途中に組み込まれた障害をこなしながら、体力の限界まで。
寒さが増しているのに、軽装のままグラウンドを見据えているマリオンの元へ、がっしりした体躯の男が近づいてきた。ハワードジム長である。
「どうかな、トレーニングの具合は?」
「はい、おかげさまでと言いたいところですが、まだまだです」
「そうか? 毎日、あきれるほどしごいてるじゃないか」
マリオンはほんの少し肩をすくめる。
マリオンが教育係に任命されたのは夏の初めだった。
しばらくは教育係とは名ばかりで指導など少しもしなかった。
それが、ある日を境にマリオンが変わったのである。
言葉遣いから態度まで一変した。
今はまるで、生まれてからずっとレイモンドの教育係を務めているようであった。
何かあったのは一目瞭然なのだが、それを本人に訊くほどの馬鹿はいない。
毅然とした態度を崩さないマリオンに聞けるわけがないと誰もが思っていた。
気軽に声をかけるハワードでさえ、冷ややかな目で見返されそうで聞けずにいたくらい…。
「レイモンドは身体ができていませんから、体力づくりから始めないといけない。それに、子どもは甘やかすとつけ上がりますからね」
甘やかすって、だれが!
ここしばらくレイモンドは、毎日、何時間も筋トレやランニングなどの基礎トレーニングばかりさせられていたのである。
それも、マリオンがつきっきりで、だ。休むヒマもなく、手を抜くことも許されない。
ハワードはグラウンドに目をやった。
小さい身体がかなりのスピードで動いている。
レイモンドの身体能力は驚くほど高いが、マリオンの無茶なトレーニングについていけるほど体力があるかどうかが心配である。
「もう10時半だ、そろそろ終わらせてやったらどうだ」
「…、申し訳ありません。ジムを閉める時間ですね」
「いや、そんなことはいいんだが」
やりすぎじゃないか、という言葉は口にできない。
「先ほどから、ずっとグラウンドを回っているように見えるぞ」
「ええ。最後のメニューがクリアできなくて…、これが3回目。わたしも終わりたいのですが…、障害物コース5周20分は厳しかったかなあ」
最後は独り言のようにつぶやく。
あの小さい身体で障害をこなすのはきついだろう。
養成所の生徒たちでも20分では半分くらいしかクリアできない。
「そう思うなら……」
「いえ、20分は養成所レベルですし。一度口にしたことは、最後までやり通させることにしています。頑張ってもらわないと、罰を与えなければなりませんから」
「できなければ、罰を与えると?」
「ええ。あきらめることは許していませんので…」
「……、思った以上に厳しい教育係だな。あの子を潰してしまっては意味がないぞ」
「そこまで無理はさせませんし、レイモンドの状態は常に見ています。……養成所の選抜試験までには力をつけてもらわないと…」
ぽろりと本音がこぼれる。
「選抜試験? レイモンドは13歳だろう? 試験を受けられるのは16歳~18歳じゃないのか」
「レイモンドは14歳になりました。15歳で入所を認められた者もいます…」
年齢制限はあってないようなものと言いたいのだろう。
それでも。年齢に比べて身体が小さいあの子には体力的にキツい。
それとも、この男はレイモンドを養成所に送り込んで一刻も早く艦隊に復帰したいと思っているのだろうか?
ハワードの探るような視線を受け止めたマリオンは軽く首を振る。
「違いますよ。ただ、レイモンドには今すぐにでも養成所に入る力があるとわたしは思う。操縦士になるそうですから、養成所に入って、早く専門課程に進ませてやりたい」
「ほう、操縦士になる?」
目標ができたのはいいことだと、ハワードは思った。しかし…。
「養成所に放り込まなくても、操縦ならおまえが教えられるだろう。養成所操縦担当のマリオン・ゼクスター教官?」
「操縦士になるには、技術だけではなくさまざまな力が必要です。養成所でやっていけないものが、コスモ・サンダーの艦隊で操縦士を勤められると思いますか?」
それは正論だが、ハワードにはレイモンドを今、養成所に入れる方が無茶だと思うのだが…。
「言ってろ。それより、養成所に入れるなら基礎トレだけでなく、身体防衛術や戦闘術なども教えないといけないだろう。間に合うのか?」
いくら身体能力では養成所レベルだとマリオンが考えていても、選抜試験では、学力、基礎体力の他に、身体防衛術(格闘技)や射撃なども試される。
もちろん、基礎さえできていれば後は養成所で教え込むのであるが…。
幹部としての資質を見るわけだから、スラム出身の14歳ではツラいものがないだろうか。
「まだ半年ある。でも…、そうですね。レイモンドは不器用そうだから、そろそろ射撃訓練をやらないといけない、かな」
「不器用?」
「ええ」
ハワードと話をしていてもマリオンの目はレイモンドから離れない。
最後の1周を終えたのを確認したマリオンがストップウオッチを止めた。
「今度はぎりぎり、クリアしています」
「そうか。それはよかった」
ほっとした様子のハワードをマリオンが横目で睨む。
「ジム長、わたしがいない時にレイモンドを甘やかさないでくださいよ」
小さくて愛らしい姿を見てしまうと、厳しくするのは難しいけれどと心の中で付け足す。
レイモンドが近づいてくると、マリオンは改めて硬質な雰囲気を身にまとった。
「今度はクリアしています。今日はここまでにしておきましょう」
頬を上気させ、苦しそうな表情のままレイモンドがきちんと姿勢を正した。
「……ご指導、ありがとう…、ございましたっ」
マリオンの顔がわずかに笑みをのせる。
「少しきつかったですが、よく頑張りましたね。わたしは先に戻りますが、しっかりクールダウンをしてから戻ってきなさい」
泣いても、倒れても、マリオンは表情を変えずに必ず最後までやり通させる。
そのうえ、いくら必死でやっても誉めることなど稀であった。だから。
「頑張りましたね」という言葉を聞いた途端、レイモンドの顔がこれ以上ないというほどうれしそうな表情をたたえた。
「はいっ!」
一瞬にして元気になったようだ。
その輝くような表情は誰が見ても惹きつけられるだろう。
素直で、一生懸命で。マリオンに認められた喜びが全身からあふれていた。
弾むように返事をしたレイモンドはハワードに会釈をしてから、クールダウンに向かった。
ハワードが感心したように言う。
「よく躾たな、マリオン」
「ええ、レイモンドは賢いですから…。何度も痛い思いはしたくないんでしょう」
愛おしそうにレイモンドを眺めているマリオンの口から、そんな言葉が。
痛い思い?
「おまえ、厳しすぎないか。あんな可愛い子に、よくきついことができるなあ」
ハワードは思わず訊いてしまった。
「レイモンドを鍛えるのがわたしの仕事ですから」
「そうだな、おまえはいつも仕事には厳しかった。全力で取り組んでいたしな…」
「それ、嫌みですか?」
ハワードは最初、マリオンが仕事を投げ出していたのを知っていたから。
「いや、心底、そう思っている」
マリオンは言われて微笑んだ。
レイモンドが操縦士になりたいと言ったから、鍛えてほしいと頼んだから。
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